第4話

私にはそれは、風邪薬に見えた。


まあ、錠剤なんてどれも似たようなものではあるが。


「それを飲んでベッドに横になってください」


男はそう言うと、そのまま出て行った。


私は言われたとおりにした。


目的を達成したのだ。


私はまもなく死ぬだろう。


数年前、周辺の国で戦争が勃発した。


加えて後から参戦した国もいくつかあり、直接戦争をしたわけではない我が国が、それにより大きなダメージを受けた。


貿易、経済、食料事情が混乱を極め、国民の多くが今日の食事にも不自由するようになった。


その結果として、犯罪と自殺者の数が爆発的に増えたのだ。


あちこちで毎日たくさんの人が死ぬ。


その死体の処理に追われるようになった国は、一つの政策を打ち出した。


つまり死にたい人は、国の許可なく勝手にその辺で死ぬのではなく、国が指定した場所で死になさい、と。


そうすれば、死体の処理やその他もろもろのことが、人手もかからずスムーズになるという理由で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る