第3話 ただの井戸端会議
『ねぇ、主人ったらひどいのよ』
『あら、どうしたの花さん?』
『今日ね、帰ってくるのがいつもより遅いのよ』
『まぁっ、でも何か用事があるのよ。大丈夫よ』
『でもよっ、こんな家に帰ってくるまでご飯も食べずに待ってるなんて献身的と思わない?』
『それは思うわねぇ〜』
『でしょう?それも聞いて、あの人それがわかっててほっておくのよぉ』
『それはひどいわねぇ〜』
『あなたはいいわよねぇ、独り身で〜』
『あらぁ、そんなこともないのよぉ?私ってほら、よく勘違いされるじゃない?』
『えっ、何に?』
『ほらぁ、あれのせいに決まってるじゃない。漁りよ、あ・さ・り』
『まぁ、その歳でよくやること』
『でしょう。こっちはもう明日生きるためにやってるのにひどい話よねぇ、全く』
『いいじゃない、その分自由にいろんなことができて』
『そうでもないのよ、独り身って大変。まだちゃんとお食事を用意してくださる家庭がある方が幾分かマシってものよ?』
『まっ、でもうちの主人ったら最近じゃあんまり遠くに連れてってくれないのよ?』
『あらっ、最近はどこに連れてってもらったのかしら?』
『そうねぇ・・・、最近は家の周りのお店とかかしらねぇ』
『あらっ』
『私だってお気に入りの場所とか知りたいのよ?それなのにあの人は・・・きっとめんどくさい女って思われてるのかしらね?』
『そんなことないわよっ、あなた外見かわいいんだしそれでちょっとおしゃべりなのやめればちゃんとかまってもらえるわよっ』
『・・・ごめんなさいわね、毎回主人がいないときに愚痴を聞いてもらっちゃって』
『いいのよ、独り身にはいい暇つぶしよ』
『そうよね、今度はいつ来てくださるのかしら』
『そうねぇ、最近はここのあたりは漁りずらくなったから違うところに移るわ』
『それじゃあ、しばらく会えないのね』
『そういうことになるわね、にしてもあなたの主人って案外ズボラなのね、窓を開けっ放しにするなんて。泥棒に入られたらどうするつもりかしら?』
『そのために私がいるんじゃない、それに主人がズボラじゃなかったらあなたとは会えないわ』
『そうねぇ・・・ん!ご主人が帰ってきたわよっ!』
「ただいまぁ、って、誰だお前はっ!どこから入ってきたっ!」
「フーッ!フーッ!」
「こらっ、あっちいけっ!・・・ふぅ〜、また窓開けっ放しだったのか、にしても猫が入ってくるなんてなぁ・・・ん、あそうだそうだ、お前の餌を忘れてたよっ、ちょっと待ってな」
「キャンッ!キャンッ!」
「わかったわかったって、ほらよ・・・はぁ〜今日もお前はかわいいな〜花ちゃんは」
「キャンッ!」
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