空躯
言端
望まざる生誕
私は今日生まれた、ようだ。潜水していた長い夢から浮上する間に、泡の昇降音や水の中なのに鋭く駆け抜けてゆく稲妻、人らの沸き上がる声や落胆の溜息、ひとつ響いた大きな鼓動といったものが私を取り巻いていたような記憶があるが、それもまた夢であったかもしれない。それでも、目を覚まし、起き上がり、自然と見下ろした躯は半透明の液体に漬かっていたから、やはり何処までが夢だったのか判らなくなった。顔のない男、 私を取り囲んでいた人らは皆無個性な造形に見えたから便宜上顔なしとする、がよく知った声で私をおそらくは祝福した。
「おめでとう!君の誕生日に、幸あれ!」
直感あるいは本能が、世界の綴じる音を聴いて絶望した。
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