第5話 夏祭り序盤戦2
「どこからまろうか?」
「んー、あんまりお祭りって来たことないからよくわかんない。あ、射的とかしてみたいかも。」
射的かぁ、どこかにあるかな。そう言って歩くリオの後ろをいつもより小走りについていく。焼きそば、わたあめ、金魚すくい、露店と立ち並ぶ屋台に目をやると、恋人と思わしき二人組が多く思い出を刻んでいた。
「あ、あった。」
殿よりも高い背のリオが先を見ながら言う。
平均ほどの身長しかない殿からはなにも見えなかったが、連れられて歩いていくと赤い提灯が吊るされた射的の屋台があった。
『いらっしゃい!二人でやるかい??それともあんちゃんがいいとこ見せんのかい?』
威勢のいい声が近づいた二人に掛けられる。
「やるよね?」
「うん。」
当然のように二人別々の財布からお金を出し、料金を払う。
『毎度!お嬢ちゃん彼氏におごらせないで自立してるねぇ。』
「まだ、親に養われてますからね。こういうことはしっかりしないと。長く付き合いたいですから。」
一応恋人に見えているのかとホッとしながらいつも持っている物より幾分も軽い射的銃を構える。同じく用意が終わったリオも射的銃を構え、撃つ。
パシュッ
武装高校の生徒である以上、二人とも3発中3発をあてる。
だが、狙った的と場所の問題か、リオが3つ景品を落としたのに対して殿は1つだけしか落ちなかった。
「二人とも上手だねぇ。」
屋台のおじさんが笑う。ここから高校はそうお遠くないから、射的がうまい高校生は割りといるのだろう。
『もしかして二人とも武装高校の人?』
少し高めの男の声が隣の屋台から聞こえる。そちらの方に目を向けると中年くらいの男が興味津々にこちらを見ていた。
「はい、そうですよ。」
「ああ、やっぱり!僕いつも射的の隣に屋台出すんですけど、うまい人って大体武装高校の生徒なんですよね!」
社交的なリオがその男としゃべってる間、殿は不躾にならない程度に男を観察する。目線、声色、仕草……特に不審なものはないと、結論付けようとしたとき男と目があった。
「それにしてもデートですか?」
リオではなく殿に男が問いかける。
「ええ、最近付き合い始めたばかりなのでわがまま言って連れてきていただいたんです。」
「いいですねぇ、リア充ってやつですね!」
生理的にこの男が嫌いなのか殿の背筋に寒気がはしる。そのせいで殿はいいですね、という割に男の目が笑っていないことを見逃してしまう。
「そろそろ、次行こうか。花火の時間もあるし。」
「あ、引き留めちゃって申し訳ない。」
楽しい、夏祭りを!そう言って男が二人を見送る。その言葉に無理やり笑顔を作り手を振った殿だったが内心男と離れられてほっとし、射的に来たときと同じようにリオの後ろを歩くのであった。
―その頃他のメンバーはというと。
「りんご飴あった!」
「彼女と電話してきてもいいですかー。」
「やめとけよ、浮気と間違えられるぜ?」
「あー、帰りてぇ、またはいつもみたいなオーダーやりたい。」
等々、騒いでいた。
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