電撃痴女

「ん? ああ、この右手が気になるの?」 


 私の視線が右手に向かっていることに気付いたのか、女性が右手を見せ付けてくる。


「アビリティリングの故障なのか誤作動なのかは分からないけどさ、異空間フィールドじゃなくても、現実世界で能力が使えるようになったのよ。あ、ちなみに電撃が私の能力ね」 


 聞いてもいないのに、女性が説明してくる。 


 私は息を飲んだ。まさか、仮想世界の能力が実体化するなんて。 


 ニュースでは痴漢はスタンガンで被害者を気絶させたと報道していたけど、実際は違う。あの電撃能力でショックを与えて気絶させていたんだ。


「それじゃあ、お喋りもこのくらいにして……お嬢ちゃん、お姉さんと良いことしましょうか」

「い、いや……!」 


 私は後ずさりしようとする。 

 けど、女性が電撃を放ち、私の足元を狙う。 

 その攻撃はまるで、逃げようとしても無駄だと暗示しているようだった。 私は恐怖で足が震える。


 もうダメだ。 


 そう思った。


「げぼらっ!」 


 女性の背後から何者かが、彼女にとび蹴りを喰らわせた。 

 不意打ちを喰らった女性は、私のそばを横切って、後ろの方に飛んでいった。


「大丈夫か?」 


 その何者かが、私の安否を確認してくる。 

 私はその声に聞き覚えがあった。


「ゆ、ユウ!?」 


 不動ユウだ。ユウが私を助けてくれたのだ。


「ど、どうしてここに……」

「ジャングルジムの上で空を眺めていたら、ここで奇妙な閃光が見えたからな。気になって様子を見に来た。まさかやつでがいるとは思わなかったがな」 


 ユウが私と女性の間に立つ。 

 女性は背中を擦りながら立ち上がってくる。


「なにすんのよこのオス豚が!! 男に用はないのよ!」 


 彼女の怒りに同調するかのように、彼女の右手の火花が一層激しくなる。


「その右手……なるほど、現実化した能力者か」

「フン、随分と理解が早いじゃない。もしかして、私以外に実体化した能力者を見たことがあるのかしら?」

「お前には関係ない」

「そうっね!」 


 そう強く言いながら、彼女は電撃を放つ。 


 ユウはその攻撃をかわ……さなかった。

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