第4話

「いいですか? この宇宙にはまず、基本相互作用と呼ばれる四つの力が存在します。電磁気力、弱い力、強い力、それから重力の四つです。それらの力はみな、素粒子の交換によって宇宙という場に発生します。電磁気力なら光子を、弱い力ならウィークボソンを、強い力はグルーオンで、そして重力は重力子という、未だ発見には至っていない架空の素粒子が当てられています。

 ああ、説明が足りませんでしたね。基本相互作用をそれぞれ噛み砕いて話しますと、電磁気力は電磁コイルが持つ磁石のような力だと考えていただいて結構です。重力はそのままですね。弱い力は、放射性原子核を崩壊させてしまう力、そして強い力は、素粒子を集めて原子核を作る力、そういったイメージを簡単に持っていただければ大丈夫です。本筋にはあまり関係ありませんから。

 さて、先ほども話しましたが、未だに重力子というものは発見されていません。わたしの研究というのはまさにそれで、ずばり重力子の発見、解明です。

 重力子が存在しているか否かを証明する考えは極めて単純です。この世の全事象を、重力子を仮定した物理法則に則って記述し、それが矛盾なく成立していることを確かめればいいだけですから。しかし、これは出来ない相談というものでした。だってこの世の全事象ですよ? 今あなたがお茶を飲まれているその動作さえも、全て計算式に組み込んで算出しなくてはならないのです。これは世界中の全てのコンピュータを総動員したとしても、計算し終えることは不可能な膨大さでした。

 そこで、わたしはその計算対象を、全宇宙からそのごく一部へと狭めていったのです。あなたも小学校で習ったはずです。数十個の物を手っ取り早く数えるために、それを五個ずつのグループにして丸で囲んで、そのグループの合計とあまりを足して全体の数を求めるというやつです。そうすることで計算式が飛躍的に短くなる。それを詳しくは『ユニタリ性メソッド』と呼ぶのですが、どうです? ここまで着いて来られていますか?

 そうして計算の後に出た結果は、果たして重力子の存在を証明するものでした。しかも幸運なことに、どうやらそれはわたしたち研究者のよく知るもので出来ていたようなのです。

 重力子の正体は、強い力を媒介するグルーオンがペア、つまり二つ一組になったものでした。

 正体が分かったら簡単なものです。あとはそのグルーオンのペアを自由に発生、操作することが出来たら、我々人類はとうとう重力を支配下に置くことさえ可能になるのです」

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