第十二節 生贄の羊

 狭苦しい農具小屋の中に、二人の少女の荒い呼吸音が響く。

 土がむき出しになった地面に腰を下ろして、小屋の壁を背にしながら、カナタはその先がなくなったアーデルハイトの右手を抱えるように抱きしめていた。

「アーデルハイト、大丈夫? 平気? ごめ、ごめん! 止血の方法とか、全然判らなくて……!」

 綺麗な切断面をしたそこからは未だ絶えず血が流れていて、ローブの袖で包んでいるが、既に吸収しきれなくなった血が地面にぽたぽたと落ちている。

相当量の血を失ったアーデルハイトは顔色を青くしながら、それでもできるだけカナタに心配を掛けないようにと微笑んだ。

「大丈夫よ。村の外に出てあの人と合流すれば、止血ぐらいなら何とかなるわ」

 荒々しい足音と村人の怒声が遠くから聞こえてきて、二人は慌てて顔を伏せて声を潜める。

 どうやら見つかったわけではないようで、その声はすぐに遠くへと去っていった。

「……今なら動けるわね。ねえ、カナタ」

「なに?」

 嫌な予感がしながらも、カナタはアーデルハイトの顔を見る。

 彼女の表情はもう既に何かを悟っているようで、それがより一層不安を掻きたてる。

「貴方一人の方が、逃げやすいわよね」

 彼女がそう言うであろうことはなんとなく予想していた。

 きっとこの状況で足手まといになることを嫌う。せめてカナタだけでも無事に生かそうとするであろうことは。

「絶対、やだ。アーデルハイトが一緒じゃないと動かない。ここで一緒に死ぬ」

「…………」

 その言葉に逆に呆気にとられたのはアーデルハイトの方だった。

 大きな目を数回しばたたかせて、それから噴き出すように笑った。

「仕方ない子ね、貴方は」

「そうだよ! だから絶対一緒に行こう。それでヨハンさんと合流してラニーニャさんを助けて、みんなで一緒に帰ろうよ。絶対だよ、絶対だから……!」

 カナタの頭に、アーデルハイトの左手が乗せられる。

「そうね」

 ゆっくりと頭を撫でつけてから、アーデルハイトはゆっくりと立ち上がる。

 既に意識が朦朧としているのかその足取りは怪しげで、カナタは即座に肩を貸した。

「もうすぐ村を出れられるはず。彼が村の異変に気付いてるなら外でもう待ってると思うわ」

「そうだよね。これだけの騒ぎになっても入ってこないんだもん、もうイブキさんと一緒に脱出してるよね」

「イブキと一緒にって言うのが少し癪だけどね」

「美人だったけど、アーデルハイトも負けてないよ」

 アーデルハイトのことを励ます。

「……ええ。負けるつもりはないわ」

 自らを鼓舞するようにそう言って、二人は足並みを揃えて農具小屋を後にする。

 立ち並ぶ家の影に隠れて村の中を移動するが、やはり怪我人を連れての行動には制限が掛かる。

 戻って来た村人がカナタ達を見つけて声を上げるまでの間に稼げた距離は、大したものではなかった。

「こっちだ!」

 警戒用の手持ちのベルが鳴り、甲高い音が響き渡る。

 すぐにあちこちに散っていた村人達はカナタ達の下に集まって包囲を形成していた。

「これは、強行突破ね」

「アーデルハイト。ボクのこと絶対離さないでね。ちゃんと掴んでてね。もし転んだりしたらボク、すぐに戻るから!」

「……ええ、判ってるわ」

 その返事を聞いてから、カナタはアーデルハイトの身体を引きずるようにして村の外へと駆け出した。

「こいつ、抵抗するな!」

「するに決まってるじゃん!」

 振り下ろされた農具をセレスティアルの剣が斬り落とす。

 相手が怯んで包囲が崩れた隙に、今までいた家の影から中央の通りにまで一気に飛び出した。

「お前等を連れて帰ればアレクセイさんは納得して、シュンさんとシスター・アンナが帰ってくる。お前達さえ犠牲になれば全部元通りなんだよ!」

「そんなの……!」

 横合いから武器を持った男が二人飛び出してくる。

 咄嗟のことにカナタは対処できなかったが、代わりにアーデルハイトがぼそりと小さな声で呪文を呟いた。

 空中に出現した小さな雷が、男達の手の中で破裂して、その武器を取り落とさせる。

 その隙に身体をぶつけて怯ませることで、そこを通り抜ける。

「ま、魔法使いだ!」

「くそっ、魔女め! おれはあいつが空中から魔物を焼き払うのを見たぞ! その力を使っておれ達をどうするつもりだ!」

「あいつを最優先で狙え! 魔女を殺せ! あいつが魔法で魔物を呼び寄せたのかも知れない!」

 彼等の言葉に理屈はない。

 ただアレクセイに逆らう恐ろしさを、彼が与える表面上の平穏を求めているだけだった。

 目の前にいる異物を排除すれば自分達は普段の生活に戻れる。妄信的にそう信じることで、辛うじて魔物達の襲撃で出た犠牲を忘れようとしているだけだった。

 だが、そうなった者達に人の言葉は通じない。

 狂気に支配された人々を救う術を、カナタは知らなかった。

「邪魔、すんな!」

 余りの苛立ちに、荒い語調で目の前の男を弾き飛ばす。

 先程の小さな魔法はそれだけでもアーデルハイトの体調を蝕んでいるようで、既に殆どカナタがその身体を引っ張っているような状態だった。

 加えて手首から流れ出る血の量も増して、もうローブの袖では受け止めきれずに地面に耐えず赤い線を残している。

 それでも二人は村人の包囲を抜けた。

 彼等はカナタのセレスティアルを恐れてか、それとも体力の限界に達したのか、様子を見るように追いかけるばかりで追いついてくる気配はない。

 後少しで村から出られる。そうすればヨハンと合流して、何とかなる。

 これまでもそうだった。どんな無茶でも、ヨハンがいれば何とかしてくれる。

 その期待は、信頼はこの状況でも消えていない。だからカナタは必死で走った。家の間を抜けて、村の外へと。

 村の柵が見える。周りの景色から建物が消えて、視界の先には街道が広がっている。

 残り数歩、もう後は村を出るだけだ。

 そこで、カナタに掛かっていた一人分の体重が消えた。

 勢いあまって、カナタの身体も地面に倒れ込む。

 片手を付いて、急いで上体だけを起こして、背後を振り返った。

 アーデルハイトの身体が崩れ落ちる。

 先端を失った右手首が地面を突いて、当然その身体を支えられるわけもなく、ぬかるんだ地面に突き刺さるように倒れた。

「やった! 当たったぞ!」

「でかした!」

 遠くで誰かが叫んだ。

 自分の成果を見せるために高らかに掲げたそこに握られていたのは弓。

 ラニーニャを狙ったものと同じ矢が、アーデルハイトの背に突き刺さっていることに気が付いたのはその直後のことだった。

「取り押さえろ!」

「やめ……!」

 男達がアーデルハイトに殺到する。

 その細い身体を農業で鍛えた腕が、地面に押しつけるように乱暴に掴む。

 それでも、アーデルハイトは抵抗をやめなかった。

 小さな呪文を唱えて、幾つもの蒼雷が破裂する。

 牽制程度の小さな雷だが、魔法をろくに知らない彼等にとっては脅威だっただろう。

 だから、それは結果として最悪を招くことになった。

「こいつ!」

「喉を潰せ! 魔法使いはそうすれば無力化できるって聞いたことがある!」

 ゴズッ、と嫌な音がした。

 彼女の細い首に、鍬が突き刺さる。

 勢い余ったのか、それともこの異常な状況がそれをさせたのか、振り下ろされた惨劇は一度だけではない。

 或いは、美しい容姿をした彼女を傷つけて壊すことに、彼等はある種の興奮を覚えていたのかも知れない。

 誰かが一度振り下ろせば次が来る、それを見てまた次の一撃が落ちる。

 ものの数秒もしないうちに、ローブで護られたアーデルハイトの身体は地面に埋まるほどに叩かれ、襤褸屑のようになってしまっていた。

「やめて!」

 咄嗟のことに思考が働かない。

 自分が今何をすればいいのかが全て奪われた。

 どうすればアーデルハイトを助けられる?

 彼等を倒せば?

 彼等を殺せば?

 答えはどれも否。

 それでもまだ見えない回答を探して、カナタの頭の中が混沌としていく。

 そしてその一瞬の隙に、狂気を帯びた彼等の魔手はカナタにも及んでいた。

「捕まえた!」

 アーデルハイトがされたように、何本もの腕がカナタを上から抑えつけた。

 急に地面に引き倒されたことで、開いた唇から泥が口の中に入り込んでくる。

 喉まで入り込んだそれを咳き込んで吐きだすと、彼等の手から逃れるために必死で身をよじって逃げようとしたが、セレスティアルを使わないカナタの力では大人数人を振りほどくことはできない。

「こいつはどうする?」

「アレクセイさんに献上するんだ! それからあっちの女との二人でおれ達は助かる。シュンさんもシスター・アンナも元通りだ!」

「悪く思うなよ。お前達が魔物を呼び寄せさえしなければこうはならなかったんだからな」

 果たして誰がそれを言いだしたのか。

 そんなことはもう判りはしない。その事実無根の言葉は、村人達に降りかかった惨劇の原因を作って誰かの所為にしたいという理由だけで真実へと成り果てた。

「縛り上げろ! 急いで連れてくぞ!」

「あっちのアレクセイさんの部下は上手くやってるかね?」

「さあな。でもあいつが失敗してもおれ達の所為じゃないからな」

「それもそうだ。しかし、こっちも殺しちまう必要はなかったんじゃないか?」

「知ったことかよ。おれ達もおれ達の命が掛かってるんだ。そこで抵抗なんかするからこうなる」

 村人達の言葉の中にあるのは、安堵だった。

 これで村が助かる。先日のことは不幸だったと自分達の中で理由を付けて、明日からも生きていける。

 そのために犠牲になったもののことは、きっと彼等の心の中にはもうない。

「んー。あれー?」

 惚けたような声が聞こえてきて、集まった村人達は一斉のその方向を見る。

 カナタも抑えつけられながら、どうにか顔を上げた。

 悠々と、自らの髭を撫でつけながら部下を引き連れて、アレクセイが歩いてくる。

 村人達はその一挙一動に怯え、まるで頭を垂れて出迎えるようにカナタ達への道を開ける。

「あ、アレクセイさん。言われた通り、捕まえました。あの、部下のテオフィルって人から聞きましたんで。これでシュンさんとシスター・アンナは助かるんですよね?」

 一人の青年が投げかけた質問にはアレクセイは答えない。

 部下達は周囲を威嚇するように、そして先頭を歩くアレクセイはアーデルハイトの前まで来て立ち止まった。

「えー。君達、これやっちゃったの?」

「そ、それは……。その、抵抗したから」

「参ったなぁ。子供だけど見た目だけなら一番の綺麗どころだったのに。高く売ろうと思ってたのになぁ」

 そう言ってアーデルハイトの髪の毛を掴みあげて、その顔を無理矢理上に向かせる。

 カナタは頭に血が上り立ち上がろうとするが、即座に村人達は再びカナタを地面に押しつけた。

 アーデルハイトの姿はぼろぼろで、生きているのかももう判らない。アレクセイには一切抵抗することなく、彼が手を離すと落ちるように再び泥の中へと沈んでいった。

「お前等、いる?」

「そりゃ冗談きついっすよ! 幾ら何でもこんな雑巾みたいなの要りませんって! ああ、ほらお前なら行けるんじゃねえの?」

「いえいえ、勘弁勘弁。元がよくてもこうなっちゃあ、もう人間じゃないでしょ。単なる肉ってだけじゃ興奮できませんよ」

 冗談めかしてそう言って、部下達は笑いあう。

 アレクセイは満足そうにそれを見やってから、カナタの方を見た。

「で、それは無事なわけだ。まー、仕方ないかぁ。楽しいもの見たさにけしかけたのはおれ様だしね」

「……どういうこと?」

 絞り出すような声がカナタの喉から漏れる。

 それを聞いてアレクセイは目の前の玩具がまだ遊べると、つまらなさそうにしていた表情を崩した。

「最初はさ、シュンの奴に言ったんだよ。シスター・アンナを助けるためにお前等を献上しろってね。でもそれだけじゃ面白くないし、何より勝てないだろ? あいつ弱いし」

 にぃっと、目を逸らしたくなるほどに下卑た笑みを浮かべるアレクセイ。

「だから、テオフィルを使って村人達を動かしたんだよ。お前達の力で捕まえればシュンもシスター・アンナも助かる。しかも! このおれ様直々に村を保護してやるばかりか、復興のための金までくれてやるって大盤振る舞いでね! 魔物に襲われていなくなった分なんて男でも女でもすぐに補充すればいいんだよ、どっか適当な村でも襲ってさ」

「なんでそんなことを!」

「にょほほほっ! いやー、良い顔してるねー。うんうん、おれ様今すっごく機嫌いいよ。だから教えてあげる」

 息を吸って、勿体付けて、アレクセイは告げる。その悪辣なる言葉を。

「楽しいだろ? 下等民族が自分達の保身のために争うのってさ。それを見ておれ様は思うんだよ、おれ様は選ばれたってな。強いギフトを持って、この世界で好き勝手生きる権利を貰ったんだって!」

「そんなの……!」

「んー。でもちょっと失敗だったなぁ。あっちの女は達磨にしちゃうつもりだし、こっちは襤褸雑巾になっちゃったし。無傷なのが一人だけかぁ。これは、うん。そうだな」

 アレクセイが目配せをする。

 それだけで部下は彼が何を言いたのかを理解したようで、周囲の村人達に対して持っていた武器を向けた。

「あ、アレクセイさん?」

 青年が尋ねる。

 アレクセイは彼の方を見ないで、言った。

「オシオキだな。おれ様の心をちゃんと読み取らなかった罰だ。半分は殺せ、無差別でいい。生き残った奴には褒美をやるよ」

 振り下ろされた蛮刀が手近にいた青年の首筋に突き刺さる。

「なんでっ……!」

 それを断末魔に一人が殺された。

 慌てて逃げようとする二人目の背に、炎のギフトが直撃して一瞬にして火達磨になる。

「お前等、一人十人だ! 十人だけ殺せ! 生き残った奴には褒美をやる、家族も助けてやるし女でも労働力でもくれてやるよ! にょほほっ、仲間を盾にしてでも頑張って生き残るんだな!」

 その言葉で村は一瞬にして混沌の渦に叩き落される。

 ある者は抵抗しようとして、またある者は必死で逃げようとして殺される。

 中にはアレクセイに言われた通り、仲間の足を切って動けなくしてその隙に逃げようとした者もいたが、部下の気まぐれでそちらが先に殺された。

 カナタを抑えつけていた男達も消えて、いつの間にか自由になっていた。

 ゆらりと幽鬼のようにカナタは立ち上がって、アレクセイとその先に巻き起こる惨劇を見つめる。

 最早止める気も起こらず、何をすればいいのかも頭の中にはない。

「……なんで」

 どうしてそんなことをするのだろうか?

 目の前のいる人の心が全く理解できない。

 理由もなく人を傷つけて何が楽しいのだろう?

 力を合わせて一緒に生きればいいだけなのに。

 自分が強いのならば弱者に寄り添って、お互いを尊重し合えばいいだけの話ではないだろうか。

 カナタはそう考えていた。

 しかし、目の前の男にはそれはできそうにない。それどころかこうして弱者を蹴散らして楽しそうに笑うのだ。

 その思考が理解できない。

 何が楽しいのか、理解したくもない。

 カナタの持つ善性からは余りにもかけ離れた思想。

 判らない。

 判らないものは怖い。

 怖いものは遠ざける。

 遠ざける? どうやって?

 思考が渦を巻く。

 それが次第に黒く染まっていくことに、カナタは抵抗しない。

 今そこにいるのは悪なのだから。

 倒さなければならない。でなければもっと多くの人が死ぬ。

 そのためにならばいいだろう。

 もっと強い力が必要になる。

 身体の内から湧き上がる衝動に、カナタは抗わない。

 今まで感じたこともないようなどす黒い感情が胸の辺りから染みだしで、全身へと行き渡る。

 血液が汚れたものに変わっていくような不快感に抵抗せず受け止める。

 きっとそれは必要なものだから。

 執行するために。

 醜いものをこの世界から排するための天の力。

 天空の極光は進化する。

 そして、その力を以て。

「消えちゃいばいいのに」

 その呟きがアレクセイの耳に入る。

 楽しそうにその様子を見ていたアレクセイは、カナタを振り返ってまた、愉快そうに笑った。

「にょほほっ。起き上がれたんだ? おい、お前等!」

 彼に呼ばれて狩りをしていた部下達がすぐに集合する。

「次の余興だよ。誰か、こいつを倒してみろよ。そしたら一番に楽しむ権利をやるよ」

「いいんすかぁ? そしたら次の奴に回らないかも知れませんよ?」

「そう言う時はみんなで楽しめよ。おれ様達は仲良くがモットーだからな」

「へへっ、アレクセイさん。太っ腹っすね。一生ついていきます!」

「ふんっ。油断はするなよ。そいつはそう見えても英雄だからな」

「だからこそ泣かせ甲斐があるってもんだ!」

 モヒカン頭の男が、手斧を振り回してカナタへと突撃する。

 アレクセイに言われたことを理解しているのかいないのか、全力でそれを振り下ろす。

 しかしその手斧は、カナタに触れる前に現れた壁に阻まれて取っ手の部分から無様に折れ飛んだ。

 これまでとは違う、紅いセレスティアルの輝きによって。

「このガキ!」

 男の手に炎が集う。

 収束したそれは正面からカナタに叩きつけられて、周囲に爆炎を撒き散らした。

 炎と煙が辺りを包み、逃げている村人達の中に更なる混乱が巻き起こる。

 そして煙が晴れたとき、やはりそこには無傷のままのカナタが立っていた。

「邪魔」

 腕を一振りする。

 そこに握られていた紅い極光の剣が、何の抵抗もなく男の両腕を切断した。

「い、ぎ」

 男は無様に尻餅を付き、落ちた自分の手を探し回って這いずる。

「てめぇ!」

 背後から二人、カナタに迫る。

 ギフトによって生み出された見えない風の衝撃が、カナタの纏うセレスティアルにぶつかって何の効果もなく消えていった。

「そんなことしても意味ないのに」

 ぽつりと呟く。

 そして背中から伸びた二本のセレスティアルが、同時に二人の男を捕まえて地面に叩きつける。

「へー。力を隠してたってこと? いや、これはそうだなぁ。おれ様の時と一緒ってことか。うんうん、面白いじゃん。じゃあ試してみようか!」

 アレクセイのギフトが発動する。

 彼の中にストックされていた他の誰かの恐怖が、具現化する。

 銀色の髪に紫の瞳。黒いドレスを纏った少女。

 御使い、悪性のウァラゼルがそこに立っていた。

「さあ、化け物同士で殺しあえ!」

 楽しげに、アレクセイは戦いの開幕を宣言する。

 紫色のセレスティアルが広がり、全方位からカナタを襲う。

 それに対するはこれまでの透明に近い極光ではなく、紅いセレスティアルを操るカナタ。

 この場にいる誰にも想像がつかないほどの規模の戦いが今、始まろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る