第3話 集合

ナルと私がお茶を飲み終わった頃になって廊下がにわかにうるさくなる。足音が二つ……いや、かろうじで3つ。

「ちょっ、ちゃんとかかえてヨー。」

「うるせー!やってるよ!」

「もう無理……。」

手早くカップを片付け、保健室のドアを開け放つ。

「おかえり。」

「ただいまんもす……うっ。」

出たときと比べて肌の青白さに拍車がかかってる。末端にチアノーゼが出てないだけましか。

「はーい、お疲れ様。二人とももう少し頑張ってそのままはぎれさんベッドまで運んでねー。」

今度頼むときは車椅子を持っていってもらった方が安全そうだなぁと、少し頼りない二人の背中を見ながら思う。リンリンは女の子枠だからともかく、骨川は戦闘時の身軽さに対して筋持久力はなさそうだ。

「はい、どーぞ。お疲れ様。」

あらかた萩原の手当てが終わったあとで骨川にはチーズとお茶、リンリンにはお菓子とお茶を渡す。骨川にチーズを渡したのはなんとなくそうした方がいいと思ったからだカルシウム足りてなさそうだし。

「ありがとォ~。」

「…どうも。」

二人が受け取った物を消費し終わることに、蟷螂先生、ぴの字、ちひろの三人が入ってきた。正確には、蟷螂先生に担がれたちひろと苦笑しているぴの字だが。

「あーもー、離して!逃げないから!」

「うるさい。」

逃げないのは(めんどくさいから)本当だろうし、多分蟷螂先生もわかっているだろうけど嫌がらせの一環で担ぎ上げられてるちひろが声と共に空いているベッドに投げられる。埃がたつしベッドメイキングが崩れるからやめてほしい。

「やっと集まったな。遅いんだよ、全く。」

そんな憎まれ口と共に蟷螂先生に近寄るナルを筆頭に各々保健室内の定位置に収まり、蟷螂先生の言葉を待つ。こんな風に無理矢理に人を集めるのだから何か大きな事案でも来たのだろう。みんなが騒げる事案が。

「みんなわかってるだろうが、実習だ。一度しか言わないから集中して聞け。」

情報の交換の回数が増えるほど漏洩の確率は上がる。故に全体への説明は一回しかされないということをみんな知っているため、蟷螂先生の次の言葉を待つ。

だがそれは意外な一言だった。


「誰か二人でカップルを作ってくれ。」

「「「「はぁ!?」」」」


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