第七節 空を駆ける光
崩れかけた建物の影に隠れて息を潜める。
空を見上げれば満天の星空に、丸い蒼月。
天から差し込むその光は、夜の遺跡群の闇を淡い輝きで照らしている。
同時に、それによって浮かび上がった人間大の大きさのゴーレムに、シルヴィアは自分が発見されたのかと息を呑んだ。
軋むような音を立てて、それの上半身が旋回する。どうやら、それはシルヴィアの姿を見つけてはいないようだった。
事の起こりは数時間前。
カナタに出ていかれたシルヴィアは、それでも予定を変更することをせずに一人で遺跡群にやってきた。
何の前情報もないのならともかく、今ならある程度の地理は把握している。加えてシルヴィアも学院内では優秀な魔導師。ゴーレムの一体や二体程度ならば倒すことができると考えていた。
それが全て慢心だったと気付いたのは、手遅れになってからだった。
身体に対魔法用のコーティングが施されたゴーレムにシルヴィアの得意技は一切通用せず、それらに追い回されて逃げているうちに、状況はどんどん悪化していった。
先日カナタと遭遇したゴーレムだけが全てだとシルヴィアは勘違いしていたが、それは大きな間違いだった。
逃げ回れば逃げ回るほど次々と沸いて出てくる多種多様なゴーレム達。
小型のものから、人間サイズの大型まで、それらは様々な用途に特化していて、容赦なくシルヴィアを追いつめていく。
こんなに目立つ場所にあって、この遺跡群が未だに本格的な調査が行われていない理由がそこにあった。
「……なんでこんなことに……」
理由なんて判りきっている。
カナタが来てくれていれば斥候程度のゴーレムは容易く倒せただろうし、シルヴィアが無理をする前に帰ろうと言ってくれた。
では、彼女の所為でこうなっているのか?
それもまた違うと判る程度には、シルヴィアは子供ではない。
くだらない喧嘩をして、意地になって、悪いのは全部自分だ。
友達のことを悪く言われれば起こるのは当然。そしてアーデルハイトに対する悪態の中に、彼女の持つ才能への嫉妬がなかったかと問われればそれを否定することはできない。
結局のところ、この事態を招いたのは全部自分なのだ。
小さな駆動音が聞こえてきて、身体が無意識に硬くなる。
人間の頭程度の大きさの何かが、シルヴィアの目の前を浮遊していた。
悲鳴を上げそうになるのを、咄嗟に口を抑えて堪える。
顔が浮かんでいるような形のそれは、中央に光る目が三つついている。
シルヴィアを見つけたそれが、まるで獲物を見つけて笑う狩人の目のように細まる。
まずいと、咄嗟にその場から駆け出す。
シルヴィアの判断は正しかった。別方向から放たれたレーザーが、先程まで彼女が身を預けていた建物の壁を横薙ぎに切断する。
「索敵用のゴーレムなんて……!」
彼等は一体で他機能なのではない。
複数の個体を組み合わせてその連携を取る。それこそがこの遺跡群に潜む本当の脅威だった。
小声で呪文を唱えて、手の中に火球を生み出す。
それをレーザーを放ったゴーレムがいるである方向に放り投げてから、着弾も確認せずに走った。
背後で爆発音が響き、瓦礫が崩れていく。
反撃のレーザーが飛んで来ることはなかった。どうやら倒せはしないまでも、一時的な機能停止には追い込めたのかも知れない。
道を駆け抜けるシルヴィアの真横に、何かが着地する嫌な音が響く。
胴体部分に両足だけが付いたゴーレムが、細い足を起用に動かして跳ねるようにシルヴィアと並走していた。
『雷の剣!』
手の中で紫電が弾ける。
生み出された蒼く輝く剣で、その足の部分を薙ぎ払う。
走っていた高軌道型のゴーレムは足を切断され、そのまま勢いを殺すことができず前のめりに倒れていった。
安堵するのも束の間。シルヴィアの息が上がり、生み出した雷の剣はすぐに霧散して消滅してしまう。
魔力も体力も限界が近かった。ここに来るまでも逃げるのに魔法を多用したツケが、ここに来て回って来ていた。
二つ、三つと足音がする。
まだ大量の追手がシルヴィアの背後に現れ、侵入者を排除しようと無慈悲な殺意を向けている。
その背中越しの恐怖に足が竦んだのか、それとも疲れが限界に来ていたのか。
「あっ……!」
足が縺れ、そのまま態勢を立て直すことができずにシルヴィアの身体は石畳の上に無防備に投げ出された。
それでもまだ必死で生にしがみついて、両手をついて起き上がろうとするが足が言うことを効かない。
両手で身体を起こし後ろを向いたところで、シルヴィアは目の前に迫る恐怖で完全に動きが止まってしまった。
人間よりもやや小さい大きさの、中央に大きな目が付いたゴーレムがこちらを見つめている。
それはあの時カナタが倒した物と同じ。
その目の輝きが強まり、シルヴィアにレーザーを放つ。
空気が焦げる匂いがして、シルヴィアは死を覚悟した。
もう防御魔法も間に合わない。避けることもできそうにない。
後はただ、最後の時を受け入れるだけ。せめて痛くないようにと、両手を組んで神に祈る。
祈りは神には届かない。
シルヴィアは知らないことだが、もう彼女が祈る空には誰もいないのだからそれは当たり前のことだ。
神の名を持った誰かはその力を譲り渡し、それすらも優しいエゴのために使い果たされて消えた。
しかし、因果とは巡るもの。
そうやって救われた彼女が、光を纏ってシルヴィアの前に降り立つ。
月光を受けてより強く輝く天の光、セレスティアルの極光はまるで、人を救いに降り立った御使いのようだと、シルヴィアは思った。
レーザーの光が拡散し、シルヴィアの背後で消える。
空から降りてきたその人物は、シルヴィアを振り返ると手を差し伸べて、心底安堵したように笑った。
「……無事でよかった」
そこにはもう怒りも、何の憂いもない。
ただその無事を喜ぶだけの感情が伝わって来て、シルヴィアも不思議と釣られるように口元を緩めてしまう。
その手を取ろうとした瞬間、周囲に幾つものが影が躍る。
「……まだいる!」
カナタが振り返り、剣を生み出そうとする前に、空から落ちてきた幾つもの光がそのゴーレム達を貫き、それらは全て身体を砕かれた。
高速で空から何かが降りてくる。
箒に乗ったまま、低空で制止した彼女はいつも通りの冷たい顔で、シルヴィアを睨んでいた。
「油断しない。まだまだ大量に来るわよ」
石と石がぶつかるような足音は無数に聞こえてくる。
「完全に包囲されていますわ……。わたくしが無理に走り回ったから……」
「へぇ。原因を追究する能力があるのなら、以前からそうしておいて欲しかったものね」
「アーデルハイト」
いつも通りの憎まれ口を叩くアーデルハイトだったが、カナタに名前を呼ばれたことで気まずげに視線を逸らして頬を掻いた。
それから低空飛行したままの箒を、シルヴィアのところに寄せる。
「特別に乗せてあげる。代金は以前壊してしまったゴーレム一体分でいいわよ」
「今このタイミングでそれは少し卑怯ではなくて?」
「嫌ならここで置き去りだけど?」
「二人とも早くして!」
飛びかかってきたゴーレムの一体を、カナタが剣で打ち返す。
「早く乗りなさい!」
一喝されて、シルヴィアは渋々その後ろに跨る。
「カナタはどうしますの?」
「大丈夫よ」
二人を乗せた箒は一気に急上昇する。
上空に逃げた敵を迎撃するために、地上から幾つもの光の線が空へと放たれる。
「そんな細い攻撃……!」
上向きに箒を縦にして急速上昇。
そこから左右に身体を振ってレーザーを回避する。
そのまま上空高くに上がって、急旋回。箒はその後ろ部分を地面へと向けた。
「お、落ち、落ち……! ぶつかる!」
「落ちないしぶつからない……! これは特別製なの。わたしの思い通りに動くし、そこに失敗はない」
アーデルハイトの声色はいつも通りで、全くぶれることはない。
その箒に対しての強い信頼が伝わってくるようで、いつの間にかシルヴィアも空にいると言う恐怖は消え失せていた。
「これは限界で二人。あの子には走って突破してもらうわ」
「そんな無茶な!」
「無茶じゃないわ。あの子は強いもの。それに、空にはわたしがいる」
「でも!」
下を見れば、案の定カナタが複数のゴーレムに囲まれている。
遠くから飛んでくるレーザーを弾き、近くのものには剣で対応しているが多勢に無勢なのは明らかだった。
「まずはあれをやりましょうか」
片手を放したまま一気に急降下。
そうしている間にもアーデルハイトの手に中には蒼雷が宿っている。
先程シルヴィアが生み出した雷の剣とはそこに凝縮されている魔力量は桁違いのものだった。
「目標は……。五、十……もっとね。二十、三十……!」
目の前で光が爆ぜた。
アーデルハイトの手から放たれた雷は空中で幾重にも枝分かれして、地表へと襲い掛かる。
目標は遠くからカナタを狙うレーザー型のゴーレム。それらに対して上空から襲い掛かった雷の槍は、その固い身体を通して内部のコアを焼き切り見事に機能を停止させた。
「……凄い……」
魔導師としての純粋な賞賛の言葉が思わず口から出てしまう。
短期間の詠唱、大量の目標、そしてそれらを一撃で破壊するだけの威力。
それだけの魔力を練るのにどれほどの集中が必要となるのか。
何よりも彼女が一瞬で放出した魔力量は魔導師の平均を遥かに超えている。それも何の道具もなしに。
「まだいるわね」
立て続けに雷を放ち、目標を空から狙い撃つ。
あれだけの力を放っても、アーデルハイトの魔力が尽きる様子はない。
地上に視線を降ろすと、カナタは一体の大きな個体と切り結んでいた。
人型の四肢を持ち、片手に剣と盾をそれぞれ構えたそれは、他のゴーレムとは見るからに格が違う。
アーデルハイトが厄介な遠距離攻撃を片付けたことでカナタの周囲にはいつの間にかゴーレムの残骸が増えているが、目の前の敵には苦戦している様子だった。
「あれを倒せれば突破できそうね。でもその前に」
またくるりと箒が急旋回する。
一気に下降して、遺跡の地面擦れ擦れで直角に角度を変える。
「ちょ、じ、じめん……!」
地上を滑るように走り、目に付いたゴーレム達が擦れ違い様に次々と彼女の魔法を受けて撃破されていく。
その途中またも急旋回、時には急上昇を繰り返して、周囲のゴーレム達の目標を自分に引きつけてカナタから注意を逸らしていた。
時には崩れた門の内側や柱と柱の間を高速で通り抜けるものだから、後ろに乗っているシルヴィアとしては気が気ではない。本当に一瞬でも動きに乱れがあれば、ぶつかって命がないのは確実だった。
やがて縦横無尽に飛び回るアーデルハイトは、ゴーレムと切り結ぶカナタの元へと一直線に向かっていく。
両者の剣が合わさり、身体が離れたその間を通り抜けて、視線を投げかける。
不思議とゆっくりに見える景色の中で、シルヴィアにもまたカナタがアーデルハイトの無言の訴えに頷き返したように見えた。
「凄いもの見せてあげる。これで二回目のゴーレムの代金ね」
返事を聞く暇もなく、空へと舞い上がる。
既にシルヴィアは飛び回る箒の上で身体の中を左右に揺さぶられ、しがみついているのがやっとの状態だった。
「対象を絞って、規模を小さく……」
勢いよく、アーデルハイトが片腕を振り上げる。
そこに宿った雷が、強力な魔力の浸蝕を受けてその姿を変えていく。
迸る紫電が消えて、もっと純粋が輝きに。
荒ぶる雷から姿を変えたそれは、より純度を増した光そのもの。
『ディヴァイン・パージ!』
天空から光の柱が落ちる。
真っ直ぐに人型のゴーレムを、目もくらむと程の眩い光が撃ち抜いた。
それでもまだ倒れないゴーレムに、カナタの光の剣は一閃する。
頭から胴体の辺りまで一気に斬り裂かれたゴーレムは、両手に握った剣と盾を地面に落とし、そのまま倒れた。
「カナタ!」
地上に近付いたアーデルハイトが、カナタに呼びかける。
光の翼を広げて跳躍したカナタが、どうにかアーデルハイトの身体にしがみ付いた。
「飛べるの?」
「無理よ! この高度から、前に全力で進んで、遺跡の外に落ちる」
「判った、よろしく!」
「簡単に言ってくれて……!」
呆れながらも、その口調は嬉しそうだ。
三人を乗せた箒は重量を超えてふらつきながら夜空を駆ける。
そしてどうにかこうにか、ギリギリの範囲で遺跡群の外に飛び出して、近くの草原へと不時着したのだった。
▽
戦いの後の熱を持った身体に、澄み渡る夜風が心地よい。
カナタは今、遺跡群から離れたところにある草原で空を見ながら座り込んでいた。
横にはアーデルハイトが、片手に箒の柄を握ったままだらしなく寝転んでいる。
荒い息を吐き、月の灯りを頼りに今来た方向を見る。
追手の姿はない。そればかりか、直前まであれほどの戦いが繰り広げられていたことすらも嘘のような静寂だった。
やはりあのゴーレム達は、遺跡に入ろうとする者を無差別に攻撃するが、外に出て来ることはないらしい。
カナタ達を照らす月光が翳る。
見ればその光を遮るように、シルヴィアが腕を組んで二人を見下ろしていた。
「なによ?」
身体も起こさずに、憮然としてアーデルハイトが尋ねる。
シルヴィアはそれを無視して、カナタの方へと視線を向けた。
「今回のことは……。わたくしの不手際、無謀な意地が招いたことです。ごめんなさい」
思いの外素直に出た謝罪の言葉に、カナタはきょとんとするが、すぐに答えを返す。
「無事だったならいいよ」
「それから、昼間のことも。わたくしも少し熱くなっていました」
「ううん。ボクにも悪いところはあるから」
お互いに心からの言葉を受け入れて、安堵の笑みを浮かべる。
そして次にシルヴィアが手を差し出したのは、倒れたままになっているアーデルハイトだった。
「貴方にも、失礼なことを言いましたわ。頭に血が上っていたとはいえ、決して言ってはならないことを。貴方がカナタのことを大切に想っているのは打算ではなく、本当に心からのことなのでしょう。先の戦いを見ていて、強い信頼が感じられました」
「当然よ」
素っ気ない言葉。
「でも、わたしも悪かったわ。今度から、ええ。できるだけ言葉には気を付けるようにする」
その手を握り返し、引っ張られるように身体を起こす。
改めて向かい合った二人は、お互いの手を強く握りあう。
「もし、よろしければなのですけれど」
「なに?」
「手伝ってほしいことがありますの。……ゴーレムの基礎設計、暴走しないための安全弁、もし貴方が知恵を貸してくださるのでしたら心強いですわ」
「……そっちは専門じゃないから、貴方の方が詳しいと思うけれど……。それでもいいなら力になるわ。でもその代わりに」
持っていた箒を魔法で収納して、アーデルハイトは右手に指を二つ立てる。
「二つお願いがあるの」
「なんでしょう?」
「一つはわたしの共同研究に協力して。テーマは純魔力。もう一つは……。薬学のこと、よかったら監督していてほしいの」
「ええ。構いませんわ。わたくしもその純魔力と言う力には興味がありますから」
「好奇心を満たすための研究だから、実入りはないと思うけど?」
「魔導師の基礎は好奇心ですわ。それに、そこから貴方の予想を超えられたとしたら、わたくしも次の段階に進めると思いませんこと?」
強気なシルヴィアの言葉に、アーデルハイトは目を見開いて驚きの表情を浮かべて、それからすぐにまた口元を緩ませて笑った。
「そうね。期待してる」
雨降って地固まるとはよく言ったもの。
小さな揉め事は、それによる最大限の効果を発揮してくれたのかも知れない。
月と星の灯りの下、固く手を結びあって笑いあう二人を見ながら、カナタはそう思った。
「それから、カナタにも」
申し訳なさそうに、シルヴィアがカナタの方を見る。
「今日の件でもう、貴方は充分に借りを返してくれましたわ。それで、その上でこれ以上何かを頼むのはおこがましいのですけれど」
言葉を切って、シルヴィアは続きを口にする。
「また貴方にお手伝いをお願いしたいのです。遺跡群に来るだけではなく、エトランゼの世界のことや貴方が見たギフトのこと、教えてほしいのですわ。勿論、報酬は別途でお払いしますので」
シルヴィアのその提案に、カナタは首を横に振る。
立ち上がって、自分からシルヴィアの方へと手を差し出した。
「報酬なんていらない。友達のためになることだもん」
その言葉に、シルヴィアの顔が空の月のように明るいものに変わる。
カナタの一言を噛みしめるように強く頷いてから、強くその手を握り返した。
▽
その日の夜は、戻ってからは散々だった。
魔法学院からヨハンの家、そしてシルヴィアの実家にも連絡が行ったらしく、戻った時には三人とも座らされて説教を受けることになった。
シルヴィアは家に引き取られていったが、その場で更にアーデルハイトがヨハンに反論するものだから、説教はまた長引く。更には家に帰ればアルスノヴァもカナタを心配して待っていたらしく、敵が二人に増えた。
しかし、アーデルハイトもまたアルスノヴァに怒られるのは我慢ならなかったようで、二人の喧嘩が勃発。結局、夜遅くまで騒ぎが続くことになった。
それから、アーデルハイトは共同研究を開始して、また薬学の単位も無事習得できそうとのことだった。
時折シルヴィアの目を盗んで勝手に実験して研究室を爆破したり、かと思えば今度はシルヴィアがクリスタ七号に新しい機能を付けようとして暴走させたり。
そんな事件の数々を巻き起こし、それをお互いにカナタに愚痴るような日々が続いている。
基本的に二人は何も変わらず、怒っているか喧嘩しているかの毎日だが、カナタから見ている分には楽しそうだから、適当に話を聞く程度に留めている。
「聞いていますか、カナタ! この子ったらまた自分ではできないような調合をしようとして研究室を一つ駄目にして……!」
「貴方だってクリスタ七号だけならず八号にまでレーザーを装備しようとして爆発していたでしょう! もう二人で研究室を四つも駄目にしてるのよ。次に壊したら実費で支払えって教授から注意が来ているわ」
「わたくしが駄目にしたのは一つ。貴方は三つです。まったく、何が豊胸薬ですの。そんな薬を作って……」
「女のプライドの問題なの。それにこれが成功すれば単位も一発で……」
「それができたら苦労はしません。なんであろうと段階を踏まないと事を成せないようにできているのですわ」
「そうなの?」
「くっ……。これだから天才児は……! カナタ、何か言ってあげてください!」
たまに時間ができて学院に遊びに行くと、この騒ぎだ。
やはりシルヴィアも大概問題児だったらしく、周囲の学生や教授達はこの二人が何かやらかさないかと心配で気が気ではないらしい。「……何笑ってるのよ? あげないわよ、豊胸薬」
「いらないって」
今、この時間が何よりも楽しい。
きっとまだ世界は完全に安定してはいない。残った御使いは何かを企んでるだろうし、それによる争いが起こることだって充分にありえる。
それでも、今この時間を楽しみたい。
この世界に来てからすっかり忘れていた、カナタが歩んでいた日々によく似た日常を。
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