16章
極夜(1)
「はーなーしーてぇぇぇぇ!」
強制帰国である。
腕っぷしの強そうな香苗と紫苑を緊急招集し、捕獲大作戦に乗り出した。
そうして食堂に椅子に縛りつけられた舞は駄々をこねている。
というか、昨年もウェイトに逃げ出した心美捕獲事件があったような。
「では舞さん、問題です」
俺は問うた。
「週に千時間練習したとすれば、人はどうなるか。仕事に置き換えても可」
「答え、もっと上手くなる!」
「残念ハズレです。答えは、死にます」
「そもそも地球の時間の概念が超越している異世界ですかそこは」
紫苑が至って真面目なご指摘。
「でもこれしかないもん! こうするしかできないもん! だから練習させて!」
遂には合体している椅子を引き連れて逃亡の構え。
しかしこれを香苗と紫苑連合はブロッキング。
由佳はおかゆを口にしながらくすくす笑っていた。こういう場面、キャプテンは放任主義らしい。
「練習あるのみ!」
案外、舞は頑固者だった。そんな騒ぎを聞きつけたのか、トラブルを嗅ぎつけたのか、ややこしくなりそうな環さんの追加である。
環は縄で縛られた舞をしばし見つめると、
「……SMプレイ?」
「んなわけあるか!」
「でも、マイマイはドMほいほいだにゃん。こやつは死んでも練習するぞ」
「幽霊はメンバー入りできません」
「そだ、環ちゃんは良いことを思いついたのだ」
環はポンと手打ちをして、食堂を素早く去った。
俺たちが首を傾げていると、戻ってきた環の手にはゲーム機セット。
「体を休める間はこれで頭のトレーニングをするのが良いのだ。何よりも環ちゃんはいつもこいつのお世話になっている」
なるほど、環の戦術論はそこからきているのか。
手慣れた様子で環は食堂のテレビを占拠。
「では、かかってくるのだ、マイマイ!」
「あの……、手が縛られているままなんですが……」
「逃げないと誓うのだ?」
「うん」
「だが却下だ!」
こいつ、慈悲もねえ。
「マイマイはそこで高みの見物をするが良い。手始めに環と監督のマッチアップを見て、ご意見番になればよろし」
コントローラーを渡された。
事態の収束に
そうして、俺と環のゲーム対決が始まったが。
結果は語るべくもなく、大敗に終わる。ボコボコのけちょんけちょんだった。
「……監督、……弱すぎ」
縛られている舞から言われると
「ゲームとかやったことないし」
とはいえ、たかがゲームでさえ負けっぱなしは
「もう一戦だ、環」
「望ところなのだ。ウォームアップもできたことだし、次からは罰ゲームを設けるのだ」
「良いだろう。何にする?」
「題して脱衣サッカーなのだ」
「女に二言はないな?」
「にゅふふ、環ちゃんは締め付けが嫌いだから、ノーブラノーパンなのだ」
それでいて、薄いシャツ一枚。
いや、ノーブラは理解できるとしてノーパンはただの変態では?
「環がゲームで負けるわけがないのだ」
良かろう。その自信をへし折ってやる。
と思っていた過去の自分を戒めてやりたいと思います。四連敗だった。シャツと短パンは脱がされて、最後の砦だった。夏だから靴下は履いていない。お情けでサンダルをカウントしてもらった。
パンツ一枚である。
すぐ隣には未だ縄で縛られている舞がいるので、パンイチの男と並べれば、もはや変態の
「さすがに監督の
こいつ慈悲もねえ……。
「えーでも、由佳さん的には監督の裸見たいなー。ね、香苗」
「写メ撮っていい?」
こいつらも慈悲がねえ。
と思っていると、部屋に帰ったはずの紫苑が寝袋を抱えて戻ってくると、タブレットで試合映像を眺め始めた。ここで寝る気らしい。
「どうする? まだやるのだ? 救済措置として万が一にも環が負けたら全裸になってやっても良いのだ。なんなら首輪をつけて一週間監督のことを飼い主様と呼んでやっても良いのだ」
もはや環は
ギャラリーの目にも同様に写っているらしく、
「じゃあ私も脱いであげる」と由佳。
「じゃあ私も」紫苑。
「香苗はどうするの?」
「はあ!? 監督に見せる裸とかないから!」
案外香苗は乙女なところがある。
「カナカナを除いた女子四人のヌードとか
環、由佳、紫苑、そして。
「……あれ? 私、勝手に入れられてるぅ!?」
舞は罠に気づいた。
「諦めろ、舞。元はと言えば君が試合後に練習などしていなかったらこんなことにはなってない」
「もうしないから許して!」
だが勝負は勝負である。
そしてここまでは布石。
パンツまでは脱がされても良いと腹を括り、ここまでのゲーム、操作に慣れることとゲームシステムへの理解に努めた。事実、試合を重ねるごとに大量の得点差は縮まりつつあった。
だてに監督としてシーズンを戦ってきてはいない。
「あとでノーカンはなしだからな」
「環ちゃんに二言はないのだ」
そうして、裸と額に『肉』を賭けた絶対に負けられない戦いが始まった。
俺も年頃の男だ。
正直、女子の裸はかなり見たかった。
俺は
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