第十節 終結と始まり

 ベルセルラーデとの戦いが終結し、空を埋め尽くすほどの陶磁器と肉が入り混じった怪物が現れてから、既に丸一日が経過していた。

 トゥラベカとの戦いで力を使い果たしてたカナタは防衛戦に参戦することはできず、それを見守っていることしかできなかった。

 それでもどうにかオルタリア軍は死力を尽くし、またアルスノヴァの協力もあってそれらを退けることには成功していた。

 だが、その代償は大きい。

 カナタが今立っているのは、城門が破られたイシュトナル要塞の入り口付近。左右に伸びる巨大な要塞の中では、ゲオルク達が休む間もなく今後の動向に付いて話しあっているはずだった。

 例えセレスティアルを扱え、彼等の中でも有数の力を持っていたとしても、カナタがそこに参加しても何も発言することはできない。だからと言って何もせずにいることもできず、こうして要塞の前まで無意識に足を運んでいた。

 辺りを見れば、地面には未だに片付けが終わらない怪物の死骸と、乾ききっていない人の血が散乱している。

 どうにか人の死体だけは片付けを終えたようだが、それもまだ埋葬などはできず、一ヵ所に集められているだけの状態らしい。

 見張りに立つ兵士達の表情も疲れ切っていて、生気がない。未知の敵との戦いが今後の続くのだから、それも無理はない。

 彼等の疲労と消耗は多大なものだろう。ましてや、それが抗ったところで勝てるかも判らない相手との戦いであるならば尚更のことだ。

 無計画にここに来たのはいいが、かえって気が滅入る結果になってしまったことを、カナタは悔やむ。

 いつまでもぼうっとしていたも始まらないと、仕方なく踵を返してその場から立ち去ろうとすると、要塞の入り口が重々しい音を立てて開いて、そこから颯爽と歩み出てくる姿があった。

 褐色の肌に長い黒髪。鋼の杖を手に携え、護衛もつけずに立場上は敵国を闊歩するその男の名はベルセルラーデ。

 つい先日までは敵同士だった、バルハレイアの王子だった。

「おぉ! カナタか! 余を迎えに来たのか? 愛い奴だな」

「そんなわけないでしょ。偶然だよ」

 ベルセルラーデが現れたことで、見張りに立っている兵士達の間にも緊張が走る。ゲオルクの親友であり、敵対する気はないと判っていても、彼は今だ戦争中の国の王子だ。

 そしてその力をまざまざと見せつけた鋼の王は、ここでもし暴れ出せばカナタ以外に止められる者はいないだろう。

「どうした。そんなに熱い視線を余に向けて。可愛がってやりたいところだが、生憎と今は時間がない。余は身勝手さには自信があるが、優先順位と言うものは理解しているからな」

「……馬鹿じゃないの」

「ハハハッ、冷たいではないか! 何か気に入らんことがあるのならば言ってみよ? 余はそなたを気に入っている。不敬とは言わん」

「なんでここにいるの?」

「つまらぬことを聞く。ゲオルクに策を授けに来たのだ。こうなった時のことを考えて、余は協力者と共に密かに行動を起こしていたのだからな」

「こうなることが判ってたの?」

「最悪の可能性としてな」

 よく通る声で、ベルセルラーデはそう言った。

 それはカナタの中でずっと蟠っていた言葉を引きださせる。

「他に方法はなかったの?」

「他にとは?」

「戦争を仕掛けて、大勢の人が死んだんだよ? そっちの人だって。こうなるかも知れないことが判ってたなら、戦争以外の方法だってあったはずなのに」

 静かに、ベルセルラーデはカナタの言葉を受け入れる。

 カナタにとってはそればかりが疑問でならなかった。あの空に怪物が現れ、ベルセルラーデが味方をしたその時から、最初からこうなることが判っていたのならば、戦争以外の手段で御使いと戦うことだってできたはずなのに。

「御使いは余の父であるベリオルカフを誑かし、戦争の火種を国内に燃え広がらせた。父の声は遥か昔から続く妄執の炎への薪となり、それを留めることができなかったのだ」

「……だって、貴方は強いのに……。その強さがあれば、他の人を止めることだってできたのに!」

「例え同胞を手に掛けてそれをしたところで、御使いが余を生かすとは思えぬ。裏切ったと判れば父は余すらも平気で殺すだろうからな」

 考えて見れば、簡単な話だった。

 表だってそれに反抗すれば、脅威となりうるベルセルラーデを御使いは敵と見做すだろう。その時点で彼が取れる行動は最早、限られていた。

「実を言えばな、父が戦争を始めた時点で、余に手はなかったのだ。僅かな可能性に賭けてオルタリアに戦いを挑み、勝利したうえで魔人とそなたを手に入れる。そうして、御使いの目的がバルハレイアに仇なすのならば改めて敵対するぐらいしかなかった。我ながら、成功する未来の見えぬ戦いだ」

 もし、弱さが罪だと言うのならばそれは間違いなくベルセルラーデの罪だった。

 だが、それを認めてしまえばそれは誰にでも圧し掛かる。カナタも、ヨハンも、アルスノヴァですらもその罪を背負うことになる。

 誰もが弱い。多くの人を救うだけの力を持っていながらも、精一杯に広げた腕から零れていく命は幾つもあった。

「事態が多少は好転したのは、決戦の直前のことだ。決着が付く前に御使いが本性を現したのは運がよかったと言える。もし奴が余達にもっと関心を寄せていれば、互いに潰しあうまで戦わせてから事に及んだだろうからな」

 例え王であっても、それは抗えない。

 そして王だからこそ、ベルセルラーデは天秤に掛けたのだろう。

 彼に付き従う兵と、オルタリアの兵を犠牲にして、時間を稼ぐことにした。その上で、万に一つの可能性にしがみ付いたのだった。

「本来ならば、上手く兵達を抑えるべきだったのかも知れん。だが、父祖の代よりオルタリアを欲する言葉を聞き続けてきた将や兵の意志もまた、裏切れぬことだったのだ。それらを押し留めては、余計な不和が広がり御使いに感付かれる可能性もあった。余が未熟だった故に、奴等を抑えることができなかったのだ」

 最後にそう言って、ベルセルラーデは自嘲する。

 オルタリアを求める声は、バルハレイアの中に確かにあった。

 決して王であるベリオルカフだけではなく、民や兵達にもその気持ちが燻っていた。それに火をつけて戦いに駆り立てた御使いが、上手だったのだ。

「余は確かに、兵達を天秤に乗せた。全く関係のない、オルタリアの者達も同様にな。そのことで責められようと、弁解の言葉もない。だが、それ故に止まれぬのだ。王とはそこで暮らす民達を照らし、導く者故に」

 彼は選んで、歩き始めていた。

 それが例え茨の道だと判っていたとしても、臆することもなく。

 そこにどれだけの覚悟があったのだろう。それだけの命を背負って前に進むだけの強さは、カナタにはない。

 だから、もうベルセルラーデを責める言葉はなかった。もっと他に方法があったと言うのは容易いが、少なくとも彼を糾弾してそれを模索するのは今ではない。

 そんなことは、後の歴史で学ぶべきことだ。カナタ達が元の世界で、歴史の教科書を読んでそれをこれからの時代に生かしてきたように。

「……ごめん」

「何故謝る?」

「何も考えないで、自分の意見だけを言ったから。貴方だって傷ついているのかも知れないのに」

 それを聞いて、ベルセルラーデは一瞬、呆けた顔をする。

 それから、大口を開けて愉快そうに笑い始めた。

「心底お人好しだな、そなたは! だが、それでいい! それでこそ余が見込んだ女だ」

「いや、それは別に嬉しくないけど」

「ハハハッ! 照れるでない。トゥラベカが気にいる理由もよく判ると言うものだ」

 テオフィルによって重傷を負ったが、トゥラベカは命に別状はなかった。今は治療を受けているが、これ以上戦いに参加するのは不可能だろう。

 テオフィルを一太刀で倒したヴェスターは、アルスノヴァと戦っていた御使いを追っていつの間にか姿を消していた。

 状況は決してよくはない。むしろ最悪と言えるが、もう動きだす者達は動いている。

 ヨハンが姿を消したのも、それに関係することなのだろう。その中で、カナタも自分にできることを考えなければならない。


 ▽


 目の前に広がるのは、赤茶けた大地だった。

 風と共に砂礫が舞う荒野の先には、緑の殆どない山々が連なって聳えている。

 戦争の影響か、それとも突然現れた怪物を避けるために避難しているのか、進む道に自分達以外の人影はない。

 改めてこの大地を見れば、オルタリアがどれだけ恵まれた土地であるかがよく判る。その原因が自然に起こったものではなく、千年前の虚界との戦いによるものだとすれば尚更だった。

 太陽の光は容赦なく照りつけ、額を汗が落ちる。

 南方に位置するバルハレイアは、オルタリアよりもずっと気温が高い。しかも、今は人二人が密着しているので尚更だった。

 背中に背負った少女が身を捩る。

 心配して首だけ後ろに向けると、「大丈夫」と声が返ってきた。

 ヨハンとアーデルハイトの二人は、魔法の絨毯を使ってバルハレイアの領内に入り込むことに成功していた。

 とは言え全て順風に行ったかと問われればそうではなく、空中であの怪物に襲われて、どうにか撃退したところだった。

 その結果アーデルハイトは魔力切れで動けなくなり、こうして彼女を背負って歩くことになったと言う訳だった。

 既に野宿を繰り返しながら、二日は歩いている。連日の無茶が祟ったのか、アーデルハイトの魔力を戻すならばしっかりと休息をさせる必要がありそうだった。

 時折申し訳なさそうに自分で歩こうとするのだが、少し進むとまた体力が切れてしまう。実際、アーデルハイトは小柄なので背負っている分には殆ど問題はない。道中は魔法道具を使って移動の痕跡も消しているし、姿が見つからないような工夫もしている。怪物に襲われることはまずないだろう。

「ねぇ」

 会話の起こりは、大抵の場合は彼女が質問をして、それに応えると言う形だった。お互いの性格をよく判っているから、話題があれば遠慮することなく次々と繰り出してくる。

 少しばかり沈んだその声から、彼女が気遣いながら何かを聞こうとしていることも判った。

「なんだ?」

 だから、できるだけ優しい声色で聞き返す。今更尋ねられて機嫌を損ねることなど、そうそうありはしない。

「貴方はこの世界を創った神の力を受け取って、虚界と戦った。でも、貴方が成したことは、結果としてこの世界に遺恨を残した。……今こうして行動しているのは、その責任を果たすため?」

「いや、そんなことはないが」

 あっさりと、杞憂を含んだその言葉を否定する。

 ヨハンの肩に顎を乗せたまま、アーデルハイトがきょとんとした顔をしているのが想像できて、小さく噴き出してしまった。

「なによ?」

「いや、別に」

 覚えていないことの責任を負うなど、筋違いもいいところだ。かつて同じ体の人間がそれをやったとしても、ヨハンに記憶がない以上はそれは他人のことだ。引き継いでやる義理もない。

 最初にこの世界に呼び出された不幸な男がいた。

 その償いにと神の力を受け継いで、虚界と戦った男がいた。

 その末に奪われて、記憶を失ってこの時代に流れ着いたのがヨハンだ。大魔導師に名を貰い、力の残滓を操って神を気取り、その末にあらゆるものを失った愚か者。

 自分は、ただそれだけの男だ。別に、それ以上を望むつもりもない。

「自分にできることをしているだけだ。因果などない、と言いたいが、残念ながらそうもいかない。別に過去からの意志を背負っているつもりもないな」

「なら、どうして?」

「それが一番手っ取り早いからだろう? この世界の未来を見るのに」

 それぞれの役割を持ち、果たしていく。

 力を失ったヨハンだからこそ、辿り付いた結論なのかも知れない。

 結果として貧乏籤を引くことになっているのかも知れないが、それは別段自分に限った話ではない。

「アデルこそ、俺に付いて来てよかったのか? 言うまでもないが、危険だぞ」

「今更ね。離れて安否を心配しているぐらいなら、一緒に危険な目にあった方がマシよ。それに、貴方一人じゃできないことだって幾つもあるでしょう?」

「それはまぁ、そうだな」

 先程できることをやるとは言ったが、何もそれはヨハン一人の話ではない。

 何の因果か、ありがたくも幾つもの縁が連なり、ヨハンはここにいる。

 言ってしまえば、たったそれだけの話だ。

 過去に自分がやったことなど、ヨハンの知ったことではない。それは別の誰かがしでかしたことだ。

 ヨハンが戦う理由は一つだけ。この世界の未来が見たい。声を上げた者がいて、前に進み続けた者がいて、それを後ろで見守る者達がいる。

 そんな愛すべき人々が切り開くこの世界の先を、見て見たいだけの話だった。

「少し、安心した」

 首に回された腕に力が籠る。

 より強く密着されてお互いの熱が伝わるが、不思議と嫌な気分ではない。

 話題が適当に途切れたところで顔を上げると、いつの間にか遠くに見えていた山のすぐ傍にまで近付いて来ていた。

 申し訳程度の小さな城壁。そこにある門には屈強な身体をした見張りの兵達が、槍を立てて直立している。

 時間を掛けてそこに近付いていくと、彼等は兜の下からヨハンに視線を向ける。

 一応は指示を受けてここに来た身だ。まさか争いにはならないだろうが、本当に話が伝わっているのかと不安にもなる。

「お待ちしておりました!」

 それは杞憂だったようで、見張りの兵士二人はヨハンを歓迎するような大声でそう言うと、その太い腕で両開きの門扉を開いていく。

 城門の向こうには、石でできた建物が立ち並んでいる街があった。大きな街ではないが、通りには多くの人が行き交い、活気が見て取れる。

 門を潜ってすぐに目に付いたのは、街の中にいる兵士の多さだろうか。バルハレイアの兵隊が数多く見張りや何らかの作業の追われている。

 そこに交じってオルタリアの兵の姿もあり、それに疑問を唱えるよりも先に、ヨハンは彼等から何かの報告を受けるその答えを発見した。

「ルー・シン」

 人の間を縫うようにして近付いていき声を掛ける。

 怜悧な風貌に長身の男、ルー・シンは喋っていた兵士との会話を締めくくると、ヨハンの方へと顔を向けた。元気そうだが、怪我を負っているのか、首元には厳重に包帯が巻かれている。

「来たか、ヨハン殿。予定より遅かったようだが?」

「道中あの怪物に襲われた。……むしろ早い方だと思うが?」

 陸路で来るよりも遥かに早くここに辿り付いたのだから、そう言われるのは心外だった。

「卿ならば手前の予想もつかぬ手段を使い、一瞬でここに到着するものと思っていたからな」

「無茶を言うな」

「冗談だ。実際のところを言えば、迅速な行動に驚嘆している。それでこそ、ここに一ヶ月以上も潜伏していた甲斐があったというものだ」

 事の起こりは、ヨハン達を上空から奇襲してきたベルセルラーデの鋼の鳥だった。

 倒されたそこに書かれていたメッセージに、ヨハンに一足先にこの地に来るようにと指示されていた。

 ゲオルクと相談の末に、危険かもしれないがやる価値は充分にあると判断して、こうして単独行動を取ってここに来たということだった。

 実際に怪物達が出現したことから、それは正しかったのだろう。

 鉱山街、オルゴル。それがこの小さな街の名前だった。

 山脈に面しているため大量の鉱石が発掘され、それらはバルハレイアの各地に運ばれて加工されて人々の生活の基盤を作っている。

 ここを集合場所に選んだ理由は、王都オーゼムからイシュトナルまでの最短ルートから外れたところにある、身を隠すのに最も適した街だからと言うことらしい。

「しかし、生きていたとは思わなかったぞ。早いところリーゼロッテ嬢に手紙でも出してやったらどうだ?」

「ベルセルラーデ王子にあの鋼の杖を振り下ろされた時は、生きた心地がしなかったがな。だが、彼とて追い詰められていて回答を探していた。手前が偶然、それに連なる意見を持っていたという幸運に過ぎん」

「いつから御使いの裏側に入り込む計画を?」

「捕虜になって縛られている時だな。最初はベルセルラーデ王子に、ゲオルク王の名と戦いの大義のなさを語り、揺さぶりを掛けるつもりではあったのだが……。途中で御使いの方をどうにかする話に持って行った方がいいと気が付いた」

「よくもまぁ、咄嗟にそんなことが思いつく」

「大した話ではない。事は単純で、手前も死にたくなかっただけことだ。悪党が死に際に必死で命乞いをすることがあるだろう? それをしただけに過ぎんよ」

 それで相手を丸め込めるかどうかはまた別の話だろう。大抵の場合、それが成功することはないのだから。

「本来ならば御使いに対しての情報収集をしながら戦力を温存する形になるはずだったのだが、予想より奴等は早く行動を開始したようだからな」

「怪物の被害は?」

「このオルゴルは殆どないな。近くに数匹、斥候のように現れたが交戦には至っていない。だが、人の集まりが多い場所では破壊活動も行われているようだ」

「奴等の行動に法則性はあるのか? 目的の割り出しはできるか?」

「一応は、軍事施設や武器を持った兵士を攻撃しているようだな。とは言えまだ情報が少ない。断定するのは危険だろう」

「……そうか。それで」

「待て」

 掌を向けて、ルー・シンがヨハンの質問を拒絶した。

「色々と聞きたいことがあるのは判るが、手前もまだやることがある。それに卿とて長旅で疲れているだろう? 先ずは休むといい」

「わたしのことを気遣っているのなら問題ないわ」

 そう言って身体を動かして、ヨハンに降ろすようにアーデルハイトが訴える。気にしていなかったが、少女を背負ったままルー・シンと喋るその姿は随分と注目を集めていた。

 彼女を降ろすと、ローブの乱れを治しながら、何食わぬ顔で話の続きを促そうとするが、ルー・シンは今これ以上語るつもりはないようだった。

「奥方殿も、わざわざご足労痛み入る。残念だがこれから先は更に負担を掛けるかも知れぬ。だからこそ、今は休んでほしいのだ。理解していただけるかな?」

「奥方……。まぁ、いいでしょう」

 奥方と呼ばれたことに気分を良くしたのか、あっさりとアーデルハイトはそれを了承した。

 ヨハンとしても確かにアーデルハイトを休ませる必要があるとは考えていた。それに、言っていた通りルー・シンの後ろには彼の判断を仰ぐ兵達が列を作りはじめていた。

「決して広くはないが、宿を取ってある。食事の準備をさせておくから、休むといい。そこの君、彼等を案内してやってくれ」

 そう言われて、ルー・シンの部下である兵士の一人が柔らかな物腰でヨハン達を先導していく。

「ここは鉱山で栄えている街だ。通常の鉱石の他に、魔法鉱石も数多く産出される。必要なものがあれば届けさせよう」

「なにから何まで助かる」

「問題はない。卿等に働いてもらうのは、これからが本番だなのだからな」

 そう言って、ルー・シンは自分の仕事に戻って行く。

 何にせよ、彼が生きていたことは心強い。本人には気付かれないところで、ヨハンはその喜びを深く噛みしめていた。

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