第4話 ギルド

 今日は、ロイとセシルの16歳の誕生日。


 ロイは、朝早くから、冒険者ギルド『英雄の酒場』に足を運んでいた。


 カランカランと入り口のベルが鳴り、ロイはギルドへと入る。

「ようこそ、冒険者ギルド『英雄の酒場』へ!」


 カウンター越しに受付嬢と見られる女の人が声を掛けてきた。


「私は各種受付担当のマリア・フォーゲルよ、マリアでいいわ。ギルドへの登録はこちらからお受け賜ります。あなたはまだ登録してないでしょ?」

「えっ、はい今日登録しに来ました」


「じゃこれに記入してね」とマリアに登録書類を渡され、カウンター越しに教えてもらいながら記入していく。


「ロイ・ガルスキー君ね。どこかで聞いたことある名前ねぇ?」

「まぁいいわ」とどんどん話を進めていくマリア。


「後は、ロイ君の戦闘スタイルを記入してね。戦闘スタイルに応じたギルドからの依頼なんかもあるから大事よ」

「スタイルってなんでもじゃ駄目ですか?」

「なんでもってどういう事かしら?そんなに依頼が欲しいの?」


 首をかしげるマリア。


「いえ、一応、近距離、中距離、遠距離のスタイルは一通り出来ます。魔法は、初級程度しか出来ないですけど、武器はこの町にあるものなら、基本扱えます。だからなんでも」

「なるほどね。様は不得意が少ないって事ね」


 少し困った顔を見せるマリア。


「じゃ、そこは『短剣』って書いておいてくれるかな、依頼はランクに応じたものしか回らないから、依頼内容に応じて考えてください」

「ありがとうございます。この後は何をしたらいいんですか?」


「いい質問ね!」とロイの鼻先に指を刺すマリア。


「後ろに階段があるでしょ、そこから2階に上がって、すぐの部屋で、能力値検査を受けてきてね、そこで記された能力値で今後の依頼や、遠征許可なんかを判断されるの、大抵の人は最初、町周辺の討伐や採取依頼が殆どだけどね。能力値の検査は1ヶ月から2ヶ月に一回必ず受けるの、この世界上にあるギルドの決まりの1つだからしっかり覚えておいてね」

「わかりました。じゃ検査受けてきますね」


 ロイはお辞儀をして、2階の能力検査室へ向かった。


 コンコン…

「失礼します。あの~」

「検査に受けに来た人ね」


「こっちに来て」と奥に招かれる。するとそこにはマリアにそっくりな女性が居た。


「あれ?マリアさん?」


 ロイがそう聞くと、彼女はくすくすと微笑みながら。


「マリアは私の妹なの、そして私が姉のイリア、イリア・フォーゲルよ。よろしくね」


 イリアはスカートの裾を摘み、クルっと回ってお辞儀をしてみせた。


「じゃちゃちゃっと検査をすませましょうか。そこにうつ伏せになって寝てくれる」

「はい、こうですか?」

「うん、じゃあ背中を見せてね」


 そう言うと服をめくりイリアは小声で呟いた。


「汝の器を示せ」


 背中に熱に似た何かを感じる。

 イリアに「はい終わり」と告げられ、服を直し起き上がる。


「もう終わりなんですね。一瞬で解かるんですか?」

「そうよ、神々の恩恵でね。神の恩恵で数値として背中に浮かび上がった文字をこの羊の皮に写すの。それだけ」


 そう言うとにこっと笑い、羊皮紙に目を移す。すると驚いた表情で。


「ロイ君、君は一体何者なの?特殊訓練でも受けてきたの?」

「いえ、何も訓練とかは受けたことないですよ」

「そう、でもこの数値、普通では有り得ないのよ。数値の一部が王宮兵士クラス…いえもっと上に匹敵するかも」

「それってすごいんですか?」


 ロイはイリアの言っている意味とテンションがよく解からず首を傾げる。


「えぇすごいよ。見てみて、この数値」


 イリアは羊皮紙をロイに見せ説明する。


「これが攻撃値、攻撃値はCランクね、それから敏捷値もDランク、あと判断値、これがすごいのSランクよ、あと他はCね、トータルでCランクってところね」


 そう言うとイリアはいきなり立ち上がり、少し興奮気味に言った。


「王宮兵士には、トータルCランク以上の実力が必要なの、それを今日初めて検査を受けた君がクリアってだけでも驚きなのに、判断値Sランク、王宮の指揮官にもSランクなんて一人しか見たことないわ」


 イリアは目をきらきらさせ、ロイの手を握る。


「あの~イリアさん?」

「Sランク!すごい、すごいよ!君は一体何者?」

「聞こえてない…」

「君には希望が持てるね。将来は王宮兵士、いえ王宮騎士団長も夢じゃないよ!」


「あのイリアさん!」とロイは声を張ってイリアを呼ぶ。

 するとイリアは申し訳なさそうに。


「ごめんごめん、つい舞い上がっちゃいました」


 そう言い、軽く舌を出してみせる。


「イリアさん、俺王宮兵士とか興味無いんです。俺はギルドに所属して、冒険者として、親父を探す旅をしたいんです」


 ロイはそう言うと少し俯いた。


「そうだったのごめんね、お父様を探す旅かぁ、どこにいるか当てはあるの?」


 イリアの質問にロイは首を振り。


「当てはないです。ただ、世界の果てで待ってるって手紙が」

「世界の果て?どこの事かしら?聞いたこと無いわ」

「だから、冒険者として、世界を旅して、情報を集めて、親父を探し出したいんです」


 ロイの言葉に「うんうん」をイリアは頷き。


「わかったわ、ならまずは仲間と集めないとね」


 イリアはそう言い、素敵な笑顔で見送ってくれた。


 ▼▼▼


 検査室を出て1階に降りて来たロイは、イリアの言葉を思い出す。


「少なくとも1人は仲間を見つけてから旅に出なさいね」


 ロイはため息をつき「仲間かぁ」とつぶやき、ギルドを後にした。

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