溶岩の狙撃

 それから、私は社長さんが用意してくれたリングを使いこなすために励んだ。 


 ユウ、氷華ちゃん、あと車田君も実践特訓に付き合ってくれた。空くんにも頼んだけど、都合が悪かったらしい、来てくれなかった。 


 特訓の末、私は何とか戦えるようになった。 

 車田くんとの実践訓練の勝敗は二勝四敗、氷華ちゃんとは一勝二敗、ユウとは零勝五敗という苦い結果となった。さすが皆、エンダーと戦っているだけあって、強かった。 

 そして、マーザが指定した日がやってきた。


「あそこが目的地の島です!」 


 DCの社員さんが叫ぶ。以前私とユウと氷華ちゃんをビルに案内してくれた、あの黒服さんだ。 


 私達は船頭の先を見る。水平線の上にポツンと島が浮かんでいた。 


 マーザが指定してきた場所は、日本海に位置する無人島だった。 

 そこへ行くには船に乗る必要がある。 

 社長さんがフェリーを用意してくれた。乗組員は私達を含めて六人だ。ちなみに船長さんが例の黒服さん。ちょっと黒服さんと話してみたけど、車と船以外に飛行機やヘリコプターも操縦できるらしい。凄い。


「! 何かが来るぞ!!」 


 一番視力の良さそうな車田君が、十二時の方角を指す。 

 私は目を凝らして、彼が指さす方向を見る。 

 車田くんの言う通り、何かがこちらに向かってくる。赤い何かが、この船に向かって弧を描きながら飛んできている。 


「砲撃だ! こっちに向かってくるぞ!」 


 車田くんが叫んだ。 


 大変だ。このままだと船に当たる。何とかしなければ。


「……」 


 アビリティリングを発動しようとする私の横を、常盤空くんがゆっくりと歩き、船頭に立つ。


「空くん?」

「……アビリティリング、発動」 


 空くんが自身のアビリティリングを発動させる。 

 彼は掌を前方に差し出す。 


 赤い砲撃がどんどん近づいてくる。それは燃えている岩、溶岩だった。しかもかなり大きい。溶岩がこっちに飛んできている。 


 だけど、空くんは何もしない。もしかしたら何かしたのかもしれないけど、何かしたようには見えない。 私は慌てて、能力を発動して砲撃を打ち落とそうとした。 


 だけど、突然、溶岩が消えた。私がリングを発動する前に、消失した。船と溶岩の距離が、あと一メートルという所で、溶岩の姿が消えた。


「消えた……?」 


 私は船の柵を乗り上げ、周りを見渡す。溶岩の姿はどこにもない。

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