第6話 銀髪の少女
第6話 銀髪の少女
僕の肩を掴んでいた男が吹っ飛んだ衝撃で、僕も尻もちをついていた。
何が起こったのかわからない客たちは、シンと静まり返ったままだ。
ただ一人、目を輝かせている奴がいる。アランだ。
銃を見たときと同じ表情をしている。
男を2m吹っ飛ばした銀髪の少女は、トコトコとこちらに歩いてきて、こう言った。
その気遣いの台詞とは裏腹に、声には感情がなく、淡々としている。
「大丈夫?アキヒロ。」
僕の名前を知っている。
「なんで僕の名前を…?」
「アキヒロを守るのが私の役目だから。」
ようやく「少女が男を吹っ飛ばした」ことを理解したお客たちが歓声をあげる。
「お嬢ちゃん!すげぇな!」
「今日の真の主役が来た!!」
「君、うちのパーティに来ない?」
最後の男はアランである。
中学生くらいであろうか。銀髪の少女は男たちに囲まれてオドオドした様子だ。
そして、はっと気づいたように僕の服の襟首の後ろを掴み、バックステップで距離を取った。
僕もグンと引きずられる。
グェ。喉がすごく苦しいんですが。
そのまま彼女の後ろへと引きずられた。
それからすぐさま彼女は両拳を上げ、構えをとった。
「近づかないで。間合いに入ったらただじゃ済まない。」
と、男たちに忠告をする。
「おっとお嬢ちゃん、どうどうどうどう。」
アランが両手を胸の前にあげ、馬の興奮を鎮めるときのような動作をしているが、たぶんそれは逆効果だ。
敵意をむき出しにした琥珀色の目に、男たちはたじろぐ。
僕はこの状況をおさめようと、彼女に話しかける。
「こ、この人たちは悪い人たちじゃないよ。」
銀髪の少女が、僕とアランたちを交互に見比べる。
「そう…。」
彼女は構えを解いて、両腕を下げた。
ほっと一息ついたのもつかの間、店の入り口が激しい音を立てて開いた。
「アラン!あの子がいないの!」
急いで走ってきた様子の彼女はあの金髪の天使、エオウィンだった。
アランは苦笑いしながら、人差し指でちょんちょんと僕らの方を指差した。
「あ!いた!良かった…って変態!その子から離れなさい!」
語気を荒げる金髪の彼女を見て、銀髪の女の子の琥珀色の目がキッと鋭くなる。
僕は慌ててもう一言付け加える。
「大丈夫。金髪の女の人も悪い人じゃないよ。」
「わかった。」
やや警戒心を解いた目が、大声で騒ぐエオウィンを追う。
「あんたたち何なのよこれ!またケンカしたの!?」
そして彼女は床の上でノビている男を指差した。
「いや、その子がやったんだ…」
アランが事実を端的に伝えたが、
「何バカなこと言ってるの?言い訳にしてももうちょっとマシな嘘をつきなさい!」
「え、なんかごめん…」
兄の威厳どこいった。
妹の方はそのままトコトコと僕らの元に歩いてくる。
距離をグイグイと詰められた銀髪の少女の目に、再び警戒心が宿る。
またマズいことになるかと僕は思って、口を開いた。
「ちょっと待…」
その瞬間、エオウィンは銀髪の女の子を抱きしめた。
僕もびっくりしたが、抱きしめられた側の本人はもっと驚いた様子で、目を見開いている。
「良かった…!すごく…すごく心配したんだから…」
右手を粒子振りまく頭に回して、優しく抱きしめ続ける。
銀髪の少女は金髪の女性の左肩からしばらく目を見開いて顔を出していたけれど、
いつの間にかその瞼を閉じていた。
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