第11話 チュートリアル
第11話 チュートリアル
『スライムが現れた!』
そんなテロップが流れてきそうな森の中。
だけど僕の視界にはポップで可愛いモンスターではなく、変幻自在な手数本を伸ばす、透明なドロドロした”何か”が写っていた。
味方には、アラン一行と、チトセである。
「気持ちわるぅ…」
僕は試しに銃口を向けてみる。
『アメーバの仲間です。しかしこれほど大きいのは未だ発見されていません!「世界で最も大きい単細胞」としてギネス記録に登録できるかもしれません。登録しますか?』
ダメで元々だ。
「オーケー。」
『しばらくお待ち下さい……………すみません。インターネットに接続できません。』
やっぱりね。
「新種・ギネス登録機能はオフにして。」
『了解しました。』
目の前にいる単細胞生物は、セックスピストルズの言うとおり世界最大の単細胞であるところのダチョウの卵より一回り大きい。
アランが説明をする。
「確かに単細胞で大きいが、世界最大ではないな。ドラゴンの卵の方がずっと大きい。」
そうだな。アイツらの卵の方がデカそうだ。
「ほら、これが君の剣だ。」
僕は銃を腰のポーチにしまい、アランから剣を受け取った。
この剣はアランの持っている剣の、二分の一くらいの長さしかない。
40cmの鉄の短剣だ。
「最初から大きな剣は扱えないだろう。」
「うん。こっちの方が使いやすそうだ。」
僕はそれを右手に持って、銀色に光りを反射する剣をまじまじと眺めた。
「アキ、ものは試しだ。あのスライムを倒してみろ。」
「ええ…ちょっと待って。さっきより大きくなってない?」
「威嚇行動だな。相手に自分をより大きく見せている。大丈夫、体を薄く伸ばしているだけさ。」
透明なうねうねが気持ち悪いんですけど。
「これで、倒せるの?」
どう考えても、液体に剣が効くイメージが湧かない。
僕は心配で、アランを見る。
「倒せるよ。」
ふう、深呼吸だ…。
僕は意を決して、もはや透明な壁のようになっているそれを切りつけた。
ズバッと透明な壁が崩れ、そして足からまとわりついてきた。
「うわっ。えっ。」
スライムは、まとわりついたまま上に登ってくる。
「ちょっ。」
剣を持ってない方の手で必死にそれを払おうとしたけど、手の隙間を液体が通り抜けて全く手応えがない。
「うっ!ゴボッ…ぶくぶくぶくぶく…。」
やばい。頭まで登ってきた。僕の顔全体に張り付いている!
僕はパニックになりながらも息を止めて、アランに助けを求める。
「ん〜!ん〜!」
アランはやれやれというように、妹に指示を出した。
エオウィンが杖を構えると、その先から白い霧のようなものが出て、僕の頭とスライムに当たった。いや、そんな気がした。
だってスライムで視界がホワホワしてるんだもの。
するとスライムがみるみるうちに固まって、その体から冷気を発し始めた。
凍らせたのか。
でも…
痛たたたたたたたたたた!!!!やめて!!!顔の皮が剥がれる!!!
氷が顔全体に引っ付いて顔の皮ごと剥がれそうになっている。
「あら、ごめんなさい。」
エオウィンがまた杖を振ると、スライムの表面だけが滑らかになり、もはやただのボールとなったそれは顔からぼとりと落ちた。
「ゴメンナサイ、ワザトジャナイノ。」
金髪の天使は、ウインクをして舌を出して自分の頭をコツンと叩いた。
あざと白々しい!!!
それは100%わざとだった。でも僕はこう言うしかない。
「ありがとうございました。」
そして、アランから忠告される。
「アキ、表面だけ水にするような繊細な魔法が使えるのはエオだけだ。他の奴にはあんまり助けを期待しないほうがいいよ。」
褒められたエオは嬉しそうに、恥ずかしようにうつむいた。
つーか全然ダメだったよ!結局凍らせて固体にしたじゃないか!
「アラン!剣で倒すの無理じゃないか!」
「いやいや、できるよ。見てて…。エオ、魔法を解除だ。」
「わかった。」
しばらくすると、スライムの氷が溶けて、また動き始めた。
アランは僕の短剣を代わりに持つと、短剣でスライムに突きをした。
すると、スライムはその形を崩し、ほとんどは水になった。
地面には、水と、クラゲのようなものが数個、そして、剣の先にはそれの、クラゲのようなものの一際大きいやつがぶら下がっている。
「これが、スライムの弱点、細胞核だ。次はこれの見つけ方を教える。」
はい先生、
お願いします。
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