いつか世界の果てで…

珠洲樹義

第1話 冒険好きと幼馴染

 ここは不思議でいっぱいの世界『ブリュード』

 ブリュードにはたくさんの種族がいる。

 ヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人、など様々だ…


 このブリュードのサイフォン領域にある、小さな町『カサブランカ』から物語は始まる。


 ここでこの物語の主人公を紹介しよう。

 名前は『ロイ・ガルスキー』

 15歳の男で彼女いない暦15年の冒険バカだ。


「今日も冒険日和だ」


 ロイは満面の笑顔を浮かべて叫んだ。


「今日は西の森の泉らへんまで足を延ばしてみるか、レベル上げにはいい感じだろ」


 西の森…「カサブランカ」の町の西にある森なのだが、魔物も生息していて、危険な場所である。

 故に、ギルドの許可なしの人間は足を踏み入れることを禁じられている。


「装備に、アイテムに、食料の準備は大丈夫だな。村長に見つかる前に出発しなくちゃな」


 荷物をまとめ、ロイが家を出ようとしたその時


「ロイ!森には行かせないよ!」


 大声と共に、激しく扉を開け一人の少女が飛び込んできた。


「いい加減お店の手伝いしてよ!」


 少女は腕まくりをしながらロイに詰寄る。


「まてまて、セシル!話せば解かる!落ち着け!」


『セシル・フィールド』

 ロイの幼馴染で雑貨屋の娘。

 人当たりも良く町の人気者なのだが、ロイにはかなり厳しい。


「待てません。聞きません。落ち着いています。」


 セシルはロイの腕を掴み、ロイを睨んだ。


「大体、許可もないのに森に行こうなんで死にたいの?自殺志願者なの?それともただのアホなの?」


 すごい見幕をはり、さらに詰寄る。


「セシル落ち着いて!可愛い顔が台無しだよ!!」


 ロイは、慌ててセシルを褒めてみる。

 が、セシルは笑顔で答えた。


「ロイ?灰になるか、私の言うことを聞くかどっちにする?」


 笑顔なのに、背筋が凍えるようだった。


「わかりました。セシルお嬢様に御仕えいたします」


 なくなくセシルに従うことにしたロイを見て、今度は本当の笑顔でセシルは微笑んだ。


「ロイ解かってくれたのね?嬉しいわ!」


 その顔は、本当に嬉しそうな顔をしていた。


「セシル、ひとつ聴いていいか?」


 ロイの問いかけに、セシルは「なに?」と一言。


「セシルは何で俺に構うんだ?冒険する事しか脳の無い俺に…」


 ロイは少し引きつった顔でセシルに問う。


「ロイってホント馬鹿ね?ロイの事ほっといたら、いつか居なくなっちゃうじゃない」


 寂しそうな顔を見せ言葉を紡ぐセシル。


「なんでそんなに外に出たがるのか解からないけど、ロイをほって置いたらもう会えなくなる様な気がして…」


 セシルの言葉に、一瞬戸惑うロイ。


「なんでいつもそんな無茶な事ばかりするの?冒険をする事に反対はしないけど、冒険をしたいならなんでギルドに所属しないの?なんでいつも一人で行動するの?なんでそんなに冒険したいの?」


 セシルは反論の隙を与えないとばかりに言葉をならべ顔を俯ける。

 その表情には、一筋の涙があった。


「はぁ~…」とため息をつきロイは答えた。


「悪かったよ。セシルには色々ちゃんと話しとくよ…」


 ロイは肩を落とし語り始めようとしたが、セシルは遮る様に足を鳴らし言う。


「取り合えず、お店…今晩、話聞かせて…」

「美味しい晩御飯作ってあげるからね」


 そう言い細く笑みを浮かべ、掴んだ手を離して、セシルはお店に向かい歩き出した。

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