第3話

 テレビの震災のニュースでは、民放テレビ局が、撮影禁止の貼り紙のある避難所で堂々と中継を行っており、それを避難者の一人であろう男が一喝するという、まさに日本の報道の低俗さを体現する姿が映されていた。俺も記者の端くれではあるが、こんなヤツらと同類扱いされるなど屈辱以外の何物でもない。俺はこんなヤツらとは違うのだ。

「紹介が遅れました、私、フリージャーナリストの真城と申します。先日のお電話で申し上げたとおり、本日は女良さんの重力子に関する研究について、詳しくお話を伺いたいと参りました」

 女良は、やはりそうかといった風に、笑顔を作りながら深い息を吐いた。

「リョウと下の名前で呼んでください。名字はあまり気に入らなくて」

 想像していたよりも男らしい人だ、と俺は思った。年は四十代後半といったところだろうか、背が高く、物腰も穏やかで紳士然としている。最初は声の低さに少し驚いてしまったほどだ。

「女……リョウさんの研究は、もしかしたら人類を救えるものかもしれないとお聞きしました。是非とも、その研究内容がどういったものなのかを詳しく伺いたいのです」

「研究ねえ……一体どこでそんな話を」

「ここに来る途中で、何人かにリョウさんのことをお聞きしましたが、みなさんもリョウさんが何かの研究をされているということは知っておられました」

「そうですか……」

 女良は手を顎に当ててしばし沈黙した。

「まあいいでしょう、わたしの知識がみなさんのお役に立てるかどうかは分かりませんが、ご依頼を受けた以上、お話しさせていただきます」

 俺は出されたお茶を啜った。

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