第5話 地球への着陸
◇
バーディ号は当初の軌道を僅かに逸れて大きな海洋の上空から地球へ降下していた。
ジオ号の爆破に激しく動揺する二人だったがバーディー号は与えられた任務を果たすように地球に向かって正確に降下を続けているのである。
「これからどうするの?エトロ」
「こうなったら地球に着陸する以外に方法はない。バーディ号ではデル星への帰還 はおろか、宇宙への脱出すらできないんだ。まずは地球に着陸してデル星からの 救助を待つしか方法はありそうもない」
バーディ号の丸い窓からすっかり明るくなった地球の美しい地平線が見えてきた。
空にはジオ号が爆発した白い煙がまだ広がっていて二人は深い悲しみと不安に押しつぶされそうになっていた。
コクピットのモニターには海の向こうに大陸が見えてきた。大陸は山々が連なり人類の存在は確認できないが山の手前には平野が広がり地球人が密集して住んでいるようだ。
この山々の中に着陸して地球人の目を逃れ、デル星との交信を試みて当分過ごすのが良いのか、それとも文明の進化した地球人の住む場所に着陸した方が良いのか、エトロとサンドラは迷った。
「エトロ、デル星と連絡が取れるのは奇跡的なことだわ、でも望みが無いわけで はないと思うの。いつかその時まで数年は地球で生活しなければならないわ」
「そうだな、やはり森林の中で食料を確保して生き延びるようなサバイバルな生活 は長く続かないだろうしデル星への連絡方法も見つからないだろう。バーディ号 は非可視光線バリヤで覆ってしまえば地球人には恐らく見つからない。自分達の 背格好も地球人とは見分けがつかない。だから地球人の住むところに紛れ込ん で、地球人として当分生活をしながらデル星との交信を試みるべきだと思うん だ」
この案にサンドラも賛成した。できれば地球人には見つかりたくない。ジオ号をミサイルで破壊してしまうような人類なのだから。しかしこの方法しかない。これから先が長いミッションとなってしまったのだ。
◇
この大陸は海沿いに多くの都市があり内陸側は山脈や砂漠が広がっているようだ。サンドラはバーディ号のデータ解析システムをフル稼働して眼下の大陸の山林に着陸地点を探した。地球人が使っている衛星によるGPSを表示してみたが、あまりにも精度を欠く古いシステムでバーディ号が着陸するための細かい地形、地質、標高など詳細なデータは得られないためエネルギーの消耗を気にしつつもバーディ号のシステムに頼るしかなかった。
そして高精細カメラで捉えた地球人の生活をスクリーンに写し、超指向性高感度集音マイクで言語を集音し、携帯型トランスレーターにインプットした。
この場所はアメリカ合衆国の「カリフォルニア州サンディエゴ」と言う都市で都市の背後が山脈、反対側は海となっている地形であり自分達が最も行動しやすいと判断した。
着陸地点は、「サンディエゴ」からほど近い「スウィートウォーター貯水池」周辺の森林に囲まれた採石場跡に決めた。この地点に着陸し、サンディエゴに向かうのだ。当初の計画では山林に着陸後、移動車で都市に近づくという計画だった。当初は地球人に接触しないという前提の計画であったため移動車を使用する事としていたが、今となっては地球人と接触して生活する必要性があるために目立った行動は禁物である。
着陸後バーディ号を地球人に見つからないようにしてから移動車ではなく地球人が利用する車を使って移動する計画に変更した。デル星の移動車は熱エネルギーを使って地表から浮いた状態で時速約250キロで移動ができる車だが、この地球には存在しないため間違いなく地球人の目についてしまうからだ。
バーディー号は山林の間の僅かな平地にゆっくりと着陸した。
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