13話 初耳
「……適度な長さで、オチもある。いい感じじゃないか。それでこそ自己紹介だ。まあ、オチがもう少し面白かったりすれば、もっといいんだけど」
お褒めの言葉を頂けた。
自己紹介に面白さを求められても困るが、高評価らしいのは大変に嬉しい。
黎は、安堵から短めのため息を吐く。
「これでようやく正式に、よろしくだ」
そう言った一瞬の間、藍梨の顔に微かな笑みが浮かんでいたことを、黎は見逃さなかった。
そこにある微笑は、どこか懐かしい、温もりに包まれているように思えた。
……だが、笑みを打ち消して束の間。
「続いて、私たちから自己紹介をしようか。最初は……」
藍梨は冷たい表情で理子へと振り向く。
理子はその時点で、続く藍梨の発言を予測できたらしい。
立ち上がり、明朗な笑顔を作って述べる。
「黄瀬理子と言います〜!よく『きせ』って言われるけど『おうせ』だよ〜。種族とかって言った方がいいのかな……一応言っておくと、ワーウルフです〜!人狼ゲームをすると即処刑確定します〜!今後は何卒よろしくね〜」
理子はなおも明朗な笑顔のまま、右手でグッドサインを作ったりなどした。
それは、黎の歓迎をも意味する彼女なりの挨拶である。
だが……彼女の言葉を聞いた黎の額には、冷たい雫が無数に張りつく。
理子は、自分がワーウルフだと言った。
人間ではない、すなわち人間社会にいるべきでない存在。
満月の夜に本性を表すとされる、恐怖すべき存在。
自分をそうだと言った。
人間を食うかもしれぬ。
はたまた、過去に人間を食ったかもしれぬ。
そんな存在が目の前にいては、安心すべきときであろうと安心することはできない。
何かの冗談であるはずだと信じ、黎は恐る恐る尋ねた。
「ワーウルフっていうのは……さすがに嘘ですよね?」
顔は引きつっていなかっただろうか。
周りの反応を見る。
おそらく、黎の心にある異様な不安感は伝わっていないだろうと見られた。
だが、そこで安心するのも早計であった。
藍梨の反応もまた黎の予想を覆す。
「知らなかったのか……?ここは、妖怪を逮捕するが故に、妖怪も所属している警察組織だ。まあ、人間の方が少ないんだがね」
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