第16話 雷に打たれた子

第16話 雷に打たれた子


「なおさら、大事に取っておかなくちゃな。」


 残りの銃弾が一発だけという状況でもアランは全く驚かない。


「今までと同じように少しずつ戦い方を身につけてもらうだけだ。」

「うん。」


 それに…

 僕は残り一発の銃弾をリボルバーから大切に取り出してから、銃を”自分の頭に”突きつけた。


「弱点は?」


 解析システムが音声を発する。


「人間です。弱点は頭、もしくは胸。打ち抜けば即死です。銃以外の方法としては、刃物を胸に突き立て心臓か肺を破壊するか、首を掻き切る方法が望ましいです。」


 次には、人、アランの声だ。


「便利だなぁ。」

「ああ、銃弾がなくたってやれることはたくさんあるよ。」

「となると、そいつの動力も心配だなぁ。それも魔力じゃなくて電気かい?」

「うん。だけど心配はいらないよ。」

「なんでだ?ご覧の通り、この世界には電源はないぞ。」

「なんか、自分で発電しているらしい。」


 そこで突然、老婆ユパが声を張り上げた。


「それ故か!全く忌々しい!それは周りのエネルギーを吸い取っておる。それを見ていると私も吸い取られそうで本当に嫌な気分だよ。」

「まぁまぁばあちゃん、こんな面白そうなもの、放っておくのはもったいないよ。」


 アランの好奇心は止まらないようだ。

 朝起きたら銃がバラバラに分解されていた、なんてことがあってもおかしくないな…


「そうだ!銃で生まれたエネルギーをテレポート装置に移せばいいじゃないか!」

「ああ、確かに!あっ、でも。」

「でも…?」

「1.21ジゴワットなんてのが出るのかなぁ。」

「ずっと貯めておけばいいんじゃないか?」

「この銃の大きさじゃ、無理かも。」

「そういうもんなのか?」

「たぶん。…チトセ!」


  エオウィンの膝の上に座っていたチトセがこちらを向く。

(この部屋には人数分の椅子はなかった)


「なに?」

「1.21ジゴワットってどんくらいだっけ?」

「原子力発電所1基分の電力。雷の電力と同じ。」

「いっ」

「確かに雷はその銃じゃ作れそうにもないな。」


 アランはまだ落ち着いている。


「そこで、改めてここに来た理由に戻る。」


 ああ、そう言えば電気の問題を解決するためにここへ来たんだった。


「ばあちゃん、『雷に打たれた子』は今どこにいる?」

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