第3話 未確認飛行物体が地球に接近!
◇
【国防総省】
―――緊急事態発生!
―――大統領に緊急連絡!
その頃、アメリカ国防総省は緊急事態の対応に追われていた。2日前に、地球に接近する未確認飛行物体をNASAレーダーおよび宇宙ステーションのレーダーが捉えていたのだ。
国防総省がレーダー情報を精査し、熱解析による飛行経路を分析した結果、銀河系のはるかかなたから飛行してきた宇宙船であると断定した。
「なんという事だ。ついに宇宙人が地球を攻撃に来たということか」
報告を受けたアメリカのリチャード大統領は絶句した。
米軍は、イギリス、フランスに協力を仰ぎ対応策を緊急協議した。そして各国で宇宙船の位置確認を行い、核ミサイルを含む地対空ミサイルが配備された。
そしてその直後―――
ついに宇宙船は地球の大気圏に突入してきたのである。
宇宙船の大気圏突入によりロシア軍も地球の物体ではない宇宙船の存在に気付きアメリカ政府に協力体制の打診を申し出てきた。
日本も自衛隊のレーダーとJAXAの監視衛星により宇宙船が大気圏突入し、アメリカ上空に静止した情報をアメリカ国防総省に伝えていた。
アメリカのリチャード大統領はロシア、イギリス、フランス、そして日本へ極秘情報として、次の2項を伝えてきた。
①当該事件に対する対応はアメリカが議長国となりロシア、イギリス、フランス、 日本の四カ国のチームの協議により行う
②全地球人がパニックを起こさぬよう極秘にて対応を図る。
そしてアメリカの基本姿勢として、「宇宙船を破壊せず確保する作戦を計画する」という事も付け加えられた。
「何だって!なぜ撃墜しないのか。いつ地球が攻撃されるかわからないというのに」
このアメリカからの連絡に対し、イギリス政府は猛反対の意思を伝えてきた。未確認飛行物体は遠く離れた銀河系の果てから地球を目指して飛行してきた極めて高い技術を持つ宇宙人に違いなく地球自体を一気に破壊されかねない緊急事態である。フランス政府も同様の意思を表明してきた。ためらうことなく各国から地対空ミサイルを放ち撃墜すべきであると。
リチャード大統領は一刻も早く決断しなければならなかった。
◇
ロシア、フランス、イギリス、日本そしてアメリカの4カ国の首脳は緊急通信会議を繰り返し開催した。ロシアの調査によると宇宙船からは特殊な電波が約4時間に渡りアメリカ大陸に向けて発信されていることがわかった。
ロシアのダルシチョフ大統領は電話会談で強く主張した。
「リチャード大統領、この宇宙船の動きは地球を破壊するための大型核ミサイルを 地球のコアに撃ち込むための位置を確認しているに違いない。一刻も早く宇宙船 へのミサイル攻撃を行わないと地球が滅ぼされる。各国の意見をまとめそれらを 尊重して決断願いたい」
そして各国が同調しない場合、ロシア単独でのミサイル攻撃も示唆したのだ。ロシアの調査結果にはイギリス、フランス政府も危機感を覚え宇宙船撃墜にアメリカが賛同するよう詰め寄った。日本はアメリカの意見に従う方針を伝えてきた。
リチャード大統領は地球に迷い込んだ宇宙人をみすみす木っ端微塵にしてしまうのは地球の将来のために不利益だという考えを捨てきれずにいたが、通信会議に同席している国防長官、中央軍指令本部長は宇宙船が先手を打ってくることを恐れ、宇宙船攻撃に賛成していた。そこへ連邦軍から連絡が入った。
宇宙船は姿勢制御エンジンを巧みに操り大型ミサイルが発射されると思われる開口部をアメリカアリゾナ州に向けた状態で僅か1度の狂いもなく静止しているとのことだった。
「国防長官、この動きは例の場所をターゲットにしていると考えて良いのだろう か」
リチャード大統領の言葉にミューラー国防長官は頷いた。
「どうやらそのようです。これはアメリカ史上最大の危機です!」
アリゾナ州には極秘の核ミサイルの保管基地がある。この基地が爆破されればとてつもない数の核弾頭が爆発し地球を覆う放射能が放出されることになるだろう。
この情報にリチャード大統領は決断した。
「宇宙船はアメリカ軍による最新鋭の追尾型地対空ミサイル攻撃により撃墜する。 核ミサイルは使用しない。ロシア、イギリス、フランス各軍隊は上空から後方支 援を行う」
このアメリカ軍最新鋭地対空ミサイルはまだその存在も公表されておらず各国はその能力を知る上でもおおいに注目していた。
この決定から15分後、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス軍は空対空ミサイルを搭載した軍用機を発進させ、アメリカ軍の偵察機4機も飛び立った。
そしてすでに前日から発射準備を行っていた地対空ミサイル3機は大統領が発射ボタンを押すのを待っていた。
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