episode28 「試練」
一年に数回、辺境のこの村に旅人が訪れる。
タギクネ村。
今日もひとり、ある目的のために旅人がやって来た。
第一目撃者の男が、慌てて村の集会場に入ってきた。この時間はいつもの定例会議。集まっていた男達の顔色が変わる。
『マモノ』対策や野性動物による作物被害の話などほったらかしだ。
みんな、旅人を出迎えるため外に出る。
こんな事は初めてかもしれない。
彼女は馬を降りて歩いていた。
頭のフードを上げる。
どよめき。
キースだ。この村には二度目の訪問。
一生に一度だと思っていたことが、二度も起こった。これはもう、信仰神に感謝するしかない。
「みなさん、こんにちは」
キースが言った。
「こんにちは」
驚くほど男達の声が揃っている。
前回の訪問から
女神だ。
誰かが呟く。
否定する者はひとりもいない。
「サバサンに用事かい?」
村長の息子が尋ねた。
「はい。ちょっと見てもらいたい物があって」
村人がふたり、誰に言われるでなくキースの馬を預り小屋へ連れていく。
「あいつなら、いつもの山だ。さっき煙が上がってたから、小屋にいるはずだぜ」
顎を引いて、いつもより低い声で話す村長の息子。
「そうですか。ありがとうございます」
笑顔。
腰が抜けそうになる。
村の女達が何事かと集まってきた。
若い娘に色目を使う男達を見て、女達が怒るのが世の常だが、キースに対しては違う。
女達も同様。
彼女に色目を使う。
しかも、かなり大胆だ。キースを取り囲み親しそうに話しかける。
疲れてないかい?
喉は渇いてないかい?
お腹はすいてないかい?
何とか家に連れ込もうとする。
「ありがとう、今は大丈夫。用事が済んだら戻ってくるよ」
また笑顔。
女達たちの悲鳴。今まで聞いたことのない欲情混じりの声色。
ほぼ全員の村人に見送られ、キースは坂道を進む。
嘆息する。
前回の訪問で、ロズの教えを守ろうと、村人たちに愛想よくしたのがこの結果だ。大事に思ってくれるのは非常にありがたいことだが、大人数はどうも苦手だ。
しかし、損はないので、この感じでいこうと思っている。
小屋が見えてきた。
煙突から煙が上がっている。
開け放しの出入口からキースが入ってきても動じない。サバサンは作業を続ける。
キースは腰の刀を支持しながら一礼する。水瓶から平桶に水を取り、履き物を脱いで足を洗う。
これがこの家に上がる決まり。
土間から一段高い床板に。囲炉裏の近くで座って待つ。
サバサンの作業は邪魔しない。
研ぎ石で剣を磨く音だけ響く。
「どうした?」
作業中、サバサンが問いかける。
話してもいいようだ。
「あなたに見てもらいたい刀があります」
ほう、とひと言。
キースには目を向けない。
それと・・・
キースが言葉を続ける。
「お借りしていた二本の刀は、私の力不足で折られてしまいました」
手が止まる。
研いだ剣を掲げ、陽の光に当てる。じっくり見て布の上に置く。作業が途中なのか終わったのか分からないが、話を聞いてくれるようだ。炭火にかけた鉄の容器に乾燥葉を入れている。
「こっちに来て話せ」
サバサンが言った。
キースは立ち上がって囲炉裏に近づく。
「待て」
止められた。
刀を置くように言われ、近くに来いと言われる。サバサンは座ったまま、キースの立ち姿を下から上まで何度も見返す。
「前に来た時と大して日が経っていないが、随分と変わったな」
何かを感じ取った。
見ただけで気づいたのだろうか。『力』の封印が解けたキースの変化に。
立ち上がるサバサン。近づいてキースの身体を触り始める。前にも触られたが、何だか胸元や腰の辺りを執拗に触っている気がする。
「あの、聞いてもいいですか?」
問う。
「何だ?」
「これは、何を確かめているのですか?」
すぐには答えない。
後ろにまわったり、座って足を触ってみたり。サバサンの荒い息が首筋に当たる。
「ただの好奇心だ。前に会った時より女らしくなったと思ってな。それがどこから感じるのか確かめている」
想像とは違う理由だった。
ふん、とサバサン。
「半分は冗談だ。体質の変化を見ている」
半分は欲情心か、と思ったが何故だか彼の命令に逆らえない。
不思議な感覚だ。
ふと、キースの荷物に気づく。
ようやく手が止まった。
「ガガルの刀も折られたのか?」
うなずくキース。
「よし、話を聞こう。全部話せ」
二人は囲炉裏に対面して座る。
サバサンは村からほとんど出ない。
研ぎ師としてさらなる高みを目指すため、少しの時間も無駄にしない。ただ、世の中の変移は気になる。だから刀剣の研ぎを依頼に来た旅人から、必ず世の中の事を聞く。
渋くてほのかに甘い飲み物を差し出す。
キースはイナハンでの出来事を話し始めた。
サヒヒは腰袋から何かを取り出した。遊戯で使う絵札のようなものを一枚。
額に当てて小声で囁く。言葉は分からないが、たぶん呪文。
絵札から強い魔力。離れた場所にあった的が弾ける。
「ほほう。大変興味深いですね」
カサロフが言った。
ヴァサンは彼女の攻撃魔法に良く似ていると思った。
「その絵札、ちょっと見せてもらえませんか?」
言葉が分からなくても雰囲気で分かる。サヒヒは今使った絵札をカサロフに手渡す。
変わった触感。外縁は形が崩れないように固く、内側は書物の紙よりざらつきがなく心地よい。両面には別々の魔法陣と少し文字が書いてある。
チコが持ち主が分かるよう名前が書いてある、と教えてくれた。
「この魔法陣は、魔力を閉じ込めるためのものと、変換させるもの、かしら?」
二人に問いかける。
「カサロフ、すごい」
チコが満面の笑み。
体内で行う工程が、この絵札の中で完了している。つまり、絵札の扱い方法さえ分かれば、誰でも魔法が使える、ということ。
「この島、魔力弱い。だから、魔力、ここに集める」
チコが言った。
カサロフが最初に感じたように、この島は大陸より魔力量が少なく、魔法を発動するためには、ある程度魔力を蓄積しなければならない。
そのためのこの絵札。
「私もあの的を射ってもいいですか?」
カサロフが問う。
「大陸の、魔法、見たい」
チコは嬉しそう。
サヒヒに通訳する。彼も嬉しそうだ。
的はあと四枚。木板に白い染料、中心に黒炭で円が小さく書いてある。
「最初に言っておきますが、私の攻撃魔法はひとつしかありません」
カサロフの魔法は、魔力を武器として飛ばすものと、呪術。ふたつしかない。
チコに説明して、サヒヒに通訳する。
「セベラッチ」
詠唱して魔力を集める。
なるほど、確かに魔力量が少ない。これでは魔力を矢先のように形成できない。
では、針のように細くしたらどうか。
これなら大丈夫。
いったん止める。
破壊力ではなく、精度に注意する。
「セベラッチ」
再び詠唱。
腕を使って正確に的を狙う。
「アターカ」
針が飛ぶ。
的の中心、黒炭の円に穴が開く。
一枚・・・二枚。ほぼ同時。
「これが限界のようですね」
カサロフが言った。
「すごいすごい!」
チコは大はしゃぎだ。
キースと同年だが、見た目も含めて幼く感じる。環境もあるだろうが、この島がそれだけ平和ということ。
「この島の魔力量では、対象物への効果は厳しいですね。よければ絵札の製作者にお会いしたいのですが、案内して頂けませんか?」
チコがサヒヒに説明する。
合掌してうなずく。
「チコ、連れて行く。こっち」
カサロフの手を引く。
「ヴァサンはどうします?」
歩きながら尋ねる。
「あ、ああ。俺も行く」
彼は上の空。他の事が気になっている。
「そんなに心配なら、キース様について行けばよかったのに」
カサロフ。
「ふん。子供じゃあるまいし」
ヴァサン。
微笑むカサロフ。
「過保護ですね。それではキース様の縁組みの時、ショックで寝込んでしまいますよ」
「なな、何言ってる。あいつの縁組みなど、俺には関係ない。勝手にすればいい」
動揺が丸見えだ。
もしヴァサンが婚姻に立ち会えば、号泣に違いない。
カサロフは確信した。
ヤナベの案内で、キースは村を離れていた。
この森を抜けた山の中腹。そこに目当ての者がいる。
ヤナベが手を差し出した。
少し迷ったが、彼の手を借りて岩を登る。
水量の多い川がすぐ横を流れていた。
「私が育った場所によく似ている」
キースが言った。
「そうか。俺が子供の頃、よくここで遊んでいた」
同じ土地で産まれ育ったら、未来はどうなっていただろうか。
「もうすぐだ」
ヤナベが言った。
枝葉の向こうに煙が上がっている。ヤナベに続いて進むと、小屋が見えた。
金属を叩く音。
刀鍛治の職場だ。
ヤナベを見た職人たちが気軽に声をかける。言葉は分からないが、キースも歓迎されていると感じる。
職人が三棟ある小屋のひとつを指さす。ヤナベにならってついて行く。
「ここの頭領は大陸の言葉が分かる。なんでも聞けばいい」
歩きながらヤナベが言った。
うなずくキース。
その小屋は屋根と床板だけ。壁はなく骨組みがむき出しだった。
肩口まである白髪を後ろで束ね、男は煙草を吸っていた。ヤナベとキースを見ても態度は変わらない。
「ニギポラ」
ヤナベがあいさつする。最初の『サ』が抜けると『よう、元気でやってるか』のような親しい言葉になる。
「女連れとは珍しいな」
男が大陸の言葉で言った。
彼の名はタタマ。刀鍛治工房の頭だ。
「彼女はキースだ。あんたに見て欲しいものがあるそうだ」
キースは肩にかけていた袋を下ろし、中身を取り出した。
ひと振りの刀。柄が白く鍔が菱形。
口から煙を吐きながら、チラリとその刀を見る。
「これは、あなたが鍛えた刀ですか?」
キースが問う。
煙管を吸い煙を吐く。
「十年くらい前だったか、大陸の剣士の依頼でな」
タタマが言った。
「知り合いの研ぎ師に鑑定してもらったのですが、刀身に大陸にはない素材が含まれていると言われました」
「魔札は知ってるか?」
タタマが問う。
少し考え思いつく。
昨夜島民が松明台に火を灯した時、絵札から小さな火の玉が現れ、それを飛ばしてつけていた。
「魔力を貯める札ですね」
「ああ。魔札の原料は、島のごく限られた場所にしか生えない植物なんだが、そこに金属を含んだ石がある。試しに混ぜてみたら、思わぬ効果があった」
刀身が魔力を貯めて、振ることで魔法を発動する。
「だが、魔法を発動すると、刀身が白くなる。刀として美しくない。俺は気に入らなかったが、依頼者の要望だったからな」
別の小屋から鍛練の音。人の声。
キースが大陸で出会った刀鍛治の工房は、独りで作業しているか、弟子がひとりいるくらい。技術の伝授は師匠が決めた弟子のみ。他言無用。そんな環境だったが、ここは違う。多くの弟子たちがいて、鍛練の音が鳴り響いている。
ほとんどの者が大陸から修行に来ていた。
「で、何が知りたい?」
問いかけるタタマ。
「アーマン、という男がここに来ませんでしたか?」
タタマはキースをじっと見つめる。質問の真意を探っている感じだ。
「特別な刀を鍛える時、万が一のために二振り作って、出来の良いほうを手元に置いておく。それをアーマンが持っているのでは?」
タタマは煙管に煙草を詰め始めた。
近くの釜から木炭をひと欠片。平気な顔で素手で持って煙草に火をつける。
紫煙。
「満足いくものが出来るまで何十本と鍛えた。結果、アイツは俺の最高傑作を持っていきやがった」
あれは魔刀だ。
怯えているようにも、悲しんでいるようにも見える表情。
「誰かの『声』を聞きましたか?」
キースが問う。
タタマは煙管を口から離してキースを見た。動揺しているのが分かる。
「私のこの刀は、サリュゲンという鍛治職人に鍛えてもらいました。彼は誰かの『声』に導かれて、刀を鍛えたそうです。あなたもそうじゃないですか?」
ずっと幻聴だと思っていた。
時々ある。新しい発想が生まれるとき、何か別の力が作用して、自分が導かれていくような感覚が。幻聴や幻覚。そういうものがあっても不思議とは感じない。
苦悩と達成感。
仕上がった時の感動は、生涯で二度と味わえない。それほど強いものだった。
「・・・あれは、錯覚じゃなかったのか」
自分に問いかける。
工房からの帰り道。
ヤナベは何度もキースに目を向けるが、何も話さない。
川縁に差し掛かった。
振り返ると、キースは足を止めて川を眺めていた。少し待ったが、動かないので、ヤナベも川縁に戻る。
「どうかしたか?」
問いかけたが返事はない。
川のせせらぎ。鳥の鳴く声。
思い詰めている感じではないが、話しかける雰囲気でもなかった。
「『聖地』を知っているか?」
キースが尋ねる。
「聞いたことはある。魔力を生み出す『魔法樹』がある場所だな」
うなずく。
「そこに私の母がいる」
昨日の会話を思い出す。
カサロフとコンサリは、人とプレ・ナでありながら、身体の共有ができて入れ替わることが出来る。そして、コンサリはキースの母親である。
ラズは、コンサリの魂を奪い、この島に戻ってきた。目的は不明だが、アーマンもキースたちも、そのコンサリの魂を奪い返すためにやって来た。
そういう内容だった。
にわかには信じがたい話だが、嘘をついて損得があるものでもない。
何より、戦士であるキースが嘘をつくはずがない。と、ヤナベは思っている。
タルカナ族はキースたちを受け入れた。
「コンサリの身体は『聖地』にあって、魂はここにある。私が会いに行っても分からないはずだ。しかし・・・・」
その時、彼女の「声」を聞いた。
何を思う。
キースの表情が変わった気がした。
嬉しそう・・・なのか?
母親との再会。
父親も幼少の頃に離れていて、きっと寂しい思いをしたのだろう。再会は嬉しかったに違いない。その場にいれば一緒に喜びを分かち合えたのに、などと考えてしまう。
出会ってから数日なのに、キースのことばかり考えている気がする。ヤナベ自身、今まで感じたことのない不思議な気持ち。キースを見ていると、胸の奥が熱くなる。
言葉には出さない。
「お前、タタマの聞いた『声』が、コンサリじゃないかと思っているのか?」
問う。
プレ・ナは人を超えた存在。常識は通用しない。出来ない事も出来るかもしれない。
魂だけの姿になっても、我が子を思い、良い方向へ導けるかもしれない。
微笑むキース。
「あり得ないな。すまない、今のことは忘れてくれ」
村へ向かって歩き出す。
ヤナベは動かない。
「親子の絆というのは計り知れない」
彼の言葉。
キースは振り返る。
「母親の愛はとても深くて尊い。子のためならば、奇跡を起こすことも出来るだろう。真実は分からないが、きっとお前を守ってくれている、と俺は思う」
戦士として強くなることばかり考えてきた。そんなヤナベが、人を思い励ましている。自分でも驚いている。
キースは微笑んだ。
「ありがとう」
ひと言。
それだけで、ヤナベの心は温かい気持ちで満たされる。
島中に響く甲高い音。反響して、こだました音も聞こえてくる。
ヤナベの笑顔が消える。キースも良くない事が起きたと、すぐに理解する。
「何が起きた?」
問うキース。
「これは敵襲の合図だ」
二人は村に向かって走った。
部族間の交流として、年に一度『試練』と呼ばれる行事がある。戦士が数名、武器や魔法を使って戦う。死者が出る年もあるが、あくまで戦闘技術の維持と向上のため。負けを認めればそこで終わり。
血の気の多い若者の、不満の捌け口。
強さの均衡を破ったのは、タルカナ族のヤナベ。彼が参加してから五年間、タルカナ族は負けていない。
ヌザイ族の不満は爆発しそうなくらいに溜まっていた。
船が燃えている。
船員の悲鳴。誰かが俺の名前を呼んでいる。
死の直前、走馬灯が見えると聞いたが、どうやら嘘のようだ。
走る船員、燃え上がる炎まで、俺にはとてもゆっくり動いて見える。時間の流れが変わっている。
ついでに、輪郭までボヤけてきやがった。
これで終わりか・・・
まあ、それなりに楽しい人生だった・・・
誰かに腕を掴まれる。
「船長、しっかりしろ!」
もうひとり。
二人の船員に引きずられながら、俺は燃える船を見ていた。
小型船が砂浜に着いた。
キースたちが乗ってきた船は、外海からの砲撃で沈没寸前、青空を染めるほどの黒煙を上げている。
小型船から降りたのは五人。
金属製の防具に多種の武器。友好的な姿ではない。
「お前ら、これは『試練』だ」
鉄槌を背負った巨漢の男が言った。
「誰が一番に『キース』という女を殺すか」
見渡す。
「ま、俺に決まっているがな」
笑う巨漢の男。
鉄の鎧からはみ出る腕と脚は、太さがほとんど変わらない。
他の四人は、巨漢の男など気にした様子はない。
「そっちはお任せします。私たちはヤナベが目的ですから」
二人組の女。
全身獣皮の服。身体に密着した特殊なもの。頭部には兜。見えるのは目元だけ。鼻から下は面のようなものを付けている。声を聞いて女だと分かる。
「おいおい。アポスとイリスの気持ちも分かるが、派手に暴れないと意味ないんだぜ」
背中に槍が二本、腰には鞭を持つ男。癖のある茶色の髪を、肩のあたりまで伸ばしている。
「セドの言う通り。まずはたくさん殺しましょう」
黒いローブを着た女。動物の骨で作った装飾を、首や耳、ローブにまで飾っている。
「お前ら、気を抜くなよ」
巨漢の男が言った。
「『キース』は我々が崇拝する戦いの神、『イリリ様』を倒した女だ。どんな手を使っても殺すんだ!」
ひとり歩き出す。
「後衛は私、ナナウにお任せを。みなさんは、ガンガ様に続いて村へ」
黒いローブの女が言った。
巨漢の男、ガンガは樹林へ進む。続いて、槍を背負った男、セド。二人組の女、アポスとイリスの順で樹林に消えていく。
黒いローブの女、ナナウは、懐から魔札を取り出す。札を額に当てて呪文を唱えると、上へ放り投げた。
魔札から黒い翼が伸びて鳥になる。樹林の上を飛んで行く。
もう一枚。
二羽目の黒鳥は別の方向へ。
ナナウは空を見上げて両手を広げる。
「ここからです。ここからヌザイ族の時代が始まるのです」
ナナウの笑顔が、より不気味さを演出していた。
タルカナ族の行動は迅速だった。
部族間の争いは十年近くないが、ヌザイ族の動向には警戒をしていた。
見張り台から鐘の音。
何種類かの音色のなかで、これは最も危険なもの。
男たちは武器を取り、女や子供たちは集会場へ走る。
爆発音。
悲鳴を上げながら、その場でしゃがむ女たち。武器を持った男たちが彼女たちを囲む。見張り台の者に向かって何か叫んでいる。
「イナハンの船がやられた!」
見張り台の男。
「小舟が一隻、砂浜に向かっている!」
誰かが合図する。
二人の男が女、子供たちを集会場まで護衛する。弓を持った男たちは、矢筒をいくつも抱えながら、屋根の上へと散らばる。
剣と盾、槍を持った男たちは、隊列を組んで樹林の前で待つ。
こんな時にヤナベがいないなんて。
みんな思っている。
彼ひとりに頼るのは良くない事だと分かっている。戦士としての成長を自ら放棄しているのと同じ。それを理解したうえで、どれだけ鍛練を重ねても、追いつけないヤナベの戦闘力。
樹林から四人現れた。
最悪だ。
蒼白になるタルカナ族の戦士たち。
先頭は双子の姉妹、アポスとイリス。次に槍使いのセド。最後に鋼鉄の肉体、ガンガ。
ヌザイ族の中でも最強の一員だ。ヤナベ四人と戦うより恐ろしい。
「ヤナベがいませんが、どうしてですか?」
問いかける双子の妹イリス。
「心配するな。こいつらを片付ければ、嫌でも出てくるさ」
セドが言った。
四人の中から前に出るガンガ。
タルカナ族の戦士たちを見渡す。
「相変わらず弱そうだな」
鉄槌を地面に付く。
地響きしたかのような激しい音。
タルカナ族の戦士たちは身構える。
「『キース』とかいう女を差し出せ。まずはそいつから片付ける」
返事はない。
「ま、言っても無駄か」
鉄槌を軽々と肩に担ぐ。
「丁度良い肩慣らしだ。派手に暴れてあぶり出してやる」
タルカナ族の戦士が片手を上げる。
風切り音。
上空から無数の矢が飛んでくる。
「私たちはヤナベを探します」
姉のアポスが言った。
降ってくる矢など気にした様子がない。
「おいおい。お前たちも少しは手伝えよ」
歩き出す双子に話しかけるセド。
矢の雨。
身体を揺らして、足を少し動かす。降ってくる矢に合わせて、当たらないように移動する。簡単そうにしているが、何十本と降ってくる矢を全く見ずに歩く双子の姉妹。
セドは、背中の槍を一本。器用に回転させて矢を払う。
ガンガは・・・
肩に乗せた鉄槌はそのまま、空いている左腕で振り払っている。近づく虫を追い払っているかのような。防ぎきれず何本も当たっているが、腕を貫くことは出来ない。
横一列に並ぶ盾。
隙間など無いのに、アポスとイリスは後ろに立っていた。針のように細い直剣を突き出す。
タルカナ族の盾の壁が崩れた。
剣と槍が一斉に襲いかかる。
双子姉妹の動きには無駄がない。たった数歩で身をかわす。刀身がほとんど見えない細身の剣は、腕や首、胸元を次々と刺し貫く。
二人に気をとられていると、もうそこにセドがいた。槍を振れば、腕や首が飛んだ。
「何だよお前ら、俺の出番がないじゃねえか!」
ガンガが言った。
「あんたは『キース』と殺り合うんだろ。そこで見物でもしてろ」
セド。
混戦状態となり、弓の攻撃が止まった。
タルカナ族の戦士たちは果敢に攻める。幼少より鍛練を続けてきた。彼らとて並の実力ではない。
だが、相手が悪い。
五人が本気を出せば、タルカナ族どころか、一国をも滅ぼす力がある。
アポスとイリスのしなやかな動きに全く対応出来ない。セドの槍さばきに足がすくんでしまう。声を張り上げて士気を高めても、戦士たちの剣は虚空を斬る。
背後に気配。
ガンガは振り返る。
タルカナ族ではない、異国の男。彼ほどでないが、体格は良い。腰の直剣を支持しながら身構えている。
「お前は『キース』の仲間か?」
問いかけるが言葉は通じない。
『キース』の名前を聞いて顔つきが変わった。
「ラズの命令でキースを殺しに来たのか?」
問うヴァサン。
言葉は通じないが、名前を聞いた反応で理解する。剣を抜いて構える。鉄槌の男、ガンガは笑顔で何か話す。
「大陸の戦士か。良い顔してるじゃないか。相手してやるよ」
肩の鉄槌を下ろして両手で持つ。
一撃でも食らえば終わり。
対人戦闘で、機動性のない武器を選択しているガンガ。防御の高さと腕力の強さが彼の特長。
飛来した矢を弾く肉体に、俺の剣術が通用するのだろうか。
柄を握り直すヴァサン。
心の迷いは剣を鈍らせる。
航海中、『魔刀キース』を身につけて精神力を高めた。毎日キースの鍛練を見て、剣術の奥深さを理解した。
恐れるな。
ヴァサンは一気に距離を詰めた。
爆発の音を聞いて、カサロフたちは岸部に向かった。
炎上する船。逃げ惑う船員たち。
サヒヒとヴァサンは、ほかの男たちと船へ向かい、カサロフとチコは樹林近くで待機した。
帰路が絶たれた。
外海に船が一隻。あれは軍用船。見間違いでなけれは、先日の海賊だと思われる。
仕返しか?
チコがカサロフの袖を引っ張る。
「あれ、海賊の船。ヌザイの仲間」
チコが言った。
なるほど。
ヌザイ族と繋がっているのなら、ラズが関わっている可能性がある。ならば、これで終わりではない。
辺りを見回す。
砂浜に小型船が停まっていた。
「チコ」
名前を呼ばれて顔を向ける。
「私は砂浜に行きます。ここにいて」
また袖を引っ張られる。
「あれ、ヌザイの戦士。危ないからサヒヒ、待つ」
カサロフは笑顔でチコを握る。
「大丈夫、無理はしません。ヴァサンが戻ってきたら、伝えて下さい」
泣きそうな顔をしたチコを背に、彼女は砂浜へと歩き出す。
確認する。
ここは魔力量が少なくて、相手に致命傷を与える攻撃は出来ない。手持ちの武器は、キースから預かった短剣二本。魔法以外の対人戦は、自力では護身程度。
今はもう少し戦える気がする。
キースから『力』を分けてもらった。いきなり実戦で上手く使えるのか不安だが、信じるしかない。
ヴァサンは意地を張って拒んだが、彼ならたぶん大丈夫。コンサリを取り返すまでは絶対死なない。
彼はそういう男だ。
四人が樹林に消えた。
砂浜に残っているのはひとり。黒いローブに長い杖。魔法使いなら何とかなるかもしれない。
何かを上に投げた。
頭上で黒い鳥に変化した。
もう一羽。
魔札にはああいう使い方もあるのか。後でチコに教えてもらおう。などと考えながら、魔法の準備をする。
元々魔力を変換する能力が弱いのだが、キースの「力」のおかげか、攻撃以外の選択肢がある。
詠唱無しで黒い鳥を狙う。
移動する対象物は難しいのだが、今は軌道が正確に予測出来る。
命中と同時に、黒い鳥は魔札に戻り、ゆっくりと降下した。
「・・・おや?」
首を傾げるナナウ。
もう一羽も落ちる。
魔法で黒鳥を落とされたことより、見慣れない攻撃魔法が気になった。
船着き場から誰かが近づいてくる。
淡い紫色の外套。袖口と腰には、飾りのバックルとベルトがついた個性的なもの。首飾りには魔力的なものを感じる造形が施されている。
タルカナ族ではない。
見慣れない衣服を着ているし、顔つきが違う。彫りが深く肌が白い。
大陸の者か。
ならば、「キース」という女の仲間だな。
ナナウは懐から魔札を取り出す。
すぐに手から消える。
足元に落ちる魔札。
近づく女が魔法を使った様子はない。彼女から目を離さず、もう一度魔札を取り出す。
指先がこちらを向く。
何かが当たって、また魔札が手から落ちる。
詠唱無しで発動してるのか。
知っている大陸の魔法とは違うようだ。
「へぇ~、面白いじゃない」
ナナウが呟く。
「あなたは、ラズの仲間ですか?」
カサロフが問う。
言葉は分からないが名前は分かる。
ラズを知っているなら、やはり「キース」の仲間だ。
「大陸の術士か。どれ程のものか、ここで試させてもらいます」
ナナウ。
両手を広げる。
カサロフの足元で風が起こり、砂が舞い上がった。
目をふさいだ隙に魔札の準備。
また手元から消えた。
大陸の術士は波打ち際に立っていた。
いつ移動した?
この術士は戦士並の身体能力を持っているのか。
一瞬の隙さえあれば、魔札の魔法で黒焦げにできる。
「セベラッチ」
知らない詠唱。
まばたきする間に移動している。鍛練した脚力でも、こんなに素早く動けるものだろうか。もしや、これは魔法の類いなのか。
投てき用のナイフ。
見えない位置で腰元から抜き取る。この距離なら、狙い通りに当てられる。
腕を振り上げた。
確実に飛距離を保つため。
「アターカ」
カサロフは見逃さない。
詠唱と指差しは命中率と破壊力が違う。
ナナウのナイフが吹き飛んだ。
五指も無い。
傷口と鮮血を確認して、一気に痛みがやって来る。
悲鳴をあげて、その場にうずくまるナナウ。
「私より若い者の命を奪うのは、少々心苦しいのですが、キース様の障害となるのなら、仕方ありません。諦めて下さい」
カサロフが言った。
ナナウに近づく。
油断しているくらいの距離。
うずくまる背中の向こうで、魔札の詠唱が終わっていた。
燃えてしまえ。
振り返ると同時に魔札を投げる。空中で炎に包まれたが、カサロフの投げた短剣が砂浜に串刺した。札に描かれた魔法陣の効果が消えて、炎は札を焼き尽くすだけ。
彼女は両手で二本とも投げた。もう一本はナナウの額に刺さっている。
魔札を投げた姿勢のまま。彼女はその先の事を知らずに絶命した。
「キース様の『力』とは、恐ろしいものですね。私が私でないようです」
カサロフが言った。
短剣の飛距離も正確さも、本来の自分ではない。加えて、クラナほどではないが、数歩分の移動が出来る『瞬動』。一緒に鍛練しておいて良かったと思う。
足らない所はキースの『力』が補ってくれた。
「カサロフ、お前!!」
ヴァサンが走ってきた。
彼の姿を見て、一気に身体の力が抜ける。立っていられなくなって、その場に尻餅をついた。
自分が思っている以上に緊張していたようだ。
ヴァサンがすぐ横で膝をつく。
「無茶しやがって」
彼を見て少し笑う。
安心している場合ではない。
「村に四人の戦士が向かいました。私もすぐ後を追います。何とかひとりでも止めて下さい」
ヴァサンは樹林の入り口を見て、またカサロフを見返した。
「大丈夫ですから」
うなずき、立ち上がるヴァサン。
「あの鐘の音を聞いて、キース様たちもすぐ戻ってきます」
声が届いたかどうかは分からない。
ヴァサンはすでに走っていた。
力の差があると、相手が止まっているように見える。逆に、その相手は、動きが見えていても対応が出来ない。
タルカナ族の戦士とヌザイ族の四人は、まさにそんな状況だった。
打破するには、一旦後退して体勢を立て直すしかない。
もう村の中まで迫っていた。
仲間たちが離れたのを合図に、屋根上の男たちが弓を構える。
三人のヌザイ族を十人がかりで狙う。
ガンガは大陸から来たヴァサンと対戦中だ。あちらは彼に任せるしかない。
ある程度の精度を保ちつつ、少しでも速く、そして多くの矢を射つ。
アポスとイリスは、飛んでくる無数の矢を全く見ずに避けている。信じられない動きだ。対して、槍を持つセドは、瞬時に狙いを定めて槍を振り、軌道を変える。ほとんど折れて地面に落ちている。
傷を負わせるどころか、足止めにもなっていない。
矢筒が空になり、新しいのを手に取る男。
甘い果実のような香りがして、男は振り返った。
「いい加減出て来てくれませんか。みんな死んじゃいますよ」
イリスが言った。
「仕方ありません。女も子供も、殺しましょう」
アポス。
見事なほどの足さばきと身体のしなりで、飛来する矢をかわす二人。
何か、タルカナ族の戦士たちとは違う、殺気めいたものを感じた。
避けきったはずの矢が服をかすった。
剣を使わないと矢が当たる。
セドも同様。
振り回す槍をすり抜ける矢がある。集中しないと当たりそうになる。
三人は初めて屋根上の戦士たちに目を向ける。
探す。
この矢を射つ者を。
最も遠くの屋根の上。離れていても分かる緑色の髪の女。
あれがキースか。
ほかの戦士たちより速く射っているのに、正確に急所を狙ってくる。
矢の軌道が違う。
彼女のすぐ下。
両腕にタトューを彫った男。槍を片手に歩いてくる。
やっと来たか。
アポスとイリスが笑みを浮かべる。
彼は戦士たちに指示を出し、屋根上のキースと何か話している。
「私はヴァサンのところに行ってくる」
キースが言った。
目をやるヤナベ。
「ガンガか。一番厄介な奴だな」
「あとの三人は任せるぞ」
「おいおい。俺に三人の相手をさせるのか」
矢を射つのを止める。
「お前なら大丈夫だ」
キースは弓と予備の矢筒を持って、屋根の上を走った。
飛ぶ。
屋根から屋根へ。
鍛練したタルカナ族の戦士でも届かない距離と跳躍力。
「何故だか分からんが、キースに信頼されるというのは、とても嬉しい気持ちだ」
思ったことが言葉に出てしまう。
ヤナベは槍を持つ手を上げた。
矢の放射が止まった。
「遅いですよ、ヤナベ」
アポスが言った。
「今日こそ決着をつけましょう」
イリス。
「これは何の真似だ?」
問うヤナベ。
「これは私たちの『試練』。お前から良い返事をもらうための」
アポス。
「おいお前ら、個人的な事情はひとまず置いとけよ」
屋根上を走るキースを目で追うセド。
「俺はガンガの所に行くからな。ヤナベは任せたぞ」
返事を待たず走り出す。
どうせ二人は聞いていない。
「私たちの願いはただひとつ、お前の子を産むこと」
アポスが言った。
「お前の子は最強の戦士となる。私たちが育てる。だから安心して交わるとよい」
イリス。
嘆息するヤナベ。
二人から交際を迫られたのは、五年前の『試練』から。世界最強だと思っていた二人が、ヤナベの圧倒的な強さに打ち負かされた。
衝撃的だった。
勝ちたいと思う気持ちより、彼の子を産んで最強の戦士を育ててみたい、という感情が沸き上がった。それ以来、ずっと二人から求婚されている。
「俺にも選ぶ権利がある。一方的に言われても困る」
ヤナベが言った。
同じような返事を何度もしている。
姉妹が並ぶ。
直立で立ち、細身の剣を身体の前に密着させる。それが彼女たちの戦闘体勢。
「お前に選択肢はない。結婚など必要ない。子となる種を、私たちの身体に取り込めればよい」
イリス。
「私たち二人の子が、戦士となって戦い、生き残った者が最強の戦士となるのです」
震えるアポス。
「考えただけでも興奮します」
何度も聞いても共感出来ない。
「お前は、私たちの申し出に応じない。ならば、抵抗出来ない状態にして、最強となる種を頂く」
アポスが言った。
益々彼女の考えが理解できない。
「参る」
二人の動きには予備動作がない。
剣を突き出す。
水面に映った自身がとなりにいるよう。二人の動きは同調している。
ヤナベは素早く後退したが、二人の剣は予想以上に伸びてくる。槍の柄で弾く。
踏み出す足の歩幅も着地する時も同じ。姉妹だからか、鍛練の賜物か。
二人の武器は突きだけに特化した剣。斬ることは出来ない。刀身が風を斬る音。軌道の予測を狂わせる。
突きの連続。
柄だけでは防げない。身体と足を使う。
同じ動きのなかに、変則的なものが混ざる。
関係ない。
ヤナベは視覚だけに頼らない。『勘』のような、言葉では説明できない感覚が、高速の剣を回避する。
まるで舞いを踊っているかのよう。優雅で力強い。加えて、柔軟な思考は彼の成長を妨げない。砂浜でキースの助言を受けたことは、すぐに理解して反映している。
「流石です。私たちの攻撃を避けられるのは、お前だけ」
アポスが言った。
笑っている。イリスも同様。
感情の高まりがきっかけとなり、二人の動きがさらに機敏になる。
戦いは全力が良いとは限らない。二歩くらい引いて、戦局を見極めることも必要だ。
腕の角度、身体の動き、呼吸に至るまで、瞬時に把握して対処する。
ガンガとセド。
ヴァサンの実力は分からないが、キースでも苦戦するだろう。
早く加勢に行かないと・・・
殺さずに二人を止めるのは無理。
決断するしかない。
偉大なる我が父よ。少しだけお力、お借りします。
ヤナベの手首が淡く光る。
彼の家系で、親から子へ代々受け継がれてきた宝。魔力を強制的に取り込んで、身体能力を高めるもの。
父親から方法は聞いていたが、使うのは初めて。不思議な感覚。闘争本能が呼び覚まされたようだ。
キースを助けに行く。
邪魔する者は容赦しない。
二本の刀身が迫っていた。後退せず槍の柄を両手で持つ。
姿勢を低く。
伸びきった二人の腕。そこから踏み込んでさらに迫って来る直前。二人の肘を下から突き上げる。槍の柄が折れるほど強く。
二人の腕が曲がらないほうへ折れる。勢いで踏み出そうとした足が浮いてしまう。
ヤナベが腰の刀に手をかけたのが見えているが、今の体勢ではどうすることも出来ない。
抜刀。
剣を持ち替えたいが、柄を握る手の感覚が無い。
信じられない剣速。
二振りでアポスとイリスの両腕が斬り飛ばされる。ヤナベの無駄のない、自然な足さばき。そのまま倒れなかった二人は流石だ。
踏ん張って、背後にまわったヤナベを見る。
回転力を加えた横振り。
二人の首が飛んだ。
ゆっくりと倒れる二人の身体の横で、膝をついて倒れているヤナベ。輪具の淡い光は消えている。
超人的な肉体強化には代償があるようだ。使いこなせば方法があるかもしれないが、探る時間は今はない。
「くそう。動け、俺の身体!」
全身の痛みに耐えながら立ち上がるヤナベ。
集まる仲間たちに指示を出す。
船の鎮火活動の増援とキースの援護。
男たちの行動は迅速だった。
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