episode15 「ロカの壁」
時間を数ヶ月さかのぼる・・・
ここは北の街リノーズ。
『聖地』への出発を明日に控え、キースたちはカサロフの家で、最後の打ち合わせを行っていた。
暖炉の前。
目を見開き、唇を小刻みに震わせている女。
ルコスでキースと出会い、ここまで旅を共にしてきたプレ・タナ、クラナだ。彼女はカサロフのほうを向いたまま、何かを言おうとしている。
しかし、上手く言葉が出てこない。
手を胸に置いて、気持ちを落ち着かせる。深呼吸。先ほど耳にした言葉を消し去って、もう一度カサロフを見る。
「駄目です」
カサロフがもう一度言った。
クラナはその場で倒れそうになった。
「なな、何で・・・何で駄目なの?」
暖炉の薪がはじる音。
カサロフの表情は変わらず、鋭い視線がクラナに向けられていた。
「言葉にして、はっきり言ってほしいですか?」
眼圧に耐えられず、目線を外すクラナ。
分かっている。
それでも私はキースのそばにいたい。
「ここより北は、『聖地』に入るまでほとんど魔法が使えません。あなたが行っても役に立ちません。足手まといです」
カサロフが言った。
分かっているが、はっきり言われるとかなり傷つく。
「で、でもさ、私が行かないとなると、キース以外全員男なんだよ。誰がキースを守るのさ」
ナックを睨むクラナ。
ナックは困った顔をする。
何か大きな誤解を受けている気がする。
「では、あなたにお聞きします。これから先、今のままでキース様を守れると宣言できますか?」
カサロフが問う。
うっ、と喉を詰まらせ、返答できないクラナ。
彼女が一番気にしている事を言われた。
カサロフの言うとおりだ。確かに魔力は人より強い。だが、それだけではキースは守れない。
クラナは強い魔力を、キースのために活かせていない。
「男性を負かす力もない。キース様の力になる魔法も使えない。それでは共に旅をする意味がありません」
カサロフの言葉が容赦なく突き刺さる。
目を潤ませるクラナ。
「だ、だって、キースと一緒にいたいんだもん・・・」
力なく椅子に座るクラナ。
キースもナックも、彼女にどう言葉をかけていいか分からない。事実ではあるが、そこまでクラナを追い詰めなくてもいいのではないか。そう言ってやりたいが、カサロフの真剣な表情に、踏み込む余地はない。
「私はあなたより、魔法の知識も経験も豊富です」
カサロフが言った。
クラナが顔を上げるまで待つ。
「見たところ、あなたの魔力は私が現役の頃よりも強い。ですが、上手く使う術を知らない」
その通りだと納得するクラナ。
「時間はあまりありませんが、キース様が『聖地』に行っている間、あなたに私の持てる知識と技術を教えます」
クラナの表情が変わる。
「私が全てを教えることができたなら、これから先、どんなに強い敵が現れても、キース様を守ることができます」
穏やかな口調だが、強い意志を感じる。
立ち上がるクラナ。
「本当に?」
微笑むカサロフ。
「はい、絶対です」
迷う事などない。
言葉を口にしなくても、クラナの表情が全て語っていた。
「それに、キース様が彼らの思いどおりになると思いますか?」
少し考え、納得するクラナ。
カサロフにも誤解されている気がして、嫌な顔をするナック。
実際、キースを手篭めにするなど有り得ないのだが。
暖炉の薪が崩れ、火の粉があがる。
立ち上がるクラナ。
じっとカサロフを見つめる。
「お願いします。私にキースを守れる魔法を教えてください!」
口先だけでない強い意志。
微笑むカサロフ。
「私の指導は厳しいですよ?」
彼女の問いに眼圧と笑みを返すクラナ。
「キースのためなら、どんな事でも耐えられます」
キースを見るカサロフ。
うなずくキース。
「クラナをよろしく頼む」
キースが言った。
「お任せください」
カサロフは力強く答えた。
出発の日。
キースたちは案内人の家に向かっていた。会話は無い。それぞれが、それぞれの思いを噛みしめながら、ただひたすら歩く。
案内人、ヴァサンとトロエの家が見えてきた。
並んで歩いているキースとクラナ。クラナが何度もキースの方を向いては、悲しそうな顔をしていた。
最後尾を歩くナックはその様子を見ながら、彼女達と少し距離をおいて歩いていた。
女同士の恋愛感情は理解できないが、最愛の人と離れるのは誰でも辛い。ナックは両親と姉を亡くしている。
でも、『聖地』から無事帰ってこられる保障がないにしても、死別でないからまだいいじゃないか。
ナックはそう思っていた。
家の前には、荷物を積んだソリ。
荷物を引くのは、四足歩行の犬種、ではなく・・・
「あれは・・・!」
冷静沈着なキースが急に走り出した。
慌ててクラナも走り出すが、薄氷の張った路面は滑りやすい。
すぐに滑って尻餅をつく。
案内人のヴァサンとトロエを通りすぎて、その動物に近づくキース。彼らも作業の手を止めて、キースの行動に目を向ける。
「こんな北方に『ウマ』がいるなんて」
キースが言った。
なんだか嬉しそうだ。
『ウマ』とは、キースが幼年育った南の国ドレイドの生き物で、二足歩行のダチョウに似た動物だ。大陸中央の馬と同じく、長距離移動の乗り物として利用している。
「南の大陸にも、これと同じやつがいるそうだな」
ヴァサンが言った。
キースのすぐ横に立っていた。
「でも、こんなに毛深くない」
キースの言葉に顔をしかめるヴァサン。
トロエが二人に近づいてきた。
「ここでは『ジバ』と呼ばれています。元々は北に生息する生き物ですが、昔の商人が南の大陸に連れ帰って、品種改良したと言われています」
納得顔のキース。
彼女になでられて、気持ち良さそうにしているジバ。
ジバもウマも、非常に警戒心が強く、自分より下位だと判断すると攻撃的になる。飼い主以外が近づけば、噛み付いたりすることもある。
なのにどうだ。
初めて会ったキースに対して、三頭のジバは警戒どころか、頭を摺り寄せて甘えているではないか。
本能的にキースの力量を見抜いて服従した。
トロエはそう思った。
「うわ、何こいつら」
クラナが言った。
初めて見るジバに怯えつつもキースに近づく。
「大丈夫なの?なんか噛み付いてるよ」
本能的に危険を感じて、足が止まるクラナ。
「大丈夫。じゃれているだけだ」
ただの甘噛みが、クラナには襲われているように見える。
もう少し近寄る。
ジバがクラナのほうを向いて、くちばしをカタカタ鳴らした。
それは威嚇の動作。
クラナには勝っている。そう判断したようだ。
「な、何よ。キースに怪我でもさせたら、許さないからね」
クラナが言った。
強気の言葉とは裏腹に、少しずつ身体がジバから離れている。
ヴァサンの横に立つカサロフ。
「キース様をよろしくお願いします」
一度だけ彼女に視線を向けて、作業に取り組むヴァサン。
クラナの悲鳴。
皆が彼女の方を向く。
ジバに近づこうとして、また威嚇されたようだ。
嘆息するカサロフ。
色々教えがいがありそうだ。そう思いながら向き直る。ヴァサンと目が合った。
「仕事はちゃんとこなす。必ず『聖地』まで送り届けてやる」
ヴァサンが言った。
「私情は持ち込まん」
最後の言葉に力が入っていた。
叶わないと分かっていて、彼女、彼を愛してしまった。
ヴァサンとは似た部分がある。それは彼も感じているはず。鏡に映る自分を見ているようで、その気持ちが余計にお互いを遠ざけようとしてしまう。
愛した女(ひと)の子だ。
彼なら必ずキースを守ってくれる。
彼はそういう男だ。
カサロフはそう思っていた。
「もうすぐ出発だ。別れのあいさつは済ませておけよ」
ヴァサンが言った。
ジバに威嚇されて尻餅をついているクラナが、今ににも泣きそうな顔でヴァサンと見ていた。
クラナは、キースたち一行が見えなくなってもそこに立ち、止まらない涙を何度も拭いていた。
真冬ではないが、これだけ外気にされされていると手足の感覚が麻痺してくる。
北の街リノーズの朝は遅い。
太陽が顔を出すまでもう少し時間がかかる。
「もう気が済みましたか?」
カサロフが尋ねる。
うなずくクラナ。
白い息を何度も吐き、ようやくカサロフのほうを向く。
ひどい顔だ。
唇を震わせながら、ゆっくりとカサロフに近づくクラナ。
「まずは家に帰って、身体を暖めましょう」
歩き出すカサロフ。
少し遅れてクラナも歩き出す。
暖炉の熱で身体を暖めながら、クラナはキースの事を考えていた。
覚悟はしていた。
でも、こんなに辛いとは思っていなかった。
キースと出会ってからまだ一年も経っていないが、一緒にいることが当たり前のように感じていた。
そばにいないなんて・・・
キースが帰って来るまで何日かかるだろう。果たして、耐えられるだろうか。
クラナは、カサロフが目の前に座ったことさえ気づかなかった。
「順調に旅をすれば、『聖地』まで十日。向こうでの滞在日数、天候の具合を加味して、キース様が帰還されるまで約三十日といったところですか」
カサロフが言った。
クラナは、今にも泣き出しそうな顔を彼女に向ける。
「あまり時間がありません。ですが、あなたの努力次第で結果は出せると思います」
少し間を空ける。
微笑むカサロフ。
「聞くまでもありませんが、念のため伺います。あなたはキース様のために、命を捧げる覚悟はありますか?」
今度はクラナが微笑んだ。
「そんな事・・・もちろんです!」
予想通りの答えにうなづくカサロフ。
「その覚悟があるなら、あなたは必ずキース様の力になれます」
断言する。
「キースのためなら、どんなに厳しい修行でも乗り越えてみせます」
クラナが言った。
「そのためには、まずあなたが強くならなければなりません」
うなずくクラナ。
「あなたが得意とする魔法は何ですか?」
幻覚魔法と制御が不安定な攻撃魔法。
クラナが答える。
「ではまず、その魔法は捨てなさい」
一瞬、カサロフの言葉が理解できなかった。
何故、と聞こうとしたが、カサロフが目線を外さなかったので踏みとどまった。
「どちらも発動までに時間がかかります。相手をかく乱させる程度の魔法ならすぐに発動できますが、これからどんどん強くなる敵に対して有効とは思えません」
確かに。
では、どうやってキースを守る?
「あなたの強い魔力を活かし、キース様を守る方法はひとつ。キース様と命の契約をして、魔力供給をするのです」
カサロフが言った。
顔をしかめるクラナ。
「ちょっと待って。命の契約は何となく理解できるけど、魔力供給ってなに?・・・キースは魔法が使えないんだよ」
「その通りです」
即答するカサロフ。
「確かに、今のままでは魔法は使えません。私もキース様は魔法が使えないのだと思っていました」
でも、それは違った。
「この十年、ずっと答えを模索し、成長されたキース様と再会して、私の仮説は確信に変わりました」
薪のはじる音。
カサロフの言葉を待つクラナ。
「キース様はプレ・ナの血を受け継いでいます。プレ・ナの魔力は純度が高く、量も多い。私達とは明らかに使用量が違う」
クラナはプレ・ナが魔法を使ったところを見たことがないが、魔力を生み出す存在であれば納得できる言葉だった。
「つまり、より純度の高い、大量の魔力をキース様が取り込めば、魔法を使うことは可能なのです」
クラナは身震いした。
キースの、あの常人離れした身体能力に魔力が加わればどうなるか。考える必要もない。無敵だ。
高揚して泣きそうになる。
ただし、とカサロフは話を続ける。
「キース様の元々の体質と、背中の死印が邪魔をして、魔力を体内に蓄積することができません。ですから、誰かが魔力を送り続ける必要があります」
そんな話、聞いたことがない。
クラナは思う。
「魔法を使うためには、本人の素質と、ロフェアでプレ・ナと契約する必要があります。それと同じことをキース様とするのです」
「キースと契約する、ってこと?」
うなづくカサロフ。
そんな事ができるのか。
いや、キースはプレ・ナの血を受け継いでいる。可能性はあるかもしれない。
「ここからが本題です」
カサロフの表情が変わる。
「プレ・ナと魔法契約するのとは違い、キース様と契約するにはそれなりの代償があります」
代償・・・
儀式魔法の中には、人や動物などを生け贄にして行うものがある。代償が大きければ大きい程強い効果が得られる。
その類いか?
いや、戦場でそんな時間のかかる事など危険過ぎる。
魔法陣のような術式を描く。
これも発動までに時間がかかる。
では何だ?
話の始めに問われた事を思い出す。
そうか。そういうことか。
カサロフの意図するところが何となく分かってきた。
「私の命、ってことね?」
クラナの言葉にうなづくカサロフ。
迷いもためらいもない。自分の命でキースを守れるのなら。
「私の命なんか喜んでキースに捧げるわ」
クラナが言った。
予想通りの回答。
「それなら問題ありません。契約の方法は、パパスと話し合いながら考えて、ある程度組みあがっています。初めての試みですが、成功する確率はかなり高いと予想しています」
ひとつめの難関は開けた。
次の問題。
クラナは首を傾げる。
「魔力供給を行うには、キース様があなたの視界の範囲にいなければなりません。それが絶対条件。場合によっては、戦場の只中に、無防備な状態で立つことになります。あなたが死ねば当然魔力が途切れる」
大量の魔力を 送っている状況で敵と遭遇した時、どうやって自分の身を守るか。感覚としては、プレ・コアに魔力を送りながら、攻撃魔法が発動できるか、という状況。
無理だ。
魔力の量、とかではなく、魔法使いの力量の問題。
「私はあなた程魔力が強くありませんが、複数の魔法を同時に、一定の魔力で発動することができました」
クラナの力押しとは反対に、緻密で効率の良い魔力調整。それがカサロフの持ち味。
それを今から彼女に教えるのは、この短期間では無理。
カサロフはクラナを見つめる。
「身を守る魔法。あなたにはこれを覚えてもらいます」
防御の魔法。
いくつかあるようだが、クラナは知識があるだけで使ったことはない。
攻撃魔法を応用して、火や風を身体の回りに発生させる。戦場でよく使われた簡単な防御方法。これなら発生場所が違うだけで、一種類の詠唱で攻撃と防御が同時に行える。
他には、視覚を惑わすもの。自分より下等な生き物、鳥や小動物を操って敵を襲わせる魔法。これはクラナが得意とする幻覚魔法の類いだ。
クラナは魔力の制御が得意ではないが、力加減が上手くないだけで、数日練習すれば使える気がする。
得意魔法は捨てろと言われた。
カサロフが教えようとしている防御魔法は、これとは違う特別なもの。クラナは彼女の言葉を待つ。
「ヴァサンが使った技を覚えていますか?」
問うカサロフ。
「『瞬動』、だっけ?」
うなずいた。
少し間が開く。
カサロフは何も言わず、クラナの反応を待つ。クラナは首を傾げる。待っているのは私なんだけど。
え?・・・
まさか、あれ?
またうなずくカサロフ。
「敵に襲われそうになった時、状況を的確に判断し、その場から安全な場所へ瞬間的に移動できる。ガガル様が生み出した『瞬動』を応用した守りの魔法」
名前を付けるなら、『魔瞬動』。
「戦うだけが全てではありません。逃げるが勝ち。逃げ回ることも戦いのひとつです」
意外過ぎて、何を言っていいか分からないクラナ。
「ちなみに、アーマン様が会得するまでに一年、ヴァサンは二年近くかかりました。あなたは約30日で使えるようになってもらいます」
微笑むカサロフ。
短期間で会得できる魔法ではない。覚悟はしていたが、並みの修行ではなさそうだ。
クラナは彼女の笑みに恐怖を感じた。
リノーズを出発してから七日目。
予定なら『戦闘民族』が住んでいた、と言われている土地を過ぎているはずだったが、目の前も見えない吹雪に襲われ、旅は二日程遅れていた。
今日の夕方、ようやくかの地に到着したところ。ヴァサンとトロエはジバから降りて野営の準備を始めていた。
キースは?
プレ・ナであるパパスと並んで『聖地』のある方角を見ていた。
その姿を横目で見ながら、ナックはジバの世話をする。何となくそういう役回りになっていた。
「悪天候で足止めを食らったが、ここまでは順調だな」
パパスが言った。
順調とは、 天候以外の障害がなかったということ。ノマを操ることが出来る魔法使いの仲間は、まだ何も仕掛けてこない。彼は銀毛のハイオカの姿でキースたちを監視し、好機を狙っているのか。
「ここの風は、何か違う気がする」
キースが言った。
「君の先祖がいた土地。理由は分からないが、地面から発生する磁力の影響で、百年前から大気中の魔力が安定しない」
パパスが言う。
ここだけ季節が違っていた。
リノーズを出発して、二日目あたりから大地は氷に覆われ、気温はさらに低くなった。うかつに深呼吸すると、吸い込んだ空気が身体の中で氷ってしまうくらい寒い。
そんな中を進んできて、突然地面が現れる。『戦闘民族』が住んでいた土地。今キースたちがいる場所だ。
磁力の影響なのかどうか分からないが、この一部の地面だけは氷に覆われず、気温も少し高い。
「キースさん、パパスさん。食事の用意が出来ました」
背後で声がした。
振り返ると、案内人のひとりであるトロエが立っていた。彼はキースたちに近づき、横に並んで立ち止まった。
同じ方角を見る。
「何か気になる事でも?」
問うトロエ。
キースは彼のほうを向き微笑むだけ。
胸のあたりが苦しくなる。
それにしてもよく似ている。コンサリと出逢った頃を思い出す。
ヴァサンは彼女を見て、どんな心境なのだろう。
焚き火のまわりに全員が集まる。
「温かい食事が食べられるのはここまでだ。ゆっくり食べればいい」
ヴァサンがキースに言った。
顔は向けない。
「ありがとうございます」
キースが言った。
彼は立ち上がり、ジバのいるほうへ歩いていった。
小動物の肉を煮込んだスープと、温かいブドウ酒。防寒服を着ていても、身体の芯まで凍りそうな寒さ。そのなかでの温かい食事は、なによりのご馳走だ。
トロエが率先して取り分ける。
ヴァサンと交代して、ナックがやって来た。何度も横を向いて落ち着きがない。
「ヴァサンのことは気にしないで下さい」
トロエが言った。
「元々独りでいるのが好きな方なんです。彼と案内人を組んでから、もう随分経ちますが、普通に会話出来るようになったのは、つい最近なんです」
苦笑する。
トロエはヴァサンと違ってとても話好きで、太陽や星で方角が分かることや、天候の変化の見極め方など、今後の旅に役立ちそうな事を話した。
特に北方では、何もかもが氷に覆われ、景色に変化がなく、目印になるものが無いため、彼の知識がとても役立つと感じた。
談笑しながら食事をしているキース達。
時々、気づかれないように顔を向けるヴァサン。
キースは、コンサリに初めて出会った頃にとてもよく似ている。
まさか彼女の子を『聖地』へ案内する日が来るとは。彼の心境は複雑だ。
もう二十年、近く前になるか。
コンサリは、彼が初めて本気で好意を持った女性。容姿の美しさはもちろん、彼女はいつも笑顔で、村人の誰からも愛されている魅力的なプレ・ナだった。
誰であっても動じず、人懐っこい。
『聖地』の案内人としてリノーズに住み始めた頃、無口で目つきの悪い彼に、村人は近づこうとはしなかった。ただ独り、コンサリだけは違った。何の警戒心もなく、古くからの友のように気軽に話しかけてきた。
彼女といると穏やかな気持ちになった。
自然と笑顔になる。
全てが上手く進んでいた。
あの魔法使いとアーマンが来るまでは・・・
十日目。
遥か前方に、世界を二分する大きな壁が見えてきた。
『ロカの壁』
ロカ山脈の最北部。太古の地殻変動で隆起した大地が、『聖地』へ行く者の障害となって立ちはだかる。ジバの足であと一日程進めば、目の前に巨大な氷の壁が現れる。
戦闘民族がいたという土地を出発してから晴天が続いた。旅は順調だった。
ここまでは。
青い空に白い大地。身を隠す場所など無い。キース達は立ち止まった。
魔法が使えない、ということは、魔力の効果もない、ということ。ノマと遭遇したら、戦うか逃げるしかない。
「囲まれています」
トロエが言った。
彼が言うまでもなく、全員が異様な光景を目にしていた。分かっているが、声にしないと現実に負けそうになる。
経験したことのない程のハイオカの群れ。
その背後には巨大な白い塊が。初めて見るノマだった。ドレイド南部に生息する『メジ』くらいの大きさ。身体全体が白い毛で覆われている。普段は四足歩行だが、攻撃体勢になると後ろ足だけで立ち、前足の鋭い爪を武器とする。
荷物の袋からパパスが出てきた。
「壮観だな」
見回して一言。
前足で顔を洗い始める。全く緊張感がない。
「こんな大群、見たことがない」
ヴァサンが言った。
「どうする?、勝ち目はないぞ」
ナックがキースに問いかける。
旅の途中、輪具(リング)の力を発動させようと何度も試みたが、やはり魔法は使えなかった。
ここでは魔法無しの実力のみ。
たとえキースが人並み以上の戦闘力であっても、この数と戦うのは無謀というものだ。
「あのハイオカの後ろにいるのは?」
キースがパパスに問いかける。
パパスは面倒くさそうに前を向いて、
「ああ、初めて見るノマか。あれはワイバという。動きは鈍いが、馬鹿みたいに前足の力が強い」
キースの反応は無い。
何か思案しているように感じる。
おいおい、冗談だろ。
まさかこの大群とやり合うつもりか?!
ヴァサンたちより少し長く旅をしてきたので、彼女の様子で理解できる事もある。
キースは戦う気だ。
キースはヴァサンに歩み寄った。
「対抗策がありますか?」
問うキース。
ヴァサンは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにいつものしかめ面に戻った。
「こんな大群に囲まれたのは初めてだ。隙を見て逃げるのが得策だろうな」
キースの表情は変わらない。
待っていた答えと違ったようだ。
「嘘だろ。まさかお前、この大群と殺り合う気か?!」
さすがのヴァサンも声を荒げた。
「これは、『聖地』にいるノマを操れる者からの挑戦です。逃げるわけにはいきません」
だからって・・・
ハイオカは、よく訓練された兵団のように連携して動き、獲物を確実に、効率的に狩る。
ワイバは大型で、立ち上がれば二メートル以上ある。動きは鈍いが分厚い皮膚と太い体毛が 矢を通さず、前足の鋭い爪で、ジバなど一撃で倒す。
囲まれた数は、五十を軽く越えている。
「諦めたほうがいいですよ」
後ろからナックの声がした。
「キースには俺たちの常識は当てはまりませんから」
横に並ぶ。
「覚悟はできている。どうやって戦う?」
ナックが尋ねた。
「目当ては私だ。先行して引き付ける。できれば、ナックにも来て欲しいが」
首をすくめるナック。
「陽動か。仕方ない、付き合うよ」
二人は武器の入った袋を開けて、吟味を始めた。
ジバを引き連れて、トロエもやって来た。
「まさか戦う気ですか?!」
返事がなかったので、彼はヴァサンとキース達に何度も目線を送った。
持てるだけの武器を手に、キースがトロエを見た。
「私たちが道を作ります。安全な場所まで走って下さい」
キースが言った。
臆した様子などない。
この大群を目の前にして、何故冷静でいられるのか。
勝ち目があると本当に思っているのか?
「俺も行こう」
ヴァサンが言った。
キースは首を振る。
「あなたは大事な案内人です。怪我をされると困ります」
私たちだけで大丈夫ですから、と二人はヴァサン達から離れていった。
「あの自信に満ちた顔。自分が犠牲になっても他の者を守ろうとする。あいつによく似ている」
気に入らん。
最後はほとんど囁くような声で吐き捨てて、ヴァサンは出発の準備を始めた。
トロエも同じように動き出す。
「いいんですか、二人だけで行かせて」
作業をしながら問うトロエ。
「勝手にさせればいい。案内する奴がいなくなれば、俺たちの仕事が終わるだけだ」
気になっているのは、彼の様子を見れば分かる。手助けできなくて意地になっているだけ。
「心配いらんよ」
荷物の上に器用に座るパパスが言った。
「アーマンとコンサリの子だぞ。それに、剣の師匠がガガルだ。彼女の実力がどの程度か知らんが、並みじゃないのは確かだ」
旅立つ前、ヴァサンと対戦して勝つ程の実力。人並みでないのは分かる。
「そうなんでしょうが、あの大群ですよ。いくら強くても・・・」
トロエは心配でならない。
キースは槍を三本、不規則に氷の大地に突き刺した。
意味が無いようであると、ナックは思っている。彼の手にはボウガン。一射の殺傷力は弱いが、連射できる強みがある。
キースは柄の長い斧を最後に突き刺して、両手に直刀の剣を持った。
「奴らは間違いなく私を襲って来る。捕らえられないノマを頼む」
うなずくナック。
キースが捕らえられないノマを、射ることが出来るだろうか。
親の仇だったロズを倒せなかった。
あれ以来、ナックは自信を失っていた。
そして今は魔力が使えない。
キースと目が合った。
「よろしく頼む」
と一言。
気落ちしている場合じゃない。キースに怪我でもさせたら、絶対ただでは済まない。
ゆっくり深呼吸。
冷気が身体の芯まで染み渡る。
キースたちを取り囲んでいるノマの大群が動いた。
『この数を見て、自分から寄ってくるとはな』
男の声が頭の中に響いた。
『戦闘民族というのは、つくづく馬鹿な生き物だ』
いや、お前は特別変わっているかもな。
声の主を捜すナック。
キースは動じない。
「ここまで来た。降参するなら今のうちだぞ」
彼女の言葉を聞いて、声の主が笑ったような気がした。
『面白い奴だ』
その言葉を合図に、ハイオカが威嚇のうなり声を上げた。
この大群が一斉に始めると、まるで地鳴りのような、本当に氷の大地が揺れているように錯覚した。
「援護はして欲しいが、あまり私に近づかないように」
最初から全力で行く
え? と、ナックは思わず聞き返しそうになる。
全力・・・
キースの全力がどこなのか、ナックには分からない。想像するに、ロズと対戦した時が 彼女の最大力 ではないかと思う。
箍(たが)を外せ。流れを引き寄せろ。
自分の戒めを解く。
驚異的な脚力と運動能力。
ハイオカが一気に押し寄せた。
両手の剣を軽々と振り上げるキース。氷の大地は滑りやすく、表面がデコボコしている。彼女は向かってくるノマに応戦する姿勢をとった。
剣術も格闘術も、人並みでないことは理解している。それでも目の前の光景を見ると、驚かずにはいられない。
ハイオカはとにかく動きが素早い。氷の大地であろうと関係なく、五匹くらいが連携して、四方から襲ってきた。
対してキースは。
両手の剣を振る。ハイオカが何処から飛びつこうと、四方から同時に来ようと、両手の剣の軌跡が断ち切る。
脚が飛び、首が飛ぶ。
連携して行動するハイオカには、仲間を先導 する一匹がいる。それを瞬時に判断して倒す。一瞬乱れた連携を逃さず、直刀の剣が舞う。
そう、キースの剣技は『舞う』という言葉が相応しい。
凍った大地は滑りやすく不安定だ。
脚はほとんど動かず、それなりに重い剣を軽々と振る。
背後からハイオカが襲ってくる。
剣の向きを変え、盾とする。
最小限の動きで 最大の攻防。
ハイオカの不規則な動きを読んでいる。
足元から来ようと、跳躍して上から来ようと、キースが持つ剣が阻止する。
ゆっくりだが、キースを囲んだ集団が移動している。
氷の大地に突き立てた槍が、キースのすぐ後ろに迫っていた。
ナックは二束目の矢をボウガンに取り付けた。集団から飛び出し、ヴァサンたちのほうへ向かうハイオカを狙う。
初めて使う武器だが、面白いようによく当たる。精度の良さは、ナックの腕ではなく、手入れの良さ。
ボウガンの連射から逃れたハイオカが飛び出した。真っ直ぐ、ヴァサン達の方へ向かう。
狙撃が間に合わない!
視界の端で、キースが槍を持つのが見えた。
投げた。
槍は綺麗な放物線を描いて、先頭のハイオカを貫いた。
信じられない投てき距離と正確さ。
先導を失ったハイオカの集団の動きが鈍る。
ナックは距離を詰め、ボウガンを構えた。
キースを囲むハイオカが横に広がった。
今度は白い塊が彼女を囲んだ。『ワイバ』と呼ばれるノマだ。
立ち上がると二メートルを超える。前足の爪は、金属のように硬く鋭い。
逃げ場は無い。
ワイバの白い壁が、ゆっくりとキースに迫っていた。
キースは、怯えることも慌てることもせず、両手の剣を氷の地面に突き刺した。
両腰にある細身の刀。リノーズを出てから布で巻いていたが、今は無い。右にガガルの遺した刀。左に魔刀キース。
彼女は迷わず、左腰の刀に手を置き、止め金具を指で弾く。
ワイバの動きが鈍る。操られていても、本能的に何かを感じとったようだ。
魔刀キースは、『気』を奪い取る刀。それが善きものでも、悪しきものでも。
「・・・試してみるか」
キースの言葉。
抜刀 。
緩やかな曲線を描いた刀身は、鈴の音のような音を従え、左右に振られた。
直後。
異変に気づいたのは、銀毛のハイオカが最初だった。首を何度も振り、視覚から情報を得ようとしている。ついには走り出して、ノマの大群に接近した。
『何が起きた・・・あの女が何かしたのか・・・?』
キースを見る銀毛のハイオカ。
左腰の鞘に刀を収めるところだった。
「上手くいったようだ」
そう言ってノマの大群を見回し、
「ここから立ち去れ」
と、一方向を指し示した。
すると、今まで攻撃的だったノマの大群は威嚇を止め、キースの示した方角へ進み始めた。
キースを見つめたまま動かない銀毛のハイオカ。
ボウガンを構えたまま呆然とするナック。
『魔刀キース』
斬れないものが斬れる刀。
ノマの精神を支配していた力を断ち切り、支配権さえも奪ってしまった、ということか。
『俺が何年もかけて大成したものを、一瞬で崩してしまうとは』
男の声が頭の中で響く。
『やはりお前は我々の脅威となる存在のようだ』
冷気がさらに増した気がした。
銀毛が逆立ち、獣のうなり声がキースを襲う。
キースは、氷の大地に突き立てた二本の剣を取り、白い息を吐いた。
駆ける銀毛のハイオカ。
軽々と剣を振るキース。
目の前で方向を転じる銀毛。正面からキースの右側へ。振り上げた剣は空を切り、迫った牙は何も捕らえなかった。
回転力を加えた剣が銀毛の背中をかすめる。
今までのハイオカと毛並みが違うだけではない。頭脳も脚力も、それをはるかに超えていた。
着地と同時に身を転じる。
前足の鋭い爪がキースの腕を狙う。
届かない。
素早い動きではないが、あと少しが届かない。
直刀の先端が銀毛の眼前に。
破壊音。
あり得ないことだが、銀毛のハイオカの牙が剣を砕いた。
右手の折れた剣を離し、突進してくる銀毛をかわす。左手の剣を足元から振り上げる。体勢が崩れた分、銀毛には及ばない。
直刀の剣が宙を舞った。
銀毛のハイオカが向かってくる前に、キースの手は右腰のガガルの刀を掴んでいた。
素早く抜刀。
見えない何かの力が、銀毛のハイオカの動きを止めた。
振り抜いた刀を両手に持ち直し、一歩踏み込む。
冷気を切り裂く程のひと振り。
前足が二本、関節あたりから消えた。
縦に一閃。
胴体が二分。肉片と化した銀毛のハイオカが、氷の大地に転がった。
キースは刀を鞘におさめると、ある方向に向かって歩き出した。
「何が起きたんだ?」
キースに近づきながら問うナック。
彼女は答えず、突き立てた長柄の斧に向かって進んだ。
『魔力ではないお前の力』
また男の声が頭の中で響いた。
慌ててボウガンを構えるナック。だが、何処に向けていいか分からない。
斧を手に持ち、分断した銀毛のハイオカに歩み寄るキース。
『来るがいい。そして絶望しろ。お前の旅が無意味だと思い知ることだろう』
銀毛のハイオカに 斧を振り上げる。
振り下ろす寸前、牙を向いた頭部が飛び上がる。
キースにでなく、横に立つナックに向けて・・・
「ヒャン!!・・・うぅ・・・」
半泣き顔で奇声を上げるクラナ。
何度も叩かれ、きっと真っ赤に腫れているであろう尻をさする。
「遅い。もう一度・・・」
手にした馬用の鞭をもて遊びながら、クラナをじっと見るカサロフ。
深呼吸。
精神を集中して、周りの大気ごと集める感じで・・・
パシッ!!
グェ!
「アァ~ン、もうダメェ~」
尻をおさえながら、その場に倒れこむクラナ。
「これ以上叩かれたら、お尻が割れちゃうよ~」
嘆息するカサロフ。
「お尻は初めから割れています。呼吸をするように、ごく自然に魔力を集めるのです。同時に身体能力も高める。そうすれば、この程度の痛みなど感じないはずです」
尻を突き出した格好で、うつ伏せのまま動かないクラナ。痛みと上手く出来ない悔しさで、勝手に涙が溢れ出る。
キースと離れて十日。今より早く魔力を体内に貯める練習を繰り返しているが、全く出来る気がしない。心は折れに折れまくって、キースの肌の温もりを思い出しては泣く日々を送っている。
「少し休みましょう」
カサロフが言った。
暖炉に薪をつぎたし、台所に消える。
朝起きてから寝るまでの間、食事する時間以外は全て修行。北の街リノーズは、魔力の濃度が高いので、条件は良い。初心者でも熟練者でも、負荷なく魔法が使える。
クラナはプレ・タナの中でも上位に相当する実力者だ。今のままでも十分脅威であり、得意とする幻覚魔法は言わずもがなだ。
それでも修行をしているのは、さらに上を目指しているからであり、キースのためだけに魔力を使う方法を会得するためだ。
ここはカサロフの生家の一室。
暖炉の薪がゆらゆらと燃えている。
カサロフが戻ってきた。陶器の茶碗をテーブルに置き、暖炉の上で湯気を上げている鍋から白い液体を移す。家畜の乳を搾ったもの。
クラナの前に置く。
ゆっくりと、尻をかばいながら立ち上がる。
「ありがとう。頂きます」
両手で茶碗を持ってすする。
ため息。
心の落ち着きともどかしさが重なる。
カサロフは、クラナの様子を見ながら、湯気のたつ茶碗を顔に近づける。
「本当は自分で気づいて欲しいのですが・・・」
顔を上げて、じっとクラナを見るカサロフ。
何事かと首を傾げるクラナ。
「魔力、というのは、大気中に存在して、場所によって濃度の差がありますが、最後は術者の容量で決まります」
「・・・はぁ」
気のない返事。
カサロフの言いたい事が今一つ分からない。
「魔力を貯める量は、ある程度は修行や経験を積んで増やすことができますが、個人の潜在的な力量が大きく影響します」
椅子に座りかけてやめるクラナ。座ったら、腫れた尻の痛みでまた悲鳴をあげることになる。
「あなたは、そうですね、プレ・コア(魔法柱)で例えるなら、5基分の魔力を一度に集めることができる術者です」
暖炉の薪が崩れた。
「この大陸で、そんな術者は私の知る限り、ラマジャ様以外いません」
カサロフにほめられている?
自覚のないクラナ。
「ただ、あなたは、魔力を集める力があっても、それに耐える身体ではない。人並み以下の体力と貧弱な肉体。それを補うための訓練です。これを会得しないと、この先キース様のお荷物になるだけです」
前言撤回。
自分で分かっていても、はっきり言われると傷つく。
「もう一度考えて下さい。これは何のための修行なのか。誰のためにしているのか」
「そんなこと・・・」
言われなくても分かっている。
全てはキースのため。
彼女とこの先も、共に旅を続けるため。
彼女の助けになるため・・・
背筋を伸ばすクラナ。
片手を腰につけ、茶碗の中身を一気に飲み干す。
言葉にならない雄叫び。
尻の痛みはどこかへ吹き飛んでしまった。
「こんな事で凹んでる場合じゃない!」
顔面を数回叩いて集中力を高める。
微笑むカサロフ。
単純で判りやすい性格。
それが羨ましく感じる。
私にもそんな思考があったなら、少しは現状が変わっていたのかも・・・
すぐに否定する。
今さら過去の事を悔やんでも仕方ない。
クラナ、それがあなたの武器であり、持ち味。強い意思は、不可能を可能に変える力がある。
立ち上がるカサロフ。
今すべきことは、彼女がキースの手助けとなるために育てること。
鞭を持ち、クラナの側に立つ。
彼女の意思は、暖炉の炎のように、強く燃え上がっているようだった。
「さすがロズを倒した女。そして、唯一の成功例・・・」
暗闇の中で声がする。
銀毛のハイオカと同じ声。
「俺にはロズやイリリのような戦闘力はない。まともに戦って、勝てる相手ではないしな・・・」
闇の中で何かが動いているが、形を捉えることが出来ない。
「さて、どちらにつくか・・・」
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