王家の墓
王家の墓。歴代王族が埋葬されている墓所というとそのままだけど、そこには膨大な副葬品が治められている。一山当ててお金持ちにとたくらむ盗賊は数多く、そんな連中の対策も取られている。
具体的にはこれを仕掛けたやつは根性がねじ曲がりすぎてもはやねじ曲がっているのすらわからなくなっているレベルのトラップの数々。
鍵穴を覗くための手鏡がすでに3枚だめになっているあたりもうね。あとはゴーストやレイスと言った死霊系のモンスター。あたしの攻撃手段は物理しかないので、リースの神聖魔法が頼りだ。
「ああもうめんどくさあああああああああああああい!!!」
再びやってきたレイスにリースが切れ君で叫んだ。
「白き輝きよ、集いて不浄なる者を打ち払う刃となれ! ディバイン・ブレイド!」
あたしの短剣が輝く。
「短剣に魔術付与したから霊体でも斬れるんで、後よろしく」
「……承知した」
とりあえず飛び交うレイスやらゴーストを斬りまくった。まあ、事実上役立たずだったからストレス解消にはよかったかもしれない。けど最後にバンシーを間違えて斬ってしまって、すさまじい絶叫にさらにモンスターが寄ってきたのには閉口した。
「あれね。バンシーがトラップだったのね」
「質が悪いな。あんだけ飛び交ってると個別の見分けなんかつかんし」
「まあ、ここのトラップ組んだ奴は間違いなく性格破綻者。狂ってる」
「言えてる」
「すまん」
なぜかジェド様が謝罪する。
「え? どういう意味ですか?」
「うちのご先祖様が本当にすまん」
後で聞いたが王家の墓の守りを固めたのはジェド様の5代ほど前の当主であったらしい。そんなこと知らなかったし……はう。
そうこうしているうちに最深部にたどり着く。初代は龍王と呼ばれ、伝承によれば龍と心を交わしたとかなんとか。
巨大な碑の裏に回ると、ジェド様が胸元からペンダントを取り出す。それをくぼみにはめ込むと、唐突に足元が沈んだ。立っていた床の中心が光って地面にめり込んでゆく。
「すごいな。魔法仕掛けとはいえ、こんだけの重量物を動かすとか」
「腐っても王家ってことかね」
ジェド様の咳払いがあたしたちの口をつぐませた。さすがに王家の悪口は良くなかった。けどまあ、あたしたちがこんな目に遭ったのは王様がしっかりしていなかったせいだ。そこは譲れない。
そう思っていると、ジェド様がわずかだけ頷く。そこは同意してくれてるようだ。
「もうこんなことは起こさせない。だから、もう少し俺に力を貸してくれ。頼む」
そうしてあたしたちに頭を下げる。
「当り前さね」
代表してあたしが答え、ほかのみんなも頷く。
「では行こう。そこの扉が地下牢の中に繋がっている。そこから城内に進入する」
「わかった!」
こうしてあたしたちは決着をつけるべく城内に足を踏み入れた。この先に何が待っているのかはまだわからない。状況はほぼ勝ちを収めているけれども、最後の最後まで分からない。
そのことをあたしが思い知るのは、この少し後だったのだ。
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