第3話 おむつ売場

「やあ」


「久しぶりだな。君もおむつを買いにきたのかい?」


「そうさ。お前もおむつが足りなくなったのか?」


「うん。あと数枚でなくなるって言ってたよ」


「お前のママ、なんでそんなところのおむつを選んでるんだ? まさかお前、そのセール中のおむつをはいてるのか?」


「そうだよ。たくさん入ってて安いんだ」


「お前、それでよく満足しておしっこできるな」


「満足もなにも、でるときはでるだろ」


「俺はそんな安いおむつには無理だね。気持ち悪くてしょうがない」


「君も使ったことがあるのか?」


「前に何回かな。その時にかぶれて大変だったよ」


「かぶれる? 僕はそんなことないけど」


「合う合わないがあるからな」


「それにしても君のママ、だいぶ高いおむつを選んでるな」


「ああ。僕はこのメーカーのこのおむつしかはかないからな」


「それだとかぶれないのか?」


「ああそうさ。このおむつにしてからは一度もかぶれたことがないね」


「僕は安いおむつでもかぶれないし、なによりママが喜んでくれるからこれでいいけどね」


「どうした? 本当は、こっちの高いおむつをはきたいんじゃないのか?」


「そ、そんなことないよ」


「試しに一個やろうか? 俺のママは優しいからな」


「優しい? 僕のママのほうが優しいよ。君のママは……化粧が濃すぎる」


「化粧が濃いだと? 化粧は身だしなみ。しっかりとするのがマナーってもんだろ」


「マナーだと? 単に派手なだけじゃないか。しゃべりかたも鼻にかかるよ」


「失礼なことを言うな。高ーいおむつを一個やるって言ってんだよ。素直に受け取れよ」


「ああ受け取るよ。僕のママは喜んでもらうと思うよ」


「そりゃあそうだろうな。普段買えないものをもらう立場なんだから」


「君も受け取るといい。いいものばかり使ってると、体が怠けるぞ」


◇◆◇


「どうだ?」


「手に取っただけでさわり心地が違うよ」


「だろ? 一度はいてみるといいさ。他のおむつ、はけなくなるぜ」


「そうだな。一度はいてみるよ」


「また会ったときに感想きかせろよ」


「ああそうするよ。君のママと僕のママ、仲がいいみたいだからまた会うだろうからね」


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