第2話 ドラゴンの肉
なにドラゴンの肉を喰いたい?
しかも、ステーキで!?
なに作り方を知りたい。
物好きだね。
あまりオススメしないが、良いだろう教えてやる。
まずは活きのいいドラゴンを仕入れなきゃな。
早速仕込みだが、ドラゴンの血抜きをしっかりとすること。
これ重要。
ドラゴンの血液には、毒がある。
熱にも強いから、入念に抜くことをオススメする。
血が残ってると味も悪いし、下手すりゃ下痢をすることになる。
内蔵もきれいに抜く。
理由は、血抜きと一緒。
ドラゴンの内蔵は、かなり危険な毒物だ。
食通ぶった馬鹿野郎が、何年かに一度ドラゴンの肝臓を食って死んだってニュースになるだろう?
知らねえ?
まあ、そのナリを見りゃ余所者ってのは分かるが。
とにかく絶対に食べちゃ駄目だ。
だか捨てるなよ。
ドラゴンの血も、ドラゴンの内蔵も霊薬の原料として珍重されてる。
高値で売れるんだ。
次に皮を剥ぐ。
気をつけろよ、皮も高値で取り引きされるんだ。
ドラゴンスキンアーマーといや、冒険者垂涎の逸品さ。
軽くて、頑丈で、通気性も良い。
着心地も抜群だ。
って、言ってる側から失敗するんじゃないよ。
ナイフを頻繁に洗わないから、そんなトンマな失敗をするんだ。
ドラゴンの皮下脂肪はやっかいなんだ。
ナイフに脂が巻いたら、途端に切れ味が悪くなる。
脂が巻いたらすぐに洗い、シャープナーで研ぎを掛ける。
どうだ良く切れるだろう?
良く切れる刃物を使わないと、余計な力が入って怪我のもとだ。
それに食材を無駄に傷つけて、味が悪くなる。
そうそう、そうやるんだ。
なんだ様になってるじゃないか。
次は、骨から肉を取り外す。
骨は捨てるのかって?
捨てねえよ。
骨は削って武器にも、アクセサリーにもなる。
ドラゴンに捨てるとこ無しって言葉知らねえのか?
太腿の骨は、これに柄を付けてハンマーにしたり、削って長剣にしたりしてる。
角は加工して兜の角飾りや、槍の穂先ににな。
お、気づいたか、そうさ、そのナイフもドラゴンの骨の削り出しだよ。
柄は、ドラゴンの牙だ。
温かみがあって、握りやすくて良いだろう。
なに?
くれだ!?
バカやろう、こいつは曾祖父さんの代から受け継ぐ家宝なんだ、見ず知らずの余所者にくれてやる訳きゃないだろう。
ったく。
切り分けた肉はフックにつるして、冷暗所に保管する。
ちょっとウジが涌くくらいになぅたら喰い時だ。
なに?
そんなに時間が無い。
しょうがねえな、こっちに来い。
これは、こいつと同じグリーンドラゴンの肉だ。
今日は、これを使ってステーキを作ろう。
まずは、ブロック肉を煮込んで・・・
うん?
何故、煮込むかって!?
そりゃ一旦煮込まなきゃ、硬くて食えたもんじゃないからさ。
なに、そのまま喰いたいって。
物好きだね、どうも。
どうだい好い香りだろう。
グリーンドラゴンの主食はハーブなんだ。
だから肉に変な臭味もなく、味もいいんだ。
ほれ、喰えるもんなら、喰ってみな。
硬てえだろえ。
靴底より硬てえんだ。
あぁ~、無理すんな、歯が折れちまう。
これで分かったろ。
下処理を済ませたドラゴンの肉は、スープに漬け込んで十時間ほど煮込むんだ。
こいつは草食のグリーンドラゴンだから十時間ほどだが、肉食のレッドドラゴンなんかだと丸二日は煮込まなきゃならん。
スープの材料?
なんだトリニティスープを知らないのか?
いったい、どこの国の人間なんだ?
日本?
知らねえな。
こいつはブルードラゴン、マンティコア、コカトリスの骨を煮出して作ったスープを合わせたものさ。
こいつらの骨から取れるスープは、三大スープの呼び声も高い美味だ。
それを更に合わせて煮詰めることで、最高のスープが出来上がる。
それがトリニティスープだ。
ひと口味見してみな。
な、美味いだろう。
トロ火で十時間、じっくり煮込んで、火から下ろして十時間寝かせる。
こうすることで肉の中心まで味が染み込むんだ。
で、これが十時間寝かせた肉だ。
色が変わってるだろう。
この色にならなきゃ駄目だ。
さて、焼く前に付け合わせのサラダを作ろう。
ドラゴンのステーキに合わせて、マンドラゴラのサラダだ。
今日使うのは二種類のマンドラゴラだ。
マンドラゴラに雄株と雌株があるのは知ってるよな?
なに?
何にも知らないんだな。
まあ良い、他国の人間に多くは求めまい。
マンドラゴラの雄株は、そのままで薬味に使えるぐらい辛味が強い。
すりおろしてステーキの脇に添える。
雌株の方は、葉と茎を一度湯通しして冷水で〆る。
色味が良くなるし、マンドラゴラ独特のエグ味が抜ける。
根はカツラに剥いて、細切りにするといい。
このままオリーブオイルを掛けて塩を振って食べても美味しいんだが、今回はトリニティスープを使ってドレッシングを作ろう。
湯剥きしたトマトにトリニティスープを加えて、アクセントに黒コショウをひとつまみ。
うん、良いね。
さ、ドラゴンを焼こう。
今日は贅沢に三百グラムだ。
鉄板にひく油は、ドラゴンの皮下脂肪から作ったラードを使う。
オリーブオイルやバターでも良いか、やはりドラゴンのラードに勝るものは無いと想う。
この香りか?
ドラゴンのハーブと言われるイニスを、ラードを取る時に一緒に入れるんだ。
そうする事で、嫌味が無い良いラードになる。
さあ、焼くぞ。
中までしっかり火が入ってるから、表面がカリッと焼けたら出来上がりだ。
肉汁出タマネギを焼いて、ほれ完成だ。
熱いうちに召し上がれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます