第18話 この世界の中心へ


第18話 この世界の中心へ


「これから『セントラル』を目指す。」


 僕たちは『雷に打たれた子』に会うために、この世界の中心の町を目指すこととなった。


「会ったら、テレポート装置を、えーと、何だ、『充電』してもらえ。」


 アランはそう言ったが、果たしてうまくいくだろうか。そして、もう一つ気がかりなことがある。


「僕としてはそれは願ってもないことなんだけど、こんなに親切にしてもらって、何か申し訳ないよ。」

「いいんだ。」

「でも…」

「いいんだ。これは単なる慈善活動ってわけじゃない。」

「え?どういうこと?」


 そこで、妹のエオウィンが口を開いた。


「うちのバカ兄貴は、その武器にご執心なのよ。」


 僕は腰につけたセックスピストルズに目を落とした。


「これが?」


 アランがあの炎龍を倒したときと同じように目を輝かせた。


「アキの世界にはその武器がたくさんあるんだろう?」


 今や世界一の銃と言われるそれは、値段がそれなりに張るものの、安定した供給がなされているのは間違いない。


「まぁ、そうだけど。」

「俺のためにそれをもう一つ持って帰ってきてくれないか?」

「や、ちょっとそれは…」


 あの銃は貧乏学生の身としては、高すぎるのだ。

 僕は自分の預金残高を思い浮かべた。


「しかし、君はこのままでは帰れないだろう?」

「う…」

「俺たちの護衛と、案内なしではセントラルにたどり着けない。セントラルまでの間、アキの絶対の安全を約束できるのは俺たちのパーティーだけだと断言しておこう。」


 そして、アランはジャラジャラと音のする袋を取り出し、机の上に置いた。

 ズシンと重みのあるそれの口を広げると、そこには大量の金貨と札があった。


「これは先の炎龍の討伐で得た報酬の1/4だ。つまり、君の取り分。」

「これが、僕の…?」


 確かに嬉しいが、正直僕にはその価値がわからない。


「金(きん)は君の世界でも価値のあるものか?」

「そうだけど…。」

「これでその武器を買ってきてくれ。そして残りは俺たちに支払う護衛料だ。」

「僕は一文無し?」

「まぁ、そうだが、紙幣があっても仕方がないだろう?もちろん、アキが戻ってきたときにはもう一度アキの世界に行けるようにフォローしよう。」


 金貨の下にある大量の紙幣は僕の世界では紙クズ同然のものだろう。

 少し考えたが、僕の選択肢はない。

 果たして、アラン一行以外の実力者が見つかるだろうか?

 果たして、エオウィンと同じような翻訳魔法を持っている者が見つかるだろうか?

 果たして、自分の境遇を理解してくれる者がいるだろうか?


「オーケー、わかった。だけどズルいよ。」


 アラン達にすがるしかない僕にはそもそも選択肢がなかった。


「少し卑怯だったかな?でも、俺ら以上の護衛で、これ以下の金額で引き受けてくれるところはどこにもないよ。」

「アランの言ってることは本当よ。私は搾り取れるまで搾り取った方がいいと思うけどね。例えば、あなたが戻ってきたら一生奴隷にするとか。」


 背筋がゾッとした。


「あはは、冗談よしてくれよ。」

「オレは、面白くて、そんでついでに金が儲けられるならなんでもいいぜ。」


 ウィーゴが豪快に笑いながらそう言った。

 アランが続けてもう一人の同行者に承諾を求める。


「チトセは?」

「…アキがどこにいようと私は守るだけ。」

「と、いうことで…」


 アランが手をパンと叩いた。


「アキとチトセは今から俺たちのお客様だ。戦い方のレッスンは続けるにしても、過剰な指導はしないように!」


 良かった!これで顔の腫れからおさらばできる!

 エオウィンの顔を見ると、満面の笑みで、それが逆に怖い。


「わかったわ、アラン。彼には『必要最低限』の特訓をするわ。」


 ベテランの魔法使いにとって、必要最低限とはどれくらいのことを指すのだろうか…。

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