第三節 こんな世界に落ちてきて

 重力によって押し潰された大地が陥没し、その噴煙が舞い上がる。

 その中で閃光を纏いながら、カナタは重力に逆らうように自らの身体を空中に飛翔させていた。

 浮かび上がる小さな影を見て、アルスノヴァの表情が僅かに揺らぐ。今の一撃で仕留めたと、そう確信していた故の動揺だった。

「これなら!」

 カナタがローブの懐に手を入れて、そこから数枚の符を取り出す。

 僅かな間それに触れて力を通すと、その符はその場から消失して、一瞬にしてアルスノヴァの周囲へと転移した。

 今カナタが持っているのはヨハンが着ているものと同じローブだけではない。

 普段彼が使っている武装の全てを今この時のために借り受けていた。

 友達を取り戻すために、その圧倒的な力の差を埋めるために手段を選んでいる余裕はない。この戦いで二人の全てをぶつける覚悟でここに望んでいる。

 符に込められた魔法が発動する。

 青白い氷の花が一斉に咲き誇り、アルスノヴァの四肢を拘束する。

 続いて拳銃を取り出して、その銃口をアルスノヴァに向ける。

 カナタの手にはやや大きい、馴染まないサイズの武器ではあるが、その先端はまるで吸い寄せられるように相手に向けて照準を合わせてくれている。

 両手で反動を抑えながら、空中で二発。

 地上に着地してから弾倉を入れ替えて、もう一発の弾丸を放つ。

「その程度で……!」

 大型の魔物すらも長時間拘束できる氷の蔓は、アルスノヴァが強烈な重力を掛けたことであえなく破壊されて地面へと沈みこんでいった。

 そこに飛来した弾丸も、彼女の身体に触れることはなくその弾道を逸らされて明後日の方向へと飛んでいってしまう。

「遠距離から私を倒すつもりなの?」

 三発目の弾丸に対して、アルスノヴァが掌を向ける。

 逸らすのではなく、弾き飛ばすつもりなのか、それともカナタのところへと弾丸を跳ね返すことすらも可能なのか。

 それは判らないが、カナタにとっては彼女に遠距離攻撃が効かないことなど既に織り込み済みであった。

 白い閃光がアルスノヴァの前面で爆ぜる。

「なに!」

 三発目に装填したのは閃光弾。直接的な攻撃が通じない相手でも、それならば効果があると予想してのことだが、どうやらそれは正解だったらしい。

 もっともそれすらも二度目があるかは判らないが、とにかく今はこのチャンスを生かしきることだけを考えることが重要だった。

 一気に加速を付けて、アルスノヴァの正面に飛ぶ。

 先程の攻防で判った通り、接近戦ならばまだカナタに分がある。裏を返せば距離を取られれば絶対に勝ち目がない。

 重力によって抑えつけられて、体力が尽きるまで魔法を撃ち込まれてお終いだ。

 すぐ間近に、アルスノヴァを捉えた。

 彼女は塞がれた視界からようやく回復したようだったが、既にそこはカナタの剣の射程内。

 舌打ちと共に、片手を向ける。

 発生した透明な力場がカナタのセレスティアルの剣を受けて、それを捻じ曲げて霧散させる。

 だが、カナタの攻撃は終わらない。

 アルスノヴァの反撃にと叩きつけられた重力の塊を紙一重で避けると、もう一度生み出した極光の剣を振るう。

 今度は防御用の重力場で一瞬こそ形が歪んだものの、セレスティアルの出力が勝ったのかそれを断ち切ってアルスノヴァに迫った。

 光が触れる刹那、カナタの身体が軽くなって空に浮かびあがる。

 急激な浮揚感に困惑し、思わず手に生み出していた極光の剣が消滅してしまった。

「近付けば私に勝てる、と思っていたのでしょう?」

 間抜けな姿勢で浮かび上がったカナタを見上げながら、アルスノヴァがそう口にする。

「……なんで判ったの?」

「……判りやす過ぎるのよ、貴方は。その考えが間違っているとは言わないけれど、簡単にできるとは思わないことね」

 アルスノヴァの身体が浮かぶ。

 カナタの状況と同じようなふわりとした不可思議な動作だが、彼女の姿勢は崩れてはおらず、直立のままだ。

 そのまま片手を振りかぶるように肩の後ろに下げて、強く押しつけるように空へと押し出した。

「少し強く行くから。歯を食いしばりなさい」

「ぐぁ……!」

 喉の奥から声が漏れる。

 轟音と風が流れる音が耳朶を打ち、何が起こったのかも判らずカナタの姿はアルスノヴァの目の前から吹き飛ばされていた。

 一瞬のうちに判断できたことは、背後に防壁を張ること。それが幸いして、吹き飛ばされたその着弾点に無様に転がされても、すぐに立ち上がるだけの余裕を持つことができた。

 辺りを見ると、カナタの周囲には薙ぎ倒された木々が散乱している。どうやら相当な距離を一撃で吹き飛ばされたようだった。

 改めてアルスノヴァの力の凄まじさに戦慄を覚えるよりも早く、彼女は次の攻勢に出ていた。

 寒気がして、その場から飛び上がろうとセレスティアルを背に纏う。

 しかし、カナタが地面を蹴るよりも早く、それを抑えつけるような重力が上から襲い掛かってくる。

 ご丁寧に多少距離を離したところで逃れられないほどの広域に展開された重力は、カナタだけではなく周囲の折れた木々や積もった雪すらも纏めて地面へと押し付けて、地盤をも破壊する轟音が辺りに響いている。

 セレスティアルを全力で展開し、それに抗う。どうやら、セレスティアルとアルスノヴァのギフトはお互いに干渉しあうらしく、それによって身体に降りかかる重さが多少は軽減されていた。

 そこに、カナタの真上に影が現れる。

 こちらを見下ろす美貌に見惚れている間もなく、嫌な予感が膨れ上がった。

「潰れなさい」

 降りてきたアルスノヴァはカナタの肩に手を触れる。

 そこから一気に重さが全身に伝わり、周囲の物よりも早くカナタの身体は地面を砕いてその底へと落ちていきそうになった。

「アリス……、重い!」

「失礼ね」

 今度は急に身体が軽くなる。

 先程から重くなったり浮かんだりで既に酔いそうになっているが、それに拍車をかけるようにアルスノヴァはカナタの身体を軽々と持ち上げて元居た場所へと放り投げた。

 上空高く舞い上がって、そこからまた急激に重さを掛けられる。

 叩きつけられるように落ちた場所は、さっきまで二人で戦っていた、既に荒れ果てて雪の欠片も残っていない荒野だった。

 更に、アルスノヴァがいる場所から見えない何かが襲いくる。

「避けられる……? 無理!」

 全力でセレスティアルの防御力場を展開。

 空間が厚みを増したような歪みはカナタのその周囲を通り過ぎるように巻き込んで、それから驚くべき現象が起こる。

 剥き出しになった岩や隆起した大地が、捻れて破砕されていくのだ。硬いはずの岩盤は瞬く間に砕かれ小さくなり、やがては粉々になっていく。

 カナタもセレスティアルの防壁の中にいなければそうなっていただろう。そうして身を護っていてすらも、身体が引き攣るような感覚から逃れることはできていない。

「護ってばっかりじゃ駄目だ……。攻めないと!」

「どうやって?」

 その一撃だけでは終わらない。

 次々と放たれる重力波はカナタの抵抗を許さず、その体力と周囲の景観を容赦なく削り取っていく。

 息一つ切らさない攻撃。まるで単なる戯れのような一挙一動が何よりも恐ろしい。一瞬でも気を抜けばカナタの命を奪いされるほどの力を、いとも容易く繰り出してきていた。

 それだけの相手。御使いに匹敵する力を持ったエトランゼ。

 だから彼女は名乗っているのだ。既に人ではなくなったことを証明するように、魔人と言う名を。

「でも、退けない……!」

 ここまで来て退くと言う選択肢は毛頭ない。

 相手がどれだけ強大な力を持っていたとしても、今ここで対峙している以上逃げることはできないのだから。

 ならば、カナタができることは一つ。

 いつもと同じように、前に向かって突き進むだけだ。

 防御を解いて、正眼に相手を見る。

 その挙動を見ても、アルスノヴァの行動は変わらない。先程と同じように重力波を放つだけ。

「いい加減に諦めなさい。この辺りの景色が変わってしまうのは本意ではないの」

 彼女の言う通り、美しく積もっていた雪はすでに消えて、地面はあちこちが捲り上がって、僅かに生えていた木々はその大半が薙ぎ倒されていた。

生き物の気配がなかったのはせめてもの救いだろうか。この景色が元の姿に戻るには、長い時間と労力が必要になるだろう。もっとも、それすらもアルスノヴァの力を使えば一瞬でできることなのかも知れないが。

 アルスノヴァの動作を見て、そこから重力波が到来するまでの時間を図る。

 そのタイミングに合わせて、全力で極光の剣を縦に振り下ろした。

 愚かな特攻にも見えるその行動は、功を奏した。

 不可視の波が、明らかに左右に割れていく。その中心に立つカナタには何の影響もない。

 以前、異形の王の紅い光を切り裂いたときと同じ要領だった。性質自体が違う力にそれが通用するかは賭けだったが、それを行ったのがカナタのセレスティアルだと言うことに違いはない。少なくとも本人の中では分のある賭けだった。

 そして、それはアルスノヴァにも多大な衝撃を与えたようだった。

 次なる一撃を振りかぶっている間に接近。

「馬鹿の一つ覚えね」

 身体が浮揚感に包まれる。

 そんなことはカナタにも理解している。アルスノヴァはカナタの接近を許さない。自分の苦手な間合いで戦ってくれるほど、素直な相手ではないと。

 だから、更に手を打つことにした。

 浮かび上がりながら、懐から小瓶を取り出して放り投げる。

 アルスノヴァが迎撃するよりも早く、それは空中で蓋を解放して、中身を撒き散らした。

「何の真似を……!」

 瞬間、アルスノヴァの身体が大きく痙攣する。

 その表情を苦痛に歪めて、膝を追った。

 カナタの身体に掛けられていた束縛も消え、地面の上に落ちたところを上手く着地して、すぐに彼女に近付いて行った。

「魔力何とか粒子って言うんだって。人が放つ魔力の波を妨害して、内側に無理矢理戻して暴走させるとか何とか言ってたけど」

 昨日の夜、借りてきた道具の説明は一通り受けたのだが、眠かったので原理までは覚えていない。カナタからしてみれば使い方と何が起こるかさえ判れば問題なかった。

 曰く、強力な魔力を使えば使うほど反動が大きくなる。そして僅かではあるがギフトにも効果があると言うことだった。

 その僅かの程度には疑問があったが、アルスノヴァの使う力の規模が強大なため、それだけ反動が大きなものとなったのだろう。

 アルスノヴァは既に目の前にいる。

 この機会を逃したら、恐らく次はない。

 その身体を掴もうと、全力で手を伸ばした。

「……カナタ」

 ぽつりと、小さな呟きが聞こえてきた。

 それはあの日の彼女の声色と同じもので、それを聞いたカナタは一瞬だけ、安息のような感情を覚えた。

 まるで、あの日のアリスが戻って来てくれたかのような、そんな場違いな感情を抱いてしまった。

「甘いわね」

 だが、それは大きな間違いだった。

 力が渦を巻く。肌で感じ取れるほどの魔力の流れが生み出されて、アルスノヴァから放出されていく。

 未だに空気中を漂っている遮断粒子によってそれは無理矢理に内側に封じ込められて、彼女に大きな苦痛を与えていた。

 苦悶の呻きを上げながら、それでもアルスノヴァは力の放出をやめはしない。

 細い血管が破れて内部で出血し、皮膚が切れてそれらが表面へと流れ出てくる。

「その程度で私を抑え込めると思うな!」

 捻れる。

 息を吐きだすことも、悲鳴をあげることもできなかった。

 全身が捻じり上げられ、斬り裂かれるような痛みと共に、カナタの身体は上空へと打ち上げられる。

 もう上も下も判らない。自分が何処にいるのかすらも。

 辛うじて感じられる苦痛から、なんとか生きていることだけは判った。それすらも投げ出してしまいたい。

 どうやら、カナタは今上空にいるようだった。

 何故それが判ったのかと聞かれれば、答えは単純だ。その次の瞬間に、強烈な重圧を感じてその身体が地面へと叩きつけられたからだった。

 そのまま押し付けられるように重力が襲い掛かる。

 全身の骨を砕かれるような痛みに、最早意識を保っていることすらもできない。

 ローブに込められた魔法が痛みを軽減してくれているとヨハンは言っていた。多分、今はそれに大いに助けられている。もしその痛みを全て感じていたのならば、発狂していたかも知れない。もういいから早く殺してくれと懇願していた可能性もある。

 異様に長く続いた、恐らくは数秒にも満たないような時間が過ぎた。

 周囲数十メートルに渡って出来上がったクレーターの中心で、カナタは目を開ける。

 仰向けに倒れたカナタを見下ろすように、クレーターの縁部分でアルスノヴァが紅い月を背負って両腕を組んで立っていた。

 自分の顔に触れる。

 手を見れば、血と泥が交じったものでべっとりと汚れていた。

 対するアルスノヴァも無傷ではないが、だからと言って致命傷と言うほどでもない。そして彼女の周囲にある粒子は全て吹き飛ばされて力を失っていた。

「……やっぱり役に立たないじゃん」

 ヨハンに文句を言う。

 身体を動かすそうとすると、そこから全身に痛みが走る。

 もう立つなと、これ以上動けば命に関わると信号が送られているのだ。

 だが、そんなことは今のカナタには関係ない。

 腕を突いて、上半身を起こす。

 そこに、アルスノヴァの鋭い声が飛んだ。

「立つな!」

 乱暴な言葉で、カナタを縫い止めようとする。

「無駄だと言うことが判らないの? 貴方と私ではもう、住んでいる世界が違う。生きてきた時間も違う。貴方が私に勝てるわけないのよ。無駄に命を散らすのはおやめなさい」

 声こそ荒いが、カナタの身体に重力は掛からない。

 だから、まだ抵抗できた。内側から来る痛みだけなら、どうにか自分を奮い立たせて打ち破ることができる。

 今だけだからと、この戦いさえ終わればいいと。そのために、友達を助けるために自分の全てを使ってもいいと決めてここに来たのだから。

「……どうして、立つのよ」

 何故だろうか。

 状況を見れば、追い詰めているのはアルスノヴァの方だ。彼女が少しでも力を行使すれば、カナタに止めを刺すことだって不可能ではない。

 それなのに、声に惧れが交じっているのも彼女の方だった。感情を剥き出しにして、どうにかカナタをその場に押し留めようと必死になっている。

「もう立つのはやめなさい! 痛いだけよ、苦しいだけよ。そんなのは嫌でしょう?」

「……そりゃ、嫌だけどさ」

 細い声が出た。

 何であっても、彼女が怯えているのなら声を掛けなければならない。それは半ば反射的な行動だった。

「アリスがやろうとしていることは間違ってるよ。やっぱり」

 紅い月の中にエトランゼの封じ込める。

 何故、それだけのことができるのか。その原理に関してはカナタは全く理解していない。

 だが、それが違う。

 そんなことをしてこの大陸に平和をもたらしても、それは本当の救いなのではありはしない。

 エレオノーラが声を上げて、多くの人を導いて生み出そうとしているものを、そんなことで台無しにしていいわけがない。

「そんなことが人を助けるなんてボクは認めない。それは、戦うことを奪ってるだけだから」

 ヨハンが言っていた。

 人から戦うことを奪ってはならないと。

 血が流れ、命が失われるのは悲しいことだ。それは決してあってはならない。

 でも、それと同じぐらいにその選択肢そのものを奪ってしまうことも駄目なのだろう。

「……貴方は……!」

 アルスノヴァの背後で紅い月が脈動する。

 大きな月の振動と共に紅い光が一瞬だけ、空を染めた。

「引くわけにはいかない。やめるわけにはいかないのよ。私は今のために長い時間を生きてきた、全てを犠牲にしてこの日まで生き延びてきたんだから!」

 彼女は間違いなく怯えている。

 それだけの攻撃を受けて、戦意を奪い去ろうとしたアルスノヴァに対してそれでもまだ立ち上がるかつての友に。

「この世界を救うの? それは違うよ、アリス。アリスのやってることは救いじゃない」

「なにを……!」

 周囲の地面が砕ける。

 アルスノヴァが牽制に放った重力波がカナタのすぐ近くを抉るが、今はそれに反応することもできはしない。

 カナタにできることはただ、真っ直ぐにアリスを見つめて前進する。それだけだった。

「なによ……。何も判ってないくせに」

「当たり前じゃん。だって何も説明されてないもん」

「察しなさいよ!」

「無理だよ!」

 互いの苛立ちが募っていく。

 カナタの言葉に反射的に言い返すその姿は、冷然な佇まいをしていた魔人アルスノヴァの物ではない。

 カナタの友達の、アリスそのものだった。

「どうして諦めないのよ! 痛いでしょう? 苦しいでしょう? もう嫌になったのならその身体を横たえなさい! そのまま立ち上がらず、全てを投げ捨ててしまいなさいよ!」

「嫌だ」

「聞き分けなさい!」

「絶対、嫌。それをやったら、ボクはボクのことが一生許せない。もうこれ以上、そんなのは嫌だ」

 失ってしまったものがある。

 手を伸ばしても掴めなかったものが沢山ある。

 幾ら悔やんでも足りない、カナタが背負う幾つもの後悔。

 その中の一つにアリスを入れることだけは絶対に嫌だった。例え自分の命を投げ捨てたとしても。

 手の中に極光が集まる。

 紺碧色の光となったセレスティアルを見て、アルスノヴァは明らかな怯えをその顔に募らせた。

「やめて!」

 ずしんと、辺りが沈む音がする。

 重力に巻き込まれて、カナタが地面に叩きつけられる。

 だが、それも一瞬のことだった。だから、カナタはまた立ち上がった。

「……どうしてこうなるのよ!」

 アルスノヴァが激昂する。

 この事態を自ら招いたにも関わらず、予想外の事態に混乱するように。

「貴方がここに来て、貴方は圧倒的な力の前に平伏すの。私に怯えて、私に従う。それで問題なく事が進んで行くはずなのに」

「そりゃ、そうなるよ。だって、アリスが苦しそうだし」

「それは……!」

 まるで堰が切れたようだった。

「苦しいに決まっているでしょう! それに耐えてここまできた。私は紅い月を完成させ、エトランゼを一度この世界から退去させる。あの日のように!」

「……どういうこと?」

「抵抗をやめて、カナタ。貴方に真実を教えてあげる」

 二人の視線が紅い月を見る。

 片方が疑問を宿らせて。

 もう片方はそこに確固たる意思を秘めて。

「私は千年以上一人で生きてきた。全てはこの紅い月を再び起動させるため。全ては――」

 空気が震える。

 彼女の口から放たれた言葉は、信じがたいものだった。

「エトランゼを――貴方を救うため」

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