親指、人差し指、中指、薬指。指折り、指を数える儀式は、この身と主を愛おしく想わせる。彼の人がくれた体躯は未完成と言われている。僕はそうは思わない。未完成と言ったって、右の小指が足りない、たったそれだけだ。彼は、僕のどんな小さな破片にだって全身全霊の愛を注いでくれたけれど、僕にとっては足りない小指に遺された最期がなによりも愛おしい。付け根に結んだ千切れた赤い糸は永遠の証で、彼はそこにこそ、魂を置いていってくれたのだから。

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