からっぽ宝箱

イミテーションパールの祈り

灰かぶりテアトルの片隅で

揺れるドレスの残像は

燃える炎を象った

濃紺の闇

ベルベットの星夜

滑る解けた真珠のネックレスは

イミテーションパール

転がる散らばる涙の粒

手繰り寄せた絹の糸

ああ その先に 君の首筋 照らす月光

白く虚ろな 肌が誘う

引き寄せたピアノ線

ああ 鳴り響く 君の喉元 照らす逆光

清く凄惨な 笑みが誘う

巻き戻るフィルムの羽ばたき

映写機の示す道筋

舞い上がる灰の輝き

燃えさかる追憶のミニシアターで

その幕が上がるのを待っている

灰かぶりテアトルは燃え尽きて

揺れる陽炎のオアシスが

枯れたネオンを象った

生成りのヤニ

チュールレースの朝

回る膨らむプリマのシルエットは

アラベスクの呼吸

開く綻ぶ薔薇の花

包み隠すパニエの秘密

ああ その内に 君の花園 照らす陽光

白く無垢なる 肌が誘う

引き寄せたサテンリボン

ああ 締め上げる 君のコルセット 掛かる梯子

清く凄惨な笑みが誘う

編み上げた背中の螺旋は

駆け上がる悦の絡まり

降り注ぐ朝の日差し

明滅する煉獄のミニシアターは

消失の楽園に幕を引く

連れて行って

光の彼方へ

ベルベットの星夜は

業火に焼かれ

チュールレースの朝

聖歌の調べ

その背中を這い上がり

縋る思いで寄せ集めて

きみの首筋に飾る

無限の祈りは

イミテーションパール