第1章-第1話 地球発見~着陸へ
◇
デル星を出発して7年目の地球時間「2060年4月」第1チームの宇宙船『ジオ号』は、飛行エンジニアであるサンドラが搭載している反射望遠鏡にて、『太陽』を発見した。ニスラムは大型の光球面恒星である太陽の発見によって必ず周回する惑星が複数あり多くのデル星に似た惑星の存在を信じてスピードを上げた。
「この恒星を周回する惑星がいくつか確認できるがデル星に似た惑星が必ずあるはずだ」
そして銀河系に突入した『ジオ号』は猛スピードで太陽系まで突き進み、冥王星付近で停止した。
「エトロ、無人調査艇の準備はいいか」
「はい、すぐに発射可能です」
エトロは発射ボタンの安全装置を外して準備を整えた。
「よし、調査艇発射!」
エトロは発射ボタンを押しすぐに操縦パネルの中央にある操舵レバーを操作し始めた。
エトロの操縦によって無人調査艇は太陽への直線距離に近い位置にいる土星、火星のデータを瞬時に収集し、次に地球へ調査艇を近づけた。リアルタイムに調査艇から情報が送られてくる。
「ニスラム、あったわ!この星よ!」
モニターを見ていたサンドラが叫んだ。
ニスラムはサンドラの隣で調査艇を操作しているエトロの両肩を後ろから揺さぶりながら力を込めた。
「よし!」
調査艇からの情報によると、この惑星は岩石質で、大気と水分を有し、放射性元素分析から、誕生して46億年ほど経過しており、デル星と極めて似ていることがわかった。さらにこの星にはデル星とほぼ同じ重力があることもわかった。
「この星には必ず生物が存在する。それも我々と類似した『人類』が生活しているに違いない」
ニスラムは地球へ接近し大気圏内に突入してデル星人が生活できる環境かどうかの調査を行う決意を固め、宇宙開発局へ報告した。
宇宙開発局のライル局長から返ってきた返事は「今回の惑星接近調査を許可する」という事だった。そしてジオ号は地球へと向かったのである。
◇
地球の重力圏内に接近するため、大気圏内に引き込まれた場合に使用する翼の開閉テストや再び大気圏外に脱出するためのエンジン類、計器類の確認も完了し、いよいよ地球大気圏に近づく準備が整った。そしてジオ号に搭載している船外活動を行うことのできる小型離着陸船『バーディ号』の整備も整った。
「サンドラ、見てごらん!」
エトロに促され、コクピットのモニタを見たサンドラは思わず叫んだ。
「すごい、デル星とまるで同じじゃない!こんな星があるなんて」
そこから見る地球はデル星とそっくりな海と大陸があり、さらに画像を拡大して見ると不鮮明ながら大陸には人類が存在し山林の合間に建造物も見ることができた。
「かなり高い文明の人類が住んでいるようだ。これは近年最大の発見だ」
隊長であるニスラムが言う言葉にエトロやサンドラも頷き、大いに地球に興味を持った。
「ニスラム、この星に着陸して詳しい調査をしたい。ここまで来て簡単な調査だけで帰りたくない」
地球への着陸を進言したのはエトロだった。
エトロは地球人がどのような生活環境、言語、人種なのか深い調査を行う決心を決めていた。7年もの歳月をかけ、デル星とそっくりな惑星が宇宙に存在し、デル星人とそっくりな人類が生活している事が判ったのだから無理もない。
「気持ちは良くわかる。しかし、それは危険だ。凶暴な人類かもしれないし恐竜のような恐ろしい動物が住んでいるかもしれない」
ニスラムは他の星への着陸の危険を身をもって経験していた。
エトロの進言にニスラムも同じ気持ちではあったのだが、どのような危険が考えられるかが確実に把握できない状況から着陸は避けるべきだと考えていた。また、ニスラムは宇宙開発局が「地球着陸」に関して許可を出すとは思えなかった。この僅かな情報だけで危険なミッションを過去にも許可したことがなかったからだ。
◇
それでもニスラムはこのミッションの最終段階として地球への着陸の許可を宇宙開発局に打診した。宇宙開発局のライル局長は過去の苦い経験を思い出していた。
―――クラウド・・・
5年前の特別ミッションに参加していたライルは、デル星から約1500万光年離れたアンタイル銀河系の惑星に生命体確認のために同僚のクラウドと共に暗黒の宇宙へ向かったのだった。
そのミッションにおいて、宇宙船から小型離着陸船に移って着陸態勢に入ったサムは惑星の水素ガスが着陸船のエンジンに引火し爆発を起こして殉職したのである。
「再びここで優秀なメンバーを失うわけにはいかない。しかし・・・」
ライルはこれまでの調査結果とジオ号からの地球に関するデータの分析結果を国家統括委員会に伝送し国家の判断を仰いだ。ニスラム隊長からの着陸調査敢行は危険を伴う事も明確に記載した資料であった。そして判断は急を要することも。
約1時間後、国家からの回答がライルに届いた。国家元首サムダンの判断で、『着陸調査を実施せよ』とのことであった。その理由は、デル星の人口増加の問題の解決はもはや猶予がなくなってきている事と同様のミッションを行っている他の4チームからの報告に芳しいものがなく悲観した見方が国家に広まりつつあったからだ。
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