第2話 理由

 日も落ちてきた頃、ロイとセシルはお店の仕事を終えて、ロイの住む家に向かっていた。


「はぁ~疲れたぁ~、なんで雑貨屋にあんなに忙しいんだよ」


 ロイは、フラフラになりながら文句を言う。


「あのぐらいで文句ばかり言わないの!それでも男なの?」


 両手に大きな買い物袋を持ちながら、セシルは言う。


「そんなんでよくもまぁ冒険だのなんだのって言えるわね」


 あきれた顔でセシルのキツイ言葉がロイを攻撃する。


「うるせぇ冒険と仕事は別だろ!?冒険はわくわくするし、どんどん前に進む意欲が湧いてくるだよ!」


 目をきらきらさせ、セシルの前に両手をいっぱい広げジェスチャーするがロイだが、「ゲシッ!!」っとセシルに蹴られしょぼくれるロイ。


「そんな事より今晩は、ロイの大好きなシチューにしましょ!」

「マジでか!!ちゃんと、フレアラビットの肉はあんのか?あとキラービーンズとレッドキャロット!!」


 セシルは得意げな顔で「もちろん」と笑顔で答えた。


「うひょ~なんかテンション上がってきたー!」


「荷物持つよ」とロイは調子よくセシルから買い物袋をとり、走り始めた。


 家に着き、セシルはキッチンでシチューの仕度を、ロイは、鼻歌まじりに自慢のダガーを磨く。


 しばらくして、「ごはんできたよー」とセシルからの声


「待ってましたー!すぐいくよ!」


 自慢のダガーを鞘に収め、立ち上がる。

 その手には、一通の手紙…


 しばらくご飯を楽しむ二人、食べ終わり、余韻に浸る。


「さっきの話ってなに?」


 セシルから切り出した。


「うん、この手紙」


 ロイは手紙をセシルに手渡した。

 手紙にはこう書かれていた



『我が息子、ロイよ。世界の果てで待つ。』


 手紙には、短くも意味深な言葉が綴られていた。


「これは、ロイのお父様からの手紙なの?いつ届いたのよ?」

「手紙自体は、10歳の頃に玄関先に置かれていたんだ。」


 手紙をセシルから受け取り、ロイは語る。


「親父は、俺が物心がつく前に死んだって村長から聞かされていたんだけど、調べてみたら実際は、『世界の果てを探す』ってかぁさんと俺を残して旅に出て行ったらしい。」


 少し寂しそうな顔で話を聞くセシル。


「『世界の果て』がどこなのかはわからないけど、俺は親父を探す旅に出る為に、町の近くで鍛錬を積んでいたんだ。」

「そうだったんだ。でも、やっぱり一人で無茶な事ばかりするのはやめてほしいなぁ」


 セシルは、ロイの言葉に少し間を取ってから言った。


「ロイはいつも一人で何とかしようとするし、それはある意味すごい事だと思うけど、一人ではどうにもならない事だってあるんだよ」

「わかってる!!」


 ロイは声を張って遮った。


「わかってるんだ。でも…俺は止まりたくないんだ」

「ロイ…」

「来週、俺とセシルの16歳の誕生日だろ。その日にギルドに登録するつもりなんだ。そんで旅に出る。」

「何言ってんのよ!そんな急で勝手な話!!」

「もうずっと前から決めてんだよ!ごめん…」

「ロイのバカ!!」


 セシルは勢いよく家から飛び出していった。


「セシルっ!!…なんであいつが泣いてんだよ…」


「また泣かしちまったなぁ」と罪悪感に蔽われながら立ち上がる。


「ごめんセシル…俺は、大冒険家で、『英雄ロベルト・ガルスキー』の息子なんだよ。親父に会って、親父を超えたいんだ、そして、世界の果てに、君と…」

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