第3話 移住

彼らは新しい移住地を求め、広い宇宙をさまよっていた。

「隊長、見つけました。水と緑が豊富な星です。」

 乗組員の報告を受け、隊長と呼ばれた男は着陸の指示を出した。宇宙船に取り付けられた機械で調べると大気の成分に異常はなかった。彼らは宇宙船の外に出て新しい移住地にふさわしいか調査を行うことにした。隊長の男は乗組員たちに指示を出した。

「どんな危険があるかわからない。皆注意して調査を行うように。」

 数時間後乗組員たちが帰ってきて次々に報告した。

「この星には我々が住んでいた星よりも多くの食料が存在します。この星に移住すれば食料問題は解決します。」

「この星には広大な居住可能地があり、我々の星の住民全てを移住させても余るほどです。」

 そのほかの報告も彼らにとって良い報告ばかりで乗組員たちはこの星を発見できたことに歓喜した。しかし最後に帰ってきた乗組員の報告でその場は静まり返った。

「この星には我々よりもはるかに巨大な生物がたくさんいます。我々が束になってかかっても勝ち目はありません。」

 隊長は困惑した。この星は永い旅を続けた彼らにとってやっと見つけた理想の星だったからだ。今更ほかの星を探すことはできなかった。隊長は指示を出した。

「やつらにも弱点があるはずだ。それを探すんだ。」

 乗組員たちは懸命になってやつらの弱点を探した。見つからないように細心の注意を払いながら観察し、分析した。しかしやつらの弱点は見つからなかった。彼らは半ば諦めかけていた。やつらに見つからないようにビクビクと怯えながら生活をするか、この星から撤退するしかないのか…と。

 そんなある時ある乗組員がうっかりやつらに見つかってしまった。やつらに殺されると乗組員は覚悟したが、やつらの反応は意外なものだった。

 奇声をあげながら逃げていくのだ。乗組員には訳がわからなかったが、殺されなかったことに安堵し、報告した。するとほかの乗組員たちは大いに喜び、口々に言い合った。

「なんだ、大きいだけでたいしたことないじゃないか。」

「そういえば動きが鈍くて我々を捕まえられるような能力は無さそうだったな。」

「臆病なやつらだ。」

 この報告を聞き、隊長はこの星へ移住することを決め、故郷の星へ連絡をとった。これで次々にこの星へ彼らの同胞たちがやってくることが決まった。


 カサカサと音を立てる大量のゴキブリたちを乗せた宇宙船が地球へと向かっていた。

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