episode16 「プレ・ナ」

 見上げても、頂きがかすんでいる。

 行く手を阻む高い壁。

 リノーズを出発して十二日目。

 悪天候や銀毛のハイオカ。障害はあったが、無事ここまで来た。

 ロカの壁。

 見事な程の断崖。


「まさか、この壁を登るのか?」

 ナックが問う。

 片腕を押さえ、苦しそうにしている。

 ヴァサンは振り返って彼を見た。

「この壁のどこかに、聖地へ続く抜け道がある」

 壁を見るナック。

 右も左も果てが分からない。

「何か目印でもあるのか?」

「・・・ない」

 ヴァサンの目線がナックの後ろへ。

 キースが立っている。

「俺たちが案内できるのはここまでだ。後はお前たちが招かれるかどうかだ」

「・・・聖地の試練か」

 うなるナック。


 聖地の試練。

 リノーズを出発してすぐに聞かされた話を思い出す。

 プレ・ナが住む聖地は 、魔力を生成する源。言わば異界の地。この世であってこの世でない場所だ。容易に行ける所ではない。彼らに認めてもらわなければ、その地に入ることは許されない。

 例えプレ・ナが同行していたとしても、聖地に行けるとは限らない。

 その条件は、ヴァサンたちも知らないらしい。


「この壁に触れて、何も起こらなければ拒否された、と言うことです」

 トロエが補足する。

「まあ、問題ないじゃろう」

 パパスが言った。

 キースを見る。

 お前が壁に触れ、と促していた。

 時間は限られている。

 ナックは今、瀕死の状態だった。


 二日前、銀毛のハイオカがノマの大群を連れて現れた。キースとナック、二人で戦う、という無謀な作戦で挑んだが、キースの不思議な力により、大群のほとんどは何処かへ去って行った。

 キース対銀毛のハイオカ。

 決着がついて、絶命させるため、キースが斧を振り上げたその瞬間!

 脚を斬られ、胴体を両断された状態で、まさかそれ程の跳躍力があるとは、キースでさえも予想していなかった。

 彼女の横をすり抜け、銀毛の牙はナックを襲った。とっさに頭をかばった腕に噛みつき、振り払う前に灰と化した。

 今、ナックの顔色は、氷の大地のように白く、肉体の疲労も限界を超えていた。

 大量の出血と軽い凍傷。

 噛まれた腕は変色し、感覚を失っていた。

 異常な程の虚脱感は、牙に毒のようなものが含まれていたからかもしれない。

 聖地なら魔力が使える。輪具(リング)が発動出来れば、肉体は再生され、毒も中和される。

 聖地に行けなければ、ナックは命を落とすだろう。


 壁に向かって進むキース。立ち止まって、すぐ横のヴァサンを見る。

 目を合わせたが、すぐに横を向くヴァサン。

「何も考えなくていい。壁に触れるだけだ」

 ヴァサンが言った。

 うなずくキース。

 皮の手袋を外して、直接触れる。

 沈黙。

 空は青く晴天だが、吐く息は白く、吸い込む大気は身体の熱を奪う。

 そのまましばらく待ったが、何も変化がない。

 その場に座り込むナック。

 もう一歩も歩けない。


 パパスが猫らしい声で鳴いた。

 全員壁から目線を外した。

 ほんの一瞬だったが、元に戻すと辺りの様子が一変していた。

 透明で細長い、だがはっきり形が見える触手の様なものが、壁から伸びていた。

 無数に。

 壁に手を置いたままのキースに触手が集まった。同じくらいナックにも。

 ヴァサン達には一本だけ伸びてきて、軽く触れると、すぐに離れていった。


 恐怖も殺気も感じない。

 身体中に巻き付いているが苦しくない。

 試されている。

 そう感じた。


 触手がゆっくりと解(ほど)けていく。

 キースが触れている壁のすぐ横。岩肌が泥のように流れ落ちて、人ひとりが十分通れる大きさの穴が現れた。

「抜け道ができたぞ」

 ナックが言った。

 不自由な身体でなんとか立ち上がる。

 聖地へ入ることを許されたようだ。

 触手は壁に吸い込まれることなく空中で消えた。

「道は一本だ。迷うことはない」

 ヴァサンが言った。

 反転して、食料を積んだソリに向かう。

「私たちはここでキースさん達の帰りを待ちます」

 トロエが言った。

「聖地まで一緒に行かないのですか?」

 キースが問う。

「申し訳ありません。案内人は聖地に入ることは出来ません。私たちが許されているのは、あくまで道案内だけです」

 プレ・ナとの約束事らしい。

「通路を半日程進むと、景色が開けてきます。小さな村がありますから、そこの住人から色々お聞きになればいいと思います」


 ・・・村?

 首を傾げるキース。


 ああ、とトロエ。

「まだ言ってませんでしたが、聖地にも人が住んでいるんです。彼らは身体の体質がプレ・ナに近くて、大陸での生活が困難だから、聖地に集まって来たそうです」


 叫び声。

 抜け道の前から。

 ナックだ。

 壁に開いた道から、純度の高い魔力が 漏れ出していた。それに反応して、彼の輪具が発動。怪我も毒も消え始めていた。

「何か凄いぞ。こんなに魔力を感じたことはない」

 ナックが言った。

 気持ちの高揚が言葉に現れていた。

「魔力の発生源がすぐそこですから。魔法が使える方なら驚くでしょうね」

 トロエの言葉を聞いて、クラナならどういう反応するか、少し考えるキース。

 予想が出来たので、少し口元がゆるんでしまう。


「キースに何か言ってやったらどうだ?」

 問うパパス。

 ヴァサンの答えはない。

 彼は聖地に向かうキースたちの、荷物の準備を続ける。

「無事に帰ってこいだの、頑張ってこいだの、何かあるじゃろ」

 返事はない。

 荷物をまとめ、運び出すヴァサン。

 嘆息。

「心配なくせに・・・素直じゃないのう」

 パパスはソリの荷物から飛び降りた。


「念のための食料と夜営の道具だ。持っていけ」

 そう言って、壁穴のすぐ前に荷物を置くヴァサン。

「ありがとうございます」

 礼を言うキース。

 その場から離れようとして、立ち止まるヴァサン。

 しばらく動かず。

 振り返って開口する。

「魔法使いの仲間がまだ聖地にいるということは、お前の母親の身体は、奴らの手には渡っていない、ということだろう」

 キースを見る。

「・・・守ってやれ」

 ソリに向かうヴァサン。

 無愛想な態度だったが、彼の言葉から強い思いを感じた。

 先に進まなければならない。

 キースは決意をさらに固めた。


「お気をつけて。吉報を待ってますよ」

 トロエに見送られて、キースとナック、パパスが抜け道に入っていった。

 通路の中に明かりはない。だが、壁面を覆う鉱石が青い光を放ち、歩くには十分な明るさを維持していた。

 通路をしばらく進むと、気温に変化が現れた。

 否。

 気温でなく、体感温度。

 手足がしびれる程の寒さは感じなくなった。かと言って、防寒服を着ていても暑くはない。

 ちょうど良いと感じる温度。

 魔力の影響だと思われる。

 魔法を打ち消してしまうキースでも、濃度のせいか、変化を感じていた。


 岩盤を削って造られた通路。

 床面はほぼ平らで、負荷なく歩くことができた。

 道具の違いか、技術の差か。

 魔法で開けたのかもしれない。


 食料と夜営道具を軽々と背負うナック。荷物の上には、パパスが器用に乗っている。

 先頭のキースは、不意討ちに備えながら、ゆっくりと進んでいた。

 ヴァサンの言った通り、道は一本で、代わり映えしない景色が、時間の経過を狂わせていた。


 岩盤で覆われた通路のため、昼夜は定かではないが、かなり進んだと思われる。

 少し先に、通路の終わりが見えてきた。

 気持ちは緩めない。

 通路を抜けた。

 内陸ならばごく普通の 景色。しかし、北の大地では異様。

 青い空があり、田園が広がっていた。

 人が住んでいそうな家も数件見える。

 トロエの言っていたように、村と呼べるものが存在していた。

「まずはあの村で情報収集じゃ」

 パパスが言った。

 行動を起こさなければ何も始まらない。

 キースは、止まった足を村に向けて動かした。


 太陽の位置から考えて、夕暮れ前といったところか。よく実った作物に囲まれて、あぜ道を進むキースたち。田畑で作業する人の姿はない。

 寒冷地の家の造りではなかった。もっと内陸の、ルコスあたりの街並みが近いだろうか。石の壁に平な屋根。色褪せ具合からして、かなり前から村があったと推測できる。

 しばらく進み、土の道が石に変わった。村の入口に人影。男女ふたり。キースが産まれたラフィネの住人によく似た民族衣装。声が届く距離になって、彼らはキースたちに一礼した。

「ようこそ聖地へ」

 男が言った。

 彼も隣の女も、肌の色が黒っぽく、大陸南部の出身のようだ。

「この地に人が訪れるのは、十年ぶりです。しかも、コンサリの娘さんとは・・・」

 愛おしい目でキースを見る男。

 彼はキースの事を知っていた。

「久しいな、ぺネンス」

 ナックの頭の上、背中の荷物に乗っているパパスが言った。

 見上げたぺネンス。

 彼の表情が変わった。

「その声はもしや、パパスさんですか?」

 うなずくパパス。

「お懐かしい。ご無沙汰しております。最後にお会いしたのは、確か私が十五の時ですから、三十年ぶり、ですか。いやぁ、お元気で何よりです」

 キースと同じく、とても嬉しそうなぺネンス。

「その様子からして、お前が村の代表となったか」

 姿勢を正すぺネンス。

「はい。私がランフィーの名を継ぐことになりました」

 彼から色々聞くことがありそうだ。




「女性のプレ・タナは、子供を産むと魔力が落ちる、と聞いたことがありませんか?」

 カサロフが尋ねた。

「あります。ていうか、実際そうなんじゃないの?」

 クラナの問いに、 微笑むカサロフ。

 返事がかえってこない。

 晴天の午後。

 ふたりは村の外れに向かって歩いていた。

 ふと顔をしかめるクラナ。

 彼女の話を聞いて、嫌なことを思い出す。

 ルコスでの出来事。

 プレ・タナの仲間と食事に行き、酒に薬を盛られて、強姦されそうになった出来事。


 あの時、キースが助けてくれなかったら、今頃どうなっていただろう。


 散々あいつらの慰みものにされ、飽きれば路地裏に捨てられていたかもしれない。上司に取り入るための道具として、利用されていたかもしれない。

 どうなったにせよ、まともな人生を送れていないはずだ。


「ここなら大丈夫でしょう」

 カサロフの言葉で、現実に戻るクラナ。

 ふたりが来たのは村の東側。特に何も無い広場。雪も氷もそれほど多くない。足元は土でなく、石の床。新年の祭事や、収穫祭の時に使用する広場だ。

 日中だが、吐く息は白い。

「私の身体にコンサリがいた時、彼女はキース様を産みました。つまり、先ほどの話が本当なら、私の魔力は落ちている、という事になります」

 広場の中央で、カサロフが話し始める。

 クラナから少し離れる。

「私の得意な魔法は呪術ですが、ひとつだけ攻撃型の魔法が使えます」

 何かを探すような仕草をして、ある一点を指差す。広場の隅に置かれた廃材。

 クラナは、カサロフとその廃材を、交互に何度も見返す。

 魔力がカサロフに集まっている。見えないが、そんな感じがした。

 片手を上げるカサロフ。

「セベラッチ」

 聞いたことのない言葉。

 ゆっくりと振り下ろし、廃材に指を向ける。

「アターカ」

 何かが高速で飛んだ。

 一瞬、耳の奥が詰まったような感覚の後、息が出来ない程の風圧と、飛散した雪が、身体全体を襲った。

 ひとりでは持てない大きさの廃材が宙を舞っていた。

 廃材が落下した衝撃で、また風圧が襲ってくる。

 驚きが大き過ぎて言葉が出ない。

 見たことのない魔法で、凄まじい威力。

「私も年ですね。廃材を狙ったのに、外してしまいました」

 苦笑いのカサロフ。

 宙を舞った廃材は、大きくえぐれた地面に落ちていた。

 走り寄るクラナ。

 彼女の身長のおよそ二人分の深さ。穴の直径は、両手を広げても全然届かない。

「何なの?・・・何が起きたの?」

 すぐにでも答えが知りたくて、カサロフのいる所まで走るクラナ。

「なんなの?」

 疑問を投げかけ、 パパスが書いたとされる魔法書を思い返す。

 治癒魔法、術式魔法。攻撃魔法も幾つかあったが、あんな魔法は載っていなかった。

 しかも、なんという破壊力。

 子供を産むと魔力が落ちる、というのは迷信なのか。

「私には、魔力を火や氷に変換する能力がありません。ですが、魔力そのものを武器にすることが出来ます」


 魔力そのものを??

 そのほうが凄いことだと思う。


「いやいやいや。そうじゃなくて、あんな魔法、見たことないんだけど」

 必死に食いつくクラナ。

 微笑むカサロフ。

「でしょうね。この魔法は私が作ったものですから、私以外使える方はいないと思います」

「魔法を・・・作る・・・?」

 ますます混乱するクラナ。

「何度もお話しましたが、私とコンサリは、子供の頃から、身体と精神を共有、交換していました。コンサリがリノーズにいるとき、私は聖地に。ですから、私が魔法を教わったのはプレ・ナなんです」


 プレ・ナは、魔力を生成、管理する者。魔法を生み出し広めたのも プレ・ナだと言われている。

 カサロフがプレ・ナから魔法を学んだのなら、魔法を作ることは可能なのかもしれない。


「子供を産むと魔力が落ちる、というのは本当です。ただ、人によって程度が違う、というのが正しいですね。私の場合は、そうですね、キース様を産む前と比べて、半分、といったところですね」


 半分・・・

 先の大戦で活躍したガガルたち、彼らと共に戦った従者たち 。どれ程の戦争だったのか。

 ガガルの弟子だったキースの父親。その従者のひとりがカサロフ。彼女の魔法を見て、戦後に産まれて良かったと思うクラナ。


「私の魔法を見ていただいたところで、早速今日の訓練を始めましょうか」

 カサロフが言った。

 嫌な予感がするクラナ。

「まさか、とは思うけど、今の魔法を受けろ、てこと?」

 うなずくカサロフ。

「正確には、魔力で身体能力を高めて避けろ、という訓練です」

 彼女の言葉を聞いて、ちょっと安心する。よけるだけなら出来るかもしれない。

 ちなみに、とカサロフは笑みを浮かべる。

「当たっても怪我をしないように、威力は落とします。その分、精度と速度を上げて行います」

 こんな風に。

 クラナの両脇を何かが過ぎる。

 後ろで砕ける音がした。

 振り返る。

 廃材が四散していた。

 魔力が集まった感じも、飛ばした動きもなかった。

 言葉が出ない。

 いつ向かってきたか分からないのに、どうやってよけるのか。

「魔法呪文と指差しを省いてみました。飛ばす方向は、目線だけで決めることが出来ます」

 嘆息するクラナ。

「何でもあり、て感じ」

 心が折れかけていたのを何とか踏ん張り、魔力を貯める訓練をクリアして、よし頑張るぞ、と思ったところで今である。

 魔法の威力を目の前で見て、無意識に足がすくんでしまう。

 いや、駄目だ。

 ここで立ち止まるわけにはいかない。

 両手で自分の頬を何度も叩く。


 広場のほぼ中央、朱頬で立つクラナ。

 気合いは十分。

 カサロフは広場の端に。目の動きが何とか見える距離。

 二人の目が合う。

 クラナの周りの大気が変化した。

「うぎゃ!」

 悲鳴を上げてうずくまる。

 魔力によって痛みは和らいでいるが、当たった衝撃はそのまま伝わる。

「見てから避けようとしても、間に合いませんよ」

 半泣き顔で立ち上がるクラナ。

「まだまだぁ!」

 構える。

 予備動作なしで横に飛ぶ。

「ぐへっ!」

 命中。

 ぐぎゃ、どひぇ、あひっ・・・

 避けても避けても当たってしまう。

 倒れて背中を向けてしまった。

 完治していない尻に命中。

 声も出せず、意識がもうろうとする。

「ある意味見事ですね」

 嘆息するカサロフ。

 クラナが動かないので近づく。

「もう止めますか?」

 問う。

「お・・・お尻が、割れた・・・」

 苦笑するカサロフ。

「初めから割れています」

 何度もした言葉のやり取り。

「キースが帰ってきたら、一晩中、いや、体力の続く限り、抱きしめて、口づけして、抱きしめて・・・」

 小声で、呪文のように言葉をつぐむクラナ。

 カサロフがまた苦笑した。




『ランフィー・ギニー』という村の名前は、初めてこの地にやって来た男女の名で、村の代表者二人が継ぐことになっている。

 以来、約百年。今では五十人程の人々がここに暮らしている。

 そんな話から始まった。

 ここはぺネンス(ランフィー)と妻のサリム(ギニー)の家。

 燭台の灯りが、濃厚な陰影を演出する一室。

 野菜のたっぷり入ったスープと肉料理。果実酒は自家製だ。

 温かい料理は何よりのご馳走。

 二人はやはり大陸の南部出身で、この地で出会い、夫婦となったようだ。

 酒も入り、饒舌なランフィー。

 他の村人についても色々話をした。出身地は大陸全土に広がっていること、魔力によって四季が作られていること。

 大陸からの客人(キースたち)が余程嬉しかったのだろう。話がつきることはなかった。

 ゆっくり食べながら、彼、ランフィーの言葉に耳を傾ける。

 途中、隣のギニーが耳元で何かを告げた。

 ようやくキースたちが知りたい事とは違うと理解するランフィー。

 咳払いをして、高揚した気持ちを落ち着かせる。

「聖地に来られたのは、やはりコンサリさんに会うためですか?」

 キースに問う。

「ノマを操る術を使う者がここにいる。その男を排除するのが目的です」

 本音は違う。

 そう思ったかどうかは 不明だが、ランフィーは少し返事を待った。

「コンサリ・・・母に会えるのなら、会ってみたいです」

 キースにしては珍しく、自信なげな口調だった。

「なるほど。キースさんなら会えるかもしれませんね」

 意味深なランフィーの言葉。

「コンサリは今何処におる?」

 パパスが尋ねた。

「彼女は今・・・」

 ランフィーの穏やかな表情が引き締まった。



 早朝。

 空は明るいが、大陸の朝とは少し感覚が違う。太陽が昇っているわけでなく、雲が流れているわけでもない。

 聖地。

 同じ大陸にあって異界の地。


 キースは、ランフィー・ギニーの家を出て、迷いなく足を進めた。村の外れ、形式的な土地の境界を示す木製の柵。近くに広場がある。そこで立ち止まる。

 キースは呼吸を整え、ゆっくりと右腰の刀を抜いた。両手で柄を持ち、感触を確めるように刀を振った。

 右に左に。下から上。上から下へ。

 何でもない動作だが、彼女がすると、無駄のない優雅な舞いとなる。

 ガガルとの修行が始まってからほぼ毎日行っている、刀と一体になるための鍛練。

 彼はキースの親代わりであり、剣術の師でもある。教えの全てが糧となり、遺した言葉が今のキースを創っている。


「おはよう。相変わらず良い動きだな」

 ナックがやって来た。

 目線だけ向けて鍛練を続けるキース。

 しばらく彼女の『舞い』を傍観する。

 軽く刀を振るキース。

 鈴のような音が風に混ざり、『気』が集まっているのが感じられる。

 鍛練だけでは得られない力。魔力とは別の、圧倒される何か。

 ゆっくり息を吐き、刀を収めるキース。


 どれだけ修行しても・・・

 輪具の力を最大限引き出せたとしても、キースには敵わない。

 共に旅を続けてきて、ナックが出した答え。ならば、少しでも彼女に近づくことが出来ないものか。


「聞きたいことがある」

 ナックが言った。

 キースが顔を向ける。

「俺はどうすればもっと強くなれる?」

 これが最善の方法だと思った。

 彼が思う最強の戦士に、直接聞けばいい。

 キースは不思議そうな顔で首を傾げた。

「今でも十分強いじゃないか」

 予期せぬ答え。

「いや。俺はロズを倒すことが出来なかった。もうひとり、倒したい奴がイナハンにいるが、今の俺では無理だ。もっと強くなりたい」

 じっと、キースを見つめるナック。

 キースは、ナックから目線を外して下を向いた。しばらくそのまま。

 あまり良い答えではないかもしれないが、と話を切り出した。

「私が思うに、答えは単純だ。誰かのために戦うのではなく、自分のために戦えばいいんだ。何も背負わず、ただ純粋に強さの頂点を目指す。それが結果として人のためになるのだと思う」

 心がざわついた。

 言葉が心に染みるとは、こんな気持ちなのだろうか。

 答えは単純。確かに彼女の言う通りだ。勝手に色々背負い込んで、本来の力を発揮出来ていなかったのかもしれない。

 こんな簡単なことに気づかなかったなんて・・・

 目の前にキースが立っていた。

「手合わせするか?」

 思いがけない言葉。

 顔を上げるナック。

 両脇の刀を置き、少し後ろに下がるキース。普通に立っているだけだが、適度に身体の力が抜けていて、全方向からの攻撃に対応出来る姿勢だ。

 これは・・・?

 ナックと同じ体術で戦うつもりだ。

 立ち上がる。


 初めから本気でいかないと、彼女には・・・


 キースの表情はとても穏やかで、珍しく口元が緩んでいた。楽しくて仕方ない、という顔つきに見える。

 しばらく忘れていた感情。

 父や姉との稽古は、厳しく苦しかったが、課題を達成した時は、一緒に喜んでくれた。

 家族も武術も大好きだった。

「女だからって、手加減しないぞ」

 ナックが言った。

 微笑むキース。

「望むところだ」

 ナックの両腕の輪具が淡く輝いた。


 身体を少し屈める。同時に、大地をえぐる程の蹴り足。踏み出す一歩が低空の跳躍。

 一瞬で距離を詰める。

 肩を狙って振り下ろした腕は空を切り、目の前のキースも消えた。

 とっさに腕を上げて、顔をかばった。

 腕に衝撃。

 身体全体が横にずれる。

 キースを掴もうと手を伸ばすが届かない。

 彼女の動きは見えているのに、あと一歩が遅れる。魔力で身体能力が高まっていても、キースの速さに追いつかない。

 ここで下がれば終わりだ。

 キースの利き腕でない右側に回り込む。軸足へ体重が移動する前に、キースが目の前にいた。

 腕を掴まれて身体が浮いた。

 彼女の背中に身を任せ、あっさり投げられた。

 魔力で身体機能が上がっているので、背中を地面に打ち付けても、痛みは軽い。

 何度目かの敗北。

 得意な格闘術でも剣士のキースには勝てなかった。

「もうその辺にしたらどうだ?」

 柵の上で器用に座るパパスが言った。

「朝飯の時間だ」

 苦笑するナック。

 起き上がったところで、キースが手を差し出した。手を見て、顔を見る。彼女の笑顔が何だか心を揺さぶる。

 不思議な感情と同時に、クラナの顔が浮かんだ。

 自力で起き上がる。

 何だろう。彼女に全然敵わなくても、悔しさがない。負け惜しみとは違う、心地好い感じ。

 キースとロズの対戦を見た時の感情に近い。彼女の剣術、体術には、何故か斬られたいとか倒されたいとかの、不思議な感情が湧いてくる。

 キースを見る。刀を拾い上げ、パパスのいる柵の方へ向かった。何か話しているが、ナックのところまで声は届かない。

 感情の変化に戸惑いながら、彼は空を見上げた。


 一夜明けても、『聖地』での異質な感覚は変わらなかった。魔力濃度のせいもあるが、実際大陸と時間の流れが違うらしい。


「彼が来てから、中心地への出入りは制限されていますが、キースさんなら問題ないと思います」


 ランフィーの言葉が気になりながら、キースたちは出発した。

 収穫の近い麦畑のなか、パパスを先頭にナック、キースと続いて歩く。何でもない風景。空と大気だけが別のもの。

 村が見えなくなってすぐ、唐突にパパスが語り始めた。

 「ワシらの種類は大きく分けて二つある。魔力を生成するための存在と、人に近い存在。ワシやコンサリのような」

 二人に話しているのだろうが、反応を期待している様子はない。

 「起源はロフェアという山と深い森の地じゃ。今は魔法使いになるための修行の場になっておる。そこに五百年くらいか。次がドガイ南部のフィニカという土地。家を造ったり家族を作ったりして、人と同じような生活をしていた。ここには二百年くらい居た」

 ここに来てからは三百年経ったかな、と懐かしそうな口調のパパス。

 ちょっと待て。

 話が予想外の方向に進んでいる。

 「あまり知られていないが、ワシらは元々大陸に住んでいた」

 そして、男女の区別があり、子孫を残すことも出来た。

「魔法は、基本的に何でも可能にする。それが争いの原因でもある」

 いつの時代も人々は力を欲し、独占したいと画策する。中心には必ず彼ら《プレ・ナ》がいた。

 争いを避けるため、土地を離れた。だが、何処に行っても結果は同じ。姿を変え、生殖機能を無くしても、人は新たな手段を考える。最後に行き着いたのが、この北の極地だった。

 人との関わりを極力避け、この地に入る者を制限した。いつからか、プレ・ナは大陸では生きられない、人とは違う生物、それが通説となった。

 「ワシらに近い体質の者や、魔力の強い者がおるのは、大陸にいた時代があったからじゃ」

 元々、大陸で生きられない体質ではなかった。上手く順応して、残った者もいる。

 もうひとつ・・・

 「ノマが発生する原因を考えたことがあるか?」

 当然知らない。特殊な野生動物、という認識が一般的だ。


 大型で身体の形を変えることができる『ノーラム』。主に大陸中央部に生息。北の寒冷地に生息する『ハイオカ』。四足歩行で頭が良く、群れで行動する。前足の鋭い爪が武器の『ワイバ』。大型で狂暴だ。南部の湿地帯に生息する『メジ』。南部の乗り物ウマ(北ではジバ)よりひと回り程大きく肉厚だが、足はわりと速い。


 「ワシらは人より長生きじゃが寿命はある。死ぬと肉体からだは塵となり、魔力と共に大気と混ざる」

 間が開いた。

 ナックが下を向くと、パパスがこちらを見上げていた。

 「そして再生する。『ノマ』として生まれ変わる」

 え??

 振り返る。キースの表情は変わっていない。彼女にとって大した事でないのか、前から知っていたのか。

 「『ノマ』はプレ・ナなのか?」

 問うナック。

 「正確には元プレ・ナだ。全く別の生き物ではあるが、本能的に足りないものを求めて彷徨い《さまよ》人を襲う。満たされることはない」


 何故なら、『ノマ』は魔力を求めているから。

 最も嫌うものなのに、プレ・ナだった頃の記憶が本能の隅に残っていて、取り込もうとする。だが出来ない。生まれ変わった姿では大気を魔力に変換することが出来ないし、魔力は『ノマ』にとって肉体を破壊する毒だ。


 「ま、いずれ分かることじゃろうが、先に言っておく」

 そう言ってパパスは歩みを少し早めた。

 何事もなかったかのように、ただひたすら前進する。

 少し横にずれてキースの隣にナックが来る。

「今の話、知っていたのか?」

 たまらず問うナック。

「ルコスでザギと戦った時、奴が似たような事を言っていた。だから何となくそうなのかと思っていた」

 なるほど。キースの無反応に納得するナック。


 麦畑を抜けると、岩の多い荒れ地が広がった。多分これが本来の姿。分厚い氷は魔力で溶けている。

 パパスはナックの肩に乗っている。小さな身体でこの地は歩き辛い。

 道らしい道は無い。大小様々な岩の隙間を抜けながら、底の見えない大地の亀裂の横を通りながら、慎重に進む。

 水の音。

 見上げる岩山の上から、何本もの水の筋が流れ落ちている。

 自然の脅威に圧倒されながらも、二人の歩みは揺るがない。変化が現れたのは、足元の岩が減ったと感じた頃。雨雲のような色をした空が白くなり、目の前に巨大なものが見え始める。

 巨大な樹木が一本。多くの枝を広げて遥か上まで伸びている。姿から樹木と表現したが、色は氷のように白く硬そうだ。

「あれが魔力の源、『魔法樹』だ」

 パパスが言った。

「大地の中心から吸い上げた『力』を、ワシらが魔力に変換して、『魔法樹』に戻す。樹は枝葉の形をした所から、大陸の大気に放つ」

 想像を超えた光景に、言葉を失うナック。

 やがて、足元の岩は硝子質の白い砂に変わり、『魔法樹』が視界のほとんどを埋め尽くした。

 滑らかな曲線を描く、地面に開いた巨大な穴。自然に開いたものではない。その中心に『魔法樹』の幹が地下深く、そしてはるか上まで伸びている。

 何という大きさ。何処を見ても端が見えない。穴は幹よりさらに大きく、飛んで渡れる距離でない。

「プレ・ナたちは何処にいるんだ?」

 ナックがパパスに問う。

「あの中じや」

 目線は目の前の巨大なもの。

『魔法樹』は魔力の源であり、生活圏でもある。

「驚いたな。『魔法樹』がこんなに細くなっておるとは・・・」

 大陸へ旅立つ前は、隙間がないくらい幹が太かったと、パパスが呟く。

「どうやって渡るんだ?」

 ナックが言った。

 道は無い。


『来たか』


 その時、頭の中で声がした。

 聞き覚えのある声。銀毛のハイオカと同じ声だ。

 ノマを操る能力を持った者。ロズと同じく、コンサリを連れ去った魔法使いの仲間。

 白い幹から音もなく枝が伸びた。それが穴の端まで届いて道となる。

 ナックは肩に乗っているパパスを見て、キースを見た。

 これは罠なのか?

 それとも・・・?

 生き物のように蠢いていた枝の動きが止まり、平らな白い道が完成した。

 不安そうなナックの横を、キースが通り過ぎる。迷いなく進む。慌ててナックも後を追う。

 耳元でパパスのため息。

 分かっている。こういう所が自分に足りない。精神的に弱い部分だ。

 間近になると、『魔法樹』の大きさをさらに実感する。表面は樹皮のようにザラザラしている。

 ナックの頬を前足でつつくパパス。肩に乗せたまま、『魔法樹』に近づく。

「オートリティ」

 魔法の呪文とは違う、プレ・ナの言葉。

 白い樹皮が動く。硝子質だが、割れることなくしなやかに剥がれていく。

 戸惑っているうちにキースが進んだ。

 ナックも続く。

 無機質なトンネル。冷たさも暖かさも感じない。

 広い空間に出た。何も無い。外壁に添って螺旋の通路がある。それが上下の階に行く手段。床も天井もあるが、呼吸に合わせて透明になったり白くなったりしている。上を見れば遥か上まで、下を見れば遥か下まで。今いる階と同じ構造の広間が続いている。

 恐怖が勝って、次の一歩が踏み出せない。

「魔力の影響で透けるだけだ。落ちたりせん」

 パパスの言葉。

 ナックより先にキースが進む。

 数歩進んで止まった。

 踏み出した足を戻すナック。キースに合わせて上を見る。何かが降りてくる。

 ゆっくりと、人が降りてくる。

 異国の服を着た男が降り立った。独特な刺繍の入った、東方の服。ロズの服装と似ている。

 恐らくは、いや間違いなく、銀毛のハイオカの主。細身で青白い顔。若くはない。ロズの仲間ならば、見た目だけで戦闘能力は判断出来ない。


「お前らと争うつもりはない。だが、主の命令には絶対逆らえない」

 額を指差す。

「ここに奴の魔力が詰まった石が埋め込まれている。これがある限り、俺の自由は無い」

 あまり時間がない、と男は言葉を続けた。

「俺の目的は、『魔法樹』の仕組みを解析して、種を持ち帰り、我が国に新たな樹を植え付けること」

 ナックの肩に乗っているパパスを見る。

「お前も憑依型のプレ・ナか?」

 お前も、とは誰と比べているのか。

「大陸にいたのなら分かるだろ?」

 この男も知っている。

 結末が迫っていることを。

 男の話が本当ならば、彼もパパスと同じ研究者。ノマを操る術も、研究の成果なのだろう。そして、パパスが大陸を巡って得た答えと同じになった。

 男の目線は隣のキースへ。

「名前はキース、だったか。コンサリに会いに来たんだろ?」

 無言で無表情。

 まあいい、と男は構わず。勝手に話を進める。

「この上にいる。場所も分かっている。だが、十年かけても近づけない」

 見上げる男。

「ディマ・イーシャ」

 プレ・ナの言葉。それが魔法発動の合図。

 足元の床が軽く揺れた。今いる階全体が上昇した。どの階も殆ど同じ構造なので分かりにくいが、感覚的に上っていると思われる。

 天井に頭が当たる寸前、上下の床が入れ替わる。透明になった時、負荷なく天井が身体 をすり抜ける。魔法なのだと分かっていても不思議と感じる現象。

 外の景色が見えないから、どれくらいの高さなのか不明だが、かかった時間と上昇速度を考えて、雲のある高さくらいだと思われる。

 今までとは雰囲気の違う階。天井がなく、何本もの枝が多方向に交錯している。壁もない。遥か眼下に白い大地と黒い大地。霞んだ向こうは恐らく麦畑。

 何という高さ。

 ここは『魔法樹』の最上階。

 大陸ならば、気圧や温度の変化を感じるが、元いた階と何も変わらない。


「この上にコンサリの身体が保存されている。だが、登ろうとすると枝が動いて邪魔をする。魔法でも力ずくでも突破は不可能。結論から言うと、別の『力』、或いは特殊な能力を持つ者が鍵となる」

 男はキースを見ている。

「さっきも言ったが、俺はお前たちと争うつもりはない。ただ、真実が知りたいだけだ」

 ナックはパパスを見たりキースを見たりしている。

 嘘をついているとは感じない。それが正しいと証明も出来ないのだが、輪具リングは濃厚な魔力で淡く光っていて、急展開が起きても対応可能だ。警戒は怠らない。


「コンサリの身体はそのままなのか?」

「そうだ」

 パパスの問いに即答する男。

「コンサリだけではない。お前の仲間も何人か上にいる」


『魔法樹』は枯渇し始めている。

 プレ・ナは絶滅しようとしている。


 抑揚のない男の言葉。

 やはり同じ結論に達したか。


「どういうことだ?」

 理解出来ないナック。

「そのままの意味だ。『魔法樹』もプレ・ナも寿命が近い、ということだ」

 それより、と男は話を変える。

「お前ならコンサリのいる所まで行けるはずだ。何もしなくていい。ただ登ればいいだけだ」


 それがどういう結果になるか分からないが、何かしら変化が起こるはずだ


 男にとって、『魔法樹』やプレ・ナの未来より、キースの方が重要らしい。

「リノーズにいる女魔法使いを助ける事が出来るかもしれん」

 初めてキースの感情が動いた。

「俺の仮説が正しければ・・・」

 唐突に止まった。

 言葉も動きも。

 いつからか、額に文字が浮かび上がっていた。漢字の『参』に似た文字。

 振り上げた腕をゆっくり降ろし、キースたちの方を向いた。

 同じなのに、別人だと感じた。

「自由にしていい、とは言ったけど節度は守ってもらわないとね」

 声も口調も違う。

「一応初めまして、だね」

 パパスはナックの肩から降りて、出来るだけ隅に移動した。ナックは戦闘体制だ。男の口調は穏やかだが、異常な程の危険を感じる。

 何処にいても、どれだけ距離があっても、主の命令には逆らえない。主の魔力を源とし、強制的に身体の支配権を変えられる。

 キースをじっと見つめる男。

「本意ではなかったけど、ここで君に会えて良かったよ。僕のいる場所にはたどり着けないから、これが最初で最後の面会」

 笑顔で話す男。

「悪いけど、君と彼女を会わせるわけにはいかない。ここで死んでもらう」

 片手がゆっくりと上がる。

 ナックが跳躍した。

 キースばかり気にしている、今が好機と判断した。

 キースが何か言っていた。

 男の寸前で止まった。見えない大きな手に掴まれたような感覚。握られた。両腕が反対向きに曲がって折れた。内臓に骨が刺さる。

 血を吐いて咳き込むナック。

「君には用がない。あっちに行って」

 手を振る。

 ナックは魔法樹の外へ飛ばされた。

 へぇー、と関心しながら男の身体を見る別の男。

「さすがサロワだな。見事にプレ・ナの身体と同化しているよ」

 なるほど、そういうことか。

 キースの後ろで、パパスの声がする。

「ワシらの肉体を移植することで、より近い状態になっているのか」

 ここに来る前、プレ・ナの魔法が使えたのは、身体がほぼプレ・ナだから。


「私に魔法は効かない」

 キースが言った。


 背中の呪印が死印に変わり、本来持っている『力』が一部解放して、魔法耐性が強くなっている。プレ・ナの眼を移植して暴走したザギには効果的だったが、果たしてプレ・ナに近いこの男には・・・?


「知っていると思うけど、僕には三人の仲間がいる。彼らの能力と、君と対戦した経験は全て共有できるんだ。ロズは殺られちゃったけど」

 だから、と手のひらを見せる。

 そこにはロズと同じ魔法陣があった。

「元々、僕の能力を分け与えているから、当然彼の身体でも使える」

 プレ・ナ並みの魔力とロズの能力。加えて、まだ未知なサロワの能力。

 憑依している魔法使いの能力も分からない。

「君がこの世で貴重な存在だから大目に見ていたけど、もっと早くに殺しておくべきだったね」

 殺気を含んだ笑顔。

 キースは臆することなく、腰の刀に手をかけた。

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