彼女からの金銭要求

芹沢 右近

第1話

♪意味なんか

ないさ暮らしがあるだけ

ただ腹を空かせて

君の元へ帰るんだ♪


当時俺26歳 社会人3年目

彼女19歳 学生2回生


同棲はしていなかったけど、部屋の行き来はしていた。

お互い平日は忙しいので会うのは週末ぐらいだった。


週末、彼女はバイト先の、廃棄する惣菜やお寿司なんかを持って帰ってきて、俺に食わせてくれていたので、俺もビールやつまみを買って持っていって持ち寄って二人宴会みたいなことをしていた。


ある時、彼女が「今度、平日にご飯二人分作るから、会社帰りに来てよ。」と提案してきた。

「うーん、残業あるかもしれんけどそれでも待ってられる?」


「うん、大丈夫!腕を振るって作るから期待しといてね〜!」

なにがあったのか。もともと料理は得意な方だと思うけど、平日に作るってやけにノリノリだなあ。


当日、そんなに残業もなく、普通に彼女の家に着けた。

おおっ、確かに腕を振るうっていっただけあって、普通だけど手間暇かけてる家庭料理っ!って感じのものが並んでいる。


「おかえりなさーい。はやかったのねっ」

まるで新婚夫婦みたい。


私は作ってもらって申し訳なので、ビールとちょっと高めのワインとを買って持っていった。


食事を終え、ビールもワインも空けたところで、けっこうな時間になった。

「じゃ、おれそろそろ帰るわ。」


「え!?」

あ、ごめん、皿洗いとか汚れもん俺の分とか二倍でちゃったけど、今日もう遅いから勘弁してよ。週末埋め合わせするからさ。


「いや!そういうことじゃないでしょ!」

明らかになんか怒ってる。さっきまでご機嫌だったのにーー!


「え、なにしたらいいの?」


「カネ」


「え?」


「食材お金かかってるんやで、半分出してよ。」


「ビールとワイン買ってきたやん。」


「それはあんたが飲みたいからやろ。」


「夕食作るって言ったんはそっちやん。払わんとは言わんけど、なんかおかしくない?」


「なんで?ご飯タダじゃないのわかるやろ?」


「そらあわかるけど…」


さて、付き合ってて、夕食の食材代金を現金で請求され、戸惑う俺。


ここで金を払ってしまったら、契約恋人もしくはデート商法みたいに、男が女子に金を渡し付き合ってるように思えて仕方がない。ここは譲れないと思った私は結局カネを払うのを拒んでしまった。

そういうことはカネで払うのではなく、プレゼントとか愛情とかそういう表現で返すもんではないのだろうかと当時思っていた。


好きの搾取をしている私が悪いのか?


お金で見返りを求める彼女が、論理的すぎるのか?


20年経った今も未だに咀嚼できない悩みを抱えています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼女からの金銭要求 芹沢 右近 @putinpuddings

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る