episode11 「古城の決戦」
・・・・四年前。
ドレイド南部のある村。
そこからウマに乗って一時間くらいの場所。
湿地帯の中に浮かぶ孤島。
そこがキースの修行の場だ。
木刀を振るキースを見ながら、うなる老人ガガル。彼はキースと血縁関係は無く、彼女の父親の師だ。
キースがガガルと暮らすようになって六年。本格的に修行を始めて約一年。早くも大きな壁に立ちはだかった。
相手の動きの先を読む力。心の変化を感じる能力。誰かに教わったわけでなく、自然とできてしまう。
この辺りの村に伝わる体術。民族同士の争いが絶えなかった時代の名残り。子供たちは遊びのなかで少しずつ覚えていく。
キースは類まれな身体能力で、大人顔負けの実力だ。
剣術もそう。
大抵は一度教えればできてしまう。
弟子としては優等生。申し分ない。
ガガルが困っているのはそこではなく、キースの精神的な部分。感情の制御が出来ないところだ。
生死を分ける瞬間で、感情は判断を鈍らせることがある。
キースはまだ子供だ。そこまで期待する必要があるのか。
いや、彼女を子供扱いするのはどうかと思う。あの封印術を背中に書き込まれれて、平然と立っていられる。それどころか、人並み以上の身体能力。子供でなく、人の枠も超えている。
子供らしい掛け声。
木刀を振るキース。
上段から振り下ろす。その繰り返し。
彼女の内側から発せられる見えない力が木刀に伝わる。
気流が起こり風が吹く。
魔力とは別の、不思議な力。
ガガルも木刀を持ち、キースと対戦する。剣を交えれば相手の力量は大体分かる。剣技も経験も、ガガルとキースでは雲泥の差だ。
剣術を学ぶことが楽しくて仕方ない。
キースは常に全力だ。
感情を表に出し、ガガルに学んだ事を全て使って木刀を振る。それだけに動きの先が読めてしまう。
木刀が交錯し、乾いた音が響く。
「キース、もう少し感情を抑えろ」
ガガルが言った。
「そんな事できないよ。力が入らなくなっちゃう」
話しながらでも動きは止まらない。
小さな身体が弾む。
体術と剣術を組み合わせていた。
剣速を抑える。
キースは片手をついて後転。ガガルの木刀をかわす。着地して横に飛ぶ。ガガルの左手側から攻める。
利き手の反対側はガガルでも対応が遅れる。
ガガルの魔力を感じたが止められなかった。
彼の左手から魔力を受けて吹き飛ばされるキース。木刀が地面に転がり、彼女は尻餅をついた。
「イテテテ・・・」
尻を押さえながら立ち上がるキース。
嘆息するガガル。
「何度も言うが、感情を制御しないと、相手に先を読まれてしまう事がある。攻めようと攻められようと、常に冷静であれ」
「分かっているんだけど、つい・・・」
苦笑するキース。
「もう一度瞑想だ」
はーい。
小声で返事をした彼女は、振り返って岩山を見上げる。かなり高い。
わずかな突起を器用に使って登る。
頂上に人が独り座れるくらいの平地がある。そこがいつもの場所。精神を集中するため、キースは座禅を組んで目を閉じる。
比べる相手がいないから分からないだろうが、キースの実力は既に並ではない。
ルコスの『武闘会』に出場すれば、きっと上位に入る。観衆は少女の強さに驚くだろう。
それでもガガルはさらに上を目指している。
彼の弟子でありキースの父、アーマンを狙う者がいる。いずれ刃を交える日が来るかもしれない。
アーマンと彼の従者の実力は知っている。彼らを脅かす程の相手なら、今のままでは駄目だ。剣術も精神も、もっと強くなければ。
キースならガガル達を凌駕する力を秘めている。何とか生きているうちに、その力を引き出してやりたい。
ガガルはそう思っていた。
二足歩行のウマを操り、帰路に向かうガガルとキース。
村までもう少し。
ガガルはキースを見た。
お前も気づいたか。
村のある方向に邪気を感じる。
ラマジャの結界を破られたとは考えない。ごく稀に影響を受けない者がいる。
二人はウマの速度を緩めた。
村の入口に青年が立っていた。
キースの事を家族のように可愛がってくれる男だ。
手綱を操りウマを止める。
「どうした?」
ガガルが尋ねる。
「ガガル様を出せと、武装した男が・・・」
やはり結界の効果を受けない者が来たようだ。
ガガルはキースと青年を交互に見て、村の方へ目をやった。
いつかこの日がやって来る。
覚悟はしていたが、いざそうなると寂しいものだ。
「キースを頼む。キース、お前はここにいろ」
青年にキースを託し、ガガルは村へ入った。
広場の奥、集会場の前。
村の男たちが、狩りに使う武器を持って集まっていた。囲んでいるのは武装した男。長身で体格も良い。背中の鉄槌が男の武器。
あの武具は知っている。
五十年前の大戦で、ルコスと戦争した西国のものだ。
勝者と敗者。
立場が変われば、ガガルたち三人は『善』であり、『悪』である。西国には彼らを恨む者も多いはずだ。
近づく人の気配を感じて、武装した男が振り返った。
老人が立っていた。
高齢だが、背筋は伸びているし身なりも整っている。怯えた様子など無く、真っ直ぐこちらを見ている。
腰元には細身の剣。
間違いない。男は確信した。
「ガガル。ようやく出会えた」
男が言った。
笑みを浮かべているのは、ガガルと対面できたから。周りにいる村人たちが退くほど殺気を放ち、今にも背中の鉄槌を振り回しそうだ。
ガガルと戦いたくて仕方ない。
見えない感情がはっきりと伝わってくる。
「ワシに何か用かな?」
静かな声で問うガガル。
「俺は西国の剣闘士。お前を倒して名を挙げたい」
男は背中の鉄槌を手に持った。
足元の地面に叩きつける。
地響き。
先端の槌は鉄の塊だ。武装した男の体格なら振り回せるが、並みの者なら持ち上げることもできまい。
「俺はお前との対戦を希望する」
ガガルと知って、いきなり襲いかかるような事はしない。
少しは話が分かる者のようだ。
ガガルは笑みをうかべ、両手を広げた。
「五十年前ならまだしも、見ての通りただの年寄りだ。ワシと戦ったところで、何の自慢にもならんぞ」
「いいや。西国ではガガルの名は有名だ。お前を倒せば国から賞金が出るし、戦士としての力量を認められる」
是非、対戦してくれ
懇願する男。
嘆息するガガル。
西国の、先の大戦の恨みは根深いようだ。
言葉で説得して、男を帰らせる饒舌さは持ち合わせていない。
仕方ない。
ガガルは覚悟を決めた。
背後に気配。
邪気の次は無邪気か。
止める青年の手を振り払い、キースがガガルに近づいた。
「ガルじい、この人と戦うの?」
村人たちがざわつく。
必死にガガルから離れるよう声を張るが、キースは素知らぬ顔だ。それどころか、木刀を構えてやる気満々だ。
修行を始めてまだ一年だが、彼女の力量なら十分戦える。だが、まだキースの存在を世間に知られたくない。
ちょっとした迷いが行動を送らせた。
「私に勝ったら、ガルじいと戦ってもいいよ」
キースは男の目の前で言った。
手には木刀。
男はちらりとキースを見たが、また目線をガガルに戻した。
ガガルは困り顔だ。
考える前に行動する。そこだけは父親と似ている。全く、親子そろってワシを困らせるとは思わなかったぞ。
無視されることに怒ったキースが、木刀の先で男の鉄槌を何度もつつく。
村人たちは、声にならない悲鳴をあげる。
武器を汚される行為は、大抵相手の怒りを買う。
男の目線がキースに戻った。
「おい、餓鬼。そのへんで止めないと殺すぞ」
大人でも卒倒しそうな声音。
男の腰あたりまでしか背がないキース。表情も態度も変わらない。男の鉄槌をつつくのも止めない。
「殺せるものなら、殺してみなよ」
もう終わりだ。
村人の多くは両手で顔を覆った。
武装した男は怒り、あの太い腕でキースを殴りつけるだろう。そんな瞬間を、怖くて見ることができない。
男は木刀を掴もうと手を伸ばした。
そこに木刀は無く、手の甲を叩かれた。
もう一度。
素早く手を伸ばしたが空振り。
さっきより強く、また手の甲を叩かれた。
次は、木刀をへし折るくらいの力を込めて。
足が一歩前に出る。
前かがみになった頭を叩かれる。
もう子供だからといって遠慮しない。男は鉄槌を持ち上げた。背筋が凍る重量感。あれで叩かれたら、人など潰れてしまうだろう。
うなる風切り音。
男の腕の筋肉が盛り上がる。
キースめがけて鉄槌を振る。
当たる!!
鉄槌の軌道を限界まで見極めて、二歩下がる。男は素早く体勢を変えて、片足を前に踏み込む。
真上から振り下ろす。
キースは横に飛ぶ。
鉄槌は地面を叩く。足が浮き上がる程の衝撃が襲う。
キースは木刀を構えたまま、ちらりとガガルに目をやる。何かを求めているような顔をしている。彼に加勢を求めているようにも見えるが違う。
ガガルには伝わっていた。
軽くうなずく。構わん、お前の好きにしろ。
キースは鉄槌の男を倒すつもりでいるらしい。どう見ても勝ち目はなさそうだ。体格も腕力にも差があるし、第一彼女の武器は木刀だ。致命傷を与えることなどできるだろうか。否、無理だろう。
男は鉄槌を軽々と振る。キースは向かってくる鉄槌を紙一重でかわす。かわすだけではない。木刀で男の手を叩く。武装した身体を叩く。男の素早くキレのある動きを見極めながら、隙をついて木刀を振る。
少しずつ、木刀に力を込める。
ガガルには分かっていた。キースの小さな身体に、『気』が集まり始めた。
腕力の差は埋まらない。
素早く動けても、男を止めることはできない。
男は鉄槌を振り下ろした。
「えい!」
掛け声とともに、キースが木刀を思いっきり振り下ろす。
鉄槌を握る手の指を狙う。相手が子供で武器が木刀でも、指先を叩かれればかなり痛い。男の顔が苦痛で歪む。
キースはそのまま両足を踏ん張り、木刀を横に振り上げる。
武装されていない男の首に当たる。
息が吸えない。
男の動きが止まった。
木刀の先端で、男の足先、足の指を突く。これもかなり痛い。男が前かがみになったところを、つかさず狙う。木刀を身体に寄せる。振るのではない。先端で狙いを定める。
木刀を突き出す。
男の眉間に当たり、鈍い音がする。
前のめりになる勢いに、木刀を突く勢いが加わる。
男は中腰で顎が上がった変な姿勢のまま白目を向いた。そのまま受け身も取らず、その場に倒れる。
瞬間を目撃したが、理解するまで少し時間がかかった。
ガガルが近づいて男の様子を伺っていても、村人たちは動かなかった。
「ちょっと手を貸してくれないか」
ガガルの言葉を聞いて、ようやく村人たちが騒ぎ出す。
ここの村人たちは、よそ者であるガガルに絶対の信頼を持っている。民族間の争いを鎮めた功績があるからだけでなく、彼の人柄が大きい。だから、彼が引き取った少女キースが、人知を超えた力を持っていようと、決して怖がったり恐れたりしない。
村人たちはキースを村の住人として心良く迎え入れた。ちょっと理解できない身体能力と不思議な力を持っているだけ。
そういう認識だ。
村の男たちが武装した男を運ぶ。
転がっていた鉄槌は、四人の男でも持ち上がらなかった。
「大したことなかったよ。ガルじいなら、きっと一撃だね」
キースが言った。
ガガルは苦笑する。
このまま成長して、お前はどれだけ強くなるのだろう。
刀を持ったお前に、感情を制御できるようになったお前に、果たして脅威となる敵が現れるのだろうか。
ガガルは初めて、キースの封印の意味を理解した気がした。
・・・・プーゴル城の一室。
『魔刀キース』は、簡単に抜けないよう鞘に金具がついている。
キースは鞘を持った左手の指で金具を押し外す。
厚めの唇が動く。何を囁いたのか聞こえない小さな声。右手が柄を持ってゆっくりと刀を抜く。
全身に悪寒が走る。
サリュゲンの工房で感じたものとは違う、もっと禍々しい何か。恐らくこれが『魔刀キース』の本来の姿。
ナックはそう思った。
砲撃の音。かすかに聞こえる人声。
城外の戦闘はまだ続いている。
うす暗い一室で、向かい合う二人。そこに殺気はなく、長年離れていた友人が再会したような、どこか親しみを感じる雰囲気。
それでも身体が硬直してしまうのは、『魔刀キース』から溢れ出る異様な力と耳鳴りのような音のせい。サリュゲンの言う通り人が使う武器ではないのかもしれない。
「やっと本気になってくれた?」
短刀を持ったまま両手を広げるロズ。
「期待を裏切らないでよ」
一歩踏み出す。
ロズが立ち止まったのは、キースが目を閉じたから。
キースは刀を構えたまま目を閉じて深い息をした。
箍(たが)を外せ・・・・流れを見極めろ
ささやくキース。
己の戒めを解くような言葉。
目を開けた。
何も変わっていないはずなのに、何かが違う。
ロズが動いた。
さっきまでとは違う。素早い。短剣と刀が交錯する。小気味良い金属音。
二本の短剣が、『魔刀キース』が、信じられない速さで宙を舞う。上から横から、突き出した剣に刀身をからめる。
目で追いきれない。
これが二人の実力なのか。
踏み込んだ一歩を軸に回転する。遠心力を加えた横振りの短剣。
キースは逃げずに受ける。刀身で上手く力を受け流す。手首をひねって刀の先をロズの顔に向ける。突き出すがそこにはいない。
一歩踏み出す。
滑るような動き。刀と身体が一体化している。それでもロズには届かない。
「いいねえ。いいよ、キース」
初めて聞く、ロズの高揚した声。
笑顔。
戦いを楽しんでいる。
愕然とするナック。輪具の力を使っても歯が立たなかったのに、さらに上を行く動き。しかも、ロズはあの黒い石を飛ばしているらしく、時々壁に突き刺さっていた。
両手に剣を持っているのに、どうやって飛ばしているのか。
キースは黒い石をどうやって回避しているのか。
右手の短剣が消えた。
魔法陣の描かれた手の平が迫る。
姿勢を低く、片足を軸に回転するキース。回し蹴り。
当たった。
ロズの小さな身体が吹き飛ぶ。
床石がきしむくらい力を込めて疾走する。ロズが着地するまでのわずかな時間で間合いを詰めるキース。
素早く刀を振り下ろす。
ロズの右手に再び剣が現れて、頭上で二本を交差させる。刀を受け止めた。
キースはすぐに刀を引いて横へ飛ぶ。
ナックの後ろ。壁に黒い石が突き刺さる。
止まらない攻防。
人は呼吸しなければ動けない。息つく間もない、とはまさにこの事。剣速がどんどん速くなっている。
お互いが、必殺の一撃を難なくかわしている。
キースが刀を振り上げる。
ロズの左袖をかすめる。すり抜けない。
刀身の角度。踏み込む足の位置を瞬時に修正する。
横に振った刀身が、ロズの赤い髪を斬る。
もっと速く。もっと速く。
動きも精度も、瞬く間に向上する。
大気さえも斬ってしまうような鋭い剣技。しなやかだが素早い動き。
美しい。
ただの殺し合いなのに、この感情は何だろう。
一切の無駄を削ぎ落とし、思考も身体も相手を倒すためだけに仕向ける。その洗練された姿に心奪われてしまう。
ナックは一度二人から目をそらした。
このまま見続けていたら、あの刃に斬られたいという衝動に負けてしまいそうだ。
刀身の長さとか、体格の差は関係無かった。それを補うだけの技量があるし、少しキースが劣勢に見えた。
魔法陣の描かれた手は、触れるだけでその部分を消してしまう。その手を警戒しながら、不規則に飛んでくる黒い石をかわし、短剣の斬撃を受けなければならない。
常人なら対応できない。
床石が割れるくらい踏み込む。引きつけた刀を突き出す。ロズの身体はぼやけて、羽根のようにふわりと刀身をかわす。
短剣が消えた。
魔法陣の描かれた手が迫る。
伸びきった体勢そのままで、キースは片手を床について前転。滑らかな動き。反転した景色が戻った時、刀身を振り上げる。
ロズの身体から何かが飛んだ。
手首から先が斬り落された。
上段から振り下ろす。
キースと距離をとった。
「参ったなあ。片手が無くなっちゃった」
ロズが左手の斬り口を見ながら言った。
血が一滴も出ない。
それどころか、斬られた手首から短剣が生えた。腕と同化する。
「この身体になって斬られたのは初めてだよ。やっぱり君は・・・!」
キースが迫る。
今までの動きが速なら、瞬の動き。
避ける間がない。
短剣二本を交差させ、キースの刀を受ける。
鈍い金属音と床石の割れる音。
二撃目。
片手では防げない。ロズの小さな身体が浮き上がる。
キースはその場で回転して回し蹴り。
部屋の支柱に向かって吹き飛ぶ。どういう仕組みか、支柱にぶつかる寸前、ロズの身体は空中で回転して、ゆっくりと床に着地した。
目の前にキースがいる。
振り上げた手が斬られる。
刀身の先がロズの喉元を捉えた。床に転がる短剣と片手首。
とどめは刺さない。
キースは刀を中段に構えたまま、ゆっくりと後ろへ下がる。
手首から先のない両腕。
床に転がったはずの短剣は、ロズの片手として生えていた。
「これで術は使えまい」
キースが言った。
両手が刃と化したロズ。
笑っている。
「君の刀を鍛えた職人もすごいけどさ、その刀を使える君もすごいよ」
拍手を送りたかったが、手が無いので出来ない。
両腕の短剣を交差させて音で拍手。
「僕が本気で戦える子に出会えるとはね」
笑顔が消えた。
「さて、どれくらい僕について来れるかな」
刃となった両腕を下げる。
足で床石を割るほど踏み込む。走ったのか飛んだのか、それすら分からない動き。
ロズの短剣がキースの緑の髪をかすめる。体勢を立て直す間もなく、もうひとつの短剣が下から迫る。胸元の防具にかすって金属音。
キースは無理やり身体をひねって膝をつく。
ロズは人の脚力では考えられない高さまで飛び上がる。短剣の刃先をキースの頭上に向けて降下。
横に転がる。
ロズは音もなく着地。すぐにキースが転がった方へ動く。
両腕の短剣を振り下ろす。
キースは直前まで短剣の軌道を見極め、最小限の動きで身体をひねる。
首の下に刃先がかする。立ち上がって刀を構えた時、一筋の赤い線が現れる。あれだけ激しく動いても、彼女は息を乱していない。
「僕の動きを見切ろうとしても無駄だよ。まだまだ速く動くからね」
腕となった短剣でローブの止め紐を切る。
赤い髪と赤い服があらわになる。
刃の腕は自然に下げた状態。身体をゆらゆら左右に揺らして、飛び出す瞬間を狙っているようだ。
キースと目線を合わせる。目元の微妙な変化で、相手の行動が読めることがある。彼女にはそれができる。ロズは知っていてわざと目線を合わせた。それは読まれても止められない自信があるから。
とちらが先に動くか。
キースの刀身が少し揺れた。それが合図となった。
これが人のできる事なのか。
修行のなかで、様々な戦士に会ったが、これ程の者に会ったことがないし、存在するとは思っていなかった。
子供のような小さな身体を生かして、上に下に自在に動くロズ。走っているのか飛んでいるのか、理解できない速さで剣を振っている。
それに対抗するキース。
魔刀『キース』の力なのか、触れられないロズの両手を斬ってしまった。その時の動きもさることながら、今の刀さばきは脅威過ぎる。どんな体勢であろうと、渾身の一撃のような力のこもった振りを見せている。
しかも、予測できない不規則な動きをするロズの先を読んで。
俺は本当に輪具の力を出し切れていたのだろうか。
自問するナック。
同時に、すべてを出し切って、あの二人と対等に戦えるだろうか。そんな事を考えていた。
何かの理由で、ロズの肉体は滅んでしまった。今は新たな身体を得て生きている。剣士としての実力はそのままで、魔法という武器を手に入れた。特殊な魔法陣の力で、触れるものを消してしまう能力。それと、全ての障害から身を守る能力。何者も彼の身体には触れることができない。
はずだった。
万能など、この世には存在しない。
だからこそ、今この瞬間があるのだ。
ロズは久々の高揚感に酔いしれていた。身を守るのは両手の剣だけ。気を抜けば斬られてしまう。
生と死が背中合わせの戦い。
これこそが剣技を競う醍醐味。
この時ほど、自分がガガルと過ごした環境に感謝したことはなかった。
ドレイド南部の地域は多種多様の民族があって、それぞれが独特の発展と歴史を積み重ねてきた。キースが十年育った村には、伝統の体術があって、それとガガルから教わった剣術を組み合わせた。
だから、どんな体勢であろうと相手の位置を把握して、刀を振ることができる。
横なぎの剣を側転してかわす。
着地した足を踏ん張り、刃先を突き出す。
背を向けて横へ動くロズへ刀を振る。魔刀「キース」は、刃先が両刃なので、どちらに振っても斬ることができる。力任せに振り下ろす剣を受けるのには弱いが、軽さを生かして鋭く斬ったり突き刺すには特化した刀だ。
これだけ激しく動いてもキースの息は乱れず、冷静にロズの動きを観察していた。
まだ余力がある。
もっと刀身に力を注げる。
予測が困難な変則的な動き。読めなければ、呼び込めばいい。
構えた先にロズの短剣が光を放つ。
力のこもった刀身を振りぬく。
魔刀『キース』は短剣を斬った。
一瞬の出来事なのに、彼女には時間がゆっくり進んでいるように感じられた。
振り切ったまま身体を回転させて、急所を狙う。
ロズの首筋に、刀身が吸い込まれるように軌道する。
終わりは突然やってきた。
血の通わない身体といえど、頭部を失くせば動くまい。
短剣の刃先とロズの頭が、床石の上を転がった。
「やった・・・やったぞ」
長い沈黙のあと、ナックが声を絞り出した。
部屋は静寂に包まれている。
人の常識が通用するのか分からないが、ロズは床に倒れたまま動かない。
キースは?
床に四つん這い。頭を垂れたまま動かない。息をしているのかどうかも分からない。立ち上がって歩み寄る。
「・・・キース?」
呼びかけたが反応がない。
ナックが彼女の肩に手を置こうとした時だった。
「僕が負けるとはね」
とっさに身構えるナック。
ロズの声は身体とは別の場所から聞こえた。
笑い声。
細く弱々しい。
「心配しなくてもいいよ。僕はもうすぐ滅ぶ」
信じられないが、声は斬られた首から聞こえた。
ナックのいる場所からは赤い髪しか見えない。
すぐ横でキースが咳き込んだ。
今ようやく呼吸を始めた。そんなふうだった。
重い身体をなんとか動かして立ち上がろうとする。ナックが手を貸そうとすると、片手を彼に向けて拒んだ。
振り上げた刀が妖しく光る。
ゆっくりだがしっかりとした足取りで、キースはロズの首に近づいた。
「君は僕たちにとって危険人物だと判断した。もう後戻りはできないよ」
ロズが言った。
「望むところだ」
キースは刀を逆手に持って振り上げる。
「最後にひとつだけ、君に良いことを教えてあげる」
声がかすれている。
「ここから北東に行くと、リノーズという村がある。そこに君の父親と一緒にいた魔法使いがいるよ」
刀を下ろすキース。
ロズの言葉を聞いて、明らかに動揺している。
「まさか・・・何故・・・?」
「病気になって、旅が続けられなくなったんだよ」
記憶と共に、景色までもが十年前に戻る。
別れの時の、抱きしめてくれた彼女のぬくもり。
育った街でも旅中でも、ずっとそばにいて支えてくれた。
あの人が病気?・・・信じられない。
「治らない病気だから、もう死んでるかもね」
笑うロズ。
かすれた声が途切れる。それ以上は何も語らず、気配も消えた。
キースはその場に座り込んだ。立っていることすらできなかった。
ナックはロズの生死を確認するため、倒れている彼に近づいた。切り落とされた首をみて驚く。これも魔法の力だったのか、ロズの顔は人でなく、布か何かで作られた人形の顔だった。
「大丈夫か、キース?」
彼女に寄り添って肩を抱く。
震えていた。
最後にロズの言った事が衝撃的だったようだ。うわごとのように何か言っているが、うまく聞き取れない。
今だ聞こえる激闘の声。
ナックは部屋を出て、通路の窓から外を見る。
スレイたちはかなり健闘しているが、まだ多くの兵士が残っている。
彼らを動かしているものは何か。
国王から追放され、従う者を失った騎士が盗賊にまで堕ちた。その彼らの心を動かしたもの。そして、プレ・タナという地位を捨ててまで旅に同行した魔法使い。
彼らは主を信じ、力の続く限り戦っている。
ナックは振り返る。
人知を超えた力を持ちながら、子供のように弱くはかない一面を持つ少女。
少しだけ彼らの気持ちが分かる気がした。
自分にできることをやろう。
ナックは両手を上げる。
手首の輪具が妖しく光っていた。
クラナが食堂に降りてきた。
みんなの視線が彼女に集まる。
「よく眠っているわ」
クラナが言った。
スレイたちは無言で、浮かせた腰を椅子に戻す。
ここは西地区の酒場。
古城での戦いからまる一日経っていた。ゴルゴルの兵団は、ロズの死とナックの参戦によってほぼ壊滅。二年前の戦争で無敵を誇った兵団は、数人の戦士によって撤退を余儀なくされた。
ゴルゴルの兵士たちは、プーゴルの城から消えた。
二年ぶりの出来事だった。
その後、城の地下牢に幽閉されていた元官僚や元騎士団の面々を発見。酒場の親父の力を借りて、街の住人たちを集め、今プーゴル城は治療と炊き出しでごった返していた。
日が暮れてようやく落ち着き、スレイとラザンは酒場の宿で治療していたキースのところへ来た。
そういう状況だ。
「傷は大したことないけど、疲労が激しくて・・・」
暗い声。
自分の回復魔法の効果があまりなくて、落ち込んでいるクラナ。
傷の治療はできる。目に見えて効果が分かるから。だが体力を回復させるのは、魔法書通りにやっても上手くいかない。どこをどう回復させるか。実績も経験もないクラナには教えを請う相手もいない。
キースの魔法を受け付けない体質も関係しているかもしれない。
クラナは椅子に座りため息をつく。
「大丈夫。主様は元気になる」
ラザンが言った。
豪快にジョッキの酒を飲み干す。
そうだな、とスレイもジョッキの酒を飲む。
信じて待つしかない。
ただの慰みだとしても、今はそれしかできない。
「そうだよね。やれる事はやったし、明日になればきっと、いつものように元気な姿を見せてくれるよね」
クラナがテーブルにつく。重そうにジョッキを持って酒を飲む。
「私たちまで弱気になっていたら、キースだって元気にならないよ」
自分に言い聞かせるように。
何度もうなずきながら、クラナは冷めた料理を食べ始めた。
「明日も忙しい。食べないと身体がもたんな」
「そうですな」
ようやく料理に手を付ける。
離れたテーブルに座っていたナックもやって来た。
そうだよな。ここが始まりなんだ。ここから次に向かって進まなくてはならない。キースなら次に進んでくれる。
彼もみんなにならって食べ始める。
咀嚼する音しかしない静かな食事がしばらく続いた。
さらに一日が過ぎた。
街の住人たちの協力とクラナの魔法のおかげで、幽閉されていた者たちは回復し始めていた。
撤退したゴルゴルの兵団が、再び襲って来るかもしれない。そんな不安もあるが吉報も入ってきた。元官僚たちの話では、国王と王妃は人質として、ゴルゴルの城で生きているらしいのだ。
殺されたと思っていた国王様が生きておられた。
王族の血はまだ絶えていなかった。
領地を取り戻せば、再び国家を造ることができる。
希望はある。
力で押えつけられ、抵抗力を無くしていた住人たちに、明るい笑顔が戻った。
まだ終わっていない。
元騎士団のスレイとラザンならやってくれるかもしれない。
無謀な考えかもしれない。戦争に負けて国の組織は崩壊している。兵力もない。それでも何かゴルゴルに打撃を与えられるのではないか。
そんな期待が街全体に活気を与えた。
夕暮れ。
酒場の宿に戻ってきたクラナは、魔力も体力も使い果たし、重い身体を引きずって部屋に戻った。
部屋の扉を開けてすぐ、彼女は立ち止まったまま動かなかった。
やがて口だけを凍えたように小刻みに動かし、震える手で何かを掴もうとした。
「心配をかけた。もう大丈夫だ」
キースが窓際に立っていた。
いつもの彼女がそこにいた。
クラナはキースに走り寄って抱きついた。
ああ、どうしよう。
この高まった感情を表現できる術が分からない。
彼女の美しい顔をじっと見つめ、ためらいなく唇を重ねた。細い身体のどこに力があるのか、抵抗しようとするキースをベッドに押し倒す。
武具を着けていない薄着のキース。
恥ずかしそうに横を向く彼女が、愛おしくて仕方がない。
大きくて弾力のある彼女の胸に顔を押し付ける。心臓の鼓動と肌の温もり。息を吸い込み、肺の中をキースの匂いで満たす。
「よかった・・・よかったよ。キース、大好き」
抱きついたまま、声を上げて泣き出すクラナ。
「ありがとう」
そう言って、キースはクラナの背中に腕をまわした。
クラナの過剰介護。
治療なのか、ただの性的嫌がらせなのか。本人がそれ程嫌がっていなかったので、同意のもと、となるかもしれないが、ともかくクラナの献身的な介抱のおかげで、キースはいつもの元気な身体を取り戻した。
ロズとの対戦から五日。
「確かめたいことがあります」
食後の話し合い。
第一声はキースだった。
「ナックから聞きました。お父様と旅を共にされている方が、リノーズの村におられるとか?」
スレイの問いにうなずくキース。
「結果的にはロズと対戦する事になりましたが、旅の目的のひとつは達成できました。もし彼の言った通り彼女がその村にいるのなら、会って聞きたいことがあります。かまいませんか?」
「リノーズはここから北東、馬の脚で一日の距離ですな」
ラザンが言った。
「確かめに参りましょう。我々がご案内します」
「だけど、あなたたちは・・・」
スレイが片手を差し出し、キースの言葉を止める。
「国王様と王妃様を、一刻も早くお救いしたい気持ちはあります。ですが、今の主はキース様です。そして、我々をここへ導いてくれたのもキース様です。このご恩にまだ何もお返しをしていません」
「そうですよ、主様」
ラザンが身を乗り出す。
「その方が本当にリノーズにいらっしゃるのなら、これはキース様にとって重大な事です」
スレイの言葉にうなずくラザン。
キースの横でクラナは首を傾げる。
「この旅の目的は達成されました」
ロズに会うこと。
重要な部分は聞けなかったが、彼らの意図は掴めた。
「この先の事は、まだはっきり決めていないのでしょ?」
スレイの問いに答えられない。
彼の言う通り、キースはこの先の進路を決められず迷っていた。
ガガルが他界し、遺言に従って、ルコスにいるゲバラクに会いに行った。言われるまま、彼の作戦に協力して、武闘会に参加。そこで謎の少年、ロズに会う。
ロズはキースの生い立ちを知り、両親の事を知っていた。
知りたければ会いに来い。
その言葉に従い、彼の地までやって来た。
必然。運命。そう言えば聞こえはいいが、要はまわりに流されてここまで来ただけだ。そこに明確な意思は無い。
スレイはその事をよく理解していた。
「その方との再会は、これまでの十年間の思いを埋めることになるでしょう。全てを知ったうえで、キース様がどうされるのか。大事な選択をしなければなりません。それによって、我々の将来にも影響があるのです。どうか、道案内をさせてください」
頭を下げるスレイ。
ラザンも同様に。
キースと知り合ってまだ日は浅い。それでもこれ程深く感情を動かされ、服従心を抱くのは何故か。
問われれば、すぐに答えることができる。
それはキースと剣を交えたから。
生死をかけた本気の戦いは、幾千の言葉を交わすより相手を理解することができる。彼女の圧倒的な強さに、スレイとラザンは驚き、悔しさや恐怖を超えて、むしろ爽快感を覚えた。
次に感じたのは、小さな身体でまだ幼いのに、大地のように広い心。
彼女なら自分たちを受け入れ、導いてくれるのではないか。その気持ちに従い、ここまでやって来た。
選択は間違っていなかったと断言できる。
「ありがとう。では、お願いします」
キースが軽く頭を下げる。
笑みを浮かべるスレイとラザン。
「では明日の早朝、出発できるように準備いたします」
スレイが言った。
ラザンがとなりを見る。
「ナック、お前はどうする?」
ラザンに問われ、顔を上げる。
家族の仇は討った。自分の力量では敵わず、キースが討つ結果となったが、五年間の積年は果たされた。
彼は今自由だ。束縛するものは何も無い。
「俺も同行させて欲しい。キースの行く末を知りたい」
笑うラザン。
「決まりだな」
ナックの肩を叩く。
彼もまた、キースに魅せられたひとりだった。
「何も変わらないからね」
そう言って、ナックの視界を遮るクラナ。
出会った時からそうだが、クラナはナックに対して感情をむき出しにする。最初は分からなかったが、しばらく一緒にいて、その意味を理解した。
でも間違っている。
ナックはキースに対して恋愛感情は無い。戦士として興味を持っているだけなのだが、上手く伝える言葉がない。
睨むクラナに、ナックは苦笑した。
酒場の親父に全てを託し、一行は夜明け前に出発した。
キースは普段から表情の変化が少なく、心境を読むのが難しい。
だが、いつも以上に無口で、クラナがいることを忘れて馬脚を早めることから、動揺していると思われた。
スレイが声をかけなかったら、馬を休めず走り続けていたかもしれない。
水と草花が豊富な場所で、一行は食事と休憩をとった。
クラナが横に座って話しかけるが、キースの返事は曖昧だった。
無理もない。
自分独りを置いて旅立ってしまった父と従者。
それだけ重みのある十年なのだ。
ここまで北上すると、日中でも気温は低い。
皮の厚いローブ。吐く息が白い。
風除けに丁度良い大きな岩があったので、そこで野営した。
冷え切った身体を焚き木で温める。
キースひとりだけなら、一晩中走り続けていたかもしれないが、身体の弱い魔法使いがいる。おかげでキースも無理はしない。
これほど夜が長いと感じたことはなかった。
すぐそこに会いたい人がいる。ずっと聞きたかったことがある。身体は休息を望んでいるが、気持ちが張り詰めている。目を閉じていても眠れない。
頬に手が触れる。
一枚の毛布で一緒に寝ているクラナの手。
両手で顔を包まれる。目を開ける前にクラナの気配が近づいた。
唇と唇が重なる。
出会った時からそうだが、彼女とは言葉がなくても、そばにいるだけで気持ちが伝わるし伝わってくる。
「大丈夫だよ、キース」
その一言だけで気持ちが落ち着く。
クラナの吐息を胸元に感じる。
赤子が母の母乳を欲しがるように、クラナはキースの豊かな胸によく顔をうずめる。最初は抵抗があったが、今では素直に受け入れていた。
ただし、限度がある。
「痛いから噛まないでね」
小声でささやくキース。
本心で言ったのだが、クラナは違う意味で受け取ったようだ。
目を開けると、クラナが嬉しそうに笑っていた。
夜明け前に出発して、村には昼ごろ着いた。
小さな村だ。
ガガルと過ごしたあの村と雰囲気が似ている。
男たちは狩猟に使う道具の手入れ。女たちは食事の準備。子供たちはこの寒さのなかでも薄着で走りまわっていた。
キースたちは馬を降りて、踏み固められた道を進んだ。
彼女のことを聞くべきか、自力で探すか、少し迷っていた。そんな時に村人と目が合った。
予想外の反応だった。
旅人が珍しい。先頭の小さな女性がとても美しかった。
どちらも当てはまらない気がする。
ひとり、ふたりと、作業の手が止まり、驚きと感動が入り混じったような表情でキースを見る。
無骨な戦士にも、魔法使いにも、誰も目もくれない。
なかには、言葉にならない嗚咽や、呪文のような言葉を唱えている者もいた。
「帰ってきた・・・」
誰かの声。
「・・・様が帰ってこられた」
初めて聞く名前だった。
キースを誰かと間違えているらしい。
緑の髪に、幼いが女性でも見とれてしまう美しい顔。彼女に似た者がいるとは考えづらい。
反対側から男が歩いてきた。
彼もほかの村人と同じように、キースを見て驚く。
ただ、男は別の理由で驚いていた。
「嘘だろ・・・だって、さっき彼女と会ったばかりだぜ」
振り返る男。
間が悪いとは思ったが、キースは開口した。
「私の名前はキース。この村に『カサロフ』という名の魔法使いがいると聞いて参りました。彼女の住まいは何処ですか?」
キースの問いに辺りがざわつく。
反応に戸惑うキース。
村人たちの驚きが増したようだった。
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