どこでもドア
空くんがゆっくりと、私達のもとに歩き戻ってくる。
「なるほどな、やはりそういうことか」
ユウが、事件を説いた名探偵のような顔をした。
「なんのこと?」
ペッポコ刑事の私は、探偵さんに聞いてみる。
「空の能力だ。最初俺はブラックホールだと思っていたが、間違っていた。あいつの能力は『どこでもドア』だ」
どこでもドアって、あの?
ドラえもんの漫画に出てくる、あのどこへでも行ける、どこでもドア?
「! そういうことですか……」
氷華ちゃんも、何か分かったような顔をしている。
「どこでもドアって、あのどこでもドアか!?」
車田くんが私と同じような反応をする。
「そうだ。今の勝負、空は、ドアの入り口をエンダーの眼の前に、出口をフィールドの外に展開し、場外にしたんだ」
名探偵ユウが推理ショーを始めた。推理が始まると同時に、空くんが戻ってきた。
「船が襲われた時も、攻撃を入り口で吸い込み、出口を敵の背後に展開した。車田くんとの勝負の時も同じ事をしたのですわね」
美人探偵氷華ちゃんも推理に加わる。
「オレが袋小路で見失ったのも、どこでもドアで家に帰っただけだったのか……! じゃあ、吹雪の能力が発動しなかったのは!?」
「簡単ですわ。私の攻撃の発射口にドアの入り口を展開し、出口を私が見えない適当な所に設置する。これで私の攻撃は何処かに飛ばされ、能力が発動できなくなったという演出が可能になります。……まんまと騙されましたわ」
「……」
犯人の空くんはいつも通り無言だった。でも否定しないってことは、正解なのかな?
「それにしてもユウ、よくドラえもんを知ってたね」
私は意外に思った。ユウには漫画を買うお金が無い。故に読む機会が無い。それなのにドラえもんを知っていた。どういうことだろう。
「最近、車田が漫画を押し付けてきてな。それを読んだ」
謎はすぐに解明された。聞くところによると、ドラゴンボールを知らないユウを不憫に思った車田くんが、いろいろな漫画を貸したらしい。その中にドラえもんもあったようだ。
「まあなんにせよ、初戦突破だ! よくやったぞ空!」
車田くんが空くんの髪をワシャワシャと撫でる。
それによって空くんのヘアースタイルがグシャグシャになった。
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