episode12 「再会」
『必ず迎えに来る』
彼はそう言って旅立った。
今では遠い昔の、夢物語のような出来事に感じる。
同じ場所で待つ、というのは、これ程時間の流れを遅く感じるものなのか。
少しずつ衰えていく肉体。
あと何年生きられるだろうか。
不安が期待を蝕んでいく。
独りで住むには広い家。頑丈な石の壁は、寒い冬を過ごすための特徴。
村人たちの力を借りながら、畑と家畜を日々こなしてきた。
本格的な冬はまだ先だが、暖炉の火は絶やせない。少なくなってきた薪を補充するため、家のすぐ横の小屋に行く。
今日は朝から落ち着かない。
胸騒ぎがする。
遠くの空を見て、独り微笑む。
初めて彼と出会った時もこんな感じだったな。
懐かしい記憶と感覚が蘇る。
彼と過ごした日々。仲間たちとの旅。楽しかった事、辛かった事。どれもが懐かしく、遠い。
そして・・・
彼女との別れ。
抱きしめた時の感触が、今でもはっきり残っている。
何年経った?・・・もう十年くらいになるか。母親に似て、美しい女性に育っているだろうな。
ふと立ち止まって振り返る。
村の中心から誰かがやって来る。
長身の武装した戦士が二人。ル・プレがひとり。東国の民族衣装を着た男。
そして、先頭にいる女性は・・・!
全身が震えた。
もう会えないという思いと、もしかしたらという期待。過去の全てが消し飛んで、視界の現実を受け入れる。
忘れかけていた忠誠心。
薪を置いて道に出る。膝をついて頭を下げる。
「カサロフ・・・」
自分の名を呼ぶ懐かしい声。
勝手に涙が溢れ出す。
「キース・・・様・・・」
言葉が出ない。
しばし沈黙。
彼女もまた、どう声をかけていいのか戸惑っている。
膝をついて目の前に座った。気配で分かる。
目を開けて顔を上げる。
同じ顔。
彼女は母親そのままの顔で成長していた。
「キース様。立派になられましたね」
笑っているような悲しんでいるような。そんな複雑な表情。
キースの手が背中にまわり、やさしく抱きしめられた。
「カサロフ・・・会いたかった」
幼い彼女をおいて旅立った罪悪感。
キースの言葉とぬくもりが、背負っていたものを洗い流してくれた。
「私たちは村の酒場で一杯やっています」
手を振るラザン。
何か言いたそうな顔のクラナ。スレイに腕を掴まれ、引きずられるように離れていく。キースの乗ってきた馬を連れて、ナックも来た道を戻っていく。
納得いくまで話し合って下さい。
彼らの背中がそう言っている。
もちろん、キースもそのつもりだ。
「良いお仲間ですね」
カサロフが言った。
キースが振り返る。
「行きずりで知り合った」
「それでも主を思い、忠誠を誓っている」
地面に置いた薪を拾う。
「キース様、どうぞ中へ」
二人は家の中へ。
仕切りの無い広い部屋。暖炉の火が程よい温度に保っている。
キースはローブを脱ぐ。
「ここは私の生家なんです」
カサロフが言った。
薪を暖炉の横に置き、キースを導く。目の前に来ると、膝をついて彼女を迎える。
「まずは再会できた喜びと、私に会いに来て下さった事への感謝を申し上げます。キース様、ありがとうございます」
カサロフが言った。
彼女の腰にある刀に目をやる。
「キース様がその刀を持っておられるということは、ガガル様は・・・」
うなずくキース。
「そうですか・・・」
彼の年齢から考えて、仕方の無いことなのだが、実際現実を知ると辛い気持ちになる。キースに剣術を教えるのも、相当負担になっていたかもしれない。
カサロフは顔を上げる。
彼女の目は優しく、母親が子供の成長を喜ぶかのようだった。
「ガガル様のもとで、よく学ばれたようですね。本当に立派になられた」
カサロフに見つめられて、キースは何だか居心地の悪いような、くすぐったいような感覚だった。
「きっかけはガガル様が他界されたことかもしれませんが、いずれこうなることは分かっていました。覚悟はしていました」
自分に言い聞かせるかのよう。
カサロフに導かれ、暖炉の前の椅子に座るキース。
「病気だと聞いたけど、本当なの?」
問うキース。
カサロフは一瞬驚いたような顔をして、すぐに微笑んだ。
「それを聞いて会いに・・・・病気ですか。確かに体調は良くありません。病気といえば、まあそのようなものですね」
曖昧な返事。
陶器の器に温めたぶどう酒を注ぐ。キースに手渡し対面の椅子に座る。
「ゴルゴルにいる、あの少年から聞いたのですか?」
ロズのことだとすぐに分かった。
うなずくキース。
「そうですか。少年に会って、キース様がここにいらしたということは、少年を滅ぼしたということですね」
滅ぼした?
倒した、という意味だろうか。
不思議な表現。
「少年の実力は、一度会ったことがあるので分かります。やはり、よく学ばれたようですね。ガガル様のもとで修行されたのは、正しかったようです」
遠くを見るような目。
「もちろん、カサロフの事が心配でここに来たけど、私は自分の事をあまりにも知らな過ぎる。どうか教えて欲しい。母親のことや、『あの人』の行く先を」
あの人、とは、キースの父アーマンのことだ。
キースは父親に捨てられ、ドレイドに置き去りにされたと思っている。そのことが引っかかっていて、父親と認められない気持ちを持っていた。
「その前に確かめたいことがあります」
カサロフの言葉に首を傾げるキース。
「私がキース様に施した『呪印』が、どうなっているか見せていただきませんか?」
「・・・分かった」
戸惑いながらも、納得して立ち上がるキース。
「実は、一度解けそうになって、ラマジャに直してもらった」
驚くカサロフ。
「それはつまり、自力で解いた、ということですか?」
「うん。ガルじいと修行中に」
「信じられません。あれは私以外には解けない術なのに・・・」
元々人に施す術ではない。
常識から外れていても不思議でない。
そうとしか考えられなかった。
キースは刀を置き、簡素な防具を外す。腰帯を緩めて上半身裸になる。
カサロフの視線がキースの胸元に向けられる。
「こちらも、立派になられたようですね」
少し恥ずかしそうな顔をするキース。
クラナが見たら、興奮して卒倒しそうな顔だ。
背中の魔法陣を見て、また驚く。
「これは・・・『死印』」
「ロズも同じことを言っていた」
そこにカサロフが描いた術式は無く、全く別の、鳥の翼を模したような絵柄が、背中全体に広がっていた。
術の効果を補修し、さらに書き加えがされた、ということ。
さすがラマジャ様。
しかし・・・
「これが発動したということは、ラマジャ様はもう・・・」
十年という時の流れを感じるカサロフ。
現実を受け入れるしかない。
また、新たな疑問。
『死印』が発動したということは、カサロフの封印術が解けそうになった、ということだ。
「これはまた、自力で解いたのですか?」
キースは首を振る。
「これは仲間のクラナが解いてくれた」
ルコスでの出来事を説明する。
ゲバラクと会ったことや、武闘会に参加したこと。そして、大陸一と言われていた剣士ザギと戦ったこと。
チャウバの死。
キースの話は、カサロフには驚きの連続で、語るキース本人にとっては、遠い過去の出来事のような気分だった。
キースの旅立ちは、多難の繰り返しだったようだ。
感慨深いものを感じ、カサロフはキースの背中に優しく抱きついた。
キースは上着を整える。カサロフは暖炉に薪をくべる。
これまでのキースの道のりを聞いて、後戻りができないと感じたカサロフ。
何も隠す必要がない。
真実をそのまま伝えよう。
キース本人に選択させればいい。
カサロフは、開口を待つ彼女に目をやった。
「私の話を聞いて、父であるアーマン様を理解していただけると信じ、キース様が良い選択をされることを願います」
返事はない。
カサロフはぬるくなったぶどう酒を一口飲む。
「ガガル様の村へ行った時、アーマン様と私が集会場で話したことは覚えていらっしゃいますか?」
「ほとんど覚えていないが、私の母がプレ・ナだと」
うなずくカサロフ。
「そうです。確かにキース様の母はプレ・ナです」
少し間が開く。
「彼女の名は『コンサリ』。全てのはじまりは十八年前。この村リノーズで起きました・・・」
カサロフが話し始める。
それは偶然と必然、出会いの物語。
キースの目が真剣さを増した。
陽が落ち、寒さがいっそう厳しくなった。
カサロフとキースが酒場に来たとき、それがどんな状況なのか理解できなかった。
村人たちが陽気に酒盛りをしているテーブル。
となりのテーブルは、倒れて酒がこぼれたジョッキと食べかけの料理。そこにクラナやスレイたちがいた。
酒場に似合わない表情。驚いているのか、恐れているのか。
スレイとラザンは、今にも武器を手にしそうな構えのまま立っている。
ナックとクラナは、椅子から少し腰を浮かせた格好で固まっていた。
散乱したテーブルの上。
彼らの視線はそこに集中している。
短毛の小型動物が座っていた。
記憶が確かなら、主に南の熱帯地方にいる猫に似た動物。北の寒冷地にはいない生き物だ。
カサロフがテーブルに近づくと、その動物がこっちを向いた。
「やあ、カサロフ。期待通りの反応だったよ」
さすがのキースも驚いた。
その動物は言葉をしゃべったのだ。
「みなさん、ご心配なく。彼は大丈夫です」
カサロフの言葉を聞いても、彼らの体勢は変わらない。言葉をしゃべる動物に害がないとは思えなかった。
「すぐには信じられないでしょうが、彼はこう見えてプレ・ナなんです」
怪しさがさらに増す。
プレ・ナはもっと北の、氷の世界でしか生きられない。そう言われている。それと、彼らの容姿は大きくふたつあって、人に近い姿と半獣で、こんな猫に似た小型のものは聞いたことがなかった。
あくまで人の噂と文献だけの知識だから、正確なところは分からない。
信用したわけではないが、カサロフが平気そうにその動物の横に立っているので、スレイとラザンは武器から手を離した。
その時だった。
今まで陽気に飲んでいた村人たちが、一斉に立ち上がった。
椅子が倒れ、ジョッキが倒れた。
スレイとラザンが慌てて武器に手をかける。
「コンサリ・・・コンサリだ・・・」
うわごとのように名を呼ぶ。
彼らの視線の先には、キースが立っていた。
「カサロフとコンサリがいるぞ」
誰かが言った。
「二人が一緒にいることは有り得ない」
「じゃあ、あの子は誰なんだ?」
カサロフが村人たちの方を向いた。
「彼女はコンサリではありません」
村人たちはカサロフを見る。
「彼女の名前はキース。あの剣士とコンサリの子です」
地鳴りが起きたかのような村人のどよめき。
カサロフはキースを見た。
「紹介します。彼が私の同居人でプレ・ナの『パパス』です」
クラナが言葉にならない声を上げる。
「パパパ、パパスって、まさかあの本書いた人?」
キースも聞き覚えのある名だった。
ルコスを旅立つ前、ゲバラクとの話で出てきた名前だ。
確か『聖地』への案内人として、アーマンに紹介したとか。
ゲバラクの知り合いで、魔法書の著者で、カサロフの同居人。それがこの猫のような小さな動物。
しかも、この生き物がプレ・ナだとカサロフは言う。そう考えれば言葉をしゃべることも納得できそうだが、すぐには受け入れられない。
「まあとにかく、お酒でも飲みながらお話いたしましょう」
そう言って、テーブルの椅子に座るカサロフ。
キースたちには、彼女の言葉に従うしかなかった。
プレ・ナは人と同じく男女の区別がある。
しかし、進化の過程で生殖機能は失われ、子孫を残すことはできない。だから、ある時期を境に人口は減少するのみだった。
ただし、プレ・ナの寿命は人より長く、平均二百から三百才。最長で五百である。 そんな説明から話が始まった。
男女五人の旅人が、酒場でしゃべる猫の言葉に耳を傾けている。
奇異な光景だ。
もっと奇異なのは、キースに群がる村人たちだ。
『コンサリ』、という名を連呼しながら、やたらとキースに触れたがる。
頭を撫でたり、腕や身体を触ってみたりして、自分たちの知る『コンサリ』との違いを探ろうとしていた。
そんな村人たちからキースを守ろうと、クラナが間に入って押しのけようとするが、細身の彼女が屈強な男たちに敵うわけがなく、あっさり吹き飛ばされる。
クラナが尻餅をついても、村人はキースのまわりから離れない。
嘆息。
彼女の必死さが滑稽過ぎて、笑いをかみ殺すラザン。
ようやくカサロフが間に入ってくれた。村人たちは、彼女の言葉に納得し、自分のテーブルに戻った。威嚇したわけではない、なんというか、カサロフの言葉には人を従わせる力がある。そう感じた。
「コンサリは、プレ・ナのなかでも特別だった」
パパスが言った。
遠くを見つめる青い瞳。
当時を思い返しているのだろうが、猫の顔からは感情を読み取ることができない。
燭台に火が灯り、暖炉に薪が足された。
「そして、カサロフもまた、人のなかでは特別だった」
カサロフとコンサリの奇妙な関係。
パパスの話は、まるで旅の詩人が語る絵空事のようだった。
プレ・ナは魔力を生成、管理する、全く別の存在。人との接点は無い。唯一は、魔法修行の最後に、『聖地』と繋がっているという『異界の門』から声を聞くだけ。それが魔法使いとして認められるか否かの儀式。
それだけ。
人とプレ・ナが交わることは無い。だから、今耳にした事を、素直に受け入れることは難しい。
でもそれが本当なら、キースの母親がプレ・ナでもおかしくない。
それを肯定しないと次に進めない。
「ちょっと待って」
クラナが言った。
両手を広げて、パパスの話を止める。
「頭がついていかない。話を整理させて」
スレイたちも大きく息を吐く。
思い出したように、手元にあるジョッキを口に運ぶ。
「つまり、キースのお母さんとカサロフさんは、生まれた日が同じで、人とプレ・ナだけど、お互いの身体を共有できる不思議な関係だった」
うなずくカサロフ。
「二人はある時期から、肉体と精神を切り離すことで、お互いの身体を入れ替えることができた。そうすることで、プレ・ナであるコンサリさんは『聖地』以外の場所に行くことができた」
「そうだ」
パパスが言った。
「で、理由は分からないけど、その大陸の外から来たっていう魔法使いが、ロズたちを使ってコンサリさんの精神だけを奪ったと」
自分に言い聞かせるように話すクラナ。
彼女の隣でラザンは酒を飲み干し、ジョッキをあげて店主におかわりをせがむ。
「アーマン様はコンサリの精神を奪い返すために、その魔法使いを追って旅立たれました」
そう言ってキースを見るカサロフ。
足手まといだから置いて行ったのではない。
こうなる日を想定して、信頼できる師のもとで修行させた。
それをキースに分かってほしい。
「魔法使いは、何故コンサリ様を連れ去ったのか・・・」
スレイが言った。
そこがどうしても気になる。
「おそらく、プレ・ナの特異な力を自国に持ち帰りたかったと、私は思っています」
カサロフが言った。
特異な力。
魔力を生成、管理する能力。
「プレ・ナは北の極地でしか生きられない。それで、精神と肉体を切り離せるコンサリ様が狙われたのか」
ラザンの言葉に、うなずくカサロフ。
何かを言いかけてやめる。
パパスを見て、下を向く。
すぐに顔を上げてキースを見る。
酒の入ったジョッキが運ばれてきた。
「なんだい、この席は」
給仕の女が言った。
中年の、横向きに大きな体格の女。
ジョッキを乱暴に置いて、腰に手をあてる。
「酒場なんだから、もっと陽気に飲みなよ。こうしてさ、コンサリそっくりな娘に会えて、あたしゃ嬉しくてさ、一杯もらってもいいかい?」
返事を待たず、ジョッキを持って飲み始める。
喉を鳴らし一気に飲み干す。
歓声があがる。
爽快感を感じるくらい良い飲みっぷりだ。
キースに抱きつく。
胸だか腹だか分からない部分を押し付ける。
「あんた、名前は?」
問う女。
「キース、です」
「なんだか男みたいな名前だね。まあいいさ。よく来たね、キース。コンサリはさ、プレ・ナだったけど、この村の住人みたいなもんだったからさ、あんたもここの住人さ」
分厚い手でキースの顔を触りまくる。
「難しいことは分からないけど、強そうな兄さんたちを連れてるってことは、コンサリを助けに行くんだろ?・・・なに、迷ってるの。なんでさ、簡単なことじゃないか。悪い奴がコンサリを連れて行ったんだろ?・・・強いなら助けに行けばいいじゃないか」
女の言う通りだった。
答えは実に簡単だ。
助けに行けばいいだけ。ただそれだけだ。
「キースはどうしたいの?」
クラナが問う。
それが全て。
クラナはもちろんのこと、スレイもラザンも、今ではナックも。キースに惹かれてここまで来た。彼女が決めた事なら迷わず従う。命だって惜しくない。
酒場にいる全員がキースの返事を待っていた。
「私は・・・」
言いかけて目を伏せた。
迷っているわけではない。クラナを見た瞳には強い意志が感じられた。
「私は、私がいる意味を知りたい。それだけだ」
カサロフを見る。
何かを察してうなずく。
「あの人や母に会えば、その答えが分かる。そのために必要なら、あの人を追い、母を連れ戻す」
給仕の女がため息をつく。
「面倒くさい子だねえ。用はコンサリを助けてくれるんだろ?」
振り返った。
「コンサリの娘がさ、助けに行ってくれる。帰ってくるよ、あの子が」
聞き耳を立てていた村人たちが、立ち上がって腕を上げた。
歓声。
男たちが再びキースに押し寄せる。
「まだ助けられるとは・・・」
肩を軽く叩かれ、言葉を止められる。
「あたしゃこう見えて、人を見る目があるんだ。兄さんたちも相当な実力だろうけど、キース、あんたは特別強そうだ。大丈夫、もっと自分に自信を持ちな。あんたなら助けられる」
肩を何度も叩かれる。
苦笑するスレイたち。
「決まったようですね」
カサロフが言った。
「では、今後の行動について考えましょう」
主とする、キースの気持ちが分かれば話しは早い。
あとは彼女のために何ができるか。それを考えるだけだ。
毎晩にぎやかな酒場だが、その日はさらに盛り上がった。村人たちは本当にコンサリのことを、家族や恋人のように思っているらしく、当時の事をとても楽しそうに話した。
人から好かれる性格は、母親譲りかもしれない。
そんなことを思いながら、カサロフはキースをじっと見つめた。
遠い日の記憶が、つい昨日のことのように感じられた。
静寂のなか、目覚めたばかりなのに、心臓の鼓動が激しい。
苦しくも痛くもないが、寿命を削られている感覚がはっきりとある。
カサロフはベッドから起き上がった。
寝室を出て、暖炉に火をつける。
少しずつ大きくなる炎を見ながら、ひとり思う。
あとどれくらい生きられるだろうか
このまま彼と再会できずに、辺境の小さな村で死んでいく。半ば諦めていた気持ちが、キースと再会できたことで、希望に変わっていた。
まだ生きていたい。彼と会うまでは・・・
何かを感じて外を見る。
閉め切っているのに頬に風を感じた。
積み上げた薪が燃え始めたのを確認して扉を開ける。
冷気が一気に体温を奪っていく。
家の北側。
ローブに包まった者がひとり。家に泊まったクラナが座っていた。カサロフに背を向けて、何かを見ている様子。
カサロフはストールを巻き直して歩み寄った。
声をかけようとして、視界に入った光景に立ち止まる。家と畑のあいだ。両腰に刀を携えたキースが立っていた。
目を閉じて、右腰の刀に手を置いている。
気配に気づいて振り返るクラナ。
言葉は無く、目線だけであいさつをする。
キースがゆっくりと足幅を広げた。
素早く柄を持ち抜刀。
見えない大気を斬った気がした。
軸足を中心に向きを変えて、両手で刀を持って振り下ろす。
下から上へ。
横に。
軸足を変えて斜めに振り下ろす。見えない相手に何度も刃を向ける。
ゆっくりとした動作だが、無駄がなく優雅。
呼吸を整え、刀を鞘に収める。
素晴らしい。
カサロフは感心した。
キースは間違いなく大陸随一の剣士だ。今の剣技を見てそう確信した。
ガガルの剣術を軸に、彼女独特の剣技を完成させている。アーマンほどの力強さはないが、動きが鋭く的確だ。
カサロフは声をかけようてしてまた止めた。
キースが再び身構えた。
今度は左腰の刀。
紅い鞘に邪神の彫刻。再会した時から気になっていた刀だ。
抜刀する。
一瞬だけ恐怖を感じた。
全身の『気』が根こそぎ吸い取られたような感覚。
なんという刀。
人が扱える武器ではない。
下を向くと、クラナがこっちを見ていた。
「サリュゲンという刀鍛冶が、キースのために鍛えた刀です」
彼女が言った。
「サリュゲン・・・あのサリュゲン、ですか・・・」
彼のことは知っている。
自分が気に入った者、強いと認めた者にしか武器を造らない。偏屈だが腕の良い刀鍛冶だ。クラナの話では、サリュゲンは誰かの声に導かれ、十年かけて刀を完成させたという。
不思議だが納得してしまうカサロフ。
キースの存在。彼女の『力』自体が不思議なのだ。そういう事があってもおかしくないと思った。
刀を振るたび、聞こえる鈴のような音色。
邪気をまとっているからこその美しさ。
剣術の型を見ているだけで、不思議な感情がこみ上げてくる。
カサロフは頬に伝うものを感じて手を添えた。
涙を流していた。
感動なのか、悲哀なのか。自分でも何の涙なのか分からない。
涙を拭いて心を落ち着かせる。
「クラナさん、食事の用意を手伝ってもらえませんか?」
ローブに包まった彼女が、素早く立ち上がる。
「は、はい。分かりました」
振り返ると、目をこすっていた。
どうやら彼女も涙を流していたようだ。
苦笑するカサロフ。
家に入ると、後ろでクラナが深い息を吐いた。
「私、キースのことが好きなんです」
クラナが言った。
彼女の態度を見ていれば分かる。
カサロフは振り返った。
「キース様を大切に思って下さるのは、とても嬉しいことです」
微笑む。
「これからもよろしくお願いします」
深く頭を下げるカサロフ。
予想外の反応に、クラナは驚いた。
婚礼を認めてもらったような気持ちだった。
村人たちが朝の作業を始めた頃、カサロフの家に旅装束の男たちがやって来た。村の宿に泊まっていた、スレイとラザン、そしてナックである。
キースはカサロフと畑にいた。
朝の鍛錬を終えて、カサロフから畑で育つ作物の説明を聞いていたところだった。
スレイたちはキースを見つけると、馬を降り、足早に彼女の前でひざまづいた。
「キース様、おはようございます」
「おはよう」
笑顔で答える。
となりにいたカサロフは、少し離れて待機していた。
「我々はひと足先にゴルゴルへ戻ります」
顔を上げるスレイ。
感情を押し込め、耐えているような表情。
「しばしの別れとなりますが、できる限りの準備をしてお待ちしております。どうかご無事で・・・」
言葉が続かない。
伝えたい気持ちが先走って、上手く紡げない。
いつも冷静なスレイが、こみ上げるものと戦っている。それを横で見ているラザンがため息をついた。
「スレイ様、こういう時こそ素直になればいいのですよ」
立ち上がる。
大股でキースに近づいて、思いっきり抱きしめる。
キースは足が浮いて身動きが取れない。
ラザンは髭面を彼女に押し付けた。
「主様、良い旅を。心はいつもあなたのそばにおりますぞ」
キースは苦しそうに顔をしかめる。
「分かった・・・分かったから・・・」
ラザンを振りほどくのは簡単だ。
それをしないのは、嫌がっていないから。
キースの匂いと温もりを十分に堪能して、ラザンは彼女を降ろした。それを見ていたスレイは苦笑する。
「私はお前のその性格が、時々うらやましい」
そう吐き捨て立ち上がる。
気づくと、目の前にキースがいた。
彼女のほうから抱きついてきた。
スレイの身体が硬直する。
「あなたたちと出会ったおかげで、ここまで来ることができました。ありがとう」
目の前の景色が歪む。
勝手に涙があふれた。
「必ず戻って来て、国王と王妃を助けます。それまでどうか無事でいて下さい」
大切なものは身近にある。
育った場所も境遇も違うキースとスレイたちだが、絆は深く、かけがえのない存在となっていた。
乱暴にドアが開く音がして、殺気に満ちたものが彼らに迫ってきた。
食事の準備をしていたクラナだ。
キースの身に異変を感じて飛び出してきたようだ。
手に杓子と皿を持ったまま。スレイに抱きついているキースを見て、高まった感情が手持ち無沙汰になる。
「食事の用意ができましたか?」
カサロフが問う。
「は、はぁ・・・い」
クラナは気の抜けた返事をした。
再会を約束して、スレイとラザンはゴルゴルへ旅立った。
カサロフの家にはキースとクラナ、そしてナックがいた。暖炉の前、歓談とは言えない雰囲気だ。
「さて、ここからが大変です」
カサロフが言った。
腕を組んで、真剣な表情。
彼女に視線が集まる。
「何があっても進む。もう迷わない」
キースが言った。
昨夜、遅くまで話し合った。
キースが下した答えに、誰も異論はなかった。
アーマンを追い、母を救う
進む道が決まれば、おのずとやるべき事も決まってくる。
この大陸にはあと二人、魔法使いの仲間がいる。そこを何とかしないと進めない。ノマを操ることができる者と、ナックの母国、イナハンにいるイリリ。その事を聞いてカサロフは、ノマを操る者は『聖地』にいると推測した。
『聖地』には、精神を抜かれたコンサリの身体がある。見張りを付ければ、コンサリを人質として利用できる。あの魔法使いならそう考える。
確信はないが確率は高い。
経験豊かなカサロフの意見に同意する。
では、どうするか?
『聖地』に行って、障害を取り除く。
「そのためには、道案内が必要です」
太陽や星で方角が分かっても、『聖地』にはたどり着けない。
カサロフはキースたちを見回した。
「この村に適役の者がいます。ただし、案内を引き受けるかどうかは、あなたたちの説得にかかっています」
キースたちの、武器を使わない戦いが始まろうとしていた。
・・・・十二年前。
ルコスより北、魔法使いになるための修行の場、ロフェアよりさらに北西へ。
ラフィネという小さな街。
作物の育ちにくい土地。一年の半分は白い雪と氷に覆われた、人は住むには過酷な環境。それでも街を離れないのは、両親や祖父母が生まれ育った街だから。
そしてなにより、先の大戦で活躍した三人の戦士が、ここで修行し剣術の基礎を築いた街だと、自慢できるから。
異変に気づいたのは、母親と同じ顔をした、キースの寝顔を見ている時だった。
カサロフは静かに立ち上がり、寝室を出て東の空を見上げた。両手を胸元に置いて目を閉じた。
意識を集中する。
どんなに離れていても、二人の心は繋がっていた。それが今は何も感じられない。前にも一度、同じような事があった。
六年前の記憶が蘇る。
コンサリを襲った謎の魔法使い。彼はカサロフの身体から、コンサリの精神だけを抜き取ろうとした。あの時も同じような感覚を味わった。
有り得ない。
魔法使いは死んだ。
偶然その場に居合わせたアーマンが、神技のような剣術で見事に倒した。カサロフはコンサリの目を通して、その瞬間を見ていた。
だから、あの魔法使いではない。
すぐに思い直す。
仲間がいるかもしれない。あの男が単身で大陸にやって来たとは限らない。
とにかく、アーマン様に知らせよう。
カサロフはキースが寝ているのを確認して、廊下を進んだ。
鍛錬のための広場を囲うようにして建つ家屋。廊下を歩きながら広場に目を向けると、アーマンがひとり立っていた。
稽古をしているのなら、そこにメラスとファウザがいるはずだが、二人はカサロフと逆方向から廊下を走ってきた。
「どうしました?」
立ち止まって声をかける。
「アーマン様に、キース様を全力で守れと命じられました」
メラスが答える。
二人は足を止めず、寝室へ向かった。
ただ事ではない。
カサロフは広場に立つアーマンをもう一度見た。
正門からローブを着た小柄な侵入者が入ってきた。
直感で、あの魔法使いの仲間だと思った。ならば彼と同等か、それ以上の実力者だと判断する。
私が行っても、足手まといになるだけだ。
カサロフは振り返り、寝室へ戻った。
広場で対峙するアーマンとローブ姿の侵入者。侵入者は頭のフードを下ろした。
紅い髪の少年だった。
「はじめまして、剣士さん」
微笑む少年。
アーマンは腰の刀に手を置き、自然体で身構えている。
「僕はロズ。主の命令で、剣士さんに会いに来たよ」
注意深く観察する。
見た目は少年だがあなどれない。
『主』とは誰か。
思い当たる者がひとりだけいた。
「・・・・あの魔法使い、どうやって生き返った?」
アーマンの問いに、ロズは笑う。
「そこはまあ、魔法使いだからさ。タネは明かさないけど、剣士さんが切り刻んだおかげで、復活するのに相当時間がかかったようだよ」
この少年は戦士か、魔法使いか。
相手の動きに注意しながら、刀を抜く好機を探る。
アーマンの殺気を感じて、ロズは両手を身体の前で振った。
「待って待って。僕は戦いに来たんじゃないんだ。主から伝言があって来ただけだからさ、そんな怖い顔しないで」
声も仕草も少年のよう。
だが油断できない。アーマンはロズから、底知れぬ恐怖と威圧感を感じていた。
「じゃあ言うよ。えっと・・・『彼女は頂いた。返してほしいなら奪いに来い』・・・だって。全く、本人が直接言えば・・・!!」
大気が刃となってロズを襲った。
師であるガガルから伝授された大技、居合い抜き。刀身に魔力を注ぐことで、遠くの相手を斬ることができる技だ。
ロズは両手を身体の前に掲げた。
アーマンは目を見開く。
何も起こらなかった。
「容赦なしだね。こわいこわい・・・」
ロズは首をすくめる。
「残念だけど、剣士さんでは僕は倒せないよ」
アーマンの表情は変わらない。
刀を正眼に構える。
一瞬見えた手のひらの魔法陣。あれが技を無効にした。つまり、魔力は通用しないということか。
だったら・・・・
「北の民族は血の気が多いようだね。まあ僕がここで剣士さんを殺しても、なんの問題もないんだけど。どうしようかなあ・・・」
腕を組み、考え込むロズ。
アーマンは目を閉じて、ゆっくり息を吐いた。
脱力。
開眼が自分に対しての合図。
アーマンが消えた。ロズのすぐ後ろに現れる。
逃げられる距離ではない。
アーマンは刀を頭上から振り下ろす。手に伝わるはずの感触が無い。
振り返ったロズの顔に、横なぎの一閃。
刀身が何も触れずにすり抜ける。
感覚が危険を知らせた。
ロズが手のひらを掲げた時、そこにアーマンはいなかった。
「面白い技を使うね」
微笑むロズ。
また振り返る。最初に立っていた場所にアーマンがいた。
「触れられない身体、手のひらに描かれた魔法陣が魔力を無効にする。残念だが、今の私ではお前に勝てそうもない」
刀を構えたまま、アーマンが言った。
「だからといって、刀を収める気はない。ここでお前を倒し、魔法使いを追う」
正眼の構えから、刀を下に。
刀身を後ろに、柄を持つ両手を右腰に軽く添える。
予測できない動きに対応できる姿勢。
ロズは首を振る。
「勝てないと分かって、まだやる気なの?」
アーマンは動じない。
微笑むロズ。
「ほんと、北の民族は戦うことが好きなんだね。仕方ないから殺してあげるよ。覚悟はいいかい?」
「望むところだ」
アーマンが目の前から消えた。
ロズの正面に現れる。
腰を落とし、足を狙う。
ロズは後方へ飛んだ。身体が小さい上に素早い。
アーマンがまた消える。
ロズは視覚を諦め、ほかの感覚に集中した。ローブの中に手を入れる。
右頬に熱を感じた。
視覚だけでは捕らえにくい、針のようなものが飛んできた。腰をかがめる。針が頭上を通り過ぎた時、左斜め後方にアーマンが現れた。
彼の刀身は、ロズの赤い髪に触れるところまで迫っていた。
小さな火花と甲高い金属音。
手にした短剣がアーマンの刀を弾いた。アーマンは身体を一回転させて、刀を横なぎに振った。捕らえたはずだが、感触が無かった。
短剣の先端が目の前に迫る。
かわしたはずが、頬をかすめた。
刀身を小刻みに震わせながら、けん制して突く。刃は十分届いているが、やはり感触がない。
ロズと距離を置いた。
刀を構え直す。頬に受けた傷から血が少し流れていた。
「ふーん。思っていたよりやるね」
ロズが言った。
アーマンは中段から下段に刀を構え直す。
「でもまあ、所詮はそこまでだよね。楽しかったよ。ありがとう、剣士さん」
満面の笑み。
ゆっくりと歩き出す。
手にしていた短剣は無くなっていた。
アーマンは刀を上げようとして、初めて身体の異変に気づく。
動かない。
首をひねることも、指を動かすことできない。
知らぬ間に術をかけられたらしい。
屋敷の中で人の動く気配。
「アーマン様!」
カサロフの声がした。
彼女は魔法を何度も発動させたが、身体の呪縛は解けなかった。
風を切る音。
カサロフの隣で、ファウザが矢を放った。
ロズが片手を矢に向ける。
信じられないが、突然矢が失速して落下した。
メラスが剣を抜き、近づこうとした。
「来るな」
アーマンの声に、メラスの足が止まる。
「お前たち、キースを連れて逃げろ」
彼の言葉に動揺した。
「し、しかし・・・」
メラスは納得できない。
もちろん、ほかの者も気持ちは同じ。主を守るためなら、命など惜しくない。
だが・・・
「聞こえなかったのか。キースを連れて逃げろ」
ここにはまだ幼い主の子がいる。
彼女を守るのも、部下としての役目。
拳を握るメラス。
「キース・・・様?」
後ろでファウザの声がした。
ロズを警戒しながら振り返る。
カサロフとファウザの視線がアーマンの方へ向いていて、ちょうど二人の表情が変化したところだった。
向き直る。
メラスも驚いた。
アーマンの目の前。
彼をかばうように両手を広げ、ロズと対峙しているキースがいた。
寝室で寝ていた彼女がいつの間に?
ロズが不思議そうに首を傾げ、キースを見ていた。
「キ、キース・・・」
アーマンも驚く。
歩いてくれば気づくはず。
彼の技のように、キースは突然現れた。
「なんだい、君は?」
キースは唇を噛み締め、ロズを睨んでいた。
メラス、ファウザ、カサロフ。彼らは何の迷いも無く広場に足を踏み入れ、ロズを取り囲んだ。
キースを守れと言われた以上、命に代えても守り抜く。それが従者としての役目。
「お前、キース様に触れることは、絶対に許さん」
メラスが言った。
今まで以上に気迫がこもっている。
「キース様、そこは危険です。どうかこちらに」
カサロフが膝をついて両手を広げた。
首を大きく振るキース。
ロズからアーマンを必死に守ろうとしている。
ファウザは距離を取り、弓でロズの頭に狙いを定めている。万が一矢が身体をすり抜けても、キースには当たらない位置。
ロズは片手をあげて、彼らをひとりずつ指差した。顔と立ち位置を確認するかのように、うなずきながらゆっくりと。
それが何のための行動なのか。答えはすぐに出た。
全員、身体の自由を奪われた。
アーマンと同じく、指一本動かせない。さらに最悪なことに、彼らは呼吸すらできない状態だった。
「君たち、ちょっと邪魔。そのまま死んで」
ロズが言った。
じっと、キースを見る。淡い緑の髪。幼いが整った顔立ち。
「へえ~、君は彼女の子供なのか。興味深いな・・・」
プレ・ナは生殖機能が退化したため、子は産めない。
だが、身体を共有できるカサロフとコンサリは特別だ。肉体的にはカサロフが子を宿したことになっても、コンサリの精神がカサロフの肉体に移っていれば、彼女の子として産まれてくる。
キースはアーマンとコンサリの子。人とプレ・ナの間に生まれた子だ。特別な何かを期待しても不思議でない。
声にならない悲鳴。
苦しさが表情に出始めるカサロフたち。
ロズはキースを指差した。
カサロフたちと同じように、身体の自由を奪う魔法をかける。
「剣士さんと君たちは、ここで死んで。この子は連れて帰るよ」
ロズが言った。
再びキースを見る。
小さな女の子は、カサロフたちに向けて何か言葉をかけていた。聞こえないほど小さな声なのか、それとも聞き取れない言葉なのか、ロズにはキースが何を言っているのか分からなかった。
そもそも、キースには魔法が効いていなかった。
首を傾げる。
荒い息遣い。
咳き込むメラス。
彼らの呪縛が解かれた。その場に伏して必死で回復を試みている。
目の前のアーマンも同様で、急に解かれた呪縛を、両手を見ながら不思議に思っていた。
「なんだ、これは。何で術が解けたんだ?」
何が起きたのか理解できない。
キースがロズの目の前に立っていた。
片手がローブに触れる。
そこだけ嵐が来たようだった。
どこからか突風が吹いて、ロズの身体は吹き飛ばされた。
魔力的なものは感じなかった。
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