第9話 大河小説に手をつけてしまった…!

 拙作の中華風ファンタジーはこれまで四作(『翠浪の白馬、蒼穹の真珠』および外伝の『還魂記』、『黒耀の翼』、『手のひらの中の日輪』)を諸兄諸姉にお目にかけているが、みな一つの世界観に基づいて書かれている。


 第一作の『翠浪の白馬』は、実は『手のひらの日輪』のスピンオフとして構想されたもので、『翠浪』主役のレツィンはもともと『日輪』では脇役である。彼女も出世したものだのう。


 また、『翠浪』を書いた時点では、ネットでこのシリーズを書き続けていくかどうかまだ迷っていた。すでに私の頭のなかで構想されている大きな話の一部ではあるが、以前から商業ベースにおける「未完の作品」「長らく中断されたままの作品」に、臍を噛んだり残念に思っていたりした経験のある一読者としては、たとえアマチュアの身で書いているとはいえ、自身のシリーズが未完のままで終わる可能性に考えが及ぶと、つい大河小説化に及び腰になってしまうのである。

(ついでに言うと、ネット小説を始めてから、「エタる」という言葉を知った…)


 そんな気持ちのまま外伝『還魂記』を書き(ここでは、重要な新キャラを出すという、外伝としては感心せぬことを行ってしまった…)、そのまま『日輪』の連載を始めたのであるが、『日輪』の改稿作業においては、一つの難所をもてあましていた。

 未読の読者のために詳細は伏せるが、ある人物が備えている特別な能力についてである。なぜこれが不安材料であるかというと、この能力によって作品世界のバランスが崩れてしまうのではないか、という懸念が一つ、また、この能力はシリーズの根幹に関わるものだけに、ひとたび作中に出してしまうと、シリーズの最後の最後まで、つまり最低でもあと五作~八作は書かねばならぬためである。

 すでにシリーズの終わらせ方は決めてあり、途中の作品群もぼんやりとテーマだけ決まっているのから、ある程度下書きしているものまで様々だが、いかんせん「大河小説にとうとう手をつけてしまった。完結できなかったらどうしよう…」という不安は残っていた。


 だが、ふと立ち止まって考えてみた。

 まず紙公募において、大きなシリーズの一部というのは採用されにくいというのは賞の選者が言明していることでもあるし、実際にこのことを知っていて、あえて『翠浪』『日輪』をある紙公募に出してみたが、前者は二次落ち、後者は三次落ちであった(もちろん、一話で完結しているような形にはしたし、他にも理由があるから落ちたのであるが)。なので、紙公募向きでないのであれば、いっそネットに出すことにより、私も書くことを楽しみ、皆さんにも楽しんでいただき、また反応を見ながら小説書きの勉強をすればよい、と思った。


 またおよそ、作品には「書きどき」というものがある。このシリーズをぼんやりと考え始めたのは十年ほど前だが、もし十年前に書いたとしても、皆さんに読んでいただいたような作品にはならなかったはずだし、書き始めるなら「書きたい」と気持ちがはやるこの今が最後の機会かもしれない、後生大事にして日の目を見せないようでは作品が不憫、ネタはまた新しく考えれば良い…そんな気がふっとしたのである。


 ということで、『日輪』の主人公である宝余が腹を括って敵国に嫁ぎ、奮闘しているのに倣い、産みの親である私も腹を括って大河小説を書いていこうと決心した。諸兄諸姉のご教示・ご鞭撻を頂戴できれば幸甚である。

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