深まる常盤空の謎

「やはり、やつでさんでもダメでしたか」 


 やはり、とはどういう意味だろう。私は彼女に聞いてみる。


「実はわたくし達も空くんに聞いたのですわ、どんな能力なのか。共に戦う者同士、味方の能力が分かれば、連携技も可能と思いましたので」

「だが、あいつは頑なに何も話さなかった。……どうやらあいつは、誰も信用していないらしい。エンダーと戦う時も、いつも一人だったしな」

「誰も信用していない……」 


 もしかしたら、ユウの言う通りかもしれない。さっき空くんとちょっとだけ話したけど、彼の眼はどこか暗く、何者も寄せ付けない、そう暗示している眼だった。


「俺も親睦を深めるために、こっそり空の後をつけたんだけど!」 


 車田くんが大声で話し出す。


「それってストーカーじゃ……」

「……犯罪ですわね」 


 女子二人で、熱血男子をゴミを見るような目で睨む。


「それは言わないでくれ! ……そういえばその時もおかしなことが起こったぞ!」 


 話を逸らそうとしたのかと思ったけど、よく考えたら車田くんはそんなことをできる人間ではなかった。


「おかしなことって?」

「あのな、俺は空の後をこっそりと歩いていたわけなんだが……!」

「うんうん」

「空が角を曲がって、俺も後に続いたんだが……なんと! その曲がり角の先は袋小路で、しかも空の姿が無かったんだ!」

「塀をよじ登った可能性は?」 


 ユウが一番現実味のある可能性を提示する。だが、車田くんは首を大きく横に振った。


「無い! あの日地面は通り雨でぬかるんでいた! もし、塀を登ったのなら、泥の足跡がつくはずだ! 地面の足跡も途中で途切れていたぞ!」

「それはつまり、こういうことですか? 角を曲がった空くんが消えた、そういうことですか?」

「ますます謎だな……」 


 空くんにまた謎が増えた。消滅、鎮圧、反射、消失。なんだが謎がもっと増えそうな気がしてしまう。


「皆様、まもなく到着します!」 


 黒服船長さんが叫ぶ。島がすぐ眼の前にあった。


「……全員、いつでもリングを発動できるようにしておけ。着港と同時に、また攻撃してくるかもしれん」


 ユウの言葉で皆の目つきが変わる。 


 私は自分のリングを見つめる。大丈夫、この日のために必死に特訓してきたんだから、絶対勝てる。 


 船を適当な港に発着させ、私達は島に足を踏み入れた。

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