第5話
「ここがポートデバル国かー!」
ゼンは歓声をあげる。
大陸より船で一日と少し、ゼンたちはポートデバル国へ到着した。
ここは国一番の港町。大小様々の船が浮かび、人々や木箱を下ろし、または積み込んで出港している。荷物の積み下ろしする屈強な男達の声や、エーテル機構船の煙突から吹き出る煙の音でうるさい。
「まさかこんなに早く到着できるなんて。チャンブレさん、ありがとうございました」
「いえいえ。大したことはないですから」
ゼンたちが乗ってきた船は、豪華エーテル機構船だった。普及しているとはいえ、これほどの大型エーテル機構船は世界にそれほど多くは無い。庶民が乗れるような金額でも無い。ゼンがこれに乗れたのはチャンブレの好意だった。
「恩人であるゼン様を三等客室なんかに乗せられませんから。どうやら荷物が積み終わったようです」
「着いたばかりだよ。もうちょっとこのあたりを見たいなあ」
「ドノヴァー様。この港から学園都市までは、まだ距離があるのです。なるべく早めに行った方が良いでしょう」
ドノヴァーは恨めしそうに顔をしかめる。出身地であるソイエ国は内陸部にあり海が無いので珍しいのだろう。船に乗る前に海を見た瞬間はひどいはしゃぎ様だったことをゼンは思い出す。
「僕も海はこれまで見たことなかったから気になるよ。でもこれからここで生活するんだから、いくらでも見る機会は作れるからさ」
ドノヴァーはしぶしぶながらゼンに手を引かれ、馬車の方へと向かう。その姿を見てチャンブレは苦笑する。
「やれやれ。ドノヴァー様はまだまだ子供ですなあ」
馬車は港町を出てエキュペンド学園がある学園都市を目指す。道は広く、煉瓦で舗装されていて振動は少ない。時刻はちょうど正午。到着するのは二時ごろになるはずだ。護衛の傭兵達はいない。大陸で安全な地域まで来たところで契約を終了したのだ。
馬車の中で三人は食事をする。大きめのパンに切れ込みを入れ、タレで焼いた肉と野菜をはさんだサンドイッチだ。これは港町の屋台で買った。焼きたてだった肉はまだ温かい。
「あっ!」
ゼンは馬車の窓から外を見る。遠くに白い煙が上がっているのが見えた。
「エーテル機構車だ!」
遠くて小さくしか見えないが、それは確かにエーテル機構車だった。黒く塗られた鉄の車。動力源はエーテルとその力で動く歯車。十台以上の客車と貨物車を引っ張って、パイプから大量の白い煙を吐きながら力強く進む。そのスピードは馬車よりも何倍も速く、あっという間に見えなくなってしまった。
「あれに乗ればもっと海を見れたのに……」
「ですがドノヴァー様。荷物が多いものでして。馬車に積んでいったほうが……」
「馬車なんか売ればよかったじゃない」
エーテル機構車で人も荷物も運べるし、スピードは比べるのも馬鹿らしい。ではなぜそうしなかったかと言うと、料金が問題だった。
荷物は多いといってもたかが知れている。だが大型の馬車とそれを引く馬が問題だ。まず馬車は大きすぎる。これだけでかなりの料金が発生する。さらに馬などの家畜は専用の車両があり、これも高い。しかしドノヴァーの家は大商会である。この程度の金は簡単に払える。だがそこは商会、無駄な出費はなるべくしたくは無いし、するべきでは無い。ただでさえ飛空船が不時着して馬車や護衛の傭兵などで予定外の出費だ。なのでチャンブレは節約のため、港町から学園都市まで馬車で移動することにしたのだ。
「そんな顔しないでよドノヴァー。落ち着いたらさ、いっしょに港町へ行こうよ」
「……うん」
「ゼン様が下宿する場所はどこですかな? そこまで送りましょう」
「そんな。いいですよ」
「とりあえず場所を教えてもらえませんか……おお、ちょうど学園へ向かう途中にありますな。これなら全く問題ありません」
「それに、ボクもゼンの住む場所知りたいな」
出会ってから一月近くゼンとドノヴァーは一緒にいた。人見知りでおとなしいドノヴァーでも、それだけあれば親しい友人と思うようになる。相性が良いのもあるだろうが。
「それじゃあお願いします。そういえば学園へ向かうってことは、寮にドノヴァーは住むの?」
「うん。でも、ゼンはなんで寮に住まないの? ほとんどの人はそうするって聞いたよ」
「それは簡単に言うと、お金が無かったからね」
エキュペント学園には寮がある。ただしそこに住めるのは金を持つ生徒、貴族やドノヴァーのような大富豪の子供達だけなのだ。
全員ではないが、貴族達はいわゆる庶民たちを見下している。なので学園に通う貴族たちと庶民が同じ場所に住むとなると、確実に問題が起こる。それを未然に防ぐために寮は貴族達専用となっているのだ。
「でも学園都市には安い学生用の借家がたくさんあるんだ。僕はそこに住むんだよ」
「ふうん」
数時間後、馬車は学園都市に到着した。
「うわあ!」
道は人でごった返していた。学園都市だけあって若い人が多いようだ。
「あっ、あれは」
街には縦横無尽にレールが敷かれ、小型のエーテル機構車が人々を乗せて走っている。パイプから吹き出る白い煙が、煉瓦造りの建物より高く空へ伸びていく。
ゼンとドノヴァーは馬車の窓へ顔をくっつけて、飽きることなく街を見ていた。
「……ここが、ゼンの家?」
「うん、そうだよ」
その言葉を聞いて、ドノヴァーは呆然とその建物を見る。
それは、とにかくボロかった。二階建て以上は煉瓦造りが基本の中、見た目からして完全な木造なのに二階建て。一つの階に三部屋の全六室。屋根はいまにも崩れそうで、壁やドアは傷と汚れだらけ。周囲を高い建物に囲まれ日当たりは最悪。廃墟一歩手前といった感じだ。
「これ、人が住めるの!?」
「えー、屋根と壁があるし十分じゃない。それに家賃が安いから二部屋借りれたし」
「二部屋って、え? この家全部じゃないの!」
「あはは。さすがに全部は無理だよ」
「ドノヴァー様……最初はお父上に反対しましたが、この留学はたしかに良い経験となるでしょう。まさか、ここまで世間知らずだったとは……」
まだ呆然と口を開けているドノヴァーを、ゼンは首をかしげながら見つめ続けた。
ゼンが荷物を全て部屋に入れ終わると、と言ってもリュックと鞄一つとちょっとした物だけだったが、ドノヴァーたちは学園の寮へと向かった。そのうち寮へ遊びに行くと約束して。自分の家にも来てよと言うと、ドノヴァーは勢いよく首を横に振って辞退したのだが、その理由をゼンは分からなかった。
「ふう。大体こんな感じかな」
生活用品以外のものは別の部屋に放り込み、もう一つの部屋を自分の部屋に模様替えする。といっても軽く掃除をしてベッドに毛布をかけるのと、水道から水が出るのを確認したぐらいだったが。
「うわあ。本当に水が出てる」
ゼンの村は山奥だったため。上下水道が完備されていなかった。しかし冬に積もる雪を保存していたので、水に関して困ることは全く無かった。ゼンは水が出ることに驚いたわけではない。水を出す水道の仕組みに驚いたのだ。
ゼンは水道のダイヤルを回す。キチキチと歯車が動き、その動きが止まると水も止まる。ダイヤルを回して動く歯車の様子を、何度も何度も飽きることなく見続けていた。
「えっ、もうこんな時間。夕ご飯まだ買ってなかった」
ゼンは財布をつかむと慌てて街へ飛び出した。夕暮れで影が長い。
慌てて飛び出したおかげで道を覚えておらず、来たばかりの学園都市で迷子になったゼンが家にたどり着いたのは深夜近くになったころだ。
「んー、よく寝た」
ゼンはベッドの上で背伸びをする。眠気は無い。最高の目覚めだ。
壁にかけられていた制服に袖を通し、鞄を持って部屋を出る。
「よし。行こう」
向かうのはエキュペント学園。今日は入学式だ。
空はよく晴れていて春の日ざしが暖かい。朝食として買ったパンとミルクを食べながらゆっくりと歩く。時間は余裕を持って出てきている。道順も事前に調べてあるので迷うことはない。
ゼンは路線エーテル機構車乗り場へ向かう。ゼンの住む場所からエキュペント学園は少々離れていて、徒歩だと三十分以上歩かなければならないのだ。まだ時間が早いので数人の乗客しかいない。何人かはゼンと同じ新品の制服を着ていた。
エキュペント学園前駅で降りると、まず見えるのは大きな門だ。金属のパイプで作られているのはここがエーテル・ギアに特化した学園だからなのだろう。複雑に曲げられたパイプで歯車の形を描かれた門は、今は大きく開かれていた。
「うわあー」
赤レンガでできた高い壁に囲まれたエキュペント学園。左右に広がる壁の端は見えないほどだ。中には校舎と寮だけでなく、研究棟に広大な実験場、さらには飛空船の発着場まである。
門をからは真っ直ぐ煉瓦敷きの道が伸びている。左右には木が植えられていて緑の葉を茂らせていた。その先に見えるのは巨大な校舎。それは初めて見た誰もが気圧されるほどの威容だ。赤煉瓦の校舎は中心に高い塔がそびえている。そこには巨大な歯車時計が備え付けられていた。文字盤に見える無数の歯車で描かれた模様が、そのまま学園の校章となっている。しかし、何よりすごいのはその校舎に張り巡らされた、鈍色に光るパイプだろう。まるでパイプでできた植物に校舎が覆われているようだ。ところどころには歯車機構があり、チキキチと動いていた。
「すごいなあー」
ゼンはぼうっと校舎を見上げていると声が聞こえた。
「新入生のみなさんは右手にある大講堂へ行ってください。そこで入学式をおこないまーす!」
教師らしき男性が叫んでいる。ゼンもそちらへと向かう。大講堂の中へ入ると喧騒に満ちていた。事前に知らされているクラスの列へ並ぶ。
「静かに!」
教師の声が響く。いつの間にか前方の舞台に中年の男性が立っていた。
「これよりエキュペント学園入学式をはじめる。学園長ヴェペル・エキュペント様より祝いのお言葉をいただく。静聴するように」
男性が袖へ隠れると、白髪の男性が出てきた。髭も白く高齢だと思われるが背筋はぴんと伸びていて、歩く姿は雄々しくとも感じられる。背が高いのもそう感じる原因かもしれない。
学園長ヴェペル・エキュペントが壇上に立ちこちらを見ると、新入生達の空気が変わった。それほどの眼力だった。
「まずは入学おめでとう新入生諸君。私がこのエキュペント学園学園長ヴェペル・エキュペントだ。わが国の生徒達は切磋琢磨し、国の有益な人材となるように。遠く離れた国より来た生徒達は、存分に学び国へ帰りその知識と技術を活かせるように。この学園は実力主義だ。向かないと思ったものは辞めよ。才が無きものは辞めよ。諦めたものは辞めよ。探究心無きものは辞めよ。前に進むものだけが学べ。以上」
新入生たちは全員あっけに取られている。普通ならもっと長々と、勉強や友情を育むなどといった話をするはずだ。それが夢抱く新入生たちに、辞めよ、である。あまりにも破天荒だ。
老人とは思えない低くハリのある声で学園長はそれだけを言うと、すぐに壇上から歩き去った。新入生達が何も言えないでいると、さっきの中年男性がまた出てきた。
「これで入学式は終わる。これから配る学園の地図にそれぞれのクラスの位置が書かれている。明日はそれを見て教室へ行くように。この後は外で自分の学科の教科書を受け取るように。以上」
学園の地図を受け取り大講堂を出る。ゼンが教科書をもらう位置をキョロキョロと探していると、自分を呼ぶ声が聞こえたので振り向く。
「ゼンー」
「ドノヴァー。よく見つけれたね、こんなに人が多いのに」
周囲の人口密集度はひどい。気をつけないと肩が誰かに当たってしまうほどだ。しかも全員が同じ制服を着ている。違うのは学科を表すスカーフの色だけだ。ゼンは機構科の緑、ドノヴァーは商業科の白。
「だって、すごい目立つから。その鞄は」
「鞄? そんなに変じゃないと思うけど。だから皆にジロジロ見られてたのかなあ」
ゼンは学園に来たときから視線を感じていた。身長は少し低いが顔立ちは平凡、髪と目の色が茶色なのは金髪青瞳が多いポートデバル国だが、そこまで珍しいとうわけではない。そんな自分がどうしてと思っていたが、まさかそれが自分の持つ鞄のせいだとは全く考えていなかった。
「このエーテル駆動式汎用車輪付き鞄っておかしいかなあ?」
「その名前じゃなくて、ちゃんとした名前つけたよね? キャリーバッグって」
ゼンが持つ鞄は皮製のトランク型。それだけなら普通だが、それに車輪が付いていて地面を転がして運ぶ鞄など、誰も見たことも聞いたことも無い。さらには鈍色のパイプが蔓草のように張り巡らされ、無数の歯車が駆動している。
「でも、教科書を入れるから大きい鞄を持ってくるように言われてたよね?」
「そうだけど……普通はボクが持ってるようなのしかみんなは知らないよ」
ドノヴァーは肩からかけるタイプの鞄。周囲の生徒も同じような肩掛け鞄やリュックだ。車輪が付いた鞄など誰も持っていない。
「便利なんだけどなあ」
「はあ……とりあえず人が少なくなるまで待ってようよ」
ゼンがまわりを見ていると、目に入った生徒がいた。
「ドノヴァー、あの人って」
「え、ああ。あの人は亜人だね」
「わあ、初めて見たよ」
「そうなんだ。ボクの国はいろんな国から人がやってくるから、そんなに珍しくないけど」
ゼンが見ているのは、生徒たちから頭一つ高い身長の女性だった。それだけでも目立つうえに、男のように短く刈られた髪の毛の色が緑だった。瞳の色も緑で瞳孔は縦に長い。そして首には緑青色の鱗まである。
それだけ目立つ容姿をしているので、生徒たちの注目を集めていた。しかしそれは好意的なものではなく、嘲笑や敵意に嫌悪、さらには侮蔑的な言葉を吐く生徒も少なくなかった。
「亜人め」「なんで人間もどきが」「汚らしい」
生徒たちの反応に、ゼンは周囲を見回す。
「……やっぱり、こっちでは亜人たちの差別がひどいんだね……」
「え、なんで?」
「まだ亜人は暴力的で野蛮な蛮族っていうイメージが強いんだよ。ボクの国はそんなこと無いから、やっぱりショックだなあ……」
人狼族、猫人族、蛇人族、ドワーフ族、オーク族といった人と獣の組み合わさった種族は亜人と呼ばれている。彼らは今はある程度交流があるが、昔は忌み嫌われていた。
大陸のおよそ上半分が人間の領土となっていて、下半分が亜人たちの領土となっている。その昔、人間たちは大陸を全て人間のものにしようと大規模な侵略戦争を行った。しかし屈強な亜人たちに人間たちは苦戦を強いられた(余談になるが、このことでギア・ナイト研究と開発が躍進した)また人間の国々同士の足の引っ張り合いもあり、それは亜人たちの国々でも同じことだったので戦争は膠着状態に陥り、やがて休戦となった。
それから百年以上の時が過ぎ、それ以来大きな戦争は起こっていない。亜人の国との国交も行われるようになった。しかし大部分の人々は、いまだに亜人たちを嫌い見下している。それがこの状態だ。
「そういえば、亜人の人が全然いないね」
「ここはエーテル・ギアの学校、つまりはギア・ナイトの学校だからね」
ゼンがどうしてという顔をすると、ドノヴァーは深いため息を吐く。
「昔に大きな戦争を亜人たちの国とやってるのは知ってるよね。だから、兵器のギア・ナイトの勉強を亜人にさせるっていうのは、わざわざ敵に塩を送るってことになっちゃう。人間側はそんなことをしたくないから」
「戦争するの?」
「ううん。そんなことにはならないと思うよ。最近は亜人の国とも交流があるし。みんなが思うような野蛮な人ばっかりじゃないから。でも、戦争しようって思ってる人はどっち側にもいるから……」
たしかに大規模な戦争は起こっていない。しかし人間の国と亜人の国が隣接している場所では、小競り合いが頻繁に起こっている所もある。いつしか大きな戦いが起こる、そう考える人は多く、そうなった場合の戦力をどこの国も準備している。エキュペント学園がここまで大規模なのもそういう理由がある。
「そうなんだ」
「……人が少なくなってきたね。ボクは商業科だから」
「うん。教科書をもらったらまた会おうね」
ゼンはドノヴァーと別れ、機構科の列に並ぶ。
「次の生徒。学園番号と名前は」
小さな机に女性の教師が座っていた。長い髪を後ろで束ねている。眼鏡と釣り目が厳しそうなイメージを人に感じさせる。歳は若く、三十歳にはなっていないだろう。
「えっと、学園番号は1316番、名前はゼンです」
「……よし。ちゃんと鞄は持ってきたか? 量が多いぞ」
「はい、大丈夫です」
ゼンがキャリーバッグを開けて教科書を入れる。それを見ると女教師の眉がピクリと動く。
「おい。その鞄はなんだ」
「これはエーテル駆動式、じゃなくて、キャリーバッグです」
「キャリーバッグ? 聞いたことが無いな。どこで買ったんだ」
「いえ。自分で作りました」
その言葉に女教師は机から身を乗り出し、キャリーバッグをまじまじと観察する。
「これは、エーテル・ギアなのか。この二つの車輪で鞄を移動させる」
「通常は機能を使わずに、手で移動させます。荷物が重いときに使います」
「なるほど。しかし鞄程度の大きさならば重量などたかが知れている。なぜ……ん? よく見るとこのフレーム、やけに仰々しい」
「そうなんです。このフレームを……」
二人がキャリーバッグ談義に花を咲かせていると、後ろに並ぶ生徒たちから冷たい視線が刺さっていることに気づく。
「……オホン。私は機構科で授業を教えている。また後日、話をしようか」
「はい。わかりました」
急いで教科書を詰め込んで移動すると、すでにドノヴァーが待っていた。
「もう、遅いよ!」
「ごめんごめん。この後どうする?」
「まだお昼には時間があるし、ボクの寮の部屋へ来る?」
「うん。寮はまだ行った事ないから行ってみたいな」
「別に珍しいものは何も無いけど」
「水道はあるの」
「もちろんあるよ。お風呂があるんだし」
「お風呂! すごいね。僕の部屋には無いよ」
「ええっ! じゃあ体を洗えないじゃない!」
「近くに公衆浴場があるから大丈夫だよ。あんな大きいお風呂見たことなかったから楽しいんだ。エーテル供給管が壁いっぱいに張り巡らされて、すごいカッコイイんだよ!」
「かっこいいの、かな……?」
ゼンはキャリーバッグをゴロゴロと引きながら、ドノヴァーと寮へ向かって歩いていった。
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