約束ではなく命令

「DCに、他に戦闘経験のある方はいらっしゃらないのですか?」 


 氷華ちゃんが社長に問う。


「エンダーの存在は最重要機密事項、一部の人間だけだ。それに全員、戦闘経験はない」

「だったら適当な軍人でも雇って、そいつにリングを持たせれば良いだろう」

「何度も言うようだが、エンダーの存在は機密だ。他の人間に漏らすわけにはいかない」

「じゃあお前が戦え」 


 社長相手にお前呼ばわりって……。


「……私の変身能力は戦闘向きではない。故に私が戦ったところで負けは見えている」

「だったら――」

「無駄だよユウ」 


 今度は私が、ユウが言い終わる前に、邪魔をする。 


 そして社長の方に視線を合わせる。


「社長さん、私に新しいアビリティリングをください。私の持っているリングはユウが使っているので」

「分かった、すぐに用意しよう」

「ありがとうございます」 


 私はお辞儀をする。


「何故だ、やつで。何故、自ら危険に飛び込もうとする?」 


 ユウが質問してくる。


「……私がのうのうと夏休みを楽しんでいる間、皆は必死にエンダーと戦っていたんだよね」 


 私は少し間をおいて、まっすぐをユウの目を見ながら自分の気持ちを話す。


「皆に申し訳ないよ。地球の危機を知っているのに、何もせず遊んでいたなんて。同い年で同じ女の子の氷華ちゃんや、私より幼い空くんも戦っているのに」

「ですが、それは記憶を失っていたので、しょうがないのでは」 


 私は首を横に振る。


「ううん。そんなの言い訳にならないよ。あの時私がもっと戦う意志を伝えていれば良かった、ちゃんとユウを説得していれば良かったんだ」 


 そうだ、これは私の責任だ。ユウは私のことを守ろうとしてくれただけだ。私の身を案じ、記憶を消すように社長さんに頼んだのだ。


「ユウ、私はもう決めたの。私は一緒に、皆と戦う」

「それは、命令か?」

「できれば命令じゃなくて、約束してほしいかな」

「……分かった命令に従う」 


 約束ではなく、ユウは私の言葉を命令として受け取った。

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