第2話 しっぽ

 揺れる黒い毛球が気になって、前足で抱え込んでカプって噛み付いて捕まえようとしたら、尻尾の本体が首に噛み付いた。痛い!って叫んだら、放してくれた。噛み付いたら痛いから、本気で噛んじゃダメ。

 黒い子とずっと一緒だった。

 ここどこ?知らない。どこから来たっけ?知らない。

 お腹空いた…僕も空いた…

 その内黒い子のお腹が温かくて気持ちいいからくっついて眠った。

 そんなことを何度か繰り返して居たら、良い匂いがした。でも眠くて、目を閉じたまま鼻先を良い匂いの方に突き出す。ヒゲが液体に触れてペロリと舌をだすと、体がぶるっと震えた。お腹空いて居たんだった…そのままペロペロの舐める。そしたら頭をぎゅっと踏まれた。ぴちゃぴちゃ舐める音がする。

 あ。黒のヤツだな。全部はダメ。私もお腹空いてるの。

 だんだん体が暖かくなって、元気が出て来て、自然と目が開いた。半分体ごと突っ込んで居た白い液体の上に、人間がいた。

 びっくりして見上げたけれど、その人間は動かない。ただそこにいて見ているだけ。黒にぐいっと押されひっくり返ったら笑った。

 くんくんとその指先の匂いを嗅ぐ。うん。この人間嫌いじゃ無い。ペロリと舐めてみた。美味しくは無いけどちょっとくすぐったい高揚感を感じた。私、この人間の尻尾になってあげても良い。それって猫の間では最上級の評価だからね。

 黒が割り込んで来た。僕も遊ぶ。

 人間はそれが聞こえたかのように、近くにあった枝を拾って、目の前でふるふると動かした。あ。何よそれ。凄く気持ちがぞわぞわする。気になるじゃ無い。捕まえるわよ。怒らないでよ。

 私と黒と人間の真剣勝負が始まった。

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