第5話 猫?

 あれ…私何してたっけ?思い出せない。ただ、お腹が空いた…という思いだけ鮮明に覚えて居た。え。お腹が空いて倒れたとか?

 でも、誰かの横で空腹だけど安心して眠って居た気がする。それに、さっきその空腹満たしたような気がしたけど…

 そう、尻尾が揺れて居て捕まえようとしたけど逃げられて…黒い誰か…


 誰かに揺すられ、ビクッとして目を開けた。

 あ…夢の中の黒い誰か…?と思ったけど、違った。開口一番

「にゃあ…」

 と言っていた。

 だって、目の前に居たのは、

「さっき…猫じゃらしで遊んだ…」

 言いかけて、慌てて言葉を止めた。さっきの、仔猫と遊んでいた格好良い高校生。

「え…何で?」

 男の子がびっくりしてそう言った。ヤバイヤバイ…

 でも何だか、記憶が蘇ってくるみたいに光景が浮かんでくる。私、彼の尻尾になりたかったはず。

「尻尾が…」

 あ。また変なこと言った!もう〜

「えっ⁉︎」

 彼は目を丸くした。そりゃあそうだよね…めちゃくちゃ変だよね。

「猫になった夢を見て居たみたいで…」

 やっと頭を整理し、説明を試みる。

 彼はまじまじとこっちを見ている。もう、めちゃくちゃ変な子だと思われてるよ、きっと。

 彼は何を思ったか、側にあった枝をつかんで地面すれすれで揺らした。

「え⁉︎」

 っと今度は私が言った。思わず、枝に飛びついて居たから。

 びっくりして顔を上げて、彼を見る。彼も同じようにびっくりした顔でこっちを見ている。

 その時、私の携帯のタイマーが鳴った。

 バイト開始15分前のアラームだ。急がなきゃ。

「さようなら」

 そう叫んでもう一度自転車にまたがって走り出した。

 ごめん!忘れて〜!

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