皆の思いと力を持って飛翔せよ

『これより、我ら星の使徒は、人類に向けて一斉攻撃を開始する』 


 その言葉に、全員が驚愕した。一兆のエンダーが攻めてくる……!


『要塞が地球に到着するまで約一時間。せいぜい残りの人生を楽しむが良い。……残念だ不動ユウ、貴様とは有効な関係を築けるかと思ったのだがな』

「ちっ」 


 舌打ちをしながらユウは通信機を外し、地面に叩きつけた。 


 一時間。たったそれだけが私達の残された時間。あまりにも短すぎる。 

 人類全員にリミッター解除したアビリティリングを配り、対抗する時間も無い。


「やつで、ディーノ社長にこの事を伝えて、皆を連れてこの島を脱出しろ」

「う、うん。それじゃあユウも一緒に」

「いや、俺はエンダー星に向かう」

「ま、まさか一人で戦う気? ダメだよ! 言ったでしょう、皆で守るって!」

「……俺は一度エンダーの仲間に、人類の敵になった。そのことの落とし前を付けなければならない」 


 確かにそうかもしれない。

 でも……。


「安心しろ。一人で戦うわけではない。皆で人類を守る、そうだろ?」 


 ユウは皆の方を向く。


「車田、氷華、空、そしてやつで。今、お前達はボロボロで戦えない。それは俺のせいだ」 


 ユウは頭を下げる。 

 ユウが人に頭を下げる光景を見るのは、これが初めてだった。この行動は、彼が人間として成長した証だと、私は思った。


「俺はお前達の分まで戦う。だから、俺にアビリティリングを貸してくれ」 


 氷華ちゃん車田くん空くん、三人はそれぞれの顔を見合う。 

 そして、ゆっくりと立ち上がった。


「私のH2O能力は、冷徹であればあるほど水は凝固になり、逆に激昂であればあるほど沸騰するという、とても感情に左右されやすい能力です。使い方にはご注意を」

「オレの炎は、とにかく心の熱さだ! 思いっきり燃えろよ!」

「……僕のテレポートゲート、自分の半径百メートル以内ならどこでも、出口と入口をそれぞれ三つずつ作ることができる。……頑張って」 


 そう言って、三人はそれぞれのリングをユウに託した。 

 そして……。


「一緒には行くって言っても、無駄なんだよね」

「ああ。やつでには皆を看ててもらわなければならないからな」

「そっか……分かった」 


 そう言って私は二つのリングを渡した。『妄想創造』と『機械仕掛け』、二種類のアビリティリングを。もちろん、ゼンマイもいくつか譲渡した。 


 ユウは五つのリングを両手首にそれぞれ二つと三つに分けて装着する。


「それじゃあ、行ってくる」 


 そう言ってユウは、空くんのリングを発動させる。 

 テレポートゲートを発生させ、宇宙へと飛び立った。

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