2 管理しない管理人

「うぅ……リピカ、さま。そんな、エプロン……馬鹿な、多夫一妻制? こ、この国は、どうなってるんだッ!」

「キミの頭がどうなってるんだ」

 強烈な足蹴をまた腹部に貰って、シャロウは強制的に覚醒させられた。

 短く切り揃えているとはいえ、寝癖が付くとなかなか直ってくれないぼさぼさの黒髪を掻き毟り、ベッドの横に立つ少女の姿を見つけては、目をひん剥いて彼女の肩に掴み掛かる。

「リピカ様、考え直してください! 男が何人いたところで、子を産む女性がひとりでは理に適うはずもないんですッ!」

「……別にどっちでもいいんじゃないの。キミに生殖機能を付けた覚えないし。つーか、いい加減、目を覚ませ」

「ハッ……あれ、ここは、俺の、部屋?」

 ようやく我に返って、シャロウは自分の両手がリピカの肩に添えられているこの現状に気付いた。リピカは何というか怒りすら通り越して、ただただ呆れているだけの様子。

 窓から差し込んでくる光は、間違いなく朝日。体全体に気だるさは残っていたが、昨日ほどではない。

「前に行った世界で一夫多妻制が認められていたからって、どうかと思うけれどね。そんな夢」

「すみません。いえ、夢にまで責任持てませんけれど」

 ぺしっと、シャロウの両手を振り払うリピカは呆れ口調で呟いたので、思ったことを素直に返すと、リピカの平手打ちが飛ぶ寸前だった、もう一度、謝る。

「昨日、キミとアレンの馬鹿が意気投合して店を出て行った後、程なくして、あの無愛想なオッサンに運び込まれてきたんだけど」

 無愛想なオッサンとは、言うまでもなくガイダットのことだろう。

 違和感。

「え、俺だけ……ですか?」

「そう、キミだけ」

「アレンは?」

「知らないわよ」

「パウリナは?」

「知らないってば。それより、何があったの」

「それが、店を出てすぐ、ガイダットに出くわして――」

 思い出すために、所々頭が痛んだが、なんとか自分の中で話を繋げてから、リピカに報告する。そうだ、第七区画まで行こうとして、正面から帰宅途中だというガイダットがやってきて、二、三の問答の後、叩き伏せられて。

「くっそ。普段なら絶対にあんな無様な負け方しないのに……」

 酒のせいとは、全うな理由にもならないが。

「ああ、やっぱり効いてた?」

 けろりと、リピカが言い放つ。

「何がですか」

「まだ海賊退治がどうの言ってたから、キミたちに出すお酒に細工しておいたんだよね。いい気分で酔い潰れることができるように」

「ちょっと……」

「付き合え付き合えしつこい客に、たまに使うテなんだけどね?」

 悪びれなく、リピカ。

 それで、アレンもあの様だったということか。深く考えると、頭痛が戻ってきそうだったので、それに関しては無視することに決め込んだ。

「それにしても。台無しにされては、困る……って」

 間際、そんなことを口走っていた気がする。

 それが意味するところは――想像難くないのだが。

「なるほど。それに、白鞘か。確かに白鞘なんて珍しいものではないけれど、そんな台詞の後じゃあ……そうね。あのオッサン、何かしら噛んでいるのかもね。それが一枚なのか、二枚なのか、もっとなのかは知らないけれど」

「ガイダットが、海賊の手引きをしてる、とでも?」

「十分考えられそうなことだよ」

「そんな馬鹿な」

 確かに堅物で、いけ好かない奴ではあるが、自分には厳しい規律を持っている男だ。それが海賊の手引きなど、裏でこそこそとやっているなどとは考え難いし、ましてや、考えたくもない。

「ま、城壁も何もないこの街が二十年もの間、他国の侵略を退けていたこと自体、奇跡のようなものだったんだし。よく頑張りましたという及第点でいいじゃない」

 まるで、そろそろ滅んでも。と続けたそうだ。

「二十年? リタルダント・テレスの歴史は、もっともっと長いでしょう」

「ええ、そうよ。あたしが言ったのは、魔法という力が滅んでから、ね。冷静に考えてみてよ。ぽつんと海のど真ん中に佇むだけの国がどうやって他国の侵略からその身を守れたの?」

「ん、そういわれれば……」

「答えは簡単だよ。海水が魔法の媒介として最適なの。誰かが攻めてきたら魔法で人為的に津波を起こして追い払っちゃえばいいんだもの。簡単でしょ。城壁ある方がかえって邪魔」

 そう思うと、魔法が滅んでからこっち二十年間、この国を守り続けてきた騎士団の努力は賞賛に値するけれど。と前置きをして続ける。

「決まりかしらね。リタルダント・テレスは騎士団の手引きにより、海賊の手で滅ぼされてしまう、と。思ったよりつまらない結果。帰る準備でも始めようかな」

 リピカは背伸びしながら部屋を出て行った。

「決め付けは、よくありま……よくないぞ!」

 今更、敬語禁止を思い出した。



 リタルダント・テレスはこの世界の西端の海に浮かぶ比較的小さな王国である。

 王族が住まう白亜の尖塔がいくつも立ち並ぶ宮殿を中心にして、東西南北に島が伸びている。島といってもそれがれっきとした陸地ではなく、人工的に作られた桟橋が補修、拡張の工事を繰り返した末にここまで大きくなっていった。本当の陸地と呼べる部分は宮殿が建つ周り一帯だけであり、リタルダント・テレスの住人の中には、土というものに触れないまま生涯を閉じる者も少なくない。

 東西南北に分かれた島々は更に細かい区画に分けられており、完成した順に番号が振られ、区画の数字が大きいほど、外に広がっていくのが通例だ。昔は魔法であっさりと拡張されていたものらしいが、最近はそうもいかないので、それを目当てに工事を請け負う業者が次々と現れてきているらしい。

「いい天気だな」

 もうすぐこの街が滅ぶだなんて嘘みたいだ。

 誰に言ったところで信じてもらえるわけがない。それに人が信じる信じないの問題でもない。

 シャロウが下宿するフラムベルは、東の第五区画にある。宮殿からはやや遠いところにある。宮殿近くの傭兵詰め所に出頭しようとすると、小一時間は歩かねばならない。

 リピカは自分の部屋で寝入ってしまったので――昨晩は運び込まれた後、一晩中様子を見てくれていたらしい。可愛いところもあるものだ――適当に朝食を済ませ、シャロウは街へと出た。

 まずは、アレンとパウリナを探すべきだろう。アレンに関しては、奴も同じくフラムベルで下宿する身だが、昨日部屋に戻った様子はなかった。今日は非番のシャロウとは違って、奴は出勤日だから朝まで道端で居眠りした後、そのまま詰め所に出勤した……とは、都合よく考えすぎか。そうだと願いたいのだが。

 想定される最悪のケースは、ガイダットが海賊の一味であり、第七区画の秘密のアジトの情報を仕入れたアレンを拉致して、その情報源もろとも始末されて――

「うおおぉぉ、待て待て待つんだ俺! それは悪く考えすぎだろッ!」

 それはない。ないとは言い切れないが、限りなく可能性は薄い。もし本当にガイダットがそうであったなら、自分だけを見逃す理由がないからだ。ましてや、堂々とリピカや他の客に姿を見られるようなことまでしないだろう。普通。

 パウリナについては、手掛かり皆無といっていい。用があれば向こうから会いに来る奴だ。この街のどこに住んでいるのかさえ、そういえば聞いたことがなかった。

「くそ、困ったな…」

 と。

 周りの子連れ主婦が奇異の目を向けながら、子供には見せないように徐々に遠ざかっていく様子に気付き、シャロウはわざとらしく咳払いをする。

「どうなってやがる」

 ふたりのことはさておいても、時間がないのも確か。海賊の秘密アジトとやらを探すのが先決か。アレンは、ともすれば自分よりも強い、相当の実力者である。練習で打ち合いを行えば、決着が付かずふたりで地面に這い蹲るのが常である。簡単にやられたりはしないだろう。

「いや、どうかな……あの様子じゃな」

 もし、最悪の想定に近いものがあったとすれば、アレンが担ぎ込まれるのは、海賊に所縁のある場所だという可能性が高い。何事もなく詰め所に出勤していれば、それはそれで結果オーライだろう。

「よし、第七区画の倉庫街だ!」

 愛用の剣よし、ブレストアーマーの装着もよし。確認した上で、シャロウは急ぎ足で東の東――第七区画へと向かう。

 繰り返すが、今日は快晴である。天空に広がる蒼い空は雲ひとつ見当たらないし、その境界を曖昧にさせた美しい海にも時折押し寄せる和やかな小波しか見当たらないし、街を見渡せば、多くの子連れが散歩をしているし、街灯付近には、海鳥が固まって誰かが投げた餌をついばんでいる。

(平和そのものだ)

 空と海に包まれた蒼い大空間。海に映る空と、空に映る海。

 ここは、今までシャロウとリピカが見てきたどんな街よりも美しい。

 だから、というわけではないが、シャロウはこの街を滅亡から守りたいと思った。アカシック・クロニクルの記述によって、未来が見通せる自分たちは――正確には、見通したリピカの言葉をシャロウが聞くわけだが――人々を滅びの未来から救うことも出来る。栄枯盛衰は人の世の常なのかもしれないが、それでも救える未来は拾い上げてあげたいと思うのだ。単純に。

 当然、今までにも力及ばず滅んでしまった世界はある。完全なる滅亡から、ちょっとだけマシな未来に変えられただけの世界もある。だけど、リピカはもうアカシック・クロニクルの記述以上のことを望んではいないようだった。

「これは……傲慢なのか?」

 いつの間にか、第六区画の港公園に入り、いつの間にか、口に出して呟いていたシャロウ。

 すると、海側に向けられたベンチから、ぶふっという吹き出しが聞こえ、続けて、癪に障る大笑いが聞こえてきた。

「あははははッ! ご、傲慢だと……!」

 ベンチに腰掛けていたのは、壮年の男性だった。後ろ姿では、アッシュブロンドの髪が肩口まで伸びていることしか確認できない。いずれにしろ、知らない男であるのは明白だった。がたがたとベンチを揺らし、手で膝をばしばしと叩いている。

「そんなにウケを狙ったつもりはないですけれどね。俺は」

 必要以上に声音を下げて、不機嫌さをぶつけると、男はまだ肩を揺らしながらベンチの背もたれ越しに、つまり、大きく首を逸らして逆さまに振り返ってきた。

「いや、すまないな。悩める青年よ」

 よっ、と、勢いよくベンチから立ち上がった男は、目尻に涙を浮かべながらずかずかと歩み寄ってきた。

「俺は傲慢だと思うこと自体が傲慢だと思うがね……何の悩みだか知らないが」

「それはどうもご忠告ありがとうございます」

 さっきも見たが、アッシュブロンドの少し長めの髪である。額に赤いバンダナを巻いた無精髭の男だ。壮年と表現したが、年の頃は三十代後半から、四十代前半ぐらいだろう。街の住人に違和感なく溶け込むフォーマルな普段着で、腰に下げている白鞘の曲刀だけが気になった。

「はっはっはっ、これは嫌われたようだな。俺は、ヒルベルト。悩める青年の名はなんと言う? おわびに、昼食でもご馳走しようじゃないか」

 それが、謝罪の印だったのだろう。右手をすっと差し出してくる男――ヒルベルト。

 しかし、シャロウは見逃さなかった。ヒルベルトの右手の甲に描かれた黒い刺青。自らの尻尾を喰らう蛇、ウロボロスの印を。

「き、さま……海賊、かッ!」

「ん、ああ……」

 あまりに突然のことで若干混乱してしまったが、間違いはなかった。

 その途端に、ヒルベルトの和やかな雰囲気がなりを潜め、絡みつくような殺気がシャロウの身に降りかかる。

「知っているのか……どこで、それを」

「どこだっていいだろう! くそ、ガイダットが手引きしたのは……本当なの、か?」

「んん、ガイダットぉ? 青年、あの堅物の知り合いか」

「――ッ!」

 決定的といえた。反射的に剣を抜こうとするが、伸びてきたヒルベルトの手の平によって柄を押さえられてしまう。

「止めておいた方がいいな。お前はどのつもりか知らないが、この麗らかな午前の公園を血の海に変えることもないだろう」

 はっとなって、剣から手を放し辺りを見渡した。

 そうだ、ここはただの公園だ。遊具で遊んでいる子供も、それを見守る親も、日向ぼっこで余生を楽しむ老人の姿も少なくない。

「ったく……珍しく早起きしたのに、ろくなことになんねぇナァ。誰だ、三文の徳とか言った奴は」

 心底、面倒くさそうに、ヒルベルト。

「いいぜ、この場はお互い引こうや。今夜零時、ここで待っているからよ。おおっと、尾行もなしだぜ?」

「ふざけるな、誰が海賊の言うことなんか!」

「だから言ってるだろ。お前は今、ここで、血の海に変えたいのか、って」

 こちらから視線を外さず、後ろ向きに一歩、二歩とヒルベルトが離れていく。

「……ひとつだけ聞かせろ。アレンという剣士を知っているか」

「アレン? さぁ、仲間にそんな奴はいなかったと記憶しているが」

 そうやって、奴はこの場から逃げ去っていった。



 ヒルベルトを見逃した後、第七区画へ向かってみたが、やはりアジトらしいものは見つからず。念のため、宮殿の詰め所に寄ってみたが、今日はアレンは欠勤だったようだ。本当に行方不明である。あの海賊の言葉を信じるのならば、であるが。その後は、フラムベルの自室で夜までなるべく心静かに待ってみた。

「――それ、来ないんじゃない?」

 夕食後、リピカの部屋を訪れて公園での出来事を掻い摘んで説明すると、彼女が最初に言った言葉がそれだった。

「や、やっぱり、そうかな……?」

「海賊の言葉を真に受けて、追っかけないなんてちょっと意外」

 ま、あたしはどちらでもいいけれどね。と付け加える彼女。

「だって、公園には人がたくさんいたんだぞ」

「まぁ、ね――でもさ、結局この国は滅ぼされてしまうのよ。海賊なんだもの、そんな約束なんか反故して今頃、宮殿に攻め入る算段でも立ててるんじゃない? それだったら多少犠牲が出たかもしれないけれど、その場でケリつけるか、尾行するかの方がキミが言うようにリタルダント・テレスの滅亡からは救えたかもしれないのに。救われても困るけど」

 リピカはあくまで冷めた風に、客観的に事実をつらつらと述べる。シャロウにはそれが我慢ならなかった。

「なんで――」

「ん?」

「なんで、リピカは――リピカ様はそうやって、すぐに諦めてしまうようになったんですか」

「は?」

 口を結ぶ。

 考えたのは、言葉にすればただでは済まないのだろうなということ。そして、そろそろ避けて通ることは止めようということ。

「今、まさにこの国が滅びようとしているのですよ。なんとも思わないのですかッ!」

「あのね、シャロウ――」

 主に反抗したのは、おそらく初めてであり、こんな時にどんな顔をすればいいのかも分からないが、多分、リピカを不愉快にさせるのには十分だっただろう。彼女は目を閉じて、銀色の髪を手櫛で撫で付ける。

「どーだっていいでしょ、そんなこと」

 再び開かれた彼女の瞳は――半眼だったこともあるが、もはや年相応のものではない。暗く、僅かな光さえ宿らない――

「キミね。仮にリタルダント・テレスを滅びから救ったとしましょうよ。今から頑張って海賊を退治すれば、それは可能かもしれないね。それで。それから?」

 リピカはリピカで何かを押し殺している様子だ。

 シャロウはまだ口を挟むべきではないと判断し、彼女の言葉の続きを待つ。

「リタルダント・テレスが滅びから回避したとなったら、今度はリタルダント・テレスが侵略者に変わる可能性だってあるのよ。新たに築かれた未来の上で、リタルダント・テレスに滅ぼされようとする世界をも救うの? キミは」

「救います」

「そうよ。当然、未来は変わる。またアカシック・クロニクルの改変が始まるわ。あの膨大なライブラリの中、細大漏らさず、書き換わった部分を全て抽出して、把握しろというの? あたしに」

「それが貴女の母親から託された、貴女の使命ならば」

「あの無愛想な銀筒の中に独り、世界の事実に身体を押し潰されて、様々な感情に心を冒されて、あたし個人が擦り切れるまで頑張れって、そう言うのね? キミはッ!」

「俺がいるでしょう! 独りじゃないッ!」

 それは、売り言葉に買い言葉の中で、自然と転がり出た言葉ではあったが――

 次の瞬間、リピカの口の中でぶちりという、比喩にもならないむず痒い音が聞こえた。唇を、噛み切ったのか。

「たかが人形風情が、このあたしの何の慰めになるっていうのよ――ッ!」

 そこで両者共に打ち止めになり、たったこれだけでふたりとも肩で呼吸をするほどに疲弊している。シャロウにこれ以上、言葉を重ねることが出来なかった。言ってはならぬ最後の言葉を言ってしまったためか、リピカも後を続けようとはしなかった。

 それでも、多大な労力を用いてでも、歩み寄りの道をふたりで探せば、結果はまた違ったものになったのだろうが。

「もういい。ここまで飼い犬に噛み付かれたのは初めてだわ……!」

 それより先に、リピカはまた諦めた。

「使い魔は与えられた命令に絶対服従、受諾するのみ――それを反故するなら、どうなるか。分かっているのでしょうね?」

「それはクビってことですか」

「そうよ、文字通りね」

 こんな時になんだが、リピカの肌は白い。顔立ちは幼くて、目元も穏やかで、程よい形をした鼻に、引き締まった愛らしい唇。全てがバランスよく整えられた、いわば絶世の美少女。彼女の成長も寿命も、自分とは、そして人間とも違うものだが、彼女はきっと誰からも愛されるような美人になるはずだったのに。

(なるはずだったのにな……)

 シャロウの知らない間に、心がどす黒く濁り始めていた。気づかなかった自分が悪いのか。

 気付いても、押し留めることができないものだったのか。

「……分かりました。お好きにどうぞ」

 それでも、そう言った時には、リピカの顔が跳ね上がった。

 それが、シャロウと仲直りしようとした、ねじくれた最後の手段だったのだろう。そして、黒い部分が染み入るように増幅を始める。

「と、そうだ。これ、持って来ました。俺の部屋に置きっぱなしだった物」

 シャロウが取り出したのは、リピカがエリクス少年から貰った貝殻を収めた菓子箱。もう前髪の中に瞳を隠し、何を考えているか窺い知れない彼女の右手を取って、その箱を乗せる。

「せめて、それくらいは大切にしてあげてください。あの少年は心からリピカ様を好いて、そこまで集めてくれたのでしょう」

 あとは、リピカの横をすり抜けて部屋の出口へ向かう。

 彼女の背中に一礼をして、静かに扉を閉め去った。

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