第四節 夢での再会
目を開くと、見覚えのある天井がカナタの視界を四角く縁取っている。
これまで何度も何度も目にした光景。にも関わらず、そこは何処か新鮮で、ずっとを望んでいたはずなのに、目の前にあるそれに手を伸ばすことを躊躇わされる。
柔らかなベッドで目覚めて、窓に掛かったカーテンの隙間からは外の光が差し込んでいる。
辺りを見回してみれば、お気に入りのぬいぐるみが飾ってある棚に、昨日必死で終わらせた宿題が置いてある勉強机。部屋の中央にある硝子テーブルは来客が来たときにくつろぐためのもので、この間貰ったアロマキャンドルがぽつんと乗せられている。
本棚の一番上は親が買ってくれた小難しい参考書が並んでいるが、そこから下は全部漫画だった。
自分の身体を見てみる。
いつもの見慣れた格好ではない。いや、今の姿の方が余程見慣れているはずなのだが。
水色の、この間新しく買ったパジャマを着込んでいた。
「……ここ」
何かを確認するように立ち上がって、きょろきょろと辺りを見る。
間違いなく、そこは自分の部屋だった。朝霧かなたが暮らしていた場所だった。
下から母親の声がする。焦りと僅かな怒りを含んだそれは、カナタにそろそろ起きないと遅刻すると告げた。
階段を駆け下りるように一階に。
母親がそれを咎めるが、娘に甘い父が諫める。
パジャマ姿のままぼうっと眺めるカナタの視界に飛び込んできたのは、四人用のテーブルと、そこで朝食を取る父と、カナタの分の朝ご飯を用意している母の姿。
何がどうなっているのか判らない。
思考がふわふわして纏まらない。
母親に言われるまま洗面所で歯を磨いて顔を洗い、身支度を整える。
両親に、言わなければならないことがあるはずだ。
ずっと会いたかったと抱き付いて、思いっきり甘えたい。
でも、何故かそれができない。その行動を忘れてしまったかのように、カナタは普段通りの朝を演じていた。
それでもその表情に何か思うところがあったのか、両親が同時にカナタの顔を見る。
その優しい、心からカナタのことを心配してくれている表情を見て、涙腺が決壊しそうになった。
いっそ泣いてしまえば、思いっきり声を上げられれば楽なはずなのに、カナタの中の何かがそれを否定する。
そうこうしているうちに、玄関チャイムが鳴って、母親がカナタを促す。
そうだ。
もう一人、朝には出会う人物がいた。
心臓が締め付けられるような違和感を覚えながら、カナタはトーストを咥えたまま食卓から出ていく。
少し低めの、しかしそれでいて心を震わせるような上品な声。
丁寧な言葉で彼女は家の中に語り掛けている。
食パンを咥えたままおぼつかない発音で、カナタが返事をしながら玄関に近付いていく。
サンダルをつっかけて、扉に手を掛ける。既に磨りガラスの部分から、そのシルエットが見えていた。
扉を開ける。
「おはよう、カナタ。また寝坊?」
呆れた声で、彼女は言う。
上品な金髪を風に靡かせて、両手で鞄を持った少女は、いつもそうやってカナタをからかうのだ。
「お、」
上手く声が出ない。
喉の奥でつっかかるようなその様子に、少女は不思議そうにカナタの顔を覗き込んだ。
「どうしたの? 風邪でも引いた? でも不思議ね、カナタは風邪を引かないはずなのに」
そんなやり取りも日常茶飯事だ。
彼女が憎まれ口を叩いて、カナタがムキになって。
お互いに言い合いになって、最初は喧嘩腰で話していたのにいつの間にか違う話題で笑いあっている。
そんな日々を過ごしてきた。
「本当に大丈夫? 熱があるならお母様に言って、今日は休ませてもらった方がいいと思うけど?」
ここが現実でないとしても。
彼女を心配させたくない。
だから、カナタは声を絞り出した。どうにかいつもの能天気な表情を作り、少し寝ぼけてテンポが遅れた風を装って。
「おはよ、アリス」
アリスはカナタの変化を読み取れなかったわけではないだろう。
ただ、その表情を見て先程までの心配は消えたようだった。
小さく笑って、彼女も言葉を返す。
「おはよう、カナタ」
▽
「……ん」
朝日が瞼を焼いて、目が覚めた。
寝起きの緩慢な動きで身体を起こすと、頭上にあった木の枝のようなものに引っかかる。
頭を振ってそれを外して、カナタはやっぱりこっちが現実の朝であることを理解した。
「……夢」
元の世界を夢見ることは数あれど、あれだけ鮮明で現実感のある夢を見たのは初めての経験だった。
意識が少しずつ覚醒していくと、すぐ傍でこちらを見ている視線に気が付いて、その方向に首を巡らせる。
両手から伸びた枝のようなものでカナタが眠っている揺り籠を作っていたイアが、優しげな瞳でこちらを見つめていた。
「ひょっとして今の夢って、イアが?」
『ソウ』
「凄いね。イア、そんなこともできるんだ」
『ユメヲミセタリ、ココロヲミタリ、トクイ』
誇らしげな顔で胸を張るイア。
しかし、すぐにカナタの表情を見て沈んだ顔になる。
『ダメダッタ?』
「ううん、駄目じゃないよ! 全然、駄目じゃない……けど」
彼女はあくまでも親切心でやってくれたことだ。
きっとそれはカナタに対しての親愛の表れなのだろう。
それでもカナタにとって、戻る方法も判らない元の世界への記憶を想起させられることは、それだけでは割り切れないほどに辛いものでもあった。
『カエリタイ?』
カナタを覆っていた枝が解けて、揺り籠が消えていく。
それらを何処へともなく収納しながら、イアはカナタへと近付いてくる。
喋り方こそおぼつかないが、イアの身長はカナタよりも高い。傍に立つと、自然と彼女を見上げるような形になる。
『ユメデミタバショニ』
多分、イアがカナタにその夢を見せてくれたのだとしたら、彼女もそれを一緒に見ていたはずだ。
『イアノシラナイセカイ。シアワセ?』
「……うん、そうだね」
嫌なことは幾つもあった。
誰かと意見が合わないこともあるし、子供だったカナタにとってはできることよりもできないことの方が多い世界。
でもその分平和で、命をやり取りする必要なんかなくて、少なくともカナタの周りの人間は不幸ではない場所。
そして何よりも、そこには両親がいた。どんな時でもカナタを庇護してくれる大好きな父と母が。
「……いい世界だったよ。帰れるなら帰りたい。うん」
一人で納得して頷く。
「でも」
言葉が続く。
「この世界も、嫌いじゃないよ」
元の場所に比べれば、厳しい世界。
平気で命のやり取りが行われ、想像もできない理由で簡単に人命が失われる。
暮らしも決して豊かではないし、明日を生きるために自分で色々と考えて行動しなければならない。
嫌なことの数は比べ物にならない。本当に、帰りたいと嘆いたことは一度や二度ではない。
ただ、それでも。
この世界が嫌いになれないでるのは、何故だろうか。
その理由はカナタにも判らないが、ここであった幾つもの出会いを無駄にしたくはないと、そう心から思っている。
『カナタ、ヤサシイ』
「あはは、ありがと」
『スキ』
「うわっ」
蔦が絡み付いて、カナタの身体を引き寄せる。
自らの胸の中にカナタの頭を抱えるようにして、イアは両手をその背中に回した。
「好きとか言われると、ちょっと照れちゃうかも」
『テレ?』
「恥ずかしいってこと」
『フーン?』
よく理解してないようだが、イアはその手を離してくれるつもりはないようだった。
頬に感じるイアの身体は、人間のものとは違う。人の身体よりも少しだけ冷たいが、不思議と安心する熱が伝わってくる。
それは間違いなく、彼女が生きているという証でもあった。
例え人とは違う形をしていても、こうして温もりを伝えることができる。
何故か、カナタにはそれが嬉しかった。
『カナタニ』
頭の上で声がする。
囁くような、少しくすぐったい声。
『シアワセニナッテホシイ。コンドコソ』
「今度?」
二人の身体が離れる。
すぐ傍で、カナタはイアの身体を見上げながら首を傾げる。
「今度ってどういうこと?」
尋ねると、イアは自分でも言ったことの意味が判らないかのように、カナタと同じように首を傾げた。
『ワカンナイ。ダレカイッテタ。ムカシ』
「……昔って、一ヶ月ぐらい前?」
ふるふる。
『センネン……グライ?』
「千年って」
そんな昔にカナタがいるわけもない。
きっと同じ名前の誰かがいたか、そんな話だろう。ただでさえ、イアの言葉には謎が多い部分もあるのだから。
「お二人さん。ちょっといいか?」
「うわっ!」
真後ろから声がして、カナタは慌てて飛び退く。
イアを護るように彼女の身体を遠ざけながら、声を掛けて来たのがゲオルクだと判るとすぐに警戒を解いた。
「あー、すまん。二人でなんかいい雰囲気だったから、いつ声を掛けていいか迷ってたんだが」
「別にいつでも大丈夫だったのに……。おはようございます」
「おう、おはよう。挨拶がしっかりできるのは育ちがいい証拠だな」
にこやかに笑って、ゲオルクはカナタの頭を乱暴に撫でる。
「今日の予定を決めたいんだが」
「はい。……でも、ゲオルク様はここから出れないんですよね。それにイアの言う怖いものも待たないといけないし」
「それはその通りだな。状況をよく理解しているじゃないか」
「じゃあやることって、特にないですよね」
「いいや、そんなことはないぞ。そもそも、いつ来るか判らない敵を待ち続けるなんて愚かにもほどがある。その二本の足は飾りか?」
「……探しに行けってことですか?」
「そう言うことだ」
満足げに、両腕を組んでゲオルクは頷いた。
カナタは黙って辺りに視線を這わせる。
このイアがいる聖域より外は、鬱蒼とした木々が生い茂る樹海。一歩外に出れば右も左も判らない。
地図もなしに、いや仮に地図あったとしてもすぐに方角が判らなくなって、道に迷ってしまうだろう。
事実、カナタはもう最初に目覚めた場所も判らない。帰るのはイア便りだった。
「無理じゃないですか?」
「やってみなけりゃ判らんだろ? それにイアだったか? そのドライアドも一緒に行けば道に迷うこともなさそうだしな。こいつ、日に何度かふらっと出かけては問題なく戻ってくるし」
「それはそうかも知れませんけど。イア、その怖いものの場所って判ったりするの?」
『ワカラナイ。ダカラコワイ』
言われてみればそれはそれでもっともだ。
「適当に歩けば見つかるかも知れんだろ。簡単な哨戒程度でいいんだ、頼めるか?」
「……それは、まぁ」
自分の国が今危機に晒されていると知って、待つことしかできないゲオルクの気持ちも判ってしまうから、カナタはそれを無下にすることもできなかった。
「すまんな。一刻も早く国に戻りたいんだ。無茶をさせてることは判ってるんだ」
「大丈夫です。それで戦いが終わるなら」
「ああ。ここを出れたら尽力する。父神エイス・イーリーネに誓おうじゃないか」
「それじゃあ」
「あ、ちょっと待った」
イアと連れだって出ていこうとするカナタを、ゲオルクが呼び止める。
「別にその怖いものとやらを見つけられなくてもいい。正直、手掛かりが少なすぎるからな」
「はぁ」
「だからついでにもう一つ頼みたいことがあるんだ。ここで暮らして長いが、ずっと肉を食ってなくてな」
「……狩りもして来いってことですか?」
「話が早くて助かる! いいじゃないか。そこそこに腕は立つんだろ?」
ここに来れたことからそう予想しているのか、ゲオルクがそう思った根拠は謎だが、実際にカナタはこの辺りの獣に後れを取ることはない。
「それにいざという時に力が入らなくても問題だ。そのためにはしっかりとした食事が大事だからな」
「それはそうかも知れませんけど」
ジトっとした目でゲオルクを見上げるカナタ。
「お前、俺のことを人使いが荒いとか思ってるだろ?」
「はい」
「はっきり言うな。気に入った! いや、しかしその通り。王様ってのは人使いが荒いものだ。考えごとするにも部下が必要だし、動くにも部下がいる。一人で考えて実行する王なんかいるものか。いや、いるかも知れんが俺とは違う種類の人間だな」
物は言いようである。
そして使われるカナタからすればたまったものではない。
とは言え、ゲオルクもその辺りは王として育てられてきた身。カナタの言いたいことに気付いたようだった。
「その分、王は部下に与えるものがある。尽力した者には褒美があって然るべきだろ?」
「……褒美って言われても、今のゲオルク様には何もなじゃないですか」
「はははっ、手厳しい! そう、後払いと言う形にはなるが褒美は取らせる。例えばそうだな、俺が王権を取り戻した暁には、王の危機を救ったものとして爵位をくれてやろうじゃないか」
「しゃく……? 何でもいいですけど、ボクが働くのは確定なんですね」
「そうだぞ?」
カナタには爵位とやらがなんだかは理解できないが、もう既に諦めは付いている。
そして確かに、この聖域で長く暮らしている食生活の過酷さには同情するものがあった。昨晩カナタがイアから貰ったのは、なんか酸っぱい謎の木の実が数個。栄養はあるのかも知れないが食べた気はしない。
「じゃあ、行ってきます」
「おう! 行って来い、俺の腹心のエトランゼ、カナタよ!」
などと調子の良い言葉に見送られながら、肩を落としてカナタは行く。
その横に付き従うイアだけが、今の唯一の癒しだった。
▽
手っ取り早く結論だけを言えば、収穫はほぼなかった。
丸一日森の中を彷徨いあるいたカナタだったが、イアの言う『怖いもの』は発見することはできず、またその手掛かりもない。
イアに尋ねてみても同じような言葉が返ってくるばかりで事態は進展せず、夜を迎えていた。道中大きな川があって水浴びができたことが唯一の救いと言ったところだろうか。
そうして今は聖域で焚火を囲み、カナタ、イア、ゲオルクの三人は太い木の枝を椅子代わりにして夕食を取っていた。
材料は帰り際にカナタが取って来た獣。ゲオルクに見せると喜びと共に手早く捌いて食肉の形にしてしまった。
「なんで王様なのにお肉が捌けるんですか?」
「子供の頃散々仕込まれたからな! 一人前の男たるもの、そのぐらいは自分でできなきゃいかんってな」
「男たるものって……」
「戦争になったら、こうやって森の中を行軍することもあるだろう? その時何でもかんでも部下任せじゃ、格好がつかないってことだ。王たるもの、率先して行動してこそ周りが付いてくる。……なんだその顔は?」
肉を串に刺しながら、上機嫌にそう語りながら、ゲオルクはカナタのジト目に気が付いた。
「いや、今は事態が特別なだけだぞ。なんたって俺はここから出られないわけだからな。それにほら」
串に刺した肉を差し出す。
「一番柔らかくて美味いところだ。一番の功労者に、褒美を取らそうじゃないか」
「なーんか、誤魔化されてる気がしますけど」
言いながらもそれを受け取り、齧り付く。
横目でイアを見ると、カナタが食べているものに興味があるのか、爛々とした目でそれを見つめていた。
「食べる?」
『タベル』
串を差し出すと、横からそれに被り付く。
『キライ』
どうやら肉はお気に召さなかったようで、ペッと地面に吐きだしてしまう。見た感じ植物のようだし、当然と言えば当然なのかも知れないが。
「そうしているとまるで姉妹みたいだな。微笑ましいじゃないか」
自分の分の肉を豪快に頬張りながらゲオルクが言った。
「懐かしいな。俺も子供の頃はヘルフリートと肉を取りあったりもしたな」
「ヘルフリートって、今の王様と?」
「ああ、そうだ。ハハッ、驚いた顔してるな。いや、無理もない。お前の話じゃ、ヘルフリートが色々とやらかしてしまったんだろ?」
それを聞いて、カナタの表情が曇る。
ありのままの真実としてそれを語ったが、ひょっとしたら兄であるゲオルクにとっては実の弟のことを悪く言われているようで、気分を害してしまったのではないかと。
しかし、そのカナタの心配は杞憂であったと、すぐにゲオルクは語った。
「そんな顔するな。俺を襲った暗殺者は、ほぼヘルフリートが雇ったとみて間違いない。国が乱れてる原因は他でもないあいつさ。……王になることを諦められなかったんだろうよ」
「そんなに、王様ってなりたいものですか?」
カナタにはそれが判らない。
例えばエレオノーラはイシュトナルを率いる中で、常に忙しそうにしていた。彼女自身に自由な時間はほぼなかったようにすら見える。
その腹心であるヨハンも、常に何かに頭を悩ませていた。
その頂点に立つ王様が、それらを無視できるとは思えない。もっと大きなものに立ち向かわなければならないのではないかと、カナタは漠然と想像している。
もし、仮に機会があったとしてそうなりたいかと問われれば、首を横に振るだろう。
「なりたいとかじゃない。王って言うのはなってしまうものなんだ。国を動かすため、そこに暮らす民を幸せにするため。そのために全てを捧げるのが王さ」
「……全てを捧げる」
「自由なんてない。王はなって終わりじゃない、王になってからが本当の始まりなんだが……。ヘルフリートはその辺りを理解できなかったみたいだな」
「あの人の目的は、なんなんだろう?」
今、オルタリアに君臨する王ヘルフリート。
彼は卑劣な手段を使って王位を手に入れたが、果たしてその果てに何を望んでいるのか。
少し力が強いだけで単なる一般人であるカナタには理解できなくて当然だが、それでも思うことがある。
「王様って、自分が幸せになる権利はないんですか?」
「……あるさ。民に慕われて、彼等が幸福そうな顔をしていれば、大抵の王は幸せだよ。そんなもんだ、なんたってお前と同じ人間なんだからよ」
「……それじゃあ」
彼の王はどうなのだろうか?
少なくとも今のオルタリアに幸福はない。カナタにはそう見える。
だとすればヘルフリートは、きっと幸せではない。他人を蹴落とした先に、彼は何を望んだのだろうか。
「どっちにしろ、お前が気にすることじゃないさ。あいつがやらかした不始末は俺が付ける。兄であり、オルタリアの正式な王位継承者である俺がな」
「……はい」
こういう時、やはり自分は無力だと思う。
目の前の困難を跳ね除けることができたとしても、カナタの手はもっと深いところには届かない。
それを解決するのはいつもカナタではない。肝心なところを人任せにしなけえればならないことが、少しだけ悔しかった。
『カナタ』
食事を終えて、ゲオルクは腹ごなしに聖域ないを歩いてくると言って立ち上がると、それまで黙っていたイアの思念が頭に届く。
彼女の方を振り返ると、焚火に照らされたその白い肌が綺麗で、同性であるにも関わらずカナタは心臓の鼓動が早くなった。
『マエニススム』
頬に優しく手が触れる。
人とは違う熱が、そこからカナタの顔に広がっていく。
『カナタハ、マエニススム』
「そう、だね」
それがカナタの在り方であると、まるでイアは判っているかのように。
優しく頭に響く声が、カナタの中の迷いを払拭していく。
こんなところで立ち止まっているわけにはいかないと。
何があっても、前に進み続ける。
それだけは決して違えるわけにはいかない。それを続ければ、いつかきっと答えに辿り付けるはずなのだから。
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