第3話 セシルの決意

 ロイの家を飛び出し、なんとなく夜の町の噴水広場に足を運んだ私。


「最近涙もろくなったのかなぁ?」


 自分でも不思議なぐらい涙出る。


「ロイ…いつも間にか私より大人みたいな顔する様になったんだなぁ」


 ロイとの思い出が頭を過ぎる。


「私も成長してるはずなのに、ロイの目には映らないのかぁ?」


 噴水に写る自分を見つめながら俯いてしまうセシル。

 小さい頃からずっと一緒に成長してきた、「自分がロイのお姉さんだ、しっかりしなきゃ」と、ずっと頑張ってきたセシル。


「子供の頃はどこへ行くのも二人で一緒に行ってたのに、最近は、目を離すとすぐに一人でどこか行っちゃうし、帰ってきたかと思えば、体中傷だらけにして帰ってくるし…って」

 

 ロイの事でいっぱいになってぶつぶつ言っている自分に気づき、少し頬を赤くする。


「なんで、一人でどっか行っちゃうのよ…」


 自然とまた涙がこみ上げてくる。


「私ってそんなに魅力ないのかなぁ…」


 自分に問いかけ、顔を左右にぶんぶん振る。


「何考えてるのよ私は…でも」

「あれ、セシルちゃん」


 不意に声をかけられ振り返る。


「あっ、ユーリさん」


 声の主は『ユーリ・アルテシア』さんだった。

 私の魔術の先生だ。


「どうしたの?こんな時間に一人で噴水なんて眺めちゃって?なんかあったの?」


 優しい表情で、顔を覗き込んできた、ユーリ


「なんでもないですよ」とさっと涙を拭い笑顔で答える。


「う~ん、なんでもないって顔じゃないけど、またロイ君の事でしょ?」

「そんなんじゃないですよ!」


 ユーリの言葉に対し咄嗟に否定するセシル。

 だが、「わかってる」って顔で笑みを零すユーリ。


「まぁ、あんまり思いつめない事ね」


 ユーリはそう言うと、ぐいっと顔を寄せ「ほんと、ロイ君の事好きだね」とセシルの頬をつついてみせる。


 セシルは顔を真っ赤にして「そんなんじゃないですって!」

 と否定する。


「はいはい、何かあったらなんでも相談してね」


 そう言うとユーリは手をひらひらさせながら帰っていった。


「ユーリさん…なんか吹っ切れた、かな…」

「ユーリさんってホント抜け目がないって言うか、鋭いと言うか、ありがとうございます」


 ユーリの何気ない言葉に、セシルは確かに決意した。

 その目はさっきまでの悲しみなどと違い、きらきらと夜空の星の如く光っていた。

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