第23話 邂逅エレクトリカル
第23話
降りしきる雨の中。
雷龍が両翼を大きく羽ばたかせた。
それは体を浮かすための羽ばたきではなく、攻撃のための動作だった。
今や谷となっている天井のない洞窟に叩きつけるような突風が起きた。
風は底に当たって乱反射する。
ウィーゴが盾を持っているのと逆の右手で僕を捕まえる。
しかしチトセには手を貸すことができず、彼女の体は舞い上がった。
「チトセ!」
「アキヒロ!」
僕と彼女の手は宙を掻いた。
強風は崩れた岩とチトセを一緒くたにして吹き飛ばした。
「畜生、アランとエオも飛ばされた!」
風が止んだ後、僕を地面に下ろしながらウィーゴが悪態をつく。
ウィーゴがそれを言い終わるのを待たずに、次の攻撃がきた。
いつの間にか距離を詰めていたドラゴンがゴツゴツした右手でウィーゴを『はたいた』のだ。
ウィーゴはそのとてつもなく重いはずの盾ごと谷底から外へと薙ぎ払われた。
わずかな時間で、3分も待たずに、僕は一人ぼっちになった。
ウィーゴを薙ぎ飛ばした龍が、こちらをギロリと睨む。
こいつは僕が銃弾を放ったとわかっているのだろうか。
グググとの方に頭をもたげて、睨むその姿はまるで「お前か?」と僕を脅しているようだ。
そして僕は一歩も動けない。
突如、思い出したように龍が浮き上がった。
吠えて、頭を振り、長い尻尾を振り回して、地面に叩きつけたり、壁に叩きつけたりしている。
よく見ると、尻尾に何か付いている。
振り回した尻尾をこちらに向かって右回転したとき、それがハズれて、こちらに転がってきた。
…それは、小学生くらいの男の子に見えた。
僕は目をこすったが、その推定12歳はすくっと立ってこちらに文句を言ってきた。
「お前!ドラゴンとの勝負を邪魔しやがって!」
ツンツンに立った短い白髪、濃緑がかった黒目、そして大雨にもかかわらず、服は濡れていない。
身体中に行き渡る小さな電気の龍たちが、すべての雨粒を体に届く前に食っていた。
この子供は……?
そうだ、この前聞いたばかりのあの話……
『雷に打たれた子』……?
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