光星の輝き ー地球とそっくりな星から来た人類?-

ジャッキーとしお

プロローグ

西暦2060年4月10日。太陽から2300万光年ほど離れた銀河系の遥か遠くにある恒星「HD180100」 は太陽と同じように高い光球面温度を放つ「ソーラーアナログ恒星」である。

 この恒星を周回する惑星「デル星」は誕生以降、地球とほぼ同じ進化を辿り、現在の地球よりも約150年先行した文明を持っていた。デルカエサ星は地球と同様に酸素、窒素、二酸化炭素を含む大気で覆われ、植物、動物、微生物などが生息する。直径は7,650kmで地球の約1.2倍ほどである。その面積の7割は塩分を含む海水で覆われている。

重力は地球の1.12倍 、酸素濃度は高度によって異なるものの地球とほぼ同等である。この惑星にはいわゆる「人類」が約350億人住んでいる。地球の人口はアメリカ合衆国統計局によると100億人を突破したと言うから現在の地球の約3.5倍にあたる。

 デル星人は勤勉で温厚な性格から国家同士の争いは無く災害も少ない。一定の季節風により星のほとんどの地域が温暖な気候に恵まれているのである。しかしこれらの好環境もあって人口の増加はあまりに急激で食糧事情も悪化しつつあり、人口削減計画も思うように進んでいなかった。

 地球では1969年にアポロ11号によって月面着陸が成功し、2055年には一般人の月面旅行や火星への長期滞在も行われた。地球人による宇宙開発は目覚しいものがあるがデル星人は小型のロケット衛星により太陽に似た恒星「HD180100」を周回するデル星と同じ惑星間の飛行はもちろん、一年間で350万光年も進むことができる宇宙船を開発して別の銀河を探索するなど圧倒的な宇宙開発技術を有していた。

 デル星の最大国家「ユニサッド・サム」の元首『サムダン』は、デル星の人口増加に歯止めがかからず食糧危機を危惧し、50年後までにデル星人が移住することができるデル星に近い惑星を見つけるべく調査を行っていた。調査にあたっている5つの調査隊のうち、過去アンドロメダ銀河の調査などの実績を持つ宇宙開発局ベテラン飛行士のニスラム隊長率いる「第1チーム」は銀河系探査の任務を受け、飛行エンジニアの「エトロ」と女性飛行エンジニアの「サンドラ」と共にデル星人が誰も見たことがない「銀河系」に向かっていた。

エトロは10歳の頃にはすでに大学生並み学力を持つ天才として知られ、12歳になると宇宙開発局直轄のエンジニア研修センターで一般教養から宇宙開発技術や宇宙船操縦技術に至るまでのあらゆる教育を受け、5年後には17歳にして年上の研修員を抑えて主席で卒業した経歴を持っていた。卒業後は宇宙開発局で飛行エンジニアとして訓練を重ね、これまで、恒星「 HD180100」を周回する惑星への居住調査や宇宙ステーション建設計画に参画してきた。今回のミッションはエトロの目覚しい活躍ぶりに目を付けたニスラム隊長が指名して第1チームに迎え入れたのであった。エトロは非常に明るい性格で強靭な身体を持ち知性的であるため、多くの女性が彼に注目していた。もう一人の飛行エンジニアであるサンドラは、やはり宇宙開発局研修センターをエトロよりも3年早く主席卒業した優秀な女性エンジニアである。サンドラの夫は12歳年上で宇宙開発局の副参事という要職に就く「ラマダ」である。サンドラは長くアンドロメダ銀河やアンタイル銀河の調査隊に所属し多くの飛行経験をもつベテランで特に解析技術は開発局のエンジニアの中でも特に優秀であった。

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